今回はアーティ登場。楽しんでいただけたら幸いです。
二体だけとはいえ普段のジム戦では使わないムーランドまで使った本気の布陣。自らの代名詞にして切札たる“かたきうち”を完全にカウンターで入った“リベンジ”で返されたアロエは冷や汗を流す。はがねタイプにノーマルタイプの技の効きが悪いとはいえ、大ダメージは与えられるはずだった。
しかしコマタナさんは直撃を受けて耐えきった上で、そのダメージを倍返しされた。それはつまり、このコマタナさんは技の手数だけじゃない、シンプルな防御力さえも並を超越しているという事であり……。その事実に気付いているのはどれほどいるのだろう。もしかすると、主人である少女でさえ……。
「参った。参ったよ。コマタナが交代した直後を狙うしか勝機がなかったのに、それをバルチャイの頑張りで潰された。完敗だ。コマタナだけに頼らない戦い、見させてもらったよ。隠居間近の戦いとしては最高だったさね。ジムバッジだ、大事にしておくれよ?」
「っ…はい!」
嬉しそうにバッジを受け取るソハヤに、あることが気になったアロエは問いかけた。
「そういえば、このままイッシュのジム制覇するのかい?そのコマタナがいれば、チャンピオンも夢じゃないよ」
「いえ、ジムを制覇するつもりはありません。サンヨウジムは夢の跡地を探索するために“いあいぎり”を秘伝技に昇華するために必要だっただけなので……ヒウンシティについたら、そのまま船に乗ってあるところに行こうかと」
「そりゃ、カミツレとかが拗ねそうだね。せめてヒウンのジムリーダー・アーティのところには行ってやりな。デントたちから話を聞いてインスピレーションを得たいと言ってたからね」
そう会話しながら、図書館に繋がる通路を開けて地下室から出てくるアロエとソハヤ。すると、そこには赤いスカーフを巻いた黄緑の七分袖シャツ、ベルトのバックルが蝶の形をしている緑とオレンジのストライプ柄のズボンを履いた何ともアーティスティックなくせっ毛の茶髪の男が待ち受けていた。
「んうん、そのとおりだ、ねえさん!待ちきれなくてここまで来てしまったよ!」
「アーティ……ソハヤが引いてるよ」
「おおっと、すまない!だがしかし、溢れるインスピレーションは止められないのさ!」
「えっと…?」
「ああ、初めましてだもんね。この男がさっき話したヒウンシティのジムリーダー【モスト・インセクト・アーティスト】アーティだよ」
「初めまして!」
「あ、初めまして…?」
「ナタッ」
テンションが高い大人に引き気味なソハヤに抱きかかえられたコマタナは困ったように唸るのだった。
数刻後、ヤグルマの森をソハヤと抱えられたコマタナさん、そしてアーティとその頭に乗ったメラルバは歩いていた。メラルバがたまに吐き出す火の粉で髪の毛の先がちりちり燃えている。
「悪いね!同行させてもらって」
「いえ。ジムリーダーが一緒なら安心ですし。それより頭大丈夫です?」
「大丈夫、慣れてるからね」
次の目的地であるヒウンシティを抜けるにはシッポウシティに隣接している雑木林たるヤグルマの森を抜ける必要があるのだが、そこは蟲ポケモンの巣窟。故にむしタイプのジムリーダーであるアーティがヒウンシティについたら自分と戦うと約束をして案内を買って出たのだ。
「そう言えば知ってるかい?ここには思索の原という奥地があってね。そこにはビリジオンという聖剣士と呼ばれる伝説のポケモンがいるとされるんだ」
「聖剣士……コマタナさんみたいに刃を使うポケモンなんですかね?」
「見たことはないけど恐らくね。一目見てみたいものだよ。おや?」
一本道である道路を進もうとする二人だったが、おかしなことになっていた。川を繋ぐ橋が破壊されていたのだ。
「おや?僕が来たときはこんな風になっていなかったんだけどね?」
「それならどうして……」
「…うーん、迂回するしかないかな。少し引き返したところから入る獣道で野性ポケモンと遭遇しやすいけど、丸太橋がかかっているところがあるからそっちからいこう」
「わ、わかりました」
引き返すソハヤとアーティ。そのソハヤの腕に抱えられたコマタナさんは、こちらを見つめる何かの存在に気付いて視線を向けたが、そこには既になにもいなかった。
「ソハヤさん、こっちだよ」
手足が長いアーティが手を貸し、滑りやすい丸太橋を渡るソハヤ。コマタナさんは木々でこけそうになるためボールに入れていた。
「ここは最近、練度の高いポケモンが出てくることもあるから気を付けて……むっ」
「どうしました?アーティさん」
「いや、なに。なにがあの橋を壊したのか、その正体がわかってね」
そう言ってアーティが指さした先。そこにはとんでもないものが見えた。ものぐさポケモンと呼ばれるケッキングが、メガムカデポケモンであるペンドラーを胴体に斜めに巻き付けた状態で、我がもの顔で森やポケモンたちを薙ぎ払っていたのだ。
「え」
「なまけ……るそぶりがないね。特殊個体か。足が濡れているところを見るに、恐らく川を横断していた際に邪魔だとして橋を破壊したんだろう。十中八九、奥地に生息しているポケモンだ。コマタナを出すんだソハヤさん。あれは、厄介だぞ」
言われるままにソハヤはコマタナさんを繰り出し、アーティは頭にメラルバを乗せたまま、いわやどポケモンのイワパレスを繰り出す。するとこちらに気付いたケッキングが咆哮を上げると、ペンドラーを胴体から取り外してぐるんぐるんと振り回してまるで武器の様に両手で構えた。
「ケッキンッッッグ!!」
「え、はや……コマタナさん!防いで!」
「ナタッ……!?」
そして高速で振るわれたペンドラーの体が鞭の様にしなったかと思えば“てっぺき”でピンと直線状に固まり、凄まじい勢いで叩きつけられたコマタナさんは吹き飛ばされ、あっけなく見えなくなってしまった。
「イワパレス!“がんせきほう”!」
「ケッッッキング!!」
イワパレスの最高火力を、ケッキングが引き寄せたペンドラーが渦を巻いて“てっぺき”で盾になり完璧に防いでしまう。とんでもないコンビネーションだ、アーティは冷や汗を流す。ケッキングはあまりに強力すぎるそのスペックを、とくせい“なまけ”で打ち消すことで普通のポケモンと渡り合うポケモンだ。その最大の弱点である“なまけ”る様子がないこのケッキングの膂力と、攻防を成すペンドラー。あまりに厄介すぎた。
「ナタッ!」
すると、“ロックカット”で素早くなり懐に飛び込むコマタナさん。“メタルクロー”の連打を突き刺すがびくともせず、ケッキングに鷲掴みにされて地面に“たたきつける”されてしまうと、そのまま蹴り飛ばされイワパレスに受け止められる。ただでさえ慣れてない森の中という足場の悪さもあり、本来の力を出し切れてない様子だ。
「こうなったら……木々を斬って!コマタナさん!“かまいたち”!」
「ケッッキングゥウ!!」
「うわっ、なんて速さだ!?」
コマタナさんが風の刃を放つも、するとケッキングはペンドラーを再び巻き付けて両手を地面に叩きつけると、その反動で跳躍。木々を蹴り、両腕で掴んでグルグル回ってまるでピンボールの様に跳ねまくり、“てっぺき”で硬化したペンドラーを巻いた胴体で風の刃を弾き飛ばしていくケッキング。さらにその質量のまま回転しながら飛び込んできて、コマタナさんは回転する勢いのまま繰り出した“アームハンマー”で地面に埋められ、そのまま頭突きでイワパレスをまるで蹴鞠の如く吹き飛ばすと、そのままアーティを鷲掴みにしてしまう。
「ぐあっ……!?」
「アーティさん!?コマタナさん!」
「ナタッ……」
そのままソハヤを見下ろすケッキング。絶体絶命。そんな四文字が脳裏に浮かんだソハヤのボールが勝手に揺れたかと思えば、そこから粘土板がついた腕が伸びてきてケッキングを押し飛ばす。
「ケッッキング!?」
「デスッバァアアンン……」
ソハヤを包み込んで守るように出てきたのは、デスバーンであった。
なまけないケッキングとかいうどう考えてもやばい奴。
・ケッキング♂
とくせい:やるき(殺る気)
わざ:アームハンマー
ふいうち(ペンドラーで薙ぎ払う)
たたきつける
おさきにどうぞ(ペンドラーにてっぺきを使わせる)
もちもの:カムラのみ(事前に食べる)
備考:ゆうかんな性格。ちのけがおおい。ペンドラー(♀)とは性格が合いナマケロ、フシデの頃からの幼馴染。進化を果たし、二人で天下を取ろうとコンビを組んだ。ペンドラーを近中距離の武器として扱い、さらにカムラのみで強化した速度で縦横無尽に森を駆け抜ける。2人で高め合ったせいでとくせいがなまけにならなかった特殊個体であるバケモノ。
お気に召していただけたら感想ならびに評価、お気に入りしてくれると嬉しいです。