魔術王ソロモンと羊飼いの僕が魂を融合したら、チートすぎるマスターになってしまった件〜最強の力を共有した僕の聖杯戦争〜 作:bpro
異空間で唐突に始まったソロモンとシバの女王の戦い。
確かにシバの女王は優れた英霊だがソロモンほどの相手ではないはず、だったーー
だが今の彼女は明らかに様子がおかしい。まるで別人のような雰囲気を漂わせているように感じられるのだ。
いや、実際に違っているのかもしれないと思ったソロモンだったが今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
何故なら目の前に迫っている攻撃を躱すことだけで精一杯だったからだ。
次々と繰り出される攻撃を避けながら反撃の機会を窺うもののなかなか隙を見出すことができないでいる。
このままでは埒が明かないと判断したソロモンは一度距離を取るために後方に跳躍した。しかしその瞬間を狙っていたかのように追撃してくるのが見えたので咄嗟に防御態勢を取ったのだが間に合わず攻撃を受けてしまった。
その衝撃で吹き飛ばされ壁に激突してしまい身動きが取れなくなってしまう。そこへ追い打ちをかけるようにして放たれた魔力弾をまともに受けてしまった!
「ぐっ……」
思わず苦悶の声を漏らしてしまう程のダメージを負ってしまったようだ。全身に走る痛みに耐えつつ立ち上がろうとするが上手くいかない様子だ。
そんな様子を見ていたシバの女王はゆっくりと近づき話しかけてきた。
「これでわかったでしょう?貴方じゃ私には勝てないということが」
勝ち誇ったような笑みを浮かべながら言う彼女。
「貴方が私に勝てない理由…それは貴方のマスターが原因よ」
それを聞いてドキッとするソロモンであったが平静を装って聞き返すことにする。
「……どういう意味だい?」
するとシバの女王はますます笑みを深めて答えた。
「とぼけても無駄よ。貴方は本来の力を抑えてあのマスターに合わせている。そうでしょう?」
図星を突かれてしまい言葉に詰まるソロモンだったがすぐに気を取り直し反論する。
「何を根拠にそんなことを言うんだい?」
あくまでもシラを切るつもりのようだが彼女には通用しないようだった。
「だって私、知っているもの。貴方の真の力というものをね」
「フッ、貴女にはお見通しのようだね。確かにマスターに合わせて力を制御しているのは事実だよ。でもそれが何か問題でもあるのかい?」
開き直ったように言うソロモンに対してシバの女王は怒りに満ちた表情で叫んだ。
「貴方は賢王ソロモン王。そして魔術王と呼ばれていた男でしょう!あの人間のためにそこまでする必要があるというの!?」
その言葉を聞いてソロモンは苦笑した。
「私が選んでいるだけだよ。貴女が生前の妻だったといって関係ないことだと思うが?」
その言葉を聞いた瞬間、彼女の顔から表情が消えたように見えた。
(さすがに言い過ぎたか…)
今の彼女は普段と違い様子がおかしい。そして自分が本来の力を制限しているとはいえ、今の彼女の強さは特殊すぎるように思えたのだ。
だから慎重になるべきだったが、ダビデのことが絡むとどうしても冷静ではいられないのだった。
そんなことを考えているうちに再び攻撃を仕掛けてきたので避けようとするのだが足が動かなかった。よく見ると足に蔦のようなものが絡みついていることに気づくと同時に一気に引っ張られていく感覚に襲われる。どうやら地面の下から伸びているらしいそれを辿れば正体はすぐに分かった。
それは植物の根のようなものでありその先には大きな蕾があったからだ。恐らくこれが足を捕らえているのだろうと考えたところで急いで拘束を解きにかかることにした。
だが目の前に、シバの女王が迫ってきていることに気づいたソロモンは慌てて呪文を唱え始めた。だがそれよりも早く接近してきた彼女に蹴り飛ばされ地面に叩きつけられてしまう。
ソロモンを見下ろす彼女の表情は冷酷そのものであり殺意すら感じられたほどだった。
「英霊であれば死んでもまた召喚可能でしょう?」
そう言ってトドメを刺そうとするシバの女王だったがーーー!!
「そこまでだ」
突然男の声が響き渡ると同時に眩い光が放たれ視界を奪われる。やがて目が慣れてきた頃に目を開けるとそこには2人の人物が立っていた。
(サンジェルマン!?それに…ダビデまで!?)
驚くソロモンの前に現れたのは…ダビデとサンジェルマンだった!
「英霊同士の戦いは珍しくないが今回はいささかやりすぎたな」
サンジェルマンは口調は軽いが目は笑っていなかった。
「邪魔をするつもり?いくら貴方達といえど容赦はしないわよ!」
殺気を放つシバの女王に対し冷静に対応する2人。
「悪いがここは引いてもらおう。これ以上続けるというのならこちらも本気で相手することになるぞ?いくら君でも2対1では勝ち目がないと思うのだがどうかな?」
挑発するような物言いをするサンジェルマンに対してシバの女王は一瞬悔しそうな表情を浮かべたもののすぐに冷静さを取り戻し言った。
「いいでしょう。今日のところは引き下がります。ですが覚えておいて下さいね。私は諦めたわけではありませんからね」
それだけ言うとソロモンの方を一瞥してから去っていくのだった。
「!!ソロモン…!大丈夫か!?」
ダビデは青ざめた顔で駆け寄るとその体を抱き起こすようにしながら声をかける。するとソロモンは小さく微笑みながら答えた。
「大丈夫だよ、少し油断してしまっただけだし大したことはないさ……」
ダビデは思わず彼に抱きついてしまいそうになるのを必死に堪えながら問いかける。
「本当に大丈夫なのか……?怪我とかしてないよな……?」
心配そうな表情で見つめてくる彼女を安心させるように頭を撫でながら答えるソロモン。
「ああ、平気だよ。それよりどうしてここへ…?」
シバの女王により強制的に異空間へ引き込まれてしまったのになぜここにいることがわかったのか不思議だったのだ。するとサンジェルマンは苦笑しながら説明した。
「ダビデちゃんが君の危険を察知したんだよ。君達は絆がよほど強いようだからね、君がピンチだと感じ取って私に助けを請うてきたんだ」
それを聞いてソロモンは少し照れくさそうにしながらも嬉しそうに微笑んだ。
「そうだったのか。2人とも礼を言うよ」
「だが油断できないな。彼女は君とダビデちゃんを引き離そうと考えているのではないか?」
「さすがだね。だが彼女らしくないやり方だと思わないかい?まるで何かに取り憑かれているようなーー」
そこでハッとする。
何かを察知したソロモンに同意するように頷くサンジェルマン。
「それと、危険なのは君だけではないぞ。マスターが命を落とせば契約していた英霊は他のマスターとの契約が可能となるからな」
その言葉にソロモンの表情が曇る。もしもダビデが策略により命を落としてしまったらーー
そう思うと不安になってしまうのも無理はないだろう。そんなソロモンの様子を察してかダビデは優しく抱きしめながら言った。
「大丈夫、僕は絶対に死なないから安心してくれ。ソロモンを置いて先に死んだりしないさ」
その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなるのを感じたソロモンはダビデを強く抱きしめる。そんな彼の背中をポンポンと叩きつつ、あやすように語りかけるダビデであった。
***
カルデアに戻ってきた3人だがサンジェルマンはとんでもないことを言い出すことになるのである……。
「シバの女王の件が解決するまでダビデちゃんのことが心配だね。護衛が必要だと思うのだけれどどうだろう?」
「確かに今の彼女は何をしでかすかわからないな…」
「ソロモン王。事態が収束するまでダビデちゃんと一緒に住んだらどうだい?」
「!!」
思わず動揺してしまうダビデ。一方のソロモンはというとーーー
「そうだね、護衛が必要なら私より適任はいないだろうしそうさせてもらうことにするよ」
あっさり承諾したことにショックを受けてしまうダビデであったが仕方がないことなのかもしれないと思い直すことにしたのだった。