魔術王ソロモンと羊飼いの僕が魂を融合したら、チートすぎるマスターになってしまった件〜最強の力を共有した僕の聖杯戦争〜 作:bpro
特異点に向かったダビデ一行は、特異点修復のため奮闘していたのだが、ついに敵と遭遇することになった。
「こいつのせいで異常が発生してたんだな……」
敵の姿を見て呟くソロモン。その視線の先にいる者こそ今回の異変の原因であり、特異点の核となっている存在だった。
その姿はまるで竜のようで、その威圧感はかなりのものがあり、見ただけで圧倒されそうになるほどだった。
「こいつは手強そうだね……」
険しい表情で呟くソロモンに対してダビデは言う。
「大丈夫。僕と君達がいればなんとかなるさ」
明るく振る舞う彼女につられて自然と笑みが浮かぶソロモンだったがすぐに気を引き締めると目の前の敵に向き直り攻撃を仕掛けた!
***
激闘の末、撃破に成功した一行。竜は抵抗虚しくゆっくりと倒れていくのだが・・・最後の抵抗とばかりにある悪意を放っていたことに誰も気づかなかった。
「よし。倒せたようだね」
自分達の強さを実感でき、ダビデは嬉しそうに振り返ろうとしたのだが次の瞬間ーーー
「え?」
間の抜けた声を出すと同時に、痛みが走るよりも早くバランスを崩しその場に倒れ込んでしまった。何が起こったのか理解できずにいるとソロモンが駆け寄ってくるのが見えた。
「ダビデちゃん……」
サンジェルマンが絶望に満ちた声で呟いた直後、ソロモンは信じられない光景を目にする。
ダビデの胸に深々と突き刺さる何かが見えたからだ。
敵が最後の抵抗で事切れる間際に放ったのだろう。
(そんな…嘘だ。こんなことありえない……!)
だが動揺している場合ではない。一刻も早く応急処置をしなくてはーー
だが、その時ソロモンにはわかってしまった。
もう手遅れだということが・・・
この時ほど自分の知能を呪いたくなったことはなかった。
そんなことあるはずがないと自分に言い聞かせたかったが現実はそれを許してくれなかった。
「大丈夫…僕なら…まだ…」
「喋っちゃダメだ。今助けるから……!」
必死で治療を試みるソロモンだったがもはやどうすることもできない。
(ダメだ、諦めるな!!こんなことがあっていいはずないだろう!!)
そんな思いとは裏腹に彼女の命が失われていく様をただ見ていることしかできない自分に苛立ちを覚えることしかできなかった・・・。
(なぜだ……!なぜこんなことに……!!)
彼の心の叫びに応えるかのように世界は残酷だった・・・・
「ソロモン……」
最後の力を振り絞るように弱々しい声でダビデは言葉を紡ぐ。
そんな彼女を抱きしめながら涙を流すことしか出来ない自分が情けなかった・・。
すると彼女は震える手でそっと頬に触れてきたかと思うと優しく微笑みかけながら言ったのだ。
「ありがとう・・・」
その言葉にハッとしたように目を見開くソロモンだったがその直後、その手から力が抜け落ちたのを感じた瞬間目の前が真っ暗になった気がしたのだった・・・・
それからのことはあまりよく覚えていない。
気がついたらカルデアに帰還していて彼女の遺体を大事に抱きかかえていたことを覚えているくらいだ。
その後の記憶もほとんどないに等しい状態だったのだから無理もないだろう。
あの出来事を境に彼は変わってしまったと言っても過言ではないほどに精神が崩壊しかけていたと言えるのかもしれない。
そんな彼に誰も声をかけることができなかったというのも事実ではあるがそれ以上に彼自身が周りを拒絶していたという側面もあったことは否めない事実であると言えるだろう。
(ダビデ…ダビデ……)
ソロモンは心の中で誰よりも愛しい人の名を何度も呼び続けていた。
(会いたい……もう一度君に会いたい……会って抱きしめたい……愛してるって伝えたい……なのにどうして君はここにいないんだ……?)
その想いだけが彼を突き動かしていたと言っても過言ではなかっただろう。
ソロモンの脳裏に、ダビデと過ごした日々の思い出が次々と浮かんでくるたびに胸が締め付けられるような痛みを感じずにはいられなかった。
陽気で人懐っこいところが愛おしかった。
笑った顔が大好きだった。
そして揶揄う時に怒らせた時の、怒った顔も可愛くて仕方なかった。
あの顔を見たくてつい怒らせることを言ったりもした。
軽快に振る舞うお茶目な一面も、笑った顔も怒った顔も全部好きだった。
プライドなのか自分の感情を隠そうとするところも、それでも時折自分にだけ見せる弱さや脆さも全てひっくるめて愛しかったはずなのに、今はもう見る影もないくらいにボロボロになってしまった思い出の数々に心が壊れてしまいそうだった。
そして何よりも辛かったのは自分の目の前で彼女が死んだという事実を受け入れなければならないことだった。
いや、正確には受け入れたくなかったというのが正しい表現なのかもしれない。なぜならそれは彼が最も恐れていたことだったからだ。
もしもあの時、もっと適切な行動を取れていれば彼女を救えたのではないか?
いやーーー
こんなことに巻き込んでいなければ彼女は死なずに済んだのではないだろうか?
彼女が転生し、マスターになることは避けられない運命なのだとソロモンはわかっていた。
そうだとしてもあの時自分が声をかけず関わらなければ、こんな結果にならなかったのかもしれない。
そんな思いがずっと頭の中を駆け巡っていたからである。だからこそ彼には後悔しかなかったし自責の念に駆られていたことだろう。
しかしそれでもなお諦めきれない気持ちがあった。
ならば最後まで足掻き続けるしかないではないかと思うようになっていったのである。たとえそれが茨の道であろうとも立ち止まるわけにはいかないのだと強く心に誓ったのだった。