魔術王ソロモンと羊飼いの僕が魂を融合したら、チートすぎるマスターになってしまった件〜最強の力を共有した僕の聖杯戦争〜 作:bpro
その後ソロモンは誰とも会わず、自身が保有する、カルデア外部にある研究室に引き籠るようになった。
ただひたすらに己の目的のために邁進する姿は狂気じみていただろう。
(例え禁忌を犯しても成し遂げてみせる……私は彼女を取り戻すために全てを犠牲にする覚悟がある)
その強い決意こそが彼を突き動かす原動力となっていたのは間違いないことである。
(そのためならどんな手段だって使ってやるさ)
そう決めた以上もはや迷いはなかった。
そしてついに準備を終えたソロモンはその計画を実行することに決めたのだった・・・
***
あれから数日後のことだった。
この日ソロモンの表情にはどこか焦りのようなものが見え隠れしているように見える。まるで何かに急かされているかのような雰囲気であった。
それも当然であろう。何故なら今日が決行日なのだから・・・
ソロモンは腐敗しないように保管していたダビデの遺体を丁重に取り出すと、特殊な魔法陣の上に横たえた後、自らの魔力を注ぎ込んでいく作業に取り掛かることにしたようだ。すると徐々に遺体に変化が現れ始めたようで全身が光り輝き始めると同時に眩いばかりの光に包まれていく。
それを確認した後に今度は呪文を唱えることで魔力を放出していくのだが、この時ばかりは彼の表情に戸惑いの色が見えたように見えたもののすぐに気を取り直して再び呪文を口にし始めると、やがてダビデの身体が宙に浮かび上がり発光し始めたかと思えば次の瞬間、一際大きな閃光が走ったと思った次の瞬間には何事もなかったかのように静寂が訪れたのだった。
そこには血色を取り戻したダビデの姿があった。
その体は傷一つなく、まるで生きているかのように生気を取り戻していた。
「ダビデ……」
感極まったように呟くソロモンの瞳からは涙が溢れ出しており、それを拭うこともなく彼女の頬に手を当てると優しく撫でるようにして触れていった。
まるでガラス細工を扱うかのような繊細な手つきであったが決して傷つけることのないように気をつけているようだった。
そんな彼の手の感触に気付いたのかゆっくりと目を開くダビデだったがその瞳には生気が宿っていた。
「………?ここは……?」
不思議そうに周囲を見回す彼女にソロモンは言った。
「おはよう、気分はどう?」
その言葉を聞いた瞬間、ハッとした表情を浮かべるダビデであったがすぐに笑顔になると嬉しそうに答えた。
「悪くないね」
そう言って微笑む姿はとても美しく見えたのだが同時に儚くも思えた。
「良かった……君に会いたかった……!もう二度と会えないと思っていたから本当に嬉しいよ……!」
ソロモンは感極まった様子で言うと彼女を抱きしめようとしたが寸でのところで思いとどまったようだ。
「……どうしたのかな?」
その様子を不審に思ったダビデが問いかけるとソロモンは答えた。
「ごめん、嬉しくてつい抱きしめそうになったんだけど……まだ君の体が完全に修復できたわけじゃないから……もう少し我慢するよ」
申し訳なさそうに言う彼にダビデは苦笑すると言った。
「全く、律儀だな」
そう言いながら腕を伸ばしてくるのでそれを受け入れるようにして抱きしめると彼女もそれに応えるように背中に手を回してきたのだった。
(ああ、温かいな……)
冷たくなってしまった彼女の体は今、体温を取り戻していた。それは生きているという事実を実感することができた。
久しぶりに感じる温もりに安心感を覚えつつしばらくの間抱き合ったままお互いの存在を確かめ合うようにして抱き合っていたのだが不意に彼女が口を開いた。
「……ソロモン、僕は生き返ったのか?」
その言葉にソロモンは頷こうとしたものの寸前で止めた。代わりにこう答えることにしたのだ。
「まだ魂がこちらの世界に残っている状態だったから、間に合って良かった」
それを聞いてダビデは表情を曇らせたがそれも一瞬のことですぐにいつもの穏やかな表情に戻ると言った。
「そうか、ギリギリだったんだな……ありがとう」
その言葉を聞き、ソロモンは再び泣き出しそうになるのを堪えながら言った。
「いいんだ、気にしないでくれ……それよりも早く体を治さないとね!」
「僕は一度死んでしまったならもうマスターの資格は無くなったのかな?君は別のマスターのサーヴァントになったのかい?」
不安そうに聞いてくる彼女にソロモンは首を横に振って否定した。
「いいや、そんなことはないさ。実は君は一時休戦してることにしておいてね、だから君が死んだことは私たち以外は知らないはずなんだ」
それを聞いた彼女は安心したような表情を見せた後で言った。
「そうか、まだ君のマスターでいられるんだな。安心したよ」
心底嬉しそうな顔をするものだからこちらまで嬉しくなってくるというものだ。
だが……ソロモンは言うことができなかった。
せっかく再会できたのに別れの時が近いことを告げる勇気がなかったのだったーーー