魔術王ソロモンと羊飼いの僕が魂を融合したら、チートすぎるマスターになってしまった件〜最強の力を共有した僕の聖杯戦争〜 作:bpro
光の中から人影が現れたかと思うと徐々にその姿が見えてきた。
その姿は紛れもなくソロモンその人だった。彼はゆっくりと目を開けると目の前にいる人物を見て驚いた表情を浮かべた。
それを見たダビデは微笑みを浮かべながら言った。
「ソロモンーーー」
「ダビデ……」
2人は見つめ合い、しばしの間沈黙が流れた後にどちらともなく抱き合った。
互いに強く抱きしめ合い二度と離れまいとするかのように力を込めた。しばらくそうした後で身体を離すと改めて向き直った。
先に口を開いたのはダビデの方だった。
「……おかえり、ソロモン」
「ただいま。ねえ、聞いてもいいかな?私が再び君の前に姿を現したということは・・・もしかして『魂の融合の儀』を行ったのかい?」
その問いに頷くと彼女は言った。
「そうだよ、君にもう一度会いたかったから……」
魂の融合ーーそれはその名の通り2つの異なる存在が魂を融合し、共有する魔術である。
本来は不可能とされる行為であるが、ソロモンの持つ膨大な知識と経験により実現された奇跡とも言える秘術でもあった。
ダビデはそれを行ったことで一度消滅したソロモンを呼び戻すことに成功したのである。
その事実を知ったソロモンは喜びのあまり涙を流した。そんな様子を見てダビデも思わず貰い泣きしてしまいそうになるがぐっと堪えて笑顔を向けた。
「君の魂が完全に消える前だったから間に合って良かったよ」
その言葉に彼もまた笑顔を浮かべながら答えるのだった。
「そうだね、魂というのは約49日で完全に移行もしくは消えてしまうと言われている。君を蘇生できたのもその前だったからだ」
そう言うとソロモンは再び彼女を抱きしめた。今度は優しく包み込むようにそっと抱きしめる。まるで壊れ物を扱うかのような繊細な手つきで髪を撫でたり頬に触れたりする度に愛おしさがこみ上げてくるのを感じた。
(ああ、やっぱり好きだな)
こうして再び見つめ合い、触れ合うことができる幸せを噛み締めるのだった。
「『魂の融合』は、同じ魂を共有すること…もう離れることはできなくなる、その覚悟があるということだね……?」
念を押すように聞いてくる彼に小さく頷き返すことしかできなかったのだがそれでも十分伝わったようだった。その証拠に彼女の瞳をじっと見つめたまま静かに顔を近づけてきたのでそれに応えるように目を閉じた後唇を重ね合わせた。
ダビデは明るく人懐っこい性格だが、人と仲良くなれるわりに深い部分を他人に見せたがらず自分の本心を隠すところがあった。自信家で余裕がある振る舞いをするが、プライドが高く傷つきやすい脆さも同時に持っているからだ。
他人に弱さを見せることも他人と深い関係になることもどこかで避けているのは否めないーー生前の頃から。
そんなダビデにとって「魂の融合」という、誰よりも深い関係になり切り離せない存在となることは大きな抵抗、そして恐怖と言っても過言ではなかっただろう。
他の人間に本当の自分を見せることすらできないのだから。
だがーーーそれでも最終的にはソロモンと再会したい思いの方が勝ったのだった。
「ありがとう……君はもう普通の人間ではいられなくなってしまった。だけど後悔はさせない。私のせいなんだから責任を取らなきゃいけないしね……」
そう言って妖艶な笑みを浮かべる彼に対してダビデは小さく頷いただけだったがその瞳には強い意志のようなものが宿っているように見えた気がした。
「ここに来た時からとっくに普通じゃなかったさ。これも神の思召しだ」
そう笑って悪戯っぽく告げる彼女に迷いも心配も全くないようだった。
(ふふ、可愛いなぁ)
そう思いながら頬を撫でてやるとその感触がくすぐったいのか身をよじらせる姿がとても愛らしく思えた。
***
こうしてダビデとソロモンは「魂の融合」により、異なる2つの存在でありながら1つの魂を共有する存在となった。
それはつまり運命共同体になったということであり、一蓮托生の関係にもなったということである。
しかしそれと引き換えに得たものは互いに大きかったと言えるだろう。
そして今ここにーーー
「魔術王」と魂を共有し、彼の力までも共有することになった前代未聞の反則級チートのマスターが誕生した瞬間であった!!!
序章完
次話から第一章に入ります。