魔術王ソロモンと羊飼いの僕が魂を融合したら、チートすぎるマスターになってしまった件〜最強の力を共有した僕の聖杯戦争〜 作:bpro
しばらく歩くうちに小さな町が見えてきたためそこへ向かうことに決める。
道中二人は色々と話をしたのだがその内容は主にお互いの身の上話が中心となった。というのも二人とも生前の記憶はあるものの現在は別の人生を歩んでいるわけで、お互いに興味があったからである。特にダビデに関してはまだ自分の知らない時代のことやこの世界のことに関して知りたいという気持ちが強かったようだ。
生前親子だったからだろうか、まさに波長が合うと言った具合ですっかり打ち解けてしまっていたのである。
そんな二人の会話の中で一際目立っていたのはやはりと言うべきか、ダビデの女性化についてだった。見た目は完全に絶世の美少女でありその美しさと言ったら他の追随を許しはしないだろうと思えるほどだったが本人はあまり自覚がないらしく他人事のように語っている様子はとてもシュールなものを感じさせるものだった。
しかしそれも無理はない話で生前男性として生きてきた記憶が強く残っており、それが今の自分の姿形に影響しているのだから違和感を抱かずにはいられないのだろう。だがそれでも彼女は前向きだった。
常人であれば絶望してしまうか途方に暮れるだろうが、ソロモンとの出会いがあったからなのか元々の陽気な性格故か、なぜか女性に転生したという災難も神の思召しだと受け入れることができたようでむしろ感謝しているくらいなのだそうだ。
ソロモンはそんなダビデの様子を楽しそうに眺めていたのだがーーー
町に到着すると途端に彼女は本音を呟くのだった。
「ははっ参ったな〜僕はこれからどうすればいいんだろう」
冗談めかしながらも思わず本音が出てしまったようだが無理もないことだろう。
何しろ唐突に未来の世界に転生した挙句、女に性転換して、ここでどうやって生きていけばいいのかもわからない状況なのだから。
「父上ーーー私のマスターになってほしい」
(え……?)
一瞬何を言っているのか理解できなかったダビデであったが、すぐに我に返るとその真意を確かめるべく聞き返した。
「マスターとは何だい?」
そこでダビデはソロモンからこの世界で起ころうとしている「聖杯戦争」についての説明を受けることになった。
何でも大規模な魔術儀式で、七人の魔術師がそれぞれサーヴァントと呼ばれる英霊を召喚し最後の一人になるまで殺しあうのだという。そして最後に残った者が願いを叶える権利を手に入れることができるらしい。
それを聞いてダビデは思ったことをそのまま口にした。
「それはなんとも物騒な話だね〜。そもそも何故そんなことをする必要があるんだい?」
「参加理由はそれぞれさ。私利私欲の者もいれば純粋に名誉を求めて参加する者もいるだろうしね。まあ中には何らかの思惑があって参加している者も多いだろうが……だが・・・私の見立てではただ聖杯を巡る戦いではなくもっと深い闇があるようだ」
そこまで言うと彼は急に黙り込んでしまった。何か深刻な事態でもあるのかとダビデは直感で感じ取るがそれはまさに的中だった。
「おそらくーーーこの世界は未来に破滅するかもしれない」
彼の言葉を聞いた瞬間、背筋が凍るような思いだった。この男は本気で言っているのだと確信させるだけの迫力があったからだ。だからこそ冗談ではないということも理解できたわけだが、なぜそのような結論に至ったのか疑問が残るところであった。
とりあえず詳しく話を聞いてみることにしたダビデは彼に問いかけることにする。
「どうしてそう思うんだ?君は一体どこまで知っているんだい?」
するとソロモンは少し考える素振りを見せた後、ゆっくりと話し始めた。
「私が知っていることはごく僅かだ。少なくとも人類が滅亡する可能性があることはわかっているつもりだ」
そう言うと彼は一旦言葉を切ると再び語り始めた。
「だが、回避できないわけではないはずだ。そのためにも貴方には私のマスターになってもらいたいと思っている」
その言葉を聞いた時、ダビデはある予感を感じていた。
恐らく彼が自分に求めているものは契約関係なのだろう。
(その聖杯戦争とやらで、回避させたいということかーーー?)
ただの私利私欲ではなく、世界を救うという目的だというのだろうか。通常であれば俄かに信じがたいが、生前の親子関係という絆があった故かそれとも生前に預言者でもあったダビデの直感力の高さ故か。
あるいは両方かもしれないが、彼の話に嘘偽りは無いように思えたのだ。
だからだろう、気が付けば自然と口が動いていたのである。
「……わかった。僕でいいなら協力するよ。よろしく、ソロモン!」
こうして二人は主従の関係を結ぶこととなったのである。
マスターとサーヴァントとしてーーー