魔術王ソロモンと羊飼いの僕が魂を融合したら、チートすぎるマスターになってしまった件〜最強の力を共有した僕の聖杯戦争〜 作:bpro
「敵なのか?」
ソロモンはその問いに静かに首を横に振ると答えた。
「いや違うと思う。ただこちらに近づいてきているのは間違いないだろう」
ソロモンは立ち上がると周囲を見回し警戒し始めた。
万が一の場合はダビデを守らねばならないだろうと考えていたのだが……。
「お二人さん。ずいぶん楽しそうだねぇ、俺も混ぜてくれないかい?」
そう言いながら姿を現した一人の男。英霊は正体を隠しているので誰なのかわからないが、気さくで軽薄な性格であることが伺える。
体つきは引き締まった歴戦の戦士らしいものであり、身のこなしにも隙が無いことからかなりの実力者であろうことが窺えた。
青い髪に鋭い目付きが特徴であり、一見すると冷酷そうな印象を受けるかもしれないが話し方はとてもフレンドリーで親しみやすい雰囲気があった。
そんな彼はニヤニヤとした笑みを浮かべながら二人の元へ近づいてくるとこう言った。
「俺はランサーってんだ、よろしくな!」
元気よく挨拶してくるランサーに対して警戒する二人。
「ああ、俺は別にあんたらと戦いに来たわけじゃないからさ。ちょっと挨拶しておこうと思っただけなんだよ」
両手を上げて敵意がないことを示しつつ男は言った。
(この男…軽そうな男だな)
警戒するソロモンに対して当の本人は全く気にする様子もなく軽い口調で話しかけてきた。
「おや、君は確かダビデちゃんだったかな?近くで見ると益々美しい美少女だなぁ♪」
そんな軽口を言いながらいやらしい目つきで舐め回すように見つめてくるランサーに対して嫌悪感を抱きながらも平静を装って対応することにしたようだ。
「マスターのことをご存知だったのですね」
内心冷や汗をかきつつも笑顔を保って挨拶をすることが出来た自分を褒めてやりたいくらいだとソロモンは思ったことだろう。
そんな彼の心情など知る由もなくランサーはニヤニヤ笑いながら馴れ馴れしく話しかけてくるので気が気ではなかったがなんとか乗り切ったと安堵していたのだ。
しかし……それも長く続かなかった。
何と彼はダビデに口付けをしてきたではないか!
挨拶のような軽いキスだがそれがかえって気障に見えたのだろう、ソロモンの額に青筋が浮かぶのがわかったほどだった。
一方のダビデはと言うと突然のことに驚いていたものの相手が友好的な態度を見せていたこともあって無下に扱うわけにもいかず大人しく受け入れることにしたらしい。
ちゅっという音とともに唇が離れると上目遣いで彼を見上げる少女の姿があった。その様子を見たランサーは満足げに微笑むと口を開いた。
「ふふ、ごちそうさま♪それじゃあまたどこかで会おうじゃないか♪」
そう言うと軽やかな足取りで去っていったのだった。
残された2人は呆然としたまましばらく動くことができなかったようである。
やがて我に返ったソロモンは怒りに満ちた表情でダビデの腕を掴んで言った。
「どうしてあんな奴に好き勝手させたんだい?君は私のものなんだから勝手に他の男に触らせたりしないでくれ」
普段と違う彼の様子に驚きつつダビデは冗談っぽく言い返す。
「君は大袈裟だな〜ただの挨拶だろう」
その言葉に余計に腹が立ったようで声を荒げる。
「何を言ってるんだ!それ以上の意味に決まってるだろう?」
普段は落ち着いて物静かな印象を受ける彼がここまで感情を露わにするのは珍しい事と言えるだろう。
それだけ怒っているということなのだがダビデはなぜそこまで怒るのかわからないようだ。
そんな様子を見てますます苛立ちを募らせたのかソロモンはさらに捲し立てるように言った。
「まったく、危機感が足りないんじゃないか?ああいう輩はすぐにつけあがるんだから気をつけないとダメだろう」
(何もそこまで言わなくても…やれやれ、ここは謝っといてやるか)
言い返すと面倒なことになりそうなのでここは自分が折れてあげることにするダビデ。
「確かにそうだな……軽率だったかもしれない……反省するよ……」
しゅんとする彼女(演技だが)にソロモンは胸が痛くなるのを感じ、優しく頭を撫でてやりながら言い聞かせるように囁いた。
「そんな顔しないでおくれ……君が悪いわけじゃないんだ……ごめんね、ついカッとなってしまったみたいだ……」
そう言って抱きしめてやると安心したように身を預けてきたためほっと胸を撫で下ろすことができたのだった。
「ねえ、君が描いた絵を見てみたいんだけどいいかな?」
落ち着いたところでソロモンが提案してきたのでダビデは小さく頷くと言った。
「ああ、構わないよ。だけど完成させてからでいいかな」
それを聞いてソロモンの表情が明るくなったのがわかるほど嬉しそうな様子を見せたので微笑ましく思うダビデであった。