魔術王ソロモンと羊飼いの僕が魂を融合したら、チートすぎるマスターになってしまった件〜最強の力を共有した僕の聖杯戦争〜 作:bpro
「サブナック、君は守護を固めてくれないか?フルフルはソロモンと共に攻めてくれ!」
予めダビデはソロモンに協力してもらいながら作戦を立てていた。そこでダビデは考えた末にこの編成を思いついたのである。
サブナックはあらゆる戦闘サポートを得意とする悪魔である。高い塔を築き武装させると言われるほど防御に優れており、敵からの攻撃を軽減できるという能力を持つ。そのため前線に置いて敵の遠距離攻撃を防ぐ壁の役目を担ってもらうことにしたのである。
本来の力を出せないのに加え、ソロモン1人だけで防御と攻撃を担うのは厳しいと思われたためである。
そしてフルフルは雷を操る力を持つ上級悪魔だ。ポリアフは氷や吹雪を使った攻撃を得意とするようであり、炎に対する耐性はあるかもしれないが電気に関してはわからないからである。もしかすると弱点なのかもしれないと考えたダビデはポリアフの攻撃を制限するために雷を落とす役目を託したのだ。これは相手の攻撃力を抑えると同時にこちらの戦力アップにもなるはずであった。
「フォルカスは戦術分析を頼むよ。もし相手が強化されたり変化があったりしたら随時報告してほしいんだ」
そう言うとフォルカスは優しげに微笑みながら答えた。
「了解したとも。私はあくまで戦略を立てるのみに徹するとしよう」
そうしてそれぞれの役割を確認し終えるとダビデは言った。
「さぁ、勝負を仕掛けようか」
それに対して全員が頷き答えるのだった。
「くっ!まさかこんな強力な魔物達がいたなんて・・・」
予想外の出来事だったのか女魔術師の顔は焦りの色が浮かぶ。だがその顔はまだ諦めてはいないことを物語っていた。
(雪の女王……その真の力を見せてあげるわ!!)
サブナックが防御役に徹したことで余裕が出来たソロモンは、相変わらず無表情で攻撃しようとする女神ポリアフの注意を引くべく行動を開始した。
彼女は自らの意思とは無関係に暴走しているようだった。魔術師の女が無理矢理封印を解いたことでまだ自我を取り戻していないのかもしれないと思い至ったソロモンはまず彼女の暴走を止めなければならないと考えるに至った。だが相手は神である。
圧倒的な力を、自我を失った状態で発揮することができる存在なのだ。普通の人間では相手にならないほどの強大な存在であることは間違いなかった。まるで殺戮マシーンのように攻撃を止めないのであれば、動きを止めなくてはならない。できれば傷つけたくはないがーー
そもそも今の彼女には理性というものが欠如しているようだ。本能のみで動いていると言っていいほどだった。そんな彼女を相手にするのはかなり厄介であったが、やるしかないだろうと思っていた。
ソロモンはゆっくりと魔力を練り上げ始めた。それに合わせて大気中の水分が集まり出し小さな水球が生まれる。そしてその大きさは次第に大きくなっていくにつれ次第にバチバチと音を立てて放電し始めた。やがてソフトボールほどの大きさになったところで圧縮され密度を増した電撃の塊ができあがった。それを高速で射出したのである。
ズドオオオンッ!!! 凄まじい轟音が鳴り響き土煙が舞い上がる。
「フルフル、追撃を!!」
それを聞いた瞬間、すぐさま反応したフルフルはさらなる追い討ちをかけるべく続いて雷撃を見舞う。それにより視界は完全に遮られたが次の瞬間ーーーー閃光が走ったかと思うと耳をつんざく雷鳴が轟き膨大なエネルギー波が解き放たれた。それと同時に莫大な熱量によって一瞬にして大地は融解していく。水蒸気爆発を引き起こし辺り一帯を吹き飛ばした。
だがその時だった。
突如として、空気の密度が変わった。
それは熱気とも冷気とも違う、異質な『神気』だった。
「……なに?」
ダビデが息を呑む。そしてソロモンの眉がわずかに動く。
土煙の向こう――崩れた氷の残骸の奥に、かすかに淡く輝く何かが現れる。
それはまるで、砕けた仮面の奥から『本当の顔』が覗いたような――
「おかしい……攻撃が、効いてない……?」
ソロモンが低く呟いた。
その直後、目の前で“氷の波動”が炸裂した。
ズアアアアアアッ!!!
「――っ!」
轟音とともに、サブナックの築いた魔塔が一撃で粉砕される。
「サブナック!!」
ダビデが叫ぶ。
「……すまない。少し……油断したか……」
サブナックは氷の棘に貫かれ、倒れ込むように姿を消した。契約の糸は切れていないが、戦線からの離脱は避けられない。
「こんな……!」
ダビデが歯を食いしばる。
「ふふ……見なさい。これがポリアフの“真の姿”よ……!」
女魔術師の顔には高揚と恐怖が混ざっていた。
「私は、神の力を引き出したのよ……ふふ、でもこれは……ちょっと、予想外だったけどね……!」
その瞬間――
「う……っ!」
ダビデの視界が歪む。
胸の奥に、冷たいものが流れ込んできた。いや、違う。これは“誰かの記憶”だ。
――雪に閉ざされた山。
――人間に差し伸べた手を、拒絶される光景。
――信じていた巫女や神官が、自分を裏切る。
――私は、もう、誰も信じない。
「……これは、ポリアフ……君の……」
視界の端に、ソロモンがダビデを支えるように手を伸ばすのが見えた。
「魂が……共鳴している?」
彼の声も少し震えていた。
「違う。この神は、ただ暴れてるんじゃない……怒ってるんだ……」
冷気の中心で、今まで無表情だったポリアフの瞳に、初めて微かな色が灯る。
それは――憎しみ、悲しみ、そして絶望の青だった。