魔術王ソロモンと羊飼いの僕が魂を融合したら、チートすぎるマスターになってしまった件〜最強の力を共有した僕の聖杯戦争〜 作:bpro
――冷たい。
ダビデの胸に突き刺さるような感覚が走った。
ただの冷気ではない。もっと深く、心の奥底に染み渡るような、孤独と怒りを孕んだ氷だった。
そのとき、土煙の向こうで音もなく氷が砕けた。
「……っ!」
一歩、また一歩と現れるその姿は、まるで女神ではなかった。あれは――氷の怒りそのものだった。
ポリアフの瞳に、色が灯る。今までの虚無とは違う、明確な“意志”の光。
その眼差しは、まっすぐにダビデたちを見据えていた。
「――これは、まずい」
ソロモンが静かに呟いた。まるで未来を見通したような、そんな声だった。
次の瞬間、ポリアフが右手を振る。
そこから放たれたのは、ただの氷結魔法ではない。凍てつく神気の奔流。
「フルフル、回避して!!」
だが、間に合わなかった。雷を纏った悪魔の身体が氷の柱に貫かれ、霧散していく。契約の糸はまだ切れていない。だが、一時戦線離脱は避けられない――。
「こんな……たった一撃で!」
ダビデは口を押さえた。
ソロモンですら、表情を強張らせている。
ポリアフは、もう“暴走”ではなかった。意識を取り戻した上での破壊。それは、より恐ろしく、より深く、何よりも――哀しい。
「……これは、憎しみじゃない」
ダビデは言葉にして、気付いた。この女神は、ただの怒りではない感情を抱えている。
(でも、どうして?)
戦う意味を見失いそうになりかけたそのとき――ふと、あの神の言葉が脳裏をよぎった。
『人間共よ、戦いだけで解決できると思うな』
戦の神クーの言葉。
(なんだったんだ、あの言葉……)
胸の奥がざわついた。
ソロモンが、横目でダビデを見る。その目には、ほんのわずかに『同じ違和感』が宿っていた。
彼もまた、クーの謎の真意に気付きかけているのかもしれない。だがその思考を遮るように、ポリアフが静かに右手を掲げる。
空が凍る。
雲が青白く輝き、氷の槍となって降り注ぐ準備を始めていた。
これは、次で終わらせるつもりだ。
――神が人間を“排除”するための一撃。
「まだ、何かあるはずだ」
ダビデは呟いた。
このままじゃいけない。
例え勝っても、何かが“間違っている”。
ダビデの手が、震えた。そして小さく、祈るように胸元に当てられた。
「――僕たちは何をすべきなんだ?」
静かに、問いかける声。
その声に、応えるように――どこからか、かすかな言葉が脳裏を過ぎった。
わたしが間違っていた。
ごめんなさい。
許してください。
愛しています。
(……これは……?)
その瞬間、ダビデの目に閃光が走る。
何かに気付きかけた――けれど、まだ“言葉”にはならない。
氷槍が降り注ぐ刹那、ダビデは思わず心の中で叫ぶ。
《まだ終わらせちゃダメだ、ソロモン!!》