魔術王ソロモンと羊飼いの僕が魂を融合したら、チートすぎるマスターになってしまった件〜最強の力を共有した僕の聖杯戦争〜   作:bpro

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51話 戦いでは届かないもの

――冷たい。

 

ダビデの胸に突き刺さるような感覚が走った。

ただの冷気ではない。もっと深く、心の奥底に染み渡るような、孤独と怒りを孕んだ氷だった。

 

そのとき、土煙の向こうで音もなく氷が砕けた。

 

「……っ!」

 

一歩、また一歩と現れるその姿は、まるで女神ではなかった。あれは――氷の怒りそのものだった。

 

ポリアフの瞳に、色が灯る。今までの虚無とは違う、明確な“意志”の光。

その眼差しは、まっすぐにダビデたちを見据えていた。

 

 

「――これは、まずい」

 

ソロモンが静かに呟いた。まるで未来を見通したような、そんな声だった。

 

次の瞬間、ポリアフが右手を振る。

そこから放たれたのは、ただの氷結魔法ではない。凍てつく神気の奔流。

 

「フルフル、回避して!!」

 

だが、間に合わなかった。雷を纏った悪魔の身体が氷の柱に貫かれ、霧散していく。契約の糸はまだ切れていない。だが、一時戦線離脱は避けられない――。

 

 

「こんな……たった一撃で!」

 

ダビデは口を押さえた。

ソロモンですら、表情を強張らせている。

ポリアフは、もう“暴走”ではなかった。意識を取り戻した上での破壊。それは、より恐ろしく、より深く、何よりも――哀しい。

 

「……これは、憎しみじゃない」

 

ダビデは言葉にして、気付いた。この女神は、ただの怒りではない感情を抱えている。

 

 

(でも、どうして?)

 

戦う意味を見失いそうになりかけたそのとき――ふと、あの神の言葉が脳裏をよぎった。

 

 

 

『人間共よ、戦いだけで解決できると思うな』

 

 

 

戦の神クーの言葉。

 

(なんだったんだ、あの言葉……)

 

胸の奥がざわついた。

ソロモンが、横目でダビデを見る。その目には、ほんのわずかに『同じ違和感』が宿っていた。

彼もまた、クーの謎の真意に気付きかけているのかもしれない。だがその思考を遮るように、ポリアフが静かに右手を掲げる。

 

空が凍る。

雲が青白く輝き、氷の槍となって降り注ぐ準備を始めていた。

 

これは、次で終わらせるつもりだ。

――神が人間を“排除”するための一撃。

 

 

「まだ、何かあるはずだ」

 

ダビデは呟いた。

このままじゃいけない。

例え勝っても、何かが“間違っている”。

 

ダビデの手が、震えた。そして小さく、祈るように胸元に当てられた。

 

 

「――僕たちは何をすべきなんだ?」

 

静かに、問いかける声。

その声に、応えるように――どこからか、かすかな言葉が脳裏を過ぎった。

 

 

 

わたしが間違っていた。

ごめんなさい。

許してください。

愛しています。

 

 

 

 

(……これは……?)

 

その瞬間、ダビデの目に閃光が走る。

何かに気付きかけた――けれど、まだ“言葉”にはならない。

 

氷槍が降り注ぐ刹那、ダビデは思わず心の中で叫ぶ。

 

《まだ終わらせちゃダメだ、ソロモン!!》

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