魔術王ソロモンと羊飼いの僕が魂を融合したら、チートすぎるマスターになってしまった件〜最強の力を共有した僕の聖杯戦争〜   作:bpro

56 / 56
火山の女神ペレのキャラデザはオリジナルです。
ペレはハワイ神話において、ポリアフとライバル関係としても有名です。


53話 火山の女神ペレ登場 

「ごめんなさい……」

 

静かに、けれど確かな声で、ダビデがそう言った。

 

凍てつく空気の中で、その言葉はまるで温かな息のようだった。

 

 

「許してください……」

 

胸に手を当て、まるで自分に言い聞かせるように、ゆっくりと、言葉を紡いでいく。

 

 

「あなたを愛しています……ありがとう。ポリアフ」

 

ポリアフの頭上に浮かぶ氷の槍がわずかに揺れた。

空に広がる結晶の陣が、風もないのに震える。

 

 

その様子を見て、ソロモンも気づいた。

これは、単なる“祈り”ではない。

 

 

 

「……これは、ハワイに伝わる教えか」

 

彼は小さく呟きながら、ダビデに歩み寄る。

2人の魂が、共鳴するように――

 

 

「過去の過ちに、向き合い、悔い、許し、愛を示す。それが、この地に伝わる智慧……」

 

ソロモンの声が、空間に響く。

 

 

「私も許してほしい。力で止めようとしたことを。貴女の気持ちを知ろうともせず……済まない」

 

ポリアフは反応しない。

ただ、彼女の瞳に浮かぶ青の輝きが、ほんのわずかに揺れた気がした。

 

 

 

――そして。

 

「やめて……お願いだから、もうやめてっ!!」

 

鋭い声が響いた。それは――魔術師の女だった。

ダビデとソロモンの背後で、彼女は震えるように立ち尽くしていた。

 

 

「私は……私は、勝ちたかっただけ……!力が欲しかった……他人より強くなりたかった……でも、そのために……こんな風に、誰かを……!」

 

彼女の頬に、熱いものが一筋、流れた。

 

「……私は……間違ってた……。ポリアフ……ごめんなさい。私はあなたを“神”としてではなく、“道具”として見てた……」

 

その言葉に、空が静かにざわめいた。

 

 

雪が止まる。

氷の刃が、ゆっくりと空中で砕け散っていく。

 

ポリアフはゆっくりと空を見上げ、やがて……その目を閉じた。

何かを受け止めるように。

何かを終わらせるように。

 

そして――氷の女神の周囲に、再び結界が生まれ始めた。

 

 

「これは……封印?」

 

ソロモンが小さく呟く。

 

「でも、これは…自ら?」

 

ダビデは、胸が締めつけられるのを感じた。

 

ようやく自我を取り戻したばかりの彼女が、再び眠ろうとしている――

世界に害を与えないために。

再び、自分が愛する人間達をを傷つけないために。

 

 

「待って。君は、もう一度やり直せる……!」

 

そう叫ぼうとしたその時――

 

 

「……彼女は、それを選んだ。今は、そうすべき時なのよ」

「誰だ!?」

 

 

炎のように熱を帯びた、しかしどこか母性的な声が風に乗って届いた。

空に、紅い花びらのような火の粉が舞う。

 

「この地の均衡を保つために、彼女はまた静かに眠るの。だけど、あなたたちが示した“赦し”の言葉は、確かに届いたはずよ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

気が付くと、赤く長い髪を華麗に靡かせビキニと長いスカートを身に付けた女が立っていた。

この女もハワイの女神ーーー?明らかに人間とは違う神気を纏う女に、ダビデとソロモンはそれが神であるとすぐに勘づいたようだった。

 

 

「貴女は、この地の神ですか?」

「ええ。私の名はペレ。火山の女神と呼ばれているわ」

 

火山の女神――ペレ。

 

「彼女は、心に炎を宿した。次に目覚める時は、その炎が氷を溶かしていることでしょう。その時、また出会えばいい。互いに、変わった姿で」

 

どこか切なげな様子でペレは厳かにそう告げる。

 

 

(さようなら・・・私の好敵手ポリアフーーー貴女が眠りから覚めたら、また戦いましょう)

 

 

 

ペレがそんな風にポリアフに語り掛けていたことを、2人は与り知らずにいた。

 

そしてーーーー火の粉が消えると同時に、ポリアフの姿も光に包まれていった。

 

再びの封印。

でもそれは、かつてのような“絶望による自己犠牲”ではなかった。

 

それは――未来への希望を託す、選択だった。

 

 

 

「……ポリアフ」

 

ダビデの目に、僅かに涙が光った。

 

「ありがとう。神として人間を守ろうとした君を、人間として誇りに思うよ」

 

結界が完全に閉じると同時に、空が晴れ渡っていく。

雪が止み、太陽が差し込み、ハワイに再び静かな風が吹いた。

 

 

 

ダビデとソロモンはゆっくりと立ち上がる。すると彼らの元へ、どこからともなく戦の神クーが歩み寄ってきた。

 

「よくぞ……見事だった。我が問いの答えを、力ではなく心で示したな。お前たちは、この地に相応しい」

 

そう言って、クーは神々しい笑みを浮かべる。

 

 

 

「貴方が出した課題・・・ハワイの地に伝承される『ある教え』を我々が示すこと。それは『ホ・オポノポノ』のことですね」

 

ソロモンの問いに頷くクー。

 

 

 

ーーーホ・オポノポノ。

それはハワイで伝承されている叡智であり、告白による和解と許しの習慣である。

 

『ごめんなさい。ありがとう。許してください。愛しています』という4つの言葉を使うことでも有名だ。

戦いで解決するのではなく、許し合うことが真の解決となる。

 

 

 

「お前たちのような者が、聖杯戦争に参加していること……我らもまた希望に思う」

 

ダビデとソロモンは互いに目を見合わせ、うなずいた。

 

こうして、ハワイの異変は収束した。

 

彼らは新たな信頼と、成長という“力”を得て――

次なる戦いへと歩みを進める。




「ホ・オポノポノ」は古代から伝わる教えというわけではないですが、個人的に好きなので使わせてもらいました。
相手を変えようとしないという考え方は共感できます。
近年ではニューエイジでかなり流行っていたので聞いたことがある方ももしかしたらいらっしゃるかもしれません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。