「なるほどな……並行世界のワシが死んで生き返らせようと足掻くが、お前の持つ神秘とやらでは不可能なので、他の方法を求めて並行世界に渡って来たと。そして、穢土転生でワシから情報を吐かせた結果、外道・輪廻天生の術に辿り着いたのか」
ここは現在。
青空教室で、連邦生徒会長と扉間がカステラを挟んで座る、机。
そして、残りの999人の扉間が授業参観のように娘を取り囲んでいる状況。
「はい、主犯は私です。A.R.O.N.Aちゃんは、
「お前はワシに嫌われてもいいのか? 随分と、並行世界のワシに執着しているようだが」
「本当に怖いのは無関心です。好きも嫌いも、相手への興味であることに変わりはありません。それに、全ての感情の向かう先を独り占めできるのなら、それはそれで……」
「……ふぅー」
ポッと頬を赤らめて、ワザとらしく両手で顔を隠す連邦生徒会長に扉間は、下を向く。
先にあの世に行った並行世界のワシ。
何をしてくれてるんだ?
「言いたいことは山のようにあるが……建設的な話をするとしよう」
「先生の目的は私を止めること。ですが、ここまで壊れた私を止められますかね? 私は諦めだけは悪い女になりましたから」
たとえ、この世界で敗北したとしても、それは連邦生徒会長にとっての敗北ではない。
また、別の並行世界に逃げて、ドリトライしてしまえばいい。
何せ、彼女を殺すことはほぼ不可能。
チャンスならば、いくらでも見つけ出せる。
「惰性か? あまり効率の良い行為ではないな」
「惰性かどうかは、私が決めることにします」
「はぁ……まあいい。ワシも簡単な話し合いで済むとは思っておらん。だが、話し合いをするには、まずは知らねばならんことがある」
カチャリと皿の上にフォークを置き、まっすぐに連邦生徒会長の空色の瞳を見つめる扉間。
話し合いをするための前提条件。
まずは、それを整える必要がある。
「お前の名前は何だ? いつまでも、連邦生徒会長呼びでは舌を噛む」
「……何だと思います? 当てられたら、私をプレゼントしちゃいますよ?」
名前。
相手の名前も知らずに、会議が行われることはない。
見ず知らずの相手であっても、まずは自己紹介から始めるのが人というものだ。
「………もしや、自分でも忘れたのか?」
「? どうして、そんなことを思うんですか? 普通は、自分の名前ぐらい分かるでしょう」
「いや、お前の名前は不自然過ぎる。まるで、上位存在から塗り潰されたかのように、誰も認識していない。つまり、誰も呼んでやっておらんということ。そちらの、A.R.O.N.Aとの会話でも名は出ておらんからな」
かつては、生徒としての名前があった。
■■■と、扉間やウトナから呼ばれていた。
だが、一度
自殺をした際に、人間としての、生徒としての彼女は消えた。
それ以降、誰も連邦生徒会長の名は呼べていない。
「誰にも呼ばれん名前など、いつの間にか忘れさられていくものだ。特に肩書が大きい者程な」
火影、六道仙人。
肩書は、人の名前を奪っていく。
学校で校長と呼んでいても、フルネームは知らないなどザラにある。
「名とは、他者が呼ぶためにある。自分で自分の名前を言う時は限られておるからな」
「……だったら、どうするんですか? 答えのない問題をどうやって解くのですか? 私ですら忘れた名前なら、先生に分かるはずもない」
世界から消された名前。
畏れ多いが故に、呼ぶことを禁じられた名前。
そのせいで、自分達が崇め奉るものが何であるかさえ、人は忘れてしまった。
「私の名前を知る術はないですよ。だって、分からないことこそが
人間は欠損に美を見だす、唯一の生き物だ。
ミロのヴィーナスという腕の欠けた彫像を人間は美しいと言う。
だが、仮にAIが審美すれば“欠陥品”という評価しか下せないだろう。
「分からないからこそ、あまねく人々がその名に神聖を感じた。解き明かそうと、やっきになった。明かしてはならないと、盲目的に信仰する者がいた。空白であるが故に無限。1と0の間に、ありとあらゆる数を当てはめることが出来る」
信仰心とは失うことに他ならない。
血を捧げよと、我が子を捧げよと、最も大事なものを捧げて初めて、神と出会えるのだと。
世界中のあらゆる宗教、否、人間はそう考えて来た。
「誰も知らないということは、生まれたばかりの赤ん坊ですら、知っているのと同じこと。わたしの名前は、誰もが口にしてはならない。畏れ多いと崇めたが故に名が無くなったのなら……誰も口にしないということが、誰もがわたしを崇めているという証明に他ならない」
欠損こそが神だ。
人は喪失の痛みと苦しみを紛らわすために、それを神への捧げものと思い込んだ。
7つまでに我が子が死んだのならば、それは神の子だったのだと自分を納得させた。
「さあ、どうしますか、先生? 存在しないことが答えである、私の名前をどうやって当てますか?」
存在しないからこそ、神足りえる。
存在すれば、それは神となりえない。
故に、生徒となった神々は神ではなくなっているのだ。
具体的な体、人格。
そういったものは、信仰にとっての
「名前がないか……ならば──」
だから、扉間は。
「──父として、ワシ自身が娘に名をつけるだけだ」
強制的に名をつけることにする。
「私に名前を…? え? あだ名とかじゃないんですよ……そんな簡単にいくわけが」
「何を言う。名前は、古来より家長である者がつけると相場が決まっておる……まあ、現代にはそぐわんが、それでも父親にはその権利があることに疑いは無かろう」
聖書によると、この世の全ての動物に名をつけたのはアダムと記されている。
だが、ただ1人、アダムだけは別だ。
「ワシはお前の父親だ。我が子に名をつけるのは当然のことだ」
アダムとは
「そっか…!
「何のことかは知らんが、よく聞いておけ………初めて故、自信は余りないがな」
父親が子に名前を付けるという行為は、
何せ、
神の子の名も、人の父ではなく天の父がつけたもの。
「でも、そんなもの私が否定さえすれば──」
しかし、彼女は赤ん坊ではない。
自由意思を持った1人の存在。
気に入らなければ、名前を拒絶できると啖呵を切り──
「まず、当然だが、ワシの娘である以上は、苗字は千手になる」
「──詳しく聞きましょうか」
──一瞬で手の平を返す。
恐ろしく速い回転。俺でないと見逃しちゃうね。
「実際のお前の苗字には、触れられんからな。家の名前は重要だ。あくまでも暫定故、安心するがいい」
「
同じ苗字、すなわち家族の在り方に釣られてしまう、連邦生徒会長。
キヴォトスの警察のトップも釣られてしまう、巧妙な罠である。
「まあ、苗字はどうでもいい。悩むところではない……問題は名の方だ。ワシの父上は全員に“間”をつけておったが……女子につけるには、ちと硬い印象があってな。母上の名も今の子の参考にするには古い」
仏間、柱間、扉間、板間、瓦間。
柱間は一族の大黒柱になって欲しい的なニュアンスを感じるが、次男からは割と適当な名づけになってきているのは、多産多死の時代ゆえだろうか。
「漢字で名付けられるのなら、縁起の良い画数である程度絞れたのだが……キヴォトスの名前はカタカナだからな。参考文献を買おうにも、緊急事態故に時間もない……ここに来るまでに、アビドス勢に名前の由来を聞けば、シロコの名前しか覚えていない発言で空気が重くなるわ……そもそも、子供の名前をほんの数時間で決めるなど無理があるわ! 一生ものなのだぞ、名前は? 生まれる直前まで考え続ける父親も珍しくないというのに……変に凝った名前にすると、書くときに面倒にもなる。発音のしづらい音にすれば、自己紹介で笑われたりするやもしれん。音は普通でも漢字が難解では、一生のうちに何度も読みを説明するのが面倒だったり……そこは、キヴォトスが漢字でなくてよかったところだが……とにかく、一般的な名前かつ、親の願いを込めるとなると………ええい! 忍術ならば、シンプルに名づけるだけだと言うのに!! 新しすぎても、古臭すぎてもダメなちょうどよい塩梅が分からん!! ワシは異世界の爺だぞ!?」
「し、真剣に考えてくださって、ありがとうございます……」
こ、こんな先生、今まで見たこと……。
初めての名づけに、四苦八苦する扉間の姿に連邦生徒会長は苦笑する。
因みに、残りの
しょうがないね? 0は何をかけても0なのだから。
経験が0では数が増えても意味がない。
「ふぅー……と、まあ、さんざん悩んで、今もこれでよいのかと悩んでおるが……シンプルな願いを形にすることにした」
「シンプル……」
そう、親から子へ望むことなど難しい事ではない。
短く済む。
「ワシの願いは……親から子への願いは単純なものだ。幸せになって欲しい。元気に生きて欲しい。なるべく苦しまないで欲しい。優秀であって欲しい。優秀でなくとも、心が清らかであって欲しい。かといって、人に騙されて欲しくはない。聡明であって欲しい。食うに困らぬ程度には稼いで欲しい。愛されて欲しい。愛して欲しい。独り立ちして欲しい。かといって、すぐに独り立ちされるのは、それはそれで寂しい。世界で活躍して欲しい。活躍せずとも逞しく生きていればそれでよい……など」
「全然シンプルじゃないですね」
訳がないだろ!
父親だからこの程度で済んでいるが、母親のクシナの願いとかもっと長いぞ!
いや! 本当に言いたいことからすれば、短すぎるぐらいだったが!
「当たり前だ。言葉を短く済ませる親も内心では、ワシと同様に様々な想いを抱えておる。親から子へ注ぐ愛とは、そういうものなのだ……そうでなければならん」
言いたいことは、口うるさい母親も、口数の少ない父親も同じぐらいある。
ただ、表に出るか出ないかの差でしかない。
それは言ってしまえば──
「そうして……これらは全て、親から子への想い──
──祈りだ。
「…ッ!」
「神社で手を合わせている親が何を祈っているか……それは大抵が、愛する家族のことだ」
神と人の原初の交流。
それが祈り。
「配偶者の健康。子供の成長。兄弟姉妹の成功……口に出すこともあれば、黙したままのこともある。手と手を合わせて、愛する者のために神へと祈りを捧げるのは、いかなる世界でも共通の行いだろう」
人は祈りを通して、神と対話を行う。
神は祈りを通して、人を知る。
手と手を合わせて、心の全てを明かす。
それはまるで、和解の印を結ぶかのように。
「故に、この言葉には、名前には、ワシの願いの全てが込められておるのだ」
扉間がまっすぐに娘を見つめる。
赤い瞳と、空色の瞳が交差する。
「しかと聞け。お前の名は……ワシの娘の名前は──」
青い空の下。
名前を失った少女は、再び父より名を授かる。
「──イノリ。千手イノリだ」
「………正解です。先生」
名を覆い隠していた靄に、光が差す。
ロンギヌスの盲目の目が光を得たように、世界が照らされる。
■■■■に一文字加えることで、千手イノリという1人の少女が生まれた。
「今……思い出せました。私の名前はイノリ……
鵠とは
古くより、その白さから、純粋な神聖の象徴として様々な国で信仰されてきた鳥。
神の意志を
そして、D.Uの
「なるほど、
「──いえ、千手イノリです」
「う、うむ……」
全部あげますをした女性とは思えない強欲さで、苗字を死守する、イノリ。
え? 相手の家に嫁に入るということは、全部あげるという意味で間違いない?
「とにかくだ……イノリ。お前はワシの娘だ」
「もし……もしもですよ? 私の世界の先生に、私が想いを告げていたら……どんな答えになったと思いますか?」
本人ではないので分からない。
だが、同一人物である以上は、限りなく正解に近い答えが出てくるはず。
そんな目で、イノリは扉間を見つめる。
「そちらのワシとお前の関係性は分からん……だが、ワシが未婚の理由は分かる」
それに対して、扉間も真剣な表情で答える。
「若い頃は、兄者と共にいつ死んでもおかしくはなかったが故、ワシの子と兄者の子で後継者争いが起こるのを防ぎたかった。片方しか居ないのならば、争いようがないからな」
本人達は仲が良くとも、周りが勝手に神輿に担ぎ上げる。
だから、下手に子供は作れなかった。
「里を作った直後は、千手一族の血を広めすぎると、里の上層部が千手一族で独占されかねなかった。そして、千手、うちは、うずまき一族というバランスが取れている状態で、他の一族に突出した権力を持たせるのも不味かった。あの状況下では、ワシの嫁……すなわち千手と縁を結ぶことが絶大な意味を持ってしまうからな」
里の成立直後は、どの一族も木の葉での地位を確立しようと水面下で牽制し合っていた。
そんな所へ、柱間の弟であり二代目火影が確実な扉間に、一族の娘を送り込めたらと考えた者は多い。
だからこそ、扉間は見合い話の全てを断った。
下手に受けると、里のパワーバランスが崩壊しかねなかったのだ。
「むしろ、千手一族から里の多くの一族に嫁を出すことで、里の結束を強固なものにしつつ、千手の力を削いでいったぐらいだが……後の世を見るに、千手は完全に木ノ葉に溶け込んでおったようで何よりだ」
そして、逆転の発想。
千手と関係を結ぶことで、優遇して貰おうというのなら、先にほぼ全ての一族と関係を結んでしまえばいい。
この作戦のせいか、千手の名を持っている有名どころは綱手ぐらいだ。
後は皆、他の一族と結婚して、完全に一族の垣根を超えて、里になっている。
「でも……今はそんな面倒な状況はない……違いますか?」
「そうだな。状況的には結婚をしても問題はない……だが」
しかし、全ては異世界での話。
今の扉間にはしがらみはない。
とは言っても、別の問題がある。
「既にワシは爺だ。嫁を取っても責任を取ってやることも、守り抜いてやることも出来ん。特に……自分より年下の嫁など、もっての外だ」
「…………」
そう、寿命の問題だ。
自分の方が先に死ぬのに、嫁を取る程、扉間は無責任ではない。
「そちらのワシが、お前を異性として見ていた可能性までは否定せん。だが……若者の未来を縛る行為をワシがやりたいはずもない」
「……はい、そうですね。大人のカードを使うのも渋る先生ですから」
子供達の可能性を縛るから、大人のカードは極力使わないようにしている。
そんな扉間が、あと数年で介護などに追われる未来を、子供達に押し付けたいだろうか?
否。そうならないように、自分で命を絶つぐらいはする。
「故に千手扉間は──お前の恋を受け入れることはない」
「………ええ、知っていましたよ」
分かっていた。
自分の想いは、決して受け入れられることがないことぐらい。
「先生は私のことを……愛してくれていますから」
相手が自分のことを本当の娘のように、深く愛してくれているからこそ。
この恋は実らない。
「初恋は実らないって本当なんですね……」
「イノリ……」
失恋。
今までは、ハッキリと口に出されることなくすんでいたが、もう眼は逸らせない。
「私のミスでしたね……この世界の私のように、子供であることに満足をしていれば……こうはならなかったのでしょうか」
「何を言う。お前は確かに前に進んだ。その道の進み方が正しかったとは言えんが……少なくとも、前に進もうとしたことだけは間違いではない」
「結果の伴わない選択に意味はあるのでしょうか…?」
アロナの方が正しい選択をした。
そう告げるイノリに対して、扉間は違うと告げる。
やり直しを続けるだけの人間が、挑戦をした人間を笑うことは酷く滑稽だと。
「お前は物事を焦り過ぎる。結果など、そう簡単に出ないのが普通だ。お前はワシの人生も意味はなかったと言うつもりか?」
「そんなことは…!」
扉間の人生も結果が出なかった人生だ。
「オレと兄者の願いは、弟達が…子供達が死なぬ平和な世界を創ることだった。だが、現実としてオレは、兄者と違って弟を1人として守れていない。そして、里を作ってからも子供を犠牲にしてしまった。平和な世界のためと思って結ぼうとした雲隠れとの同盟も、後一歩の所で邪魔をされ、そのまま死んでしまった。そして、死後数十年が経っても戦争は無くなっておらず、挙句の果てには、
失うばかりの人生だった。
完璧な合理主義者と言われることもあるが、その実完璧に出来たことなどほとんどない。
柱間の掲げた理想は何一つとして成し遂げられていないと、マダラも指摘する通りだ。
「お前に会ったワシもだ。お前が有能だからと、他の生徒の育成を疎かにした。そして、しっかりとした引継ぎが出来ずに、お前をこのような姿へと変えてしまった……ワシの選択は失敗だったのは間違いない」
「違いますッ!! 先生は何も間違えてなんていません!! 悪いのは、1人で調子に乗った私です…ッ。先生の後を引き継げなかったのも、私が弱かったから……先生は失敗なんてしていないんです…!」
「
「──ッ」
イノリの言葉を、そっくりそのまま返す、扉間。
結果が伴わないことが、意味のないことならば、自分の人生もまた無意味のはずだと。
「ワシの答えは──
「私が……答え…?」
人生に意味があったのか。
それを示す答えは、目の前の子供だと扉間はゆっくりと指を差す。
「ワシにとっては意味がないと断じることの出来る人生であっても、お前がそれは違うと言ってくれた。間違っていなかったと証言をしてくれた。ならば、確かにワシの人生に意味はあったのだ」
客観的に見れば間違いであっても。
大多数からすれば意味のない行いでも。
たった1人でも認めてくれるのならば、それは決して──
「お前が──オレの生きた証だ」
──間違いじゃないんだから。
「私が先生の生きた証…?」
「そうだ。たとえ、道を間違えようとも、罪を犯そうとも、綺麗でなくとも。お前はワシが存在した証であることに違いはない。故に、ワシの人生には意味があるのだ」
悪人であっても構わない。
残した者達の結果が、滅びであったとしても。
一瞬でも長く生きてくれたのならば、その人生は無意味ではないのだ。
「イノリ。これは全並行世界のワシの言葉だと思って聞け」
誰かに評価してもらう必要なんてない。
世界がそれを無駄と切り捨てても構わない。
「お前がこれからどうなろうとも……ワシはお前を、ずっと愛しておる」
「先…生…ッ」
愛とは、祈りとは、元来そういったものなのだから。
「そんなこと…そんなことを言われたら……もっと…好きになっちゃうじゃないですか…?」
「お前の報われぬ恋も、無価値ではない。それが無ければ、この言葉をワシから引き出すことは出来んかっただろうからな」
「ずるいですよ……失恋しなきゃ…愛してるって言ってもらえないなんて……」
ポツリと涙が零れる。
ずっと流すことの出来ていなかった涙だ。
親の死を、失恋を、初めて受け入れたが故に流された涙である。
「大人としての、責任と義務とは……良くも悪くもケジメをつけるという選択をすることだ。終わりを決めてやることで、初めて前に進もうとする
終わりを迎えること。
子供の時とは違い、世界が無限に広がっているわけではないと理解すること。
そうして、幼年期から卒業することこそが、大人になるということだ。
「諦めないということはワシも賛同するがな。何でもかんでも諦めないというのは違うぞ。人生の時間は有限だ。気づけば、あっという間に過ぎ去って行くものだ」
おみくじで大吉を引くまで、諦めないようなもの。
大吉を引くという目的は達成できても、今年の運勢を占うという結果は変わらない。
何度も引き直している時点で、運が良い訳などないのだから。
そういったものは、悪運を受け入れて、今年の運勢に負けないという方向性で諦めないべきだ。
努力の方向性を考えろという話である。
聞いてるか? 正月アルちゃん。
「でも先生…だったら…私は…これから……どうすればいいんでしょうか? たとえ、恋が受け入れられなくとも……私の先生に会いたいという心は変わりません」
「月並みな言葉だが……お前の心の中にいるワシに聞いてみろ。相手が死んでも、あの世で再会することが出来ずとも、お前の中での綺麗な記憶だけは消えんはずだ。ウトナと昔話でもしてみろ。ちょうどあっちで、ユメにワシのことを教えているようだからな」
故人の思い出話をして、一緒に泣いて、共に笑って心の整理をつける。
通夜や葬式とはそのためにある。
あっちの扉間が、葬式とか一回で十分とか言ってしまったせいで、心の区切りが出来なかったのだ。
「綺麗な記憶………綺麗…?」
碌な思い出がねぇ……。
暴力、悪知恵、権力のトライフォースでは、感動できる勇気がない。
主人公属性がないお話など、卑劣なお話にしかならない。
「お前は本当にワシのことが好きなのか…? やはり、想い人というより家族ではないか」
「ち、違います! ちゃんと、先生の感動的なお話とかは覚えています……ただ、すこーし作戦が卑劣だっただけで……私も面倒ごとは、割と権力と暴力で押し通してましたし」
カッコイイ人に惚れるだけなら、恋愛はこんなに複雑じゃないんですよ!
ダメな人とか、私が依りそってあげないとって思えるのも大切な要素なんです!
そんなイノリの力説に、半目になりながら扉間は溜息を吐く。
なんか、どっと力が抜けてしまったのだ。
「で、でも、楽しい記憶はいっぱいありますよ? 連邦生徒会の秘密金庫を襲われた時に、一緒に犯人を追った時とか──」
「──ん」
つまり──絶好の暗殺チャンスである。
「ッ!? シロコ*テラーさ──」
相手が勝利を確信した瞬間。
最も油断をした隙をつく。
それが、忍の本質。
「アロナの居ない今なら……防ぐ手段はない」
扉間の背後。
手は届かず、銃弾は即座に到達する距離。
狙いは正中線の上、胴体。体を大きく動かさなければ避けられない場所。
999人の扉間も止められないタイミング。
「──さよなら、先生」
扉間の背中に死の弾丸が放たれる。
完全なる死角。
扉間は振り返ることすら出来ない、完璧な不意打ち。
だが、砂狼シロコは
「──
『任せてください! アロナガード改め、キーさんガードを展開します!!』
──
会長の苗字は、本当は白鳥か白鶴の予定だったんですが、名前を一週間前にイノリに急遽決定したことで一文字に納めないといけなくなったので、かなり無理やりに。鵠と書いてしらとりは完全な当て字です。
聖四文字なので、名前の総文字数を4文字縛りにした過去の自分が恨めしい。
鶴の場合は、鶴はツールと読むと、ヘブライ語の岩と同じ音。
そして聖書では神を「私の大岩」などと表現したりするので
鶴=ツール=岩=神の意味も隠そうとか考えたのですが、没に。
まあ、ブルアカの苗字とかそこまで出ないし、どうせ千手にするし、気に入った名前のイノリを優先しようかなと。
大切なのは個人を現すファーストネームの方だし、可愛いし。
後はYHVHの当て字も考えたんですが、ユーハバッハとかしか作れそうにないので断念。
日本人の名前でVは無理だって……。
YHWHの方だと、
唯一神の”唯”と天使を思わせる”羽”で
”火”に”依”りそうで
羽依火を入れ替えて、
唯羽の読みを変えて
没になった理由? 57話のアロナ文字で、名前を三文字に設定したせいです。
あの頃は、適当にアロナなんで3文字ほど入れてただけなのですが……。
後、アナグラム的には気に入っているんですが、それだけで娘の名前を決めるとなぁ…と。
名前候補は他にも
まあ、一番は
メダリストのいのりちゃんもいいよね。
次回は14日に投稿予定です。
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