千手扉間のブルーアーカイブ   作:トマトルテ

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20話:繋がり

 

「……呆気なかったわね」

「何がだ?」

 

 太陽の明かりが差し込む、生徒会長室。

 今までとは違い、隠れる必要のなくなったリオと扉間はどこか気の抜けた様子で会話をする。

 

「アリスの対策のために、様々なことを準備したわ。でも……それは全て無駄になった」

「備えとは往々にしてそういうものだ。防災グッズも買ったはいいが一生使わずに終わるという人間も珍しくない。そして、そちらの方がよほど幸運だ」

「ええ、そうね」

 

 アリスが『名もなき神々の王女』として覚醒しなかった。

 ケイもそれを受け入れて、人間として生きている。

 誰も悲しまないハッピーエンド。

 それが余りにもあっさりと手に入ったため、リオは拍子抜けしているのだ。

 頭の中では、これが最も良い結果だと分かっているにも拘らずに。

 

「アリスもケイもゲームによって感情を得た。今度、AIの心とゲームの関連性について、論文を書いてみようかしら」

「ゲーム……と言うべきか、テイルズ・サガ・クロニクルのおかげだな。まさか、あのゲームにあれ程の力があるとは、初めにプレイした時は思いもせんかった」

 

 そして、リオが準備した数々の手段が活用される前に、テイルズ・サガ・クロニクルがアリス達の脳を破壊していった。クソゲーが世界を救うとは、世の中分からないものである。

 

「そうね……合理性を追求したAIが暇つぶし(ゲーム)という合理の欠片も無い存在に、負けるのは……正直言って想定外ね。一見、合理的に見えない行動も人の感情に働きかければ、正しい結果に導くことが出来る。……いい勉強になったわ」

「そうだな。合理性だけでは、納得のいかない人間もいる。そして、純粋な感情の訴えだからこそ、相手の心に響くこともある……ワシも今回は教えられる側だった」

 

 アリスを排除しようとしたリオも。

 いざという時は、自分が自爆しようとした扉間も。

 それは嫌だ! という、純粋な感情の前に負けた。

 

 結局、ハッピーエンドの決め手になったのは、小賢しい真似ではなく努力と友情。

 ゲーム開発部を存続させるための努力がアリスを人間にし、アロナの友情がケイを人間にし勝利を手にした。

 

「フ、ワシらの完敗だな」

 

 だから、扉間は上機嫌に笑う。

 想定していた危機が全て、事前に取り除かれたハッピーエンド。

 自分が思い描いていた理想よりも綺麗な光景に、笑いしか出てこない。

 

「? 大勝利の間違いじゃないかしら?」

 

 そんな扉間に対して、リオは不思議そうに首を傾げる。

 望んだ以上の結果になったのだから、大勝利だろうと。

 

「そうとも言えるし、そうでないとも言えるな」

「ハッキリと言って欲しいわ……いえ、こうして合理的でない回答を考えるのも今後は必要になってくるのかしら」

 

 勝利であり、敗北でもある。

 そんな扉間の物言いに、苦言を呈すリオだったが、何かを考え直す様に手を顎に当てる。

 1か0ではなく、その間を考えることこそが、感情の理解に繋がるのではないかと思いながら。

 

「そう言えば……ネルにも良く分からないことを言われたわね」

「ネルが?」

「ええ、何でも私と先生は似ている……そう言われたのだけど」

 

 ジーッと扉間を観察する、リオ。

 

「……顔立ちは似ていないし、髪の色は黒と白で反対。目は同じ赤色だけど感じが違う。……ネルはどこを見て似ていると言ったのか、先生には分かるかしら?」

 

 ちげぇよ! そういう事じゃねぇ!

 と、ネルが居たらツッコミを入れてくれたであろうが、生憎ここには居ない。

 

「……見た目ではなく、考え方ではないか?」

 

 黒髪に赤い目という見た目は、どちらかというとうちはを思い出すなと思いながら告げる、扉間。

 そう言えば、うちはもリオと同じように美形が多い一族だった。

 恐らく、美形の方が顔に視線を、要するに写輪眼に視線を集められるからだろう。

 実に卑劣な一族である。

 

「考え方……そうね。先生の考え方は合理と理性を重視する私の考えに、よく一致しているわ」

 

 その言葉に一応の納得を見せる、リオ。

 

「今回の爆弾の設置も、アリスと自爆するのも、そもそもケイを閉じ込めたのも、アバンギャルド君を芸術と評したのも、立場が違えば私もやっていたと思うわ。でも、だからこそ気になることがあるの」

 

 考え方が同じ。

 そのことに納得を示す、リオだったがそうなると新たな疑問が出てくる。

 

「なんだ?」

「先生はどうして、あれ程までに他人を信じて託せるのかしら? 合理的に考えれば、シャーレの先生という存在よりも一生徒の命の方が軽いわ」

 

 どうして、扉間はあれ程までにあっさりと他人に託して死ねるのか。

 

「……それに関しては、自分勝手に死ぬなと叱られたばかりなのだが」

「それは知っているわ。でも、私は知りたいの。私も……自分が死ぬことは選べる。でも……他人に任せることはきっと出来ないから」

 

 リオは他人を信じて任せるという行動が出来ない自分に、苦悶の表情をする。

 色々と考えれば、会長でありミレニアム最高の頭脳を持つリオより、他の生徒を優先する理由はない。

 だが、感情的な面で見ればリオは。

 

「そう……私は人を信用出来ない」

 

 他人を信じて任せることが出来ない。

 だから、いつも人に相談できずに抱え込んでしまうのだ。

 

「各分野で私よりも優れた人間は居る。今回だって、アタリ作戦なんて回りくどい方法を取らずに、ヒマリやウタハに最初から協力を申し出ていればもっと早くに解決できたかもしれない。でも、私は他人を信用できずに、ただ無意味に時間を浪費してしまった。まだ様子見でいいだろうと、自分を偽って」

「結果的には、何も問題はなかったのだ。それでよかろう」

「いいえ、今回は運が良かっただけ。排除にせよ、助けるにしろもっと早くに動けた。動くべきだった。でも、それは私が他人を信じて任せられなかったせいで、危うく手遅れになるところだった」

 

 もしもアリスが暴走していたら、モモイなどが犠牲になったかもしれない。

 自分が他人に話すことが出来ず、うじうじと悩んでいる間に。

 

「……それに関しては、ワシもだ。アリスの危険性を認知しておれば、他人に簡単に言いふらすことも、動くことも出来ん。仕方のないことだ。後ろめたく思わなくていい」

「でも、私がもっと他人を信用できていれば、先生に早めに相談することも出来たはずよ」

 

 そもそも、ケイを連れ帰る前。

 アリスがミレニアムに来た時点で、リオはアリスが『名もなき神々の王女』の可能性に気づいていた。そこで、先生である扉間に相談することも出来たのだ。だが、リオは扉間を信用できなかった。全てをハッピーエンドに出来る人物だったというのに。

 

「私はミレニアムの会長よ。いずれ、ユウカやノア達に後を引き継がないといけない。でも……それが本当にできるか、不安なの」

 

 リオは3年生。

 当然のことながら、どこかのメイドのように留年などしなければ卒業する。

 人に後を託すことが求められる人間なのだ。

 だというのに、自分にはそれが出来ないと苦悩を口にする。

 

「先生……私は、どうやったら先生みたいに人に託せるようになるかしら?」

 

 恐らく、ほとんどの人間が聞いたことのないリオの弱音。

 合理性を絶対としていた所に、無茶苦茶なハッピーエンドをぶつけられたことで生じた本音。

 それらがあって、初めてリオは大人に相談することが出来ていた。

 

「……まず一つ訂正しておこう。お前が信用できていないのは他者ではない―――お前自身だ」

「私…自身…?」

 

 他人を信用できないという相談に対して、まさかの自分を信じろという回答にリオは面を喰らう。

 しかし、扉間は大真面目な顔で真紅の瞳をまっすぐにリオに向ける。

 

「お前の感じる不安は自らの自信の無さから来るもの。自分を信じてもらえるか分からないから、他人に否定されるのが怖いから他者を信じて託すことが出来んのだ」

「そんなことは……」

 

 ない、とは言い切れなかった。

 リオは天才だ。ミレニアム史上で上から数えた方が早い程に。

 だが、そんな天才だからこそ、アバンギャルド君に代表されるように今まで理解されなかった。

 そして、合理主義者故の冷酷な判断は、彼女を良く知らない他者の共感の邪魔をしてきた。

 だから、心の奥底で思っているのだ。

 

 どうせ、誰も自分の話を聞いてくれないと。

 

「己自身を認めてやることが出来ない者は失敗する」

 

 相手を信じるための第一歩とは、自分を信じることである。

 

「自分が他者に信じられる人間であると認められない限りは、人を信じることが出来ないのは当たり前だ。相手が誰であっても、自分で信用できないと決めつけてしまうのだからな」

 

 リオとて、ネルやヒマリに頼ることはあった。

 だが、それは自分と同じ考えである時のみ。

 つまりは、自分の中の考えを信じているに過ぎない。

 自分と違う考えとみるや否や、排除に動く合理性(おくびょうさ)がある。

 

「……先生の言う通りかもしれないわね。自分に自信が持てないから、結果的に他人を信用できない。確かにそのとおりね」

「そう、気を落とすな。お前は他人を信じられないとは言ったが、ワシを信用してくれたではないか」

「それは、先生の考えが私の考えと似通っていたからよ。私自身がアリスを排除することに戸惑いを持っていたのは、今となっては疑いようのない事実。それに加えて、もしもの時の自爆(ほけん)も用意してくれていた……結局の所、私が信じていたのは先生ではなく私の考えではないかしら」

 

 ウジウジと普段の凛とした様子からは考えられない、子供っぽさを出す、リオ。

 子供がでもでもでも、と駄々をこねるのと一緒である。

 いや、実際にリオはまだ子供なのだろう。

 

「まったく……お前には馬鹿さ加減が足りん」

「ば、馬鹿?」

 

 そんなリオに対して、扉間は手のかかる子だと溜息をつく。

 物事はもっと単純に考えて良いのだ。

 

「よいか? そもそも信じるという行為には合理性などもとより存在しない。信じるとは、不確定のものを自分の中でそうであると決めつけること。神への信仰や願掛けと同じものだ。居るかどうかも分からぬ神に対して信じる。未来がより良いものになると信じて後に託す。これらの行動は、理性ではなく全て感情の行いだ」

 

 自分が呼吸が出来ると信じている人間はいない。

 だって、それは前提条件(あたりまえ)であって信じるという行為には値しないのだから。

 信じるとはすなわち、不確定要素に対する人間が生み出した幻想に過ぎない。

 理性とは真反対の方にあるものなのだ。

 

「信じたければ信じろ。信じたくなければ信じるな。理由など、単なる後付けの理論武装に過ぎん。信じると決めたら馬鹿のように手を伸ばし続けるだけでよい。そうすれば、いつかその手は必ず届く……ワシはそう信じている」

 

 思い出すのは、扉間が人生において最も動揺した瞬間。

 柱間が自害するか、扉間を殺すかの選択。

 柱間がうちはと、いや、マダラと和解するために自害を計った時。

 

 うちはの棟梁であるマダラが、同盟を呑むかは分からない。

 仮にマダラが同盟を呑んでも、残りのうちはが従うかも分からなければ千手が柱間の意志を継ぐかも分からない。

 それでも柱間はマダラや扉間を信じ、何より未来を信じた。

 

 そして、その願いはあの時確かにマダラの手に届いたのだ。

 

「先生は自分を信じられているのね……」

「ああ。ワシは多くの者に愛され、そして認められた。ならば、自分を信じなければ彼らに失礼というものだ」

 

 両親や兄弟の愛情を受けた。

 火影として、仲間や部下達から認められた。

 己を肯定するのに、それ以上のものが必要だろうか?

 

「リオ、お前とてそうだ。多くの者に認められている」

「私が…?」

 

 自分が一体誰に認められているのだろうかと、困惑の表情を浮かべる、リオ。

 それに対して、扉間は若干呆れの籠った顔で告げる。

 

 

「何を言っておる。お前は―――ミレニアムサイエンススクールの生徒会長であろう」

 

 

 あ、とリオが声を溢す。

 彼女にとっては、あまりにも当たり前すぎた事実。

 

「“生徒会長になった者”が皆から認められるのではない。“皆から認められた者”が、生徒会長になるのだ」

 

 生徒会長として、生徒の望みを叶え守るのが使命だと思っていたのは何故か?

 なんてことはない、生徒会長に選ばれたからだ。

 他ならぬミレニアムの生徒達によって。

 

「ミレニアムの皆はお前を信じ、お前は皆を信じる。それが長というものだろう。ならば、お前はとっくの昔に皆から信じられている。それでもなお、皆をお前は信じられないというか?」

「それは……でも…私は……」

 

 皆を信じられない自分が、本当に会長でいいのだろうか。

 そうやって、食い下がろうとするリオに、扉間は追撃をかける。

 

「それでも信じられないのならワシを信じろ。ワシが信じるお前を信じろ」

「先生が信じる私を…? ……先生はどうして……私を信じられるの?」

火影(せんせい)とは、生徒の父であり兄だ。兄が弟や妹のことを信じるのは当然のこと」

 

 扉間は無防備なリオの頭を撫でる。

 かつて、柱間の大きな手の平で撫でられたことを思い出すように。

 その温もりを支えにしていけるように。

 

「先…生…?」

「時には皆からの期待が重く感じることもあろう。今回以上に理解されぬ日も来るだろう。だが、それでも忘れるな。お前を慕い、信じる者達が居ることを。辛くなれば泣いても良い、喚いて良い。そんな情けない姿を晒しても、必ず信じてついて来てくれる者達は居る。例えば……ワシとかな」

 

 扉間は優し気に微笑む。

 先生として生徒を信じるのは当然のことだと。

 

「お前が本当に優しい子だというのは、ワシは分かっておる」

 

 リオの頭から手を離し、扉間は背を向ける。

 そして、そのまま部屋の外に向かう。

 これだけ言えば、もうリオは大丈夫だろうと信じて。

 

「ではな、ワシは帰る」

「……その…上手く言えないけど…ありがとう。今の言葉は忘れないわ――」

 

 いい加減シャーレに戻らなくてはならないと告げる、扉間。

 そんな背中に向けて、リオはフルフルと頭を振って頬を赤らめたまま、ニィと笑う。

 

 

 

「―――お兄ちゃん」

 

 

 

 爆弾発言を乗せて。

 

「待て! なんだ、その呼び方は!?」

「…? 先生が生徒の兄だと言うのなら、お兄ちゃんで良いと思うのだけど……いえ、要望を聞かずに決めたのはいけないわね。お兄ちゃん、お兄様、兄貴、兄者、兄さん、お兄たま、の中のどれがいいかしら?」

「先生で良い! 先生でッ!」

 

 また私、何かやっちゃいました? という顔をするリオに扉間は額を抑える。

 精神的な話で兄と言ったのであって、実際に兄になったわけではない。

 因みに、候補の中なら兄者が良い。

 

「リオ、やはりお前は……かなりの天然だな……」

 

 そう言って扉間は大きく溜息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

「いえ、アリスは王女じゃないです。勇者です」

「では、勇者と呼べばよろしいのでしょうか? 王女」

「いえ、だからアリスは王女ではなく、勇者で」

 

 ゲーム開発部部室。

 新しく部員に加わったケイが、アリスに呼び方を訂正させられている。

 

「普通にアリスって呼んだらいいんじゃないの? ケイ」

「モモイは黙っていてください」

「私、別に何も変なこと言ってないよね!?」

 

 そして、横から割り込んできたモモイに対して辛辣な言葉を返す。

 モモイのことを認めていないわけではないが、脳を破壊された恨みは忘れていない。

 

「ううぅ…ケイが冷たい……こうなったら、やけ食いしてやる! ミドリィ! オレオとってオレオ!」

「はい」

「ありが――これリッツじゃん!?」

「オレオはツイストして、クリームをすくってミルクにダンクすると美味しかったから、全部食べちゃった」

 

 自分の扱いに嘆き、オレオのやけ食いを行おうとするモモイだったが、ミドリに阻止される。

 因みに、オレオをホットケーキミックスで揚げる、オレオフライ。

 マシュマロと一緒に食パンに乗せて、トーストしたオレオトーストなどの食べ方もお勧めである。

 是非お試しあれ。

 

「ケイ、アリスという名前はモモイがつけてくれた大切な名前なんです」

「友人につけてもらった名前……」

「はい。だから、ケイにもアリスと呼んでもらいたいです」

 

 王女は王女というケイの主張に対する、アリスの返答はクリティカルヒットになる。

 ケイ自身がアロナにもらった、キーさんという名前を大切にしている以上は反論が出来ない。

 

「……分かりました、アリス」

「はい、これでケイも立派な勇者パーティーの一員です」

 

 ニコニコと笑いながら、ケイの手を握るアリス。

 2人の違いは瞳の色ぐらいしかないので、傍から見ると双子にしか見えない。

 

「そ、そう言えば、ケイはどうやってミレニアムに入学したの? まさか、アリスみたいにヴェリタスにハッキングをしてもらって」

 

 そんなアリスとケイの姿を見ながら、ユズは問いかける。

 モモイがアリスを勝手に入学させて、扉間に怒られていたのを知っているからだ。

 

「それに関しては心配ありません。まず、トビラマ先生が私をシャーレの所属にしました。そして、シャーレに所属しているということは、逆説的にどこかの学園の生徒であることになります。しかし、私には所属学園がありません。通常ならば、そこで弾かれるはずですが、先生はそれを()()()()()()として処理し、ミレニアムに再提出を求めました。ここでも、通常ならばそんな生徒は知らないとなる所ですが、リオが不備を認めて()()()()()したデータを提出しました」

「……つまり?」

「ケイちゃんは急に現れた生徒じゃなくて、元々ミレニアムに居た生徒ってことにしたってことだね」

 

 良く分からないというモモイの質問に、ミドリが答える。

 要するに、どこかから急に現れた転校生ではなく、最初からミレニアムにいた生徒という事実を挟み込んだのである。

 ケイの所属を証明するデータが不備で消えていたので、生徒会長のリオが責任をもって新しく作った。

 そういう体での話なのだ。

 

「こ、これが大人……汚い」

「もっとも、他の生徒は不審に思うでしょうから、表向きはアリスと共に転校してきたという設定で説明しています」

 

 そして、アリスと同じ見た目を生かして、一緒に転校してきた双子と言えばアリスを受け入れた人間は、そうだったんだとなるだけだ。ついでに、アリスの目撃情報を何個か意図的に実はあれはケイだったんだよ、ということにすれば不自然さも少なくなる。

 

「とにかく、これからはケイとも一緒に冒険が出来る。それでいいのでは?」

「そうだね。それじゃあ、今から何かゲームでもする?」

 

 良く分からないけど、よし! と、アリスは話を打ち切りにする。

 ユズもケイの説明に納得がいったのか、それ以上は何も言わない。

 ただ、今から何かして遊ぼうと提案するだけだ。

 

「……すいません、1つお願いがあるのですが?」

「どうしたの、ケイちゃん?」

 

 そんな提案に対して、ケイはお願いを行う。

 

「ゲームをするとき……オンラインが可能なものであれば、アロナも混ぜてあげたいのですが」

「そ、そう言えば、アロナも格ゲーをしていた時に対戦したね。うん……もちろん。ゲームは大勢で遊んだほうが楽しいから」

「ありがとうございます、ユズ」

 

 提案とは、シッテムの箱の中で1人になるであろうアロナと、一緒に遊ぶこと。

 ちゃんとアロナとの約束を守っているのだ。

 

「じゃあ、チャットとかで文字を入力できるゲームでもやろうか! それなら、一緒に会話もできるしね。……何か良いのあるかな?」

「いっその事、次回作は遠くの人と多人数で遊べるゲームにして、私達で作ってみようか?」

「わぁ! アリス、やってみたいです! そしたら、先生や色んな学校の人とも遊べます」

 

 アロナの声は自分達には聞こえない。

 だったら、文字で会話しながらプレイできるゲームを作ろうと意気込む、モモイ、ミドリ、アリス。

 

「だったらパーティーゲームかな? あんまり難しいストーリーとかがない、みんなでワイワイ出来るやつ」

「検索します。パーティーゲームにて複数のヒットあり。現実にあるパーティーゲームをデータ化するだけでも、十分に楽しめるかと」

 

 それに対して、具体的な案を出して固めようとするユズとケイ。

 

「うーん……それだとちょっとパンチ足りなくない? ここはこの前、SNSで変な意味でバズッた流行のモモフレンズの要素も追加しようよ!」

「ちょっと待ってよ、お姉ちゃん。パーティーゲームにモモフレンズ要素ってなに? そのままキャラを使ったら、絶対何かしらの権利に引っかかるよ。仮にモモフレンズ要素を追加するなら出来て……擬人化?」

「つまり、モモフレンズを擬人化したキャラで版権を躱して、大乱闘モモフレブラザーズやモモフレパーティーを出すのが理想ということですね!」

 

 いつものように余計な追加要素を盛り込みたがる、モモイ。

 姉にツッコミは入れるが、完全に否定はせずに考える、ミドリ。

 色々とまとめた結果、明後日の方向にぶっ飛んだ提案を出す、アリス。

 

「やめてください! 忍天堂(にんてんどお)に殺されたいんですか!?」

 

 それはどう考えても、ヤバいからやめろと叫ぶ、ケイ。

 頼むぞ、ケイ。ゲーム開発部のコンプライアンスはお前にかかっている。

 

「ふふ、やっぱりこうやって次のゲームのことを話している時が一番楽しいね」

 

 そんな光景を眺めながら、ユズはここも随分と賑やかになったなと、感慨深く微笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

『先生! 先生! もうすぐ誕生日ですね!』

 

 久しぶりにシャーレに戻って来た扉間が、アビドス廃校対策委員会のチャンネル。略して『アビドスチャンネル』を見ながら仕事をしているところに、アロナが声をかけて来る。

 

「誕生日……アロナの誕生日だったか? すまん、何も準備をしておらん」

『違いますよ! 先生の誕生日ですよ! もう、自分の誕生日ぐらい覚えておいてください』

「そうは言ってもな……年寄りの誕生日など、年老いるばかりで嬉しい事など特にないのだ」

 

 動画の中で、今日も元気に指名手配犯退治(せいそうかつどう)を行う対策委員会の様子を見ながら、扉間はため息をつく。誕生日が楽しみなのは、せいぜい20代前半までだ。後は、襲い来る加齢に怯えるか、通常の日としか認識できなくなるだけである。30歳や40歳の区切りの誕生日など、恐怖でしかない。

 

『そんな夢のないことを言わないでください』

「事実なのだ。歳を取れば、お前もいずれ分かる時が来る」

『嬉しいか、嬉しくないかは自分で決めることにします。て、今はそういう話ではないんです! とにかく、先生を祝いたいんですよ、私は!』

 

 バンバンと机を叩いて、抗議するアロナ。

 先生を叱るということを覚えたせいか、最近は反抗することが多い。

 子供特有のヤダヤダ期に突入したのだろうか?

 

「分かった、分かった。その日は新鮮な川魚でも食べるとしよう」

 

 ケーキなどガラでもないしなと、思いながら扉間は適当に相槌を打つ。

 

 扉間にとっては、動画の中で対策委員会が指名手配犯の持つ物資を奪う手際が、一際向上した事実の方が興味深いのだ。特にシロコの成長が目覚ましく、相手のアジトで隠している床下倉庫まで探し当てる嗅覚を発揮している。一体シロコはどこを目指しているのだろうか?

 

『ふっふっふ、先生がそう言うであろうことは、スーパーアロナちゃんはよーく分かってます』

「何か隠し玉であるのか?」

『実は、ゲヘナ風紀委員会から委員長であるヒナさんのトビラマチャンネルへの出演依頼のメールが来ているんです』

「ゲヘナ風紀委員会から? 珍しいな」

 

 ゲヘナ風紀委員会。

 その名前に、扉間は指名手配犯の身ぐるみを剥ぐホシノの姿から目を離す。

 因みに、回収した物資は全て寄付(意味深)することになっているので、これは慈善行為である。

 

『簡単にまとめると委員長であるヒナさんの誕生日が、先生と同じなので一緒に祝いましょうということです』

「……それだけのためにか? 何か裏があるのではないか?」

 

 ヒナの誕生日を祝う。

 それに関しては、特に異論はないが扉間は首を捻る。

 ゲヘナ風紀委員会とは面識があるが、誕生日にお呼ばれする程の仲ではない。

 エデン条約前なので、何か裏の目的があるのかもしれない。

 

『実はそうなんです。行政官のアコさんや、イオリさん、チナツさん。その他の方々からのお願いです』

「全員か……アコだけなら分かるが、何か大ごとか?」

 

 謀略を計るアコならともかく、そこら辺が苦手そうなイオリや一般の委員までとなると、理由が分からないと、扉間はますます混乱する。

 

『えっとですね。風紀委員会のみなさんは――』

 

 そんな扉間の混乱を収めるべく、アロナは告げる。

 これを言われたら、先生である扉間は必ず動くだろうという事。

 すなわち、子供の純粋な願い。それは

 

 

 

『―――ヒナさんに誕生日ぐらい休んで欲しいそうです』

 

 

 

 ほぼ毎日働き詰めのヒナを、誕生日ぐらい休ませたいという願いだった。

 

 




ミレニアム編完! 次回からはエデン条約です.
2/19の扉間とヒナの誕生日(キサキも一緒)に投稿。
感想・評価お願いします!


ミレニアム編裏話

作者「便利屋も出したゆえ、最後はアルが『アリス(勇者)を倒すのはアウトローの役目よ。あなたじゃないわ』とか言ってベジータ的に助けに来る展開が熱いのう。“鏡”の争奪戦は扉間がセミナー側について裏取引して、G.Bibleの解析したら即返す形にするべきか。そこで拒否られたら裏があると気づく伏線にもなるはず。アバンギャルド君は鎖で引きずり倒してフルボッコにして攻略すればよいかのう。リオとは敵対したくないが……考えを肯定するぐらいしか出来ぬか。だが、この章は推しのアスナも出るゆえ、今から書くのが楽しみぞ! さて、プロットも出来たことだ。早速ケイをゲームガールアドバンスに入れて――」

扉間「待て、シッテムの箱にケイを入れたらそれで全て解決する。リオを無理に敵に回す必要もなくなるはず。情緒面もアリスと同様にTSCをやらせれば、無害化が可能だ。出来ない場合でも、アロナに封じ込めさせれば本編よりも時間は稼げる。最悪、AI版穢土転生をすれば情報も抜き出せ、最終章での戦力化も出来る。やれ」

作者「だ、だが、扉間。既にプロットが完成しておってだな……」

扉間「黙れ」

作者「  」ずう~ん


こんな感じで13話の時点でプロットが互乗起爆札されてます。
アロナ×ケイとか始めて見たって感想で言って貰えましたけど、当然ですよね。
だって、作者の頭の中にすらなかったんですから。
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