「うわぁん! もうダメです! 『彼女』にも見捨てられて、このまま死刑になるだけなんです。でも……どうせ死ぬなら、残ってる非常食を全部食べてから死にたいです。すみません、正義実現委員会のみなさん。最後に食事をする時間だけくれませんか?」
「え? い、いえ、その……戦いは?」
「今のミサイルを見ていませんでしたか? 私達は要らない子になったんです。だから、もう帰る場所もないので、最後のご飯を楽しみます」
扉間の説得が成功したサオリから離れた場所。
正義実現委員会と交戦していたヒヨリが、自分達に撃ち込まれかけた巡航ミサイルを見てハスミに図々しく降参を行う。
「ああ……でも、私達の最後の望みを叶える必要なんてあなた達には無いですよね。監禁されて情報を全て吐きだすまで、石を抱かせて爪を剥ぐ痛くて苦しい拷問をするんですよね? もちろん、ご飯なんて碌に貰えず、飢え死にしたらターゲットを生き残りに移すだけ……」
「そんなことはしませんよ! 噂に聞くシスターフッドの尋問術ではないのです! 一先ず、戦うのか戦わないのかハッキリしてください!!」
やたらめったら暗い未来を思い浮かべる、ヒヨリ。
そんな姿に先程まで戦っていたにもかかわらず、冷や汗を流してツッコミを行う、ハスミ。
そして、またしても何も知らないシスターフッド。
「そもそも、先程のミサイルは? そして見捨てられたとは?」
「落ち着け、お前達。事情を教えてくれそうな人が来たぞ」
「ツルギ? 事情を知っていそうな人とは……」
「ヒィッ!?」
そんな混乱を抑えながら、ツルギが2人の間に割り込む。
ヒヨリ達、アリウスの生徒が一気に後退る。
ついさっきまで、甲高い笑い声を上げながら暴れ回っていたツルギにビビっているのだ。
しかも、撃っても撃っても再生して蘇る。
割とトラウマものである。
「ヒヨリ。それに他の仲間達にも話がある。落ち着いて聞いてくれ」
「リーダーの話を聞いたら、顎が外れるかもね。私でもビックリしたし」
「サオリ姉さん!? それにミサキさんまで…! ま、まさか、裏切って……」
ゾロゾロと現れたのはサオリが纏めた、ミサキを含むアリウス生徒達。
そして、先程までミサキと戦っていたゲヘナ風紀委員会。
最後に、扉間達だ。
「お前達も見ただろう、あのミサイルを。私達はマダムに見捨てられた。アリウスにはもう帰れない」
「や、やっぱり、そうですよね……もう、ここで野垂れ死ぬしか」
「だから、私達で姫を新たな生徒会長として担ぎ上げて、ベアトリーチェにクーデターを起す」
「……ちょっと、何を言っているか分かりませんね」
裏切るどころか、“
ミサキはやっぱりと言った顔で、溜息をつく。
「驚く気持ちは分かる。私も先生から初めて聞いた時は訳が分からなかった」
「先生…?」
はて、千手トビラマなら確か死んだはずと首を捻るヒヨリ。
「お前がサオリの妹か」
「ヒェッ!? ゆ、幽霊なのに足がついてます!」
「悪いが、どういうわけかまだ生きておる。浄土から追い出されておるのかもしれんな」
そして、殺したはずの扉間が平然と立っているのを見て、失礼な叫び声を上げる。
ミサキのときも、こうした衝撃を与えることで戦意を削いでいったのだ。
「先生がアリウスの今後の道標を教えてくれた。まずは、私達でクーデターを起してベアトリーチェを降ろす。その後、先生が連邦生徒会に掛け合って、アリウス分校を正式な学園として認めてくれる。そして、トリニティから独立を果たした後に、先生が校長として後ろ盾になってくれる。アリウス分校は、
「……そんな旨い話があるのでしょうか? サオリ姉さんは素直で騙されやすいし」
「なッ!?」
余りにも荒唐無稽な話に、懐疑の目を向けるヒヨリ。
それは、サオリの実直で謀略に弱い性格も知っているからかもしれない。
「私もそれは言ったよ……ヒヨリの言う通りだし」
「お、お前達……」
ミサキもサオリは素直すぎるしねと頷く。
妹分達から、騙されやすい判定をされていたことにちょっとショックを受ける、サオリ。
今度からはもっと、頼れる姿を見せようと心の中で密かに決めるのだった。
「でも、トリニティのティーパーティーが一応保証をしてくれるそうだし」
そう言って、ミサキはチラリとナギサの方を見る。
「ちょうどいい。ここで、もう一度証人を立てるとしよう。正義実現委員会のトップもおることだしな……お主が剣先ツルギだな?」
「は、はい!」
「すまんが、今からワシの宣誓の証人となってくれんか? お前も加われば、ティーパーティー・万魔殿・風紀委員会、そして正義実現委員会のトップが証人になる」
「ミレニアムサイエンススクールのトップも居るわよ」
ゲヘナとトリニティの政治と軍事のトップ。
それに加えて、外様のミレニアムの生徒会長。
これだけの人間の前で、約束することで扉間は自分の発言に真実味を持たせているのだ。
「クーデター後、ワシは連邦生徒会に掛け合い、アリウス分校を正式な学園として認める。そして、トリニティから独立を果たした後に、ワシが校長として後ろ盾になることを誓う。その後、シャーレ直轄の治安維持部隊として働いてもらい、食い扶持を稼ぐことを約束する」
「……は、はい。確かに聞き届けました」
ツルギが頷くのを確認してから、さらに扉間は自身の携帯でシャーレの公式アカウントを開く。
そして、そこで同じような宣言を拡散するのだった。
「SNSでも発信した。お前達でも確認できるはずだ。そして何より、死んでいたはずのワシの発言。恐らくは、相応にバズるだろう。この場に居るトップが共謀して嘘をついても、もはや誤魔化しは出来ん」
「そ、そこまでしてくださるなら……」
ここまでやられたら、ヒヨリ達は頷くしかない。
それと、ツルギとハスミは戦闘直後で気づいていないが、トリニティとして独立を認める以上は、今回の襲撃の件を後から蒸し返すことは出来ない。
何せ、ミサイルの件も、襲撃の件も
新しいアリウス学園とは別物だと言われて、友好条約でも結ばれればもう蒸し返せない。
「キキキ! 流石だな、先生。ゲヘナとしても
「……調子のいいことを」
そして、それに気づいているマコトは、ナギサの冷たい目を無視して全力で乗っかる。
マコトはアリウスとのパイプがある。つまり、バレると今回の襲撃との繋がりも疑われるのだ。
しかし、新しい政権になれば、そのパイプを混乱の中で有耶無耶にして何食わぬ顔で、新しく出来た繋がりですけど? と言える。
「未来の予定は立てられたようね。じゃあ、次は現在でやるべきことを進めていく番よ」
「アリウスへのクーデターだね。いやぁ、まさか私がアリウスでクーデターをするなんて夢にも思わなかったよ」
「あー……元々は逆でしたからね」
リオの言葉に、ミカは自分がトリニティではなくアリウスでクーデターをするとは思わなかったと言う。それにつられて、裏事情を知るヒヨリも頷く。
「何の話?」
「な、何でもないよ! ヒナちゃん」
「……そう」
当然、ゲヘナへの親善大使としての側面しか知らないヒナは疑問符を浮かべるが、ミカが全力で首を振るので、追及を止める。
ナギサがマコトに強く言えないのも、政権交代すればこのミカの罪もあやふやに出来るからだ。
薄ら暗い取引の成立である。
「それで……ここに居る全員でアリウスに行くの?」
このままでは、話が進まないので裏事情を知るミサキが強引に話を進める。
正直に言うと、万全の状態のゲヘナ風紀委員会と正義実現委員会をまとめて相手取れる戦力はアリウスにはない。
「……過剰戦力じゃない?」
さらにそこに、寝返ったアリウス生徒が加わる。
これ、普通に勝てるなとミサキは判断を下す。
「いや、そうでもない。お前達にとっては普通のことかもしれんが、カタコンベを利用してゲリラ戦を展開されれば、この数では逆に足を引っ張ることになりかねん。アリウスに到達してからも、地の利を生かした防衛戦に徹せられれば数の利も活きてこん」
しかし、扉間は簡単にはいかないだろうと首を振る。
一般的に守りを固める相手を攻めるには、その3倍の数が要る。
地の利を生かしたゲリラやトラップも含めれば、さらに多くの数が要るだろう。
「それに、この混乱状態で治安維持部隊を全て連れて行くわけにもいかん。混乱した民衆の制御。仮に巻き込まれた者が居るのならその救助も行わなければ、後にアリウス以上の脅威になりかねん。風紀委員会と正義実現委員会は、状況が落ち着くまでは残って混乱を治めるべきだ。
アリウスは潜在的な敵だが、だからと言ってそれだけが敵という訳ではない。
この機にトリニティへちょっかいを出す他校もいるかもしれない。
混乱に乗じてはしゃぎ回る不良生徒もいるだろう。
その抑えに、治安維持部隊は必ず必要なのだ。
「何より、お前達は自分の家族相手に引き金を引くことになりかねんのだ」
「……そうだな」
そして、アリウス生徒からすればベアトリーチェはともかく、他の生徒は純粋な仲間。
万全な精神状態で戦えるものではない。
「理想としては、ベアトリーチェの悪行を広めて民意を味方につけることだ。そうすれば、お前達に情がある仲間とは戦わずに済む可能性が高い。今回のクーデターで大切なのは、アリウス。お前達自身の力だ」
「確かに……仲間と戦わずに穏便に済む方法があるなら、そちらの方がいい」
扉間の言葉にサオリが頷く。
ベアトリーチェはサオリ達を見捨てたとはいえ、それはあくまでも任務に失敗したからだ。
アリウスの内戦を止めた功績がある以上、彼女がルールに則って処分したと言えば多くのアリウス生徒はそれに従うだろう。
「それにだ。クーデターで他校の力を借り過ぎると、後の内政干渉の火種となりかねん。表向きにはアリウスだけでことを済ませるべきだ。大規模な混合部隊を組むのはまだ早い。そもそも、大所帯だとカタコンベで迷いかねん」
何より、アリウス生徒は一度こちら側についたとはいえ、恐怖から再度ベアトリーチェ側に戻る可能性もある。
大所帯で内輪もめを起されるぐらいなら、アリウス生徒の少人数に人員を絞ってどちらかに意志の統一を図った方がやりやすい。
集団はコントロール出来る範囲の人数にするべきだと、扉間は口に出さずに思案する。
今は大人しくさせて、大部隊はある程度情勢が決まってから、投入すればいい。
「狙うはベアトリーチェの首だけだ。他の生徒は傷つけずに、少数精鋭でベアトリーチェだけ始末するのが最上。ついでに、奴のネガティブキャンペーンでも出来ればいいのだが……」
伝え聞くベアトリーチェの人物像は、明らかにまともな大人ではない。
口を滑らせれば、民意を味方につけることも出来るかもしれない。
まあ、もしかするとまともな人間の可能性も1%は残っているので、一度話す必要はある。
そうなると、もっとも効果的なのは。
「……そう言えば、しばらく
「……少し時間をくれれば、使えそうな廃材を利用して作れるわ。新しいものを調達するのも手だけど、私に聞くということは急ぎなのね?」
「ああ、出来るか?」
「ウタハ程ではないけど、私も一端の技術者よ。任せて頂戴、作成次第すぐに送るわ」
アリウスの生徒にも分かりやすく、ベアトリーチェ=悪党のプロパガンダをする方法。
それを思いつき、扉間はすぐにリオに準備をしてもらう。
「後は主力部隊だな……アリウスの内部に詳しい者がワシについて来てもらえると嬉しい」
「私が行く。先生の言葉を受け入れたのは私だ。責任は取る」
「わ、私も行きます。サオリ姉さん1人には行かせません!」
「……私も行くよ。アリウススクワッドだからね」
サオリが行くと言うと、ヒヨリとミサキが続く。
アリウスの精鋭が扉間小隊に加わる。
「アリウスの子以外なら、私が一番アリウスに詳しいと思うよ」
そして、唯一アリウスに赴いたことのあるミカが挙手する。
「これで、4人か。まあ、これだけ居れば――」
実力者の4人が居るのなら、潜入には十分だろうと判断を下す扉間。
足りなければ、道中でホシノ達と合流すればいい。
そんなことを考えていた所で――
「やはり、アリウススクワッドか……いつ出発する? 私も同行する」
「アズサ!」
息を切らせて現れたアズサが同行を申し出る。
「無事だったのか? ……いや、よく考えれば、お前は私達よりも早く先生に寝返っていたんだな」
「……すまない。私はみんなから見れば裏切り者かもしれない。だが…それでも……私はみんなを家族だと思っている」
かつて二重スパイとして、セイアを殺さずに生かしたアズサ。
その後も、アリウスの情報をコントロールして、ナギサが殺されないようにしていたが、全ては扉間の登場により幕が閉じた。
今の今まで直接的に、アリウスを裏切らずに済んだのは偶然でしかないと、アズサは頭を下げる。
「……構わない。裏切り者だというのなら、ここに居るアリウス生は全員が裏切り者だ。アズサ1人を責めても、何もならないさ」
「こっちも今からクーデターをするからね。アリウスを裏切るのはみんな同じ」
しかし、サオリとミサキは気にするなと首を振る。
裏切り者はここに居る全員。
今更、アズサを責めたところで、その言葉は全てブーメランとなって返ってくるだけだ。
「ところで、アズサちゃんは今までどこに?」
ヒヨリがこの騒動の中で、今まで一体どこに居たのかと聞いてくる。
「………補習授業部のみんなと一緒に、
「そ、そうだったんですね」
「私だけ先に
因みに、今の今まで補習授業部が顔を出していなかったのは、テストを受けていたからである。
そもそも補習授業部の面子でアズサとコハルは、
ハナコも公式記録では落第点。
ヒフミ?
そんな状態なのにゲヘナへの使節団化したことで、一時期は有耶無耶になっていたが、真面目に進級に問題があることが発覚。
しかしながら、本当は
ナギサの心労がうかがえるものだ。
「アズサ……お主……いや、よくやった」
「先生やみんなの指導のおかげだ。ありがとう」
フンスと胸を張るアズサ。
扉間もこれには苦笑いするしかない。
死んだフリをして、なおかつカタコンベに籠っていたのはある意味自分のせい。
元々、自分の仕事だった補習授業を投げ出したのは扉間の方だ。
ここは素直に、生徒の合格を褒めるしかない。
「そう言えば、アツコは?」
そんな、裏を知る人間からすれば笑える話が終わり、アズサがここには居ないもう1人のアリウススクワッドを気にする。
「………まずいな。姫はマエストロと一緒に、地下でユスティナ聖徒会の
そう言えば、アツコはこっちの状況を知らずに、戦力を増やそうとしているなと冷や汗を流す、サオリ。ユスティナ聖徒会が顕現したら、どうなるかはサオリにも分からないが不味い事だけは分かる。
「その心配なら要らないわ。地下では現在、ネル達がそのアツコという子と戦闘中よ」
「私達の狙いを読んで動いていたのか?」
「いえ、それは先生がカタコンベに潜んでいたおかげで起きた偶然だけど……何にせよ、あなた達の最初の狙いは阻止されているはずよ」
リオがサオリに、ネル達がアツコを止めているはずだと告げる。
そこには、口に出さずともミレニアムの約束された勝利への信頼が確かにあった。
「まあ、どちらにせよ。無益な戦いを続ける理由はない。一度連絡をとるか――」
サオリがクーデターをする以上、ネルとアツコが戦う理由もない。
何とか止められないだろうかと、扉間が携帯に手を伸ばした所で着信音が響く。
「……ナギサから?」
「? いえ、私は何も……ああ、そういうことですか」
表示された名前は桐藤ナギサ。
この場に居るナギサは不思議そうな顔をするが、すぐにカードで来た自分かと納得する。
因みに、事情を知らないハスミとツルギは訳が分からない顔をしているが、状況的に空気を読んで何も聞けないでいる。
「ワシだ。何があった?」
『申し訳ございません、先生。至急、救援を求めます。このままでは――』
ブツリと、何かが潰される嫌な音を立ててナギサからの通信が途切れるのだった。
「……すぐに地下に行くぞ。サオリ、道案内を頼む」
「何だ…アレは! また大人のカードなのか!?」
「あれがユスティナ聖徒会?」
「幻術か? イヤ、幻術ではない……怪物か」
未来ナギサの連絡を受けて、地下に辿り着いた扉間達。
そこで出迎えた、顔のない怪物を見てマコトが驚く。
ローブを被り4本の手を持つ、異端の司祭の姿にヒナはあれがユスティナ聖徒会かと疑う。
「いえ…伝え聞くユスティナ聖徒会ではないはずです……! まさか……伝承でトリニティの地下に封印されていたという太古の教義……」
それに対して、ナギサが記憶から該当する存在を呼び起こす。
かつて、聖人として崇められるはずだったが、歪められて封印された教義。
その名も。
「ヒエロニムス!!」
純粋な芸術魂が教義を呼び覚ます!!
ミカの叫びに呼応するように、ヒエロニムスが襲い掛かってくる。
2本の手はまるで、これからあの世に送る者へ祈りを捧げるように組まれ、残りの2本の手に持つ錫杖を豪快に叩きつけて来る。
「来てくれたんだね、先生!」
「悪ぃな! 先生!」
「ホシノ! ネル! 無事だったか!?」
そんな錫杖を盾で防ぎつつ、食い止めるホシノ。
そして、フォローに当たるネル。
扉間はその姿に、ホッと胸を撫で下ろす。
「後ろの子達をお願い!」
しかし、ホシノにそれを確認する余裕はない。
相も変わらず、1人で盾になり続ける。
何故なら、その背中には。
「ちくしょう……」
「スクワッドのサオリか…? すまない。姫があの人形に攫われた……」
「お前達無事か!? それに姫が攫われただと?」
倒れている無数のアリウス生徒が居たからだ。
現在は両脇をシロコとアスナが固めているが、居なくなればヒエロニムスの餌食になることは馬鹿でも分かる。
「あのデカブツに殺されかけてる。この子達を倒したのは私達だけど、殺す気はない」
「いきなり、あの怪物が現れてね。それで連れて来た人形みたいな人が、姫ちゃんを攫って行ったの。何か儀式がどうのこうのって言ってたよ」
「人形? マエストロのことか……奴はマダムの同僚と聞いた。だとしたら、マダムのためにアツコを生贄に…?」
シロコとアスナの説明通り、ヒエロニムスはマエストロが呼び出したものだ。
そして、ベアトリーチェからの依頼をユスティナ聖徒会の
「と、取りあえず、みんなを安全な所まで下げましょう!」
「うん。私達の仲間なんだから、私達が守るのが筋」
「ああ、行こう」
ヒヨリとミサキ、そしてアズサが倒れているアリウス生徒達の回収に向かう。
当然、ヒエロニムスはそれを阻止するべく攻撃を行うが。
「させないよ!」
「サンキュー! これで、やっと全力で戦えるぜ!」
ネルとホシノに食い止められる。
「人質が居なくなったら、こっちのもの」
「防戦一方だったけど、これからはこっちの番だよ!」
4人がヒエロニムスに対して、防戦一方だった理由は簡単。
自分達が倒して、動けなくなったアリウス生徒達をヒエロニムスから守るためだ。
最強格の人間でも、背中に守るべきものがあればそちらを優先せざるを得ない。
「……マコトさん、ヒナさん。私達はここでアリウスの生徒を守りましょう。その間に先生とミカさん、アズサさん、アリウススクワッドのみなさんはアリウス自治区に向かってください」
「いいのか? 桐藤ナギサ」
「仲間が攫われたのでしょう? それに、あなたが姫と呼ぶ方。今後のアリウスに必要になるのでしょうから、取り返せば先生の策の成功率も上がるでしょう」
アリウスの生徒達は自分が守るので、先に行けと言う、ナギサ。
彼女の言う通り、クーデターのためにはアツコが神輿になれば、スムーズに事は進む。
何故なら、本来ならばアリウスの生徒会長は、ロイヤルブラッドが代々務めるのだから。
「……すまない、恩に着る。では、行こう、先生」
「ああ、ナギサの言う通りだ」
故にサオリはナギサに頭を下げて、扉間とミカ達と共にアリウスへの道を駆ける。
当然、ヒエロニムスはそれに気づいて邪魔をしようとする。
だが。
「させないわ」
ヒナがマシンガンで追い払うように、ヒエロニムスの腕を撃つ。
「キキキ、ここでお留守番か。まあ、いい。アビドスとミレニアムの情報を得れると思えば悪くない」
そして、マコトも若干楽しそうにヒナのフォローに入る。
「では、僭越ながら私達もお力添えさせて頂きますね」
そう言って、ナギサは初対面のホシノ達に優雅にお辞儀をして――
「うん! お願いね、ナギちゃん!」
「でも、あんまり無理しないでよね、ナギサちゃん」
「ん、今度はナギサに無理はさせない」
「あんまり、前に出過ぎんなよ、ナギサ」
「え? あ、はい」
初対面なのに、物凄く親し気に話しかけて来る4人に困惑するのだった。
まあ、4人からするとナギサはついさっきまで、共に戦っていた戦友なので仕方ない。
しかも、最後はどうせ自分は消えるという理由で、囮になりつつ扉間に救援を頼んでやられたのだ。
行き過ぎた囮教育の負の結果である。
それはもう、過保護にもなろう。
「と、とにかく、協力してあの怪物を倒しましょう!」
こうして、ゲヘナとトリニティ。
ついでにアビドスのトップが隣り合って戦うという、歴史的瞬間が迎えられるのだった。
「先生……これからアリウス自治区に入るが、ベアトリーチェはこちらに気づいている可能性が高い。きっと、残っているアリウス生徒が道を塞いでいるはずだ」
「ああ、だろうな。ワシでも同じことをするはずだ」
そして、こちらはアリウスに向かう扉間達。
サオリの言うように、ベアトリーチェに防備を固められる可能性は高い。
「だから、今回は普段は使われていない道を使って行こうと思う。至聖所に直接、人員を固められていた場合はどうしようもないが、それでも消耗を少なく出来るはずだ」
「訓練場を通っていく?」
「ああ、少し遠回りになるが、真正面から行くよりかはマシだろう」
故に、サオリとミサキは迂回ルートを通ろうと提案する。
少数精鋭なのもあるが、やはり同じ学校の生徒に手を上げたくはない。
「訓練所か……サオリに守られた時を思い出すな」
「もう、随分と前のことですね」
アズサは訓練所と聞き、初めてサオリに守られた時のことを思い出す。
ヒヨリも少し懐かしそうな顔をする。
「……待って、みんな。前に誰かいる」
「敵か?」
同窓会気分のアリウススクワッドに混ざれずに、少し気まずい思いをしていたミカ。
そんな彼女だからこそ、一番に自分達の行く手に誰かが立っているのを発見する。
当然、敵かと思う全員が臨戦態勢に入る。
「待て、あれは……」
しかし、扉間はすぐに待ったをかける。
「え? 何で、あのメイドが? いや、でも覆面被ってるし、もしかして別人?」
「うわぁ……同じ人が2人居るって分かってても、何だか怖いね、こういうの」
ミサキが困惑し、ミカが渇いた笑いを浮かべる。
5人の目に映るのは、メイド服。
そして何より、01の紫色の
すなわち。
「ヤッホー! ご主人様! それじゃあ、
セイアの予知夢がないとアスナが暴れ回る無法。
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