千手扉間のブルーアーカイブ   作:トマトルテ

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4話:トビラマチャンネル

「それでは、第5回トビラマチャンネルを開始する。まず、前回より完了した業務について報告を行う。まずは、アビドス校区にて――」

「はーい、カットー。先生、硬すぎ。いつもこんな感じでやってるの?」

 

 重苦しい会議の雰囲気で、練習として動画撮影の手本を見せる扉間にホシノからストップがかかる。

 

「ああ、そうだが……何か問題があるのか?」

「うわぁ……以前のものを見てみたけど本当に報告と仕事の風景だけじゃない」

「……基本生配信でこれ? ……つまらない、見返せるようにしても何の意味もない」

 

 何か文句でもあるのかと、告げる扉間にセリカとシロコはつまらないとボロクソに言う。

 それもそうだろう。業務内容を報告。

 それについて、補足を加えたら後はキーボードを叩く音や、資料を捲る音しかしない。

 生配信なので恐らく途中から見た人には、監視カメラか盗撮にしか見えないだろう。

 もはや、後で録画したものをアップロードしている意味も分からない。

 誰が見るんだこんなもの。

 

「シャーレの活動内容を報告するのが目的だ。何も問題あるまい」

 

 だが、扉間は憮然とした表情で腕を組む。

 そもそも、扉間が動画を投稿する狙いはシャーレの動向を監視しているであろう者へのアピールだ。

 

 自分は学園都市のために働いている。不正は行っていないというアピール。

 何か楽しい動画で人を喜ばせるのが目的ではない。

 はなから、狙う層が違うのだ。

 

 故に自分の仕事を報告できるなら、クソつまらない動画で十分と判断したのである。

 死者蘇生なんていう人類の夢とも呼べる術を作ったのに、死んだ弟達には目もくれずに情報収集&リサイクル爆弾の目的にしか使わなかった男だ。

 面構えが違う。

 

「でも、私達に動画投稿のノウハウを教えてくださるのなら、もっと楽しく撮れるものの練習の方が良いと思うんですが」

「はい。特にトビラマ先生は、キヴォトスの生徒が注目している存在ですので、プロフィールぐらいは紹介しても良いかと」

「むぅ……一理あるが」

 

 ノノミとアヤネという穏健派にまでダメ出しをされて、扉間は渋い顔をする。

 扉間は忍者だ。情報の価値というものがどれだけ重いかを知っている。

『忍者の死体は余りにも多くのことを語る』この格言は、扉間が原因で作られたと言われる程である。

 故に、自分についてほとんど語らないし、語らないように注意してきた。

 

(……ワシも変わるべきか。里はなく、忍でもない。今のワシは先生だ)

 

 だが、今は忍ではなく先生だ。

 以前のように生きていく必要などどこにもない。

 むしろ、非効率かもしれない。

 

「ふぅ……よかろう。では、お前達に今回の投稿内容は任せる」

 

 大きく息を吐き、観念したように瞳を閉じる。

 たまには若者の感性に頼るのも悪くはない。

 そう、思いながら。

 

「じゃあ、好きな食べ物とか特技とか色々教えてもらおうかー」

「でも、突然そんなこと喋り始めたら不自然じゃない? ちょっと気持ち悪いというか」

「あ、だったら、私達がインタビューする形にしたらどうですか?」

「いいかもしれませんね。それなら、出張でアビドスに来ているというアピールにもなりますし」

「顔出しが嫌なら覆面がある。覆面が」

 

 わちゃわちゃと議論を交わし合う5人。

 そこには、借金の返済方法で話し合う会議とは違った和やかさがあった。

 

(フ、ようやく子供らしい笑いが出来るようになったではないか。これは思わぬ収穫だな)

 

 そんな子供達の姿に、扉間は内心で微笑みながらどこまでプロフィールを明かすべきかと考えるのだった。

 

 

 

 

 

「それでは、第5回トビラマチャンネルを開始する。今回はアビドス高等学校に赴いている。そして……ゲスト出演と言うのか? とにかく、出演者がおる」

「はろはろー。アビドス高等学校・廃校対策委員会・委員長の小鳥遊(たかなし)ホシノだよー。いやー、人前で自分の役職言うなんて久しぶりだから、おじさん緊張しちゃうなぁ」

「今回は、このホシノの質問にワシが答えていく形になる。よろしく頼む」

「はいはい、まっかせてー。今日は謎の多い先生のプロフィールを丸裸にしていくからねー」

 

 とぼけた表情で扉間にマイクを向けるホシノ。

 議論の結果、動画に出演するのは代表であるホシノ1人だけになった。

 因みに覆面は被っていない。

 

 シロコが教室の隅で覆面を握り締めて、捨てられた子犬のような顔をしているが、他の者達はあえて無視をする。

 

「はい、じゃあまずは自己紹介からお願いしまーす」

「千手トビラマだ。キヴォトスの外から来た。年齢は……歳だ」

「え? 先生ってそんなに歳上だったんだー。全然そうは見えないから、意外。因みに誕生日は?」

「2月19日だ」

 

 そんな感じでインタビューは始まっていき。

 

「じゃあ、次は好きな食べ物ー」

「川魚だな。釣ったものをその場で焼いて食べると美味い」

「おー、意外とアウトドアな趣味を持ってるんだ。じゃあ、釣りとかが趣味?」

「……かもしれんな。年を取ってからは仕事ばかりで、あまり機会がなかったが」

「えー、もったいない。じゃあ、今度一緒に釣りに連れてってー」

「機会があればな」

 

 好きな食べ物、趣味などと言った、オーソドックスな質問が行われていく。

 

「次に尊敬してる人は誰ー?」

「……………ふぅー……ワシの兄だ」

「なんで、そんな葛藤した表情を浮かべてるの…?」

「尊敬すべきところもあるが、ダメな所が多すぎてな……いや、これ以上は聞くな」

 

 そして、物凄い複雑な表情で柱間を尊敬している人間にあげる扉間。

 これには、流石のホシノもそれ以上深く聞くことは出来なかった。

 

「じゃ、じゃあ、次に本題に入るよー。先生はどんな女の子がタイプ?」

「このようなことを聞いてこない女子(おなご)だな」

「ありゃりゃ、フラれちゃった……それとも、奥さんに一途なタイプ?」

「ワシは結婚しておらん」

「おっとー、これはみんなにチャンス到来かな?」

「あまり下らん質問をするなら、打ち切るぞ?」

「ごめんってー」

 

 時に漫才のような掛け合いが始まり、扉間の知られざる一面が明かされて行く。

 

「じゃあ、気を取り直してー。先生の特技は?」

「……ホシノ、この紙コップを頭に乗せておけ。このボールペンで紙コップだけ撃ち抜く」

「え? 私、ウィリアム・テルられる? もしかして、さっきの質問まだ怒ってる?」

「しっかりと、撮っておけ……ハチの巣にしてやろう」

「………なんでボールペンをそんなにたくさん持ってるのか、おじさん分かんないなー」

 

 そして、特技として明かされる扉間の能力のほんの一部。

 ダーツが得意と見せかけた、クナイ投げ。

 チャクラは無くとも、身につけた武器術は忘れられていない。

 まあ、忍ならこの程度出来て当然程度の技しか見せないが。

 

「おー! ホントに紙コップだけ綺麗にハチの巣になってるねー……なんで、紙コップが落ちずにペンだけ貫通してるの?」

「正確に、そして素早く投げれば、誰でも出来る」

「うん。とりあえず、先生はあんまり怒らせたらダメなことは良く分かったかなー」

 

 宣言通り、ハチの巣になった紙コップを見ながら冷や汗を流すホシノ。

 銃弾でも耐えられる体でも、これが目などの柔らかい部分に飛んで来たら普通に脅威である。

 

「さて、そろそろ時間だな」

「おっとー、もうこんな時間? じゃあ、寂しいけどお別れだねー」

「今後も、出張先では()()()()()()()()()()()()()()こともあろう。その時はよろしく頼む」

「それじゃあ、千手トビラマ先生と、小鳥遊ホシノがお送りしましたー。あ、みんな私のチャンネルの登録を忘れずにねー」

「お前のではない! ワシのチャンネルだ! ワシの!」

 

 こうして、第5回トビラマチャンネルは終わりを迎えるのだった。

 

 

 

 

 

「……これは不味いですね」

 

 ゲヘナ風紀委員会行政官、天雨アコはトビラマチャンネルの視聴を終えて、指を噛む。

 その姿は明らかに焦りが隠せていないものであった。

 

「アビドス廃校対策委員会の発足、そして今回の動画……明らかに先生とアビドスは私達ゲヘナよりも()()。弱小だとしても、先生がアビドスに居るとその影響力は無視できない……やはり、今のうちにこちらに()()()()()()()()()

 

 突如としてキヴォトスに現れた超法規的な存在、『先生』。

 その与えられた権限の強さから、今後の学園同士のパワーバランスに与える影響は計り知れない。

 故に、明確な()()として先生の存在が欲しいのである。

 

「……ここは私の権限で部隊をこっそりアビドスに侵入させて、先生を拉致するしか」

 

 だが、今の状況は明らかにアビドスに肩入れしている状態。

 弱小も弱小なアビドスだからこそ、影響が少ないと見て肩入れしているのかもしれないが、今後の動き次第ではゲヘナに不利が出かねない。

 故に、独断であっても先生の確保に動くべきだ。

 アコはそう決断を下す。

 それに何より。

 

「それに……ヒナ委員長とお揃いの誕生日だなんて……羨ま…許せません」

 

 敬愛する風紀委員長、空崎ヒナと扉間が同じ誕生日であることが許せなかった。

 こればかりはどれだけ、努力しようと覆せない差。

 才能という生ぬるいものではない。天運だ。

 選ばれし者と、そうではない者。

 その残酷な世界の理不尽に思わず歯ぎしりをしてしまう、アコ。と、そこへ。

 

「アコ、呼んだ?」

「委員長…!?」

 

 (くだん)の上司である空崎ヒナに声をかけられて、思わず声を裏返してしまう。

 

「? 何か、不味いことでも?」

「い、いえ! ただ、シャーレの先生の動向を調べるためにトビラマチャンネルを見てただけで……あ、トビラマチャンネルというのは先生がシャーレの活動を紹介しているものでして」

「ふーん」

 

 一瞬、不審に思われるアコだったが、現在は何も罪は犯していないと思い出し、素直に報告する。ヒナの方もアコの態度には疑問を持ったものの、そこまで興味が無いのかチラッとだけ動画が映し出されている画面を見て、立ち去ろうとし。

 

「……このオッドアイもしかして」

 

 ゲストとして呼ばれた生徒の顔を二度見するのだった。

 

「アコ、動画を見せて」

「え? あ、はい。どうぞ」

 

 ヒナはトビラマチャンネルを見る。

 だが、その目はメインの扉間ではなく、ゲストのホシノを見つめていた。

 

「あの……委員長?」

「間違いない。居なくなったと思っていたけど、まだアビドスに残っていたんだ……」

 

 若干の焦燥、冷静な思考。

 それらが混ざった普段は滅多に見せない表情でヒナは告げる。

 かつて、アビドスで最も恐れられた生徒の名を。

 

 

「―――小鳥遊ホシノ」

 

 

 

 

 

『アビドス高校の奴ら、人の金奪った挙句に先生とやらと楽しく生配信なんてしやがって……舐めてやがる』

『でも、これとかSNS見てたら先生の位置はいつでも分かるぞ。こいつ、ご丁寧に場所まで言ってるからな』

『て、ことはこれを見て人気のない所に行った所を襲えば……』

『簡単に誘拐できるって寸法さ』

『あはは! 頭良い! これで仕事終わらせて、たんまり成功報酬もらうぞ!』

『だな、じゃあ基地の修理も終わったし、アジトに戻ろうぜ』

『帰りにそばでも食べて行こう』

 

 以前、アビドス高校の面々が制圧した、カタカタヘルメット団の前哨基地。

 そこで、カタカタヘルメット団の不良共はスマホ片手に談笑を行う。

 SNSの業務報告に、生配信。

 これらを見れば、自分達はいつでもどこでも先生の動きを監視できると笑いながら。

 そんな彼女達は。

 

 

 

「皆の者、よく聞け。カタカタヘルメット団がワシらの誘拐を企んでおる」

 

 

 

 自分達の方が扉間に、監視カメラで監視されていることに全く気付いていなかった。

 

「えぇッ!? そ、それは本当でしょうか、先生?」

 

 動画撮影も無事に終わり、さてラーメンでも食べにいこうかという空気で教室でだらけていた対策委員会の面々。そこへ、扉間がタブレット片手に冷や水をぶちまけるようなことを告げる。

 

「ああ、今しがた奴らの前哨基地跡に仕掛けておいた監視カメラと盗聴器で確認した」

「あー、おじさんがこの前、()()()()()()だねー」

「い、いつの間に……」

 

 前回の略奪、もとい更生作戦の際にホシノが仕掛けていたものだと言われ、アヤネは頬を引きつらせる。

 

「でも、なんで制圧した基地跡にわざわざ……」

「お前達も家に泥棒が入ったからといって、家そのものを捨てることはないだろう? そして、金銭の類が盗まれておれば泥棒の狙いはそちらだと思い込み、真の目的である監視の方には目がいかん。後は、そのまま奴らが戻るのを待って情報を筒抜けにするだけの話」

「アビドス対策委員会はいつから盗賊になってしまったのでしょうか……」

「大丈夫ですよー、私達は賊は賊でも義賊ですからぁ」

 

 もはや、取り繕いもしない。

 扉間が自分達を明確に泥棒扱いしたことに、アヤネはショックを受けて机の上に突っ伏す。

 そんなアヤネの頭をノノミがよしよしと撫でる。

 

「でも、盗撮なんていいの? 一応、あいつらも女の子なんだけど」

 

 そして、セリカはカタカタヘルメット団にも、一応は人権があるだろうと告げる。

 まあ、本当に一応なのだが。

 だが、扉間は鼻で笑う。

 

「別にワシは訴えられても構わん。カメラも盗聴器も、そこまで丁寧に隠しておるわけではないからな」

「いや、流石に訴えられたら不味いんじゃ」

「案ずるな、セリカ。お前は自分達が違法行為をする画像を裁判所に持っていって、自分は盗撮されていたと言う奴がいると思うか?」

 

 セリカは扉間からそっと目を逸らす。

 そうだ。普通に考えれば、自分達もまとめて処分される。

 さらに言えば、いつでも逃げられるこちらと違って訴えに行く側は、逃げ場などない。

 どう動こうと、詰みなのだ。

 

「カタカタヘルメット団の人権はどうでもいい。それより、誘拐って何?」

 

 ここで、シロコが話を元に戻す。

 対策委員会の仲間を誘拐。

 不良の命の価値が米粒としたら、仲間の命はバスケットボールだ。

 比べるまでもない。

 

「話を聞く限り、ワシらのうち1人を捕まえて学校を脅迫して、退去させるつもりらしいな」

「そんな卑怯な手を…! 許せない!」

「正直、私達の方が卑怯な手を使ってる気もするけどねー」

「ホシノ先輩は黙ってて!」

「およよ、セリカちゃんが反抗期に。ママは悲しいよ」

 

 セリカに怒鳴られて、おいおいと嘘泣きをするホシノ。

 だが、ホシノも何もふざけているだけではない。

 

「それで……先生。カタカタヘルメット団のこの動きはどう見るの?」

「お前の察しておる通り、単なるアジト取得のためにする行為ではない」

「だよねー。連中は明らかに私達がここに居ること自体が許せないみたい。誰かの依頼を受けてる」

 

 カタカタヘルメット団の動きに、確かな違和感を覚えていた。

 やはり、今回の件は裏に何者かがいると。

 

「でも、裏に誰かがいると言われても、一体誰が何のために……」

 

 アヤネが暗い顔をする。

 それは無理もないことだろう。

 理由も分からずに犯罪者に狙われていれば、普通の人間は不安になるものだ。

 

「心配するでない。何か裏があると分かったのだ。ならば、それは前進だ。後は冷静に相手の目的を予測し、対策を行うだけ。不安に思うことはない」

 

 だが、扉間には不安などない。

 というか、生前は常に命を狙われていたので感覚がマヒをしている。

 あの時の恨みとか、言われたことも多々あるがその度に『……どれだ?』と思っていたのは、内緒である。

 

「目的……私達が居なくなった結果として得をする人間が分かれば」

「シロコの言う通りだ。相手の目的が分からない場合は、結果から逆算する。アビドス高等学校から生徒が消えた時、誰が得をするのか、何が起きるのか。いや、それだけではない。逆に損をする人間も考えれば、その者への敵対行動が目的ともなる」

 

 生徒が居なくなることで得をする人間。

 それがカタカタヘルメット団の裏にいる可能性がある。

 

「得をするのは……それこそカタカタヘルメット団のアジトになるぐらいでしょうか」

「そうだねー。他校の侵略も考えたけど、ほっといても潰れる私達を相手してもねー」

 

 メリットになりそうなことを上げていくノノミとホシノ。

 

「困るのは私達ぐらい。地元の人も特には困らない」

「カイザーローンは借金の返済がされなくなったら、困ります」

 

 逆に困りそうな相手を上げていくシロコとアヤネ。

 

「ああ、もう分かんない! 私達が居なくなった結果なんて、学校がカタカタヘルメット団のアジトになるか、カイザーローンに持っていかれるだけじゃない!」

 

 自分達が居なくなった結果、どうなるかを叫ぶセリカ。

 

「やはり情報が足りんな」

 

 これだけでは、やはり目的が分からないと唸る扉間。

 何か、決定的な情報が欲しかった。

 では、その情報を持っていそうな人間と言えば。

 

 

 

「………直接吐かせるか」

 

 

 

 カタカタヘルメット団しかいない。

 

「アヤネ。カタカタヘルメット団のアジトの場所は分かるか?」

「はい、それは分かりますが……」

「ならば、そこに討ち入りするぞ」

「なるほど……そこで雇い主に関する情報を探すんですね」

 

 ノノミの言葉に扉間が頷く。

 こんな時、穢土転生があれば適当に2人攫えば済む話なのだがと思うが、忍術は使えない。

 心の中で残念そうに息を吐きながら、話を続ける。

 

「そうだ。聞き出せなければ主犯格を(ごう)……いや、長時間いるのはお前達が危険か。何か手掛かりになりそうなものを、見つけて来るだけでいい」

「……前半は聞かなかったことにするけど、手掛かりになりそうなものって例えば?」

「チンピラ如きには不釣り合いな金や、武器、または高額の取引明細……まあ、管理されているかどうかは分からんがな」

「取りあえず、怪しそうなのがあったら報告すればいいのね。分かった」

 

 セリカは色々とツッコみたそうな表情をしていたが、話が進まないのでひとまず聞き流す。

 人はそれを成長と呼ぶ。決して、諦めではない。

 

「はいよー、おじさん達に任せといてー……と、行きたいところだけど流石にアジトは数が違い過ぎるから何か作戦考えてよ、先生」

 

 特に緊張した様子のない、いつもの寝ぼけた顔で策を求めるホシノ。

 ホシノ自身はともかく、後輩達がやられる可能性は可能な限り少なくしたいのだ。

 

「ああ、もちろんだ。奴らは盗聴器で聞いた限りだと、ワシのSNSや配信でワシらの位置を特定しようとしているらしい。つまり」

「……それを(おとり)に使える」

「フ、そうだ。やはり、お前には才能があるな、シロコ」

「……嬉しい」

「いや、そんな卑劣な才能で喜ばないでよ!」

 

 やはり、シロコには忍としての才能があると褒める扉間。

 テストで100点を取って褒められた様な顔をするシロコ。

 別に褒められることではないと、ツッコミを入れるセリカ。

 現代道徳の敗北の瞬間である。

 

「でも、それだと囮役が必要なんじゃ……」

「はい。囮に注意を向けさせてその隙に攻撃するのは、良い考えだと思いますけど危険が伴います」

「うーん、おじさんがやろうか? 多分、一番おじさんが粘れるし」

 

 しかし、囮に敵を引き寄せる以上は、それを実行する役がいる。

 ノノミが気づき、アヤネがその危険性の指摘を行う。

 ホシノもそのことに思い当たり、自分がやろうかと提案する。

 

「案ずるな――」

 

 だが、その提案を一蹴し、扉間は何か良いものを見たように優しく笑って告げるのだった。

 

 

 

「―――囮役はもちろんワシが行く。お前達は全員、アジトを攻める実働部隊だ」

 

 

 




これが令和のおとり教育。

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