『こちらクロノス報道部です! 午後11時に発生したトリニティ近郊のブラックマーケットの大火災について、シャーレの千手トビラマ先生が只今、緊急声明を発表しました!』
燃え上がる炎で赤く染まった空に、クロノス報道部のヘリが舞う。
通常であれば、マーケットガードの手荒い歓迎が待っているのだが、現状は火事と進軍してくる生徒の対応で、ヘリ如きを気にしている場合ではないので無視をされている。
『文章での声明となっていますので、僭越ながらこの
ニュースキャスターのシノンが扉間がつい先ほど発表したばかりの、声明を読み上げる。
『本日、連邦捜査部シャーレの顧問、千手トビラマはブラックマーケットで発生している火災について、以下の通りの声明を行います。私は、この火災がブラックマーケットの住人のみならず、キヴォトス全体の生徒達に大きな混乱を招くものであることを深く
まさに、公文書と言った感じのお堅い文書を読み上げ終わる、シノン。
『えーと、つまりトビラマ先生は、このブラックマーケットの火災を止めにアリウス学園と……どういうわけか、閉鎖されたはずのSRT特殊学園の生徒と共に向かっているそうです! 私はてっきり、連邦生徒会のようにブラックマーケットのことは管轄外と言うのかと思っていたので、驚いています! 大人って凄いですね!!』
以前、リンに塩対応された恨みからか軽く連邦生徒会をディスりながら、シノンが扉間の対応を褒めたたえる。
アリウス学園を救った子供達のヒーロー、そういう路線で報道した方が視聴率が良いとふんだのだ。
『おっと、さらに速報です! トリニティ総合学園の桐藤ナギサ代表、ゲヘナ学園の羽沼マコト議長も同様に、ブラックマーケットの火災の鎮火に協力する声明を発表しました。これも意外ですね! 下手すると自治区に燃え移る可能性のあるトリニティはともかく、対岸の火事のゲヘナまで協力するとは思っていませんでした!』
そして、トリニティとゲヘナも協力する声明が発表される。
火災が発生すると同時に、連絡を入れていたのだ。
アリウスは破壊活動は出来るが、救護活動は出来ないので2校の医療機関が必要なのである。
流石のマコトも、同じエデン条約機構のトリニティが人道的支援を行うと表明した以上は、動かないとゲヘナの評判が落ちるので許可を出している。
『これは、ついに条約調停以来謎に包まれていた
「止まりな! ここはブラックマーケット、良い子ちゃんが来るところじゃないよ! 怪我をしたくなかったら、尻尾を巻いて帰りな――」
「―――どうやら、あなた方には強度の高い救護が必要なようですね」
ミネが壊して騎士団が治す、トリニティ救護騎士団のキャッチフレーズの面目躍如である。
「鮮度のいい死体……いえ、負傷者を確認しました。すぐに救急車で搬送してください」
そして、その傍らにはミネの行動に何の疑問も抱いていない、ゲヘナ救急医学部部長の
自身も邪魔をするマーケットガードを気絶させて、死体もとい負傷者として搬送する。
「いやー……医療関係者って、どこもこんな感じなんっすね、イオリさん」
「気をつけろよ。あいつらは同じ学校相手でも容赦しないぞ? この前も風紀委員会の新入りがやられたからな」
医者って何だっけ、という行動をしながら進んで行くミネとセナを見ながら、イオリと正義実現委員会の
「へー、それはまた災難な……何をやったんっすか?」
「騒ぎを起こした犯人の受け渡しを頼んだだけだ。まあ、そいつも負傷者だったんだけど」
「あらら、地雷を踏んだ感じっすねー。治療してからなら渡して貰えたでしょうに」
ゲヘナとトリニティ。
エデン条約が締結したとは言え、元々犬猿の仲の二つの組織。
どうなることかと思われた交流だったが、奇妙な一体感が彼女達をまとめる。
「「救護の邪魔です! 退いて下さい!!」」
救急医学部と救護騎士団は患者を救うという崇高な意志で繋がる。
「「救護って何だっけ……」」
風紀委員会と正義実現委員会は、自分の常識が間違っているわけじゃないよね?
といった、疑問を持つ者同士の親近感で妙な仲間意識を得ている。
ありていに言うと、救護狂い共と比べたら同じ治安維持組織の方が、まだ理解できるというだけの話だ。
「そこ、ボサッとしている暇があったら、進んでください。死た…患者に時間は残されていないんですよ」
「迅速かつ正確な救護、それが出来なければ患者に多大なる負担がいってしまいます。早く、火災現場へと向かいましょう」
邪魔なマーケットガードを救急車で撥ねながら、器用に回収するセナ。
重そうな盾で殴って気絶させる行為。
通称、ミネの
(いや、患者の時間を奪って負担をかけてるのはお前達だよな?)
(いや、患者の時間を奪って負担をかけてるのはあなた達っすよね?)
そんなツッコミを内心で入れるが、イオリもイチカもお口はチャックしたままだ。
だって、逆らったら怖いから。
「さあ、火災現場まではもう少しですよ!」
そうして、
「ぬーすんで、こーわして、やーいて、くだいて、けしましょう」
「あの……破壊工作を童謡を歌うみたいな感じで、進めないでくれませんか?」
所変わり、火災現場。
犯人は現場に戻るの格言通りに、火災現場に残ったラビット小隊。
そして、一足先に到着したアリウス学園の生徒が、元気に周囲の建物を壊していく。
因みに、歌っているのは破壊工作が特技のツインテールのアリウス生徒である。
「あ、ごめん。あたし、アリウスだと流行りの歌とか聞けなかったから、子供の頃に聞いた童謡しか歌えないんだ」
「いえ、音楽性の違いを指摘したのではなく、常識の違いを指摘しただけです。後、サラッと闇をぶつけないでください」
ガスマスクをしたまま頭を掻くツインテールのアリウス生徒に、ミヤコは何とも言えない顔をする。
唐突な闇をぶつけられたら誰だって、戸惑ってしまう。
起き抜けに二郎系ラーメンを食べるようなものである。
「おーい、校長の言う通りに持てるだけ資料を持ってきたよ」
「取りあえずUSBやディスクも持ってきた。まあ、金庫にも入ってないやつだけどな。金庫内は流石に無理」
そんなミヤコ達の下に、ポニーテールのアリウス生徒とガスマスクを借りたサキが書類やディスクをカバンに入れてやって来る。
因みに、名目上は中に取り残された人が居ないかの確認だ。
「おっけ。じゃあ、後はあたしが建物を爆破するね」
「それから私が焼く。完璧な証拠隠滅ですね」
「あー、私は何も見てない、何も聞いてない」
目ぼしいものを強…失礼、盗…失礼、押収した後に建物を壊して、燃やして証拠隠滅を図るアリウス生徒。
サキはSRTの誇り的にどうかと思うが、相手がカイザーなので物理的に目を瞑る。
「ほ、本当に、いいんでしょうか? こんなことして……」
「よく分かんねーけど、火事で全部焼けるよりマシだろ? 校長が言ってたけど、保護だよ。保護。返してって言われたら返せばいい」
「そ、そうかな……そうかも……」
ミユも本当に良いのかと、己の善なる心に突き動かされて疑問を零すが、テンションの高いアリウス生徒に説得されて飲み込む。
このまま放置していれば、火事で燃えてなくなるのは必至。
なので、貴重な資料などを保護(意味深)しているだけ。
え? 返却の予定?
火事で崩壊した建物の資料が残ってるとは、誰も思わねーだろ。
返してって言われないんだから、返しようがない。
『あー、私もそっちに行って好きなだけ、建物を破壊したい……』
『疑問。モエさん、この通信は個人ごとに切り替えなどは出来るのでしょうか?』
『ああ、うん。設定を弄れば出来るよ、ここをこーやってね』
『なるほど、ご指導の程ありがとうございます』
そんな破壊工作を羨ましそうに画面越しに見る、モエ。
しかし、隣には冷静なアリウス生徒が自分に教えを請いに来ているため、仕事を投げ出せない。
ローズ作戦を失敗した手前、指導の仕事を断れなかったのだ。
可哀そうな、モエ。偏にてめえが大爆発を起こしたせいだが……。
「順調に進んでいるようだな。次はあちらの建物を壊すぞ。あっちは鎮火用だ。燃やして証拠隠滅を図る必要は無い」
「「「「はい、校長(先生)」」」」
そして、そんな鮮やかな破壊工作の指揮を執るのは扉間。
現場に出てきて、生き生きと指示を飛ばしている。
忍時代を思い出して、楽しくなっているのかもしれない。
「……お前達、何でこんな奴を慕ってるんだ?」
ビシッと扉間に敬礼を返す、アリウス生徒達にサキが懐疑の目を向ける。
サキ的には目の前の男は、悪人ではないがほぼ犯罪者だ。
今は嫌ってはいないが、それでもこんなに敬意を払うかといったところだ。
「飯くれる奴を慕うのは当たり前だろ? 何言ってるんだ、お前」
「いや、ペットか!?」
「うるせーな、じゃあ、お前達がオレに何くれたんだよ?」
「う……」
テンションの高いアリウス生徒の返事に言葉が詰まる、サキ。
特に深く考えた返答だった訳ではない。
だが、SRTという連邦生徒会長の下に居たサキからすると、『
「校長先生はあたし達と一緒に校舎の掃除をしてくれたよ。ベアトリーチェは生徒会長だけど、碌に関わらなかったし」
「わざわざ、現場まで来ているのも今までなかった」
『肯定。失敗しても死刑にならないのは、良い変化だと考えます』
扉間がアリウス学園に受け入れられている大きな要因。
ベアトリーチェがクソ。
ブラック○○などの定番のように、以前が酷すぎたせいで受け入れられやすくなっているのだ。
内戦を治めた功績があるくせに、恐怖政治を布いた上で生徒との交流もほとんどしていなかったせいだ。
「わ、悪かったよ……」
そんなアリウス生徒の言葉に、サキも引き下がるしかない。
「お前達。ワシを慕ってくれるのは嬉しいが、サキの意見も聞き逃すべきではない。キヴォトスの常識に照らし合わせれば、サキの言うようにワシは違法行為を行う悪い大人だ。そもそも、今やっている行為もここが法の届かぬブラックマーケットだから出来ることだ。安易に真似をするのではないぞ」
しかし、他ならぬ扉間がサキの疑念を肯定する。
扉間が悪い大人なのは事実。
表面上だけ真似をするとダンゾウになる。
「わかりました、校長」
「はーい」
「大丈夫だって。オレ、馬鹿だから。こんなこと思いつかねーから」
『了解いたしました、校長先生』
そんな扉間の言葉を素直に受け入れる、アリウス生徒達。
一見すれば、良いことだが扉間は内心で複雑な想いを抱く。
(少々、ワシに依存し過ぎておるな。指揮を執るのに都合が良いのは間違いないが、ワシが死んだ後が心配だ。元気にワシに反抗するぐらいで、ちょうどいいのだがな)
アリウスの生徒は虐待児のようなものだ。
信用できる大人がおらず、今まで甘えられなかったせいで、少し依存気味になっている。
(サオリを筆頭に少々、忠誠心が高過ぎるのも問題だ。このままでは、ワシのために犠牲になるなどと言い出しかねん。真に大切なのは、若き命だというのに)
サオリ等の、扉間の
扉間自身に全くその気はなかったが、柱間譲りの熱意と自前の合理性の説得が脳を焼くには十分過ぎた。
それが、忠誠心という形で出てきているのだ。
(校舎の掃除も終わった……外に目を向けさせるのには、よい時期だな)
しかし、それではいけない。
扉間は子供達に自由に生きて欲しいのであって、縛りたいわけではないのだ。
故に、外に。自分以外に目を向けさせる機会をここに作った。
すなわち。
「「患者はいませんか!? すぐに救護を開始します!!」」
トリニティとゲヘナとの接触である。
「校長、あの制服は……」
「トリニティとゲヘナ。
燃え盛る火災現場。
緊張感が漂うその場所に、いっそうの緊張感が増す。
トリニティとゲヘナ。アリウスの生徒の憎しみの対象が目の前に居るのだから。
「アリウス学園の生徒さん……っすね」
「アリウス? ああ、先生が校長を務めてる学校だな」
トリニティのイチカは、細めていた目を開いて緊張した様子を見せる。
一方のゲヘナのイオリは、無知故によく分かっていないのかそこまでの緊張は見せない。
それが逆に、ゲヘナを憎んでいたアリウスへの煽りになるとも気づかずに。
「トリニティ……本当にゲヘナと手を組んだんだな」
裏切り者。
アリウス生徒の目がハッキリとそう告げる。
ゲヘナは大嫌いだが、直接の被害を与えられたトリニティの方が憎い。
扉間が率先して、先頭に立っていなければこの場で争いが始まったかもしれない。
「…………」
「えっとー……自己紹介でもするっすか?」
「なんだ、この空気……」
辺り一帯に気まずい空気が立ち込める。
こういう時に限って、空気をぶち壊してくれそうな救護はいない。
負傷者が居そうな所に、先に向かったのだ。
判断が早い。
「先生、ここは先生が動くべきでは……」
そんな超気まずい空気に晒されている、何も知らないラビット小隊。
ミヤコは全員に顔が利くであろう扉間に、事態の収束を促す。
「いや……ワシの出番はない」
だが、扉間は首を横に振る。
ここは自分が出るべきではないと。
「適任者なら、そろそろ来るはずだ」
これから交流する生徒達自身で解決するべきだと告げる。
「もー、先生ったら人使いが荒いんだから。夜更かしはお肌の大敵じゃんね?」
上空から声が降りて来る。
それはさながら神からの啓示。
燃え盛る地獄に舞い降りた、純白の翼を持つ天使。
その名も。
「じゃじゃーん! 親善大使、聖園ミカ、降臨ってね?」
“地獄の天使”、聖園ミカである。
「ミ、ミカ様!? どうしてここに居るんっすか!?」
「あ、ミカだ。久しぶり」
「聖園ミカ……一時期、アリウス自治区に支援を行ってくれたティーパーティーですね」
現状唯一、トリニティ・ゲヘナ・アリウスの生徒と友好的な接触のある生徒。
アリウスと一緒にお茶会をしたいという、甘い夢を抱いたが故に起きた奇跡だ。
「どうしても何も、私もティーパーティーなんだから
「でも、私達が出撃する時は居なかったっすよね…?」
「あー……ごめんね。寝てて、ナギちゃんに叩き起こされたの。それで、遅刻したからヘリで空から来たんだ」
紐無しバンジージャンプで到着した経緯を話す、ミカ。
因みに、背中の羽で滑空するようにしてきたので、怪我はない。
「イオリちゃんもお久しぶり。他のみんなも元気? 夜中に大変だよねぇ」
「このぐらいは慣れてるからな。私達は大丈夫だ」
直接の部下のイチカと話した後に、今度は
これが親善大使のコミュニケーション能力である。
「それから……ごめんね。ガスマスク越しだから、会ったことがあるかどうか分かんないや」
「私達は君を知っている。一時的だったが……支援してもらえたことで、生活は楽になった。感謝している」
「…! そっか……うん、そっか」
ベアトリーチェ時代からの繋がり。
ベアトリーチェ的にはミカを騙して搾取していたつもりだが、一般アリウス生徒からしたら支援をしてくれた恩人なので、他のトリニティ生徒と好感度は雲泥の差がある。
そのことを理解して、ミカは嬉しそうにはにかむ。
「それで、私は何をすればいいんだっけ? 先生」
「消火活動だ。建物を壊す、少々手荒なやつだがな」
「壊す? 許可とか貰ってるの、それ?」
「そもそも建物を建てる許可を取っていないのが、ブラックマーケットだ。壊す許可ももちろん必要ない。思う存分壊して回れ」
「先生って、時々ビックリするぐらい酷いこと言うよね?」
厳密には裏の世界にも、そこをテリトリーにする支配者が居るので
だが、法やルールで定められたものではないので、表の住人からすれば関係ない。
裏社会お得意の暴力による報復?
お前、
「相手側がしっかりと協定を結び、社会のルールに則って動いているのなら、ワシもそれに応じた対応をする。だが、相手側がルールを無視して動くのなら、ワシもそれに準じて動くだけの話。自慢ではないが、ワシはルール無用の戦いには少々自信があるぞ?」
誤解無きように言うと、扉間は子供の頃から戦いとか馬鹿のやること、協定結ぼうぜ。
などと、クレバーに言っていたルール大好きな人間である。
ただし、適性が無法者もドン引きする程卑劣だっただけである。
味方が爆弾になって帰ってくるとか嫌だよね?
ルールで禁止にするから、そっちも酷い術は禁止しようね?
と、言っていただけだ。
「ルールとは強者が弱者を管理するために作るもの。だが、強者が作るが故にそれを守っていれば、強者の面子を守るために庇護が受けられる。ルールの無いことを自由などと言う事もあるが、それこそ強者の理に過ぎん。自由を謳歌できるのは一握りの強者のみだ。だが、所詮は力が保証する自由など、より大きな力に潰されるだけ。真面目にルールを守る方が余程自由を謳歌できる」
ブラックマーケットは力と金で、自由の
だが、ルールが無いが故に自分達以上の力と金を抑える術がない。
裏の王者などと言うと、アルなどはカッコいいと思うだろうが所詮は裏だ。
実体は、日当たりの良い表の場所取りに敗れただけの弱者。
強者に媚を売る存在を弱者と呼ばずになんと呼ぶのか?
本当に強いのなら、媚を売る必要などないのだから。
裏が表に勝てる道理などない、それがこの世の真実だ。
「そうだよな。先生の言う通り、規則は守るためにあるんだからな」
「そう言う事を言ってるんっすかね? なんか、もっと恐ろしいことを言っている様な……」
「アハハ! 私バカだから良く分かんないかなー……そう言う事にしとこっか」
単純にルールは守るべきだよなと、うんうんと頷くイオリ。
ルール守らないなら、命も保証しないよと言っているように聞こえて、ドン引きする、イチカ。
理解するとなんか色々と削られそうなので、分からないフリをする、ミカ。
「うん、よく分かんないから……取りあえず消火活動しよっか」
「そうっすね……爆弾で解体しましょうか、ミカ様?」
現実逃避気味に、消火活動に移るトリニティ組。
「爆弾? んー……こっちのが早くない?」
そう言って、ひょいっと巨大な瓦礫を持ち上げるミカ。
「……は? え?」
ミカは優雅で華麗なティーパーティーという認識を持つイチカは、思わず二度見する。
「お、出た。ミカの
お、いつものをやるのかと、楽しげに語るイオリ。
「これを投げたら外れても、逃げ道を塞げるから便利なんだよね。なんでか、外れても投降してくれることが多いし」
ミカも何の違和感もなく、それを受け入れている。
因みに、投降する理由は目の前に巨大な瓦礫が飛んで来る非日常の恐怖である。
まあ、慣れたらまた悪さをするのがゲヘナクオリティだが。
「それじゃあ、みんな。消火活動を始めよっか☆」
そう言って、ミカは
「いやはや、これはお手柄ですねぇ。流石は
夜が明けての朝。
カヤは室長室で優雅にコーヒーを飲みながら、ニュースを確認する。
【シャーレの先生お手柄! 真夜中の火災から罪なき人々を救う!】
【一方、連邦生徒会は動かず。行政官『管轄外です』と血の無い返事!】
「まあ、流石にこれはリン行政官に同情しますね。ルールを守らず、勝手に自治を行っているブラックマーケットを助ける理由など、私達にはないんですから」
「だが、私達のクーデターには都合が良い」
「はい。勝手に失脚してくれる分には、無駄な仕事が増えずに助かりますから」
一応は、自分達連邦生徒会が責められているというのに、カヤは上機嫌だ。
現在はリンが連邦生徒会長の代理を務めているが、その椅子は大分不安定になっている。
故に、このような偏向報道でも連邦生徒会長の椅子を狙うカヤには朗報だ。
「……ところで、
「いえ、それはまだ未定ですよ。ただ、トビラマ先生のやり方は非常にお手本になるので、私の先生と言っているのです」
ユキノからの問いかけに、カヤは首を振る。
「あくまでも自分は綺麗な立場に立ちつつ、裏では汚いことをしてでも目標を達成する。しかも、それが自分のためではなく生徒のためだというのですから……初めて尊敬できる大人に出会えたと思いますよ」
カヤは扉間に直接出会う前から、ずっと扉間のことを注目していた。
自身が超人と認める連邦生徒会長が選んだ先生。
アビドスに行ったかと思えば、あっという間にカイザーローンの不正を暴き理事を捕まえる。
ミレニアムに行けば、どういう訳か腹黒いと噂のビッグシスターを身内に引き込む。
ゲヘナでも平然と最強戦力の風紀委員長のヒナと親交を結び、狸の万魔殿ですら手を組む。
そして、トリニティに行けば死んだフリをしつつ、連邦生徒会長の残したエデン条約を締結させて、両校に強い影響力を得る。
おまけに、独自勢力のアリウスまで手に入れているというのに、悪い噂はほとんど流れない。
いっそ不気味なまでに、ことを上手く運んでいる超人。
なお、中身は割と
「そんな大人に認められたら、私も更なる高みに近づけると思いませんか?」
「高み? 何の話だ?」
「それは勿論――」
ユキノの質問に答えようとした所で、カヤの携帯が鳴る。
こんな時間に誰なのか。
そう思って、宛先を確認したカヤは、なるほどと笑う。
「すみません。電話に出ますね? ……はい、もしもし。こちら不知火カヤです」
『……私だ』
「これはこれは、お世話になっております。ジェネラルさん」
電話の相手。
カイザーPMCの高位指揮官ジェネラルに、カヤは営業スマイルで会話を行う。
「今回は何のご用ですか? 子ウサギ公園の件でしたら、もう少し待ってくださると助かります。何分、昨日の火災で連邦生徒会もてんやわんやしていますので」
『子ウサギ公園の件ではない。その火災の件だ』
「火災? それはまたどうしてでしょうか?」
分かっているが、分かっていないフリをしてカヤは話を進める。
まるで、蛇が獲物を待ち構えるように。
『分かっているとは思うが、出火元は“カイザー・インダストリー”の倉庫だ。倉庫そのものも、中の武器もそこまで惜しくはないが……PMCに違法武器を流していた証拠が見つかると少々面倒だ』
カイザーグループはまさにタコのように、
本社は確かに無事だ。
だが、子会社を持っている方としてはたまったものではない。
しかも、今回は違法武器の直接取引なので、子会社が勝手にやったでは逃れられない。
故に証拠を隠滅するしかない。
『本来なら、武力で解決したいところだが……現在も
「それで、私達に何をお願いしたいのですか? 法に依らない事柄となると、私達には難しい事柄なのですが」
『無論、頼みたいのは法に依る事だよ。ヴァルキューレとしてシャーレの監査をして欲しい。今まで綺麗に尻尾を隠していたシャーレの先生だが、我々は1つだけ犯罪の証拠が残っていることを確信している』
「先生が?」
あの完璧な扉間がそのようなミスを犯すだろうかと、眉を顰めるカヤ。
そんな彼女に対して、ジェネラルは丁寧に語り始める。
『以前、アビドスで前理事と先生がぶつかった際からだが、シャーレの先生は
「とある犯罪集団? それは一体?」
疑問符を浮かべるカヤに対して、ジェネラルは重苦しい言葉を吐き出す。
小娘達に良いようにしてやられた屈辱を噛みしめる様に。
『奴らは、いくつもの
ジェネラルが大きく息を吸い、憎き仇敵の名を吐き出す。
『―――便利屋68。指名手配犯、陸八魔アルが率いる、シャーレの暗部だ』
許さんぞ、陸八魔アル。
Unwelcome School.
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