千手扉間のブルーアーカイブ   作:トマトルテ

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63話:船上のチェイサー・後編

 “暁の姫”~化け物扱いで国を追放された私が正義のテロリストの一員に!? イケメンテロリスト達と世界平和を目指します! まだ間に合うと言われても、何もかもが遅い!!~

 

 ・あらすじ

 生まれた時から、理由も分からずに化け物扱いを受けてきた主人公。

 ある日、どのみち碌な奴じゃねぇと、無実の罪を着せられて国から追放されてしまう。

 失意に飲まれる中、主人公の前に現れたのは“暁”を名乗るイケメンテロリスト集団!?

 当然警戒をするが、話を聞いてみると実はテロリスト達の目的は世界平和のようで?

 主人公は行く当てもないので、仕方なくテロリストに加わることに。

 国からも捨てられた、主人公に差し伸べられた一癖も二癖もある10人の手。

 私の人生、これから一体どーなっちゃうのーッ!?

 

 

 

『コユキェ! お前はオレにとっての新たな光だ!』

「うわ!? 最初だから一番イケメンな人を選んだのに、なんですかこの変顔!? それにコユキ()って発音どうなってるんですか!?」

 

 ゲーム開発部、最新作“暁の姫”。

 そのテストプレイをするコユキが、イケメンキャラであるイタチ(ウィーゼル)の唐突な変顔に困惑した声を出す。

 

「ついペンが乗っちゃって……いや、イケメンの変顔からしか得られない栄養ってあるよね?」

「あー、()の部分は仮で入れてた少女Aの名前のせいだ。修正しておかないと」

 

 それに対して、モモイは単純なミスだと頭を掻き、ミドリは目を逸らす。

 黄金比と言うように、イケメンや美人の顔立ちは自然と似たものになる。

 なので、描いている側としては崩した顔や、ブサイクを描く方が楽しかったりするのだ。

 コハルが押収する本などで、おじさんの顔の方がヒロインより気合を入れて描かれていることがあるのは、基本それが理由だ。

 

「というか、戦闘って……これ乙女ゲームなんですよね? いえ、戦闘楽しいですけど」

「つ、作ったキャラにいろんな動きをさせようと思ったら、これが一番便利だったから……」

「ミドリの提案です。戦闘を入れれば、服の破れたちょっとエッチなCGも入れられると熱弁していました!」

「私がしっかり監修しましたので、R-15の範囲は超えるような差分はないので、安心してください」

「やめて、アリスちゃん。ケイちゃん。その話は私に効く。やめて」

 

 同性だけしかいないならともかく、ここには男性もいる。

 しかも、大人(トビラマ)

 思春期か……と生暖かい目を向けられて、ミドリの頬が桃色に染まる。

 ミドリなのに。

 

「あ、話している間に戦闘に勝ちましたね。あれ? ここで、エンディングですか? 『主人公とイタチ(ウィーゼル)は結婚して、平凡で得難い生活を死ぬまで送りました』…か。こういうのでいいんですよ、こういうので……は?」

 

 <BAD END>

 

「はぁッ!? なんで!? 戦闘に勝ってクリアしたじゃん!?」

 

 戦闘に勝ってエンディングに辿り着いたはずなのに、画面にはBAD ENDの文字が並ぶ。

 当然、コユキは訳が分からずに抗議の声を上げる。

 

「ふっふっふ、甘いですね、コユキ。日常パートでも何度も触れたように、ウィーゼルは幻術使いです。HPの色がいつもと違うと思いませんでしたか?」

「え? HPバーですか?」

「ウィーゼルの幻術でHP残量を誤認させていたんだよ! 恋は盲目って言うでしょ?」

「はーッ!? 分かりませんよ、そんなこと!!」

 

 してやったりと、楽しそうに語りかけてくるアリスとモモイに、コユキはキレる。

 緑色のHPバーが黄緑になっていたとか、注意して見ないと分かるわけないだろうと。

 

「ヒント無しで画面の指示通りにBボタンを押したら、ゲームオーバーするよりはマシだと思います」

「うむ。今回は戦闘前にちゃんと『人は思い込みの中で生きている。お前には真実が見えるか?』とヒントが出ておったからな」

 

 しかし、初代テイルズ・サガ・クロニクルで鍛えられたケイと扉間は、まだ分かり易かったと言う。

 今回はちゃんとヒントを入れようと、ケイが提言していたのだ。

 これが4人から5人に増えたことで目覚めた伝説の力だ。

 

「これだから玄人は! そういう製作者だけが満足するギミックは自己満足(ひとりよがり)って言うんですよ! せめて台詞を赤文字にするとか、HPバーをもっと分かり易い色に変えるとかにしてください!! 素人には分からないんですよ、素人には!」

 

 だが、目覚めた力が正しいものとは限らない。暗黒面に目覚めることだってある。

 ゲーム玄人なら、何かあるなと察するが素人には分からない。

 エベレストに登頂した人が、富士山を低いと言うようなもの。

 一般の感覚と感性にずれが生じているのだ。

 

「うッ!?」

「ああ! ユズがロッカーの中から倒れ出てきました! 大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫……ただ、この前対戦で『壁とでもやってろ』って言われたのを思い出して……」

「ああ……ユズちゃんが格ゲーで10戦連続パーフェクトした時のあれだね。ただの捨て台詞じゃん。気にしないでいいよ」

 

 独りよがりと言われて、嫌な記憶を思い出してしまう、ユズ。

 絶対的な強者故の孤独。

 クイーンはただ(ひと)り、このユズだ。

 

「え? いや、そこまで批判したつもりではなかったんですが……」

「ううん、大丈夫。ちゃんとプレイした上での感想なら、受け止められるから」

「誹謗中傷でなければ、ただの意見だ。変に遠慮する必要はない。今のコユキの意見は貴重なものだ。どうやら、ワシも少々ここで詳しくなり過ぎたらしい」

 

 倒れこんだユズを見て、バツの悪そうな顔をするコユキ。

 だが、当のユズや扉間も言うように、ちゃんとプレイした素直な感想であれば『つまらない』もれっきとした意見なのだ。

 

「そういうことなら……因みにこれ、騙されずに勝ったらどうなるんですか?」

「え? 死んじゃうよ。ウィーゼルって病弱だし」

「はい?」

 

 さらっと告げられた真実に、コユキが目を点にする。

 

「この戦闘(ルート)でのENDは3つに分かれててね。敗北でBAD(バッド)。勝利でBETTER(ベター)。引き分けでTRUE(トゥルー)だよ」

「引き分け!?」

「どちらも相手を殺せずに、1時間が経過すると発生するよ。そこでウィーゼルの真実が語られるんだ」

「真実?」

「ウィーゼルは犠牲になったんだよ。古くから続く一族の宿命、その犠牲にね」

 

 ドヤ顔でトゥルーエンドへの行き方を語るモモイ。

 真実? 続きは発売してからのお楽しみに!

 

「いやいや、1時間も戦闘は長引きませんって。そんなにゲームが上手くない私でも、5分ぐらいで終わったんですから。10分ぐらいならポーズ画面にして、ちょっとトイレに行くとかしたら、発生するかもしれませんけど。1時間はどこかに出かけるレベルですよ」

「ね、寝落ちとかしたら……」

「逆に聞きますけど、物語の終盤で寝落ちされるストーリーとか、失敗そのものじゃないですか?」

 

 というか、その手の時間経過で発生するものはおまけ要素だからいいのだ。

 最悪気づかれなくても別に良いぐらいでないと、間違いなく荒れる。

 しかも、1時間の放置となると情報を得ても、すぐに試せないのでそらそうよ。

 

「た、確かに……後一歩のところでお預けは嫌だよね」

「まあ、でもなんだかんだ言って楽しかったですよ。あ、じゃあ次は先生と交代です」

「ワシか。ふむ、疑似恋愛ゲームだとは分かったが……中々に奥が深そうだ」

 

 そうして次は扉間がコントローラーを握るのだった。

 

 

 

 

 

「国のために暗殺に向かったというのに、失敗したら裏切り者として始末されかけたとは……始末する人間の考えは分かるが、中々に惨いな」

角都(ビショップ)はその事件がトラウマで、お金しか信じられなくなったんだよ。お金は何も言わないからね」

 

 国のために努力した人間を、裏切り者として始末するなど許せん。

 と、生前に自分が穢土転生(やったこと)を棚上げして、憤る扉間。

 民度を最悪にした結果生まれた悲劇である。

 

「なるほどな……経済的観点から見て、主人公(ヒロイン)を任せるに足るか決めたのだが、そういう理由だったのか」

「先生が主人公に対して、親目線になってる……」

 

 乙女ゲームなのに、そういう視点でやっていいのかなとユズが微妙な顔を見せる。

 

「何を言う。結婚というのは、愛だけでは語れん。本人同士だけではなく、お互いの家族のことも考えて決めなければな」

「うわーん! 先生が乙女ゲームなのに夢のないことを言っています! 夢女子から夢を取ったら女子しか残りません!」

 

 アリスの言うように、扉間の結婚観には夢がない。

 お見合いが基本で、政略結婚が当たり前だった世代の価値観である。

 

「そもそも、ワシは枯れた爺で男だ。乙女ゲームに入れ込むには無理がある。どちらかと言えば、幼い女子(おなご)の主人公に肩入れしてしまうのは仕方のないことよ」

 

 しかも、か弱い女。

 老人なら主人公を娘のように思って、それを託せるかどうかをヒーロー達を選ぶ基準にするのは何もおかしくはない。

 どこぞの馬の骨にワシの娘がやれるか!

 

「これは……参考にするべき意見なのでしょうか?」

「でも、主人公を好きになってもらうのは大事なことだよ、ケイちゃん」

「そうだよ! 主人公を好きになってもらったら、それはもうプレイヤーじゃなくてヒーローの1人だからね!」

 

 主人公に自己投影する。

 1人の人間として応援する。

 楽しみ方は人それぞれだが、少なくとも好きな主人公の方が物語に入りやすいのは事実。

 ワシの娘だ! ワシの! という気分でプレイしても構わないのだ。

 

『コユキ……もらうぞ、お前の心臓(ハート)

「そう言えば、何で私の名前のままなんですか? 先生」

女子(おなご)にワシの名前を使うわけにもいかんだろう」

 

 ラストバトルで、ビショップに決め台詞を言われるコユキが疑問をこぼす。

 男の名前で言われると、殺害宣言にしか聞こえないからしょうがないね。

 

『そうか……世の中には…金よりも大切なものが……あったんだったな……』

「おめでとう、先生! ノーダメでの一発TRUE ENDだね。因みにBADだと、物理的に心臓を奪われて一緒に生きていく、意味深ENDだったよ!」

「あの、これ本当にR-15ですか? 結構グロくないですか?」

「直接的描写はないからセーフです」

 

 コユキが疑惑の判定に首を傾げるが、ケイが否定する。

 スーパーAIの導きだした結論なので、きっと正しいのだろう。

 因みにBETTER ENDは相棒となって、金稼ぎを続けていくものになっている。

 

「先生の番も終わりましたね。次はアロナもやってみますか?」

『キーさん、すいません(・_・;) 宗教上の理由で、浮気はちょっと……』

「アロナちゃんは推しに一途なんだね。まあ、ちょっと気持ちはわかるかな」

 

 ケイからのお誘いを画面上での文字入力で申し訳なさそうに断る、アロナ。

 ミドリもその過激な思想を否定せずに受け入れる。

 推しの否定は宗教戦争(ジハード)になるからね。

 

 推しが誰か? 察しろ。

 

「では、コユキが二度目のプレイですね! 次は別の攻略キャラを選んでください!」

「え…? もしかして、これ後8人分やらないとダメなんですか?」

「最初に言ったじゃん。全キャラ攻略してもらうよーって」

「う、ゲームは好きですけど、ぶっ続けは辛い……」

 

 遊ぶのが好きなコユキだが、遊びとは強制されてはダメなものだ。

 ゲームが苦行に変わる瞬間である。

 

「話は聞かせてもらいました。可愛い後輩のために、慈愛の聖母も甘えたくなる究極の優しさを兼ね備えた先輩ハッカーが手を貸して差し上げましょう」

「あ、ヒマリ先輩だ!」

 

 ヒマリちゃん登場。

 颯爽と車椅子を乗りこなし、明星ヒマリがゲーム開発部の部室に入ってくる。

 

「私もお邪魔するね」

「あなたは……エイミさん? 珍しいね、うちに来るなんて」

「部長の付き添い。それから、部屋涼しくしてもいい?」

 

 そして、その後ろに続くのは和泉元(いずみもと)エイミ。

 長いピンクの髪を腰まで三つ編みにした、どこか無機質な雰囲気を持つ子だ。

 だが、彼女の特徴は何と言っても──

 

「え? いや、十分涼しくない?」

「そっか。じゃあ、私が脱ぐね」

「待ちなさい、エイミ! 先生もいるんですよ!」

 

 肌の露出度だ。

 室内なのに、ほぼビキニと言ってもいい肌面積。

 しかも、暑いらしくさらに脱ごうとし始める始末だ。

 おい、その先は18禁(地獄)だぞ。

 

 大天使ヒマリちゃんの華麗なインターセプトがなければ、扉間がセクハラの罪で捕まっていただろう。

 

「何でいけないの? 服は元々体温調節をするために生まれたもの。つまり、体温調節のために服を脱ぐのは当然のこと。それに他のみんなは暑くないなら、私だけが脱げばそれで丸く収まるよね?」

「寒がりの私のために我慢させているのは正直申し訳ないですが、それはそれ! これはこれです! 乙女が無暗に肌を露出してはいけません!」

「ちぇ、じゃあ扇風機使うね」

 

 ヒマリの必死の説得に納得したのか、していないのか。

 愛用のハンディファンで大人しく風を送り始める、エイミ。

 

「コホン…お見苦しいところをお見せしました。一応言っておくと、エイミは常人よりも遥かに体温が高いだけで、露出狂などの類ではありませんのでご安心ください、先生」

「事情があるなら構わん。正直、嫁入り前の女子がどうかとは思うが……体質の問題なら仕方あるまい」

 

 ヒマリが説明するように、エイミは体温が高いために薄着をしているだけだ。

 寒中水泳が適温に感じられるのは、キヴォトス広しと言えど、エイミぐらいなものだろう。

 

「アリス、クエストだ」

「クエストですか?」

「小遣いを渡すので、体の冷えそうなもの……氷やアイスやジュースを買ってきてくれ。報酬は余った金で好きなものを買う権利だ。どうだ? 受けてはくれんか?」

「はい! アリス、クエストを受注しました! それでは行ってきます」

 

 扉間から多めのお小遣いを渡されたアリスが、ニコニコと笑いながらお買い物に出ていく。

 

「私のため? 別にいいのに」

「いいや。今から、お前達にも乙女ゲーをやってもらうからな。その前報酬だと思えばよい」

「私は構いませんよ。後輩の手伝いをしてあげようと思ったのは事実ですので……ただ、その前にここに来た目的を果たさせてもらいます」

 

 人手が足りないので、手伝ってくれと言う扉間に頷くエイミとヒマリ。

 しかし、ヒマリの方は何か言いたいことがあるらしく、ずいと車椅子を進ませる。

 

「リオを姉妹馬鹿にしてくれたことに、文句を言わせてもらいます!!」

 

 そして、プンスコと怒る。

 ちょっと目を離した隙に、リオが姉を名乗る不審者になってしまったことを。

 

「誰彼構わず妹判定していってるんですよ! あの下水道…いえ、今は道頓堀に格上げしていましたね。とにかく、学年が同じ私まで、“双子の妹”扱いしてくるんです! もう、気持ち悪いこと他ないです!!」

「……実害はなかろう」

「ありますよ! 精神がガリガリと音を立ててすり減っていきます! 反論したり、抵抗しても『反抗期かしら…?』なんて、生暖かい目で見てくるんですよ! 屈辱です!」

 

 弁論は元々ヒマリと同様に強い。

 そこに加えて、素の天然さと頭ビッグシスターが追加されれば無敵だ。

 反抗しても、姉として話に来るので出鼻をくじかれる。

 そして、最後は一分の隙も無い合理的な会話で説得してくる。

 とんちきと合理性のフュージョンで、銀河でぶっちぎり最強の戦士が生まれたのだ。

 

「そもそもの話ですよ? 姉を名乗るなら、光をもたらす素敵な笑みで後輩達を幸せにする、この超天才病弱系美少女ハッカーの私の方が向いていると思いませんか? あのデカい妹よりも、私の方が遥かにお姉ちゃんに向いています! あなたもそう思うでしょう、エイミ?」

 

 結局のところ、姉妹というよりリオに負けることが嫌なのか自分の方が姉に向いていると張り合う、ヒマリ。

 そして、会話の矛先は実際の後輩であるエイミに向くが。

 

「どのキャラが一番()()終わるの?」

トビ(カイト)です。計算上、最も()()終わります」

「じゃあ、そのキャラを攻略するね」

 

 部長は後!

 だって、すぐに攻略した方が効率的だし。

 されてしまう。

 

「ふぅ……全く照れ屋さんですね、エイミは」

「そういったポジティブ思考はある意味で、上の子らしいな」

 

 ワシも兄者がウザいときは無視していたなぁとしみじみと思い出す、扉間。

 まあ、ヒマリと違って柱間はずぅーんと沈むタイプだったが。

 

『うっひょー! 僕ちんにも遂に後輩っすか!? しかも可愛い子じゃないっすか! よーし、先輩張り切っちゃうぞー!』

「何この人、ダサイお面付けてるね」

「エイミが服装に言及するなんてよっぽどですね」

「ハイセンスって呼んで欲しいかな」

 

 そして始まる、エイミのカイト攻略プレイ。

 服装とか、効率的なら下着で外出しても良いと言うエイミに、ダメだしされるセンス。

 軽薄なキャラ付け。早くも暗雲が立ち込める。

 

『エイミちゃーん! 任務の後に甘味処行かない? デートしようよ、デート! 先輩がおごるからさぁ、ねぇ? 初めての任務で疲れたでしょう? カッコいい先輩のちょっといい所見たくない?』

「ウザい……後、ちょっと部長に似てる」

「エイミ、それは私のことをウザ可愛い系美少女ハッカーと思っているということですか?」

「ナルシストなところが似てるだけ。うるさいとは思っても、ウザいとは思ってないよ。後、可愛いとも思ってない」

 

 小さいけれど、大きな違い。

 うるさいとウザいには天と地の差があるのだ。

 

「でも、これだけ軽い感じなら確かに一番早く終わりそう」

「まあ、現実でこんな男が居たらすぐにエイミから離しますが、ゲームですからね。こういったキャラが好きな子もいるのでしょう」

「ふっふっふ」

 

 ケイ曰く、もっとも早く終わるキャラ。

 軽薄なキャラ付け故に、そういうことかと納得を見せるエイミとヒマリ。

 そんな2人を見て、モモイは『ダメだ、まだ笑うな』と意味深に笑いをこらえる。

 

「じゃ、告白するね、ポチ」

「え? 早くないですか?」

「付き合う時間なんて無駄。どうせ結婚するなら、結婚してからいちゃつけばいいよね」

 

 割と形式ばった恋愛が好きなヒマリと、ナチュラルに合理的な時間の使い方をするエイミ。

 ひょっとすると、ヒマリはエイミにリオの面影を見出しているのかもしれない。

 

『……()()? あ! いやー、気持ちは嬉しいんだけどねー。オレはエイミちゃんにはもっと良い男が居ると思うんだよね。それに……ほら! 選ぶなら、先輩達みたいな、もっとちゃんとした人を選ぼうよ。ビショップ先輩とか、老後に必要なお金まで考えてくれるよ?』

「急にまともなことを言い始めましたね」

「まどろっこしい。私、ちょっといやらしい空気にするね。えい」

 

 ポチっと、エイミが押し倒すボタンを押す。

 

「ケイ、本当にこれはR-15なのだな? ワシ個人としてはうるさく言いたくはないが、先生として対象年齢にあっていない作品は没収するぞ」

「直接的描写はないので、大丈夫です」

 

 そして、そのボタンの存在に扉間が懐疑の目を向けるが、スーパーコンピューターなど鼻で笑えるケイの出した答えはセーフ。

 そう言われると、幼少期からR-18Gなことをしてきた扉間からは、強くは言えない。

 

『すまない……オレには忘れられない女が居るんだ。だから、本当に……すまない』

 

 <BAD END>

 

「これでクリア…?」

「BAD ENDでも終わりは終わりですけど……どうなんですか、モモイ?」

 

 軽薄なキャラを演じていたくせに、いざ近づいてみるとクソまじめな対応をして終わらせる、カイト。

 ん、昔の女が忘れられないみたい。

 

「うん、クリアでいいよ。だって、カイトはBAD ENDしかないし」

「は?」

 

 乙女ゲームのくせに、攻略できないよ。と悪びれなく言う、モモイ。

 これには 寿限無 寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末 食う寝る処に 住む処 藪柑子の 藪柑子 パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンの グーリンダイ グーリンダイの ポンポコピーの ポンポコナーの 長久命の 長助 程に気の長いヒマリちゃんも怒りを露にする。

 

「……もしかして、一番()()終わるって」

「はい。BAD ENDしかないので、統計的に見れば最も早く終わります」

 

 エイミの問いかけに、ケイが真顔で頷く。

 早く攻略できるではなく、早く終わると聞かれたのでBAD ENDしかないキャラをおすすめしただけ。

 元AI故の気の利かなさである。

 

「一応ね、ネタバレするとカイトは暁の真のボスなんだよ」

「だ、だから、他のキャラを攻略した後じゃないと、る、ルートが解放されなくて……」

 

 ミドリとユズからの補足。

 カイトは裏ボスである性質上、究極のネタバレなので他のキャラのストーリーを先に見ないといけなくなっている。

 だったら、後で解放される形にしろ? それはそう。

 

「助言をもらえるなら、もっと早めに言って欲しかったかなって」

「というか、それは見方を変えれば全キャラで一番時間がかかっているのでは?」

「BAD ENDは最初から解放されているので、統計に狂いはありません」

 

 別にキャラに入れ込んでいたわけではないが、これはこれで消化不良感がある、エイミ。

 計算式そのものに間違いがあるのではと、ツッコミを入れるヒマリ。

 そして、平均値に狂いはないと返す、ケイ。

 

「でも、このやり方だと、最初に選んだ人がずっとBAD END以外に行こうとして無駄な時間を使って、そのままゲーム投げ出しちゃいませんかね、これ?」

「うむ。正統派を後で楽しむつもりで、ネタ枠から消費する人間が選ぶ可能性はある」

 

 ダッセーお面をつけているので、正直インパクトは抜群。

 一番最初に選ばれても何もおかしくない。

 何なら、プレイ動画を配信するなら真っ先に選ばれそうだ。

 

「むむむ、確かにそうかも……メモメモ」

 

 コユキや扉間の意見に頷きながら、メモを取るモモイ。

 ゲームの内容はともかくとして、ゲームを作ることに関しては真剣なのだ。

 

「アリス、ただいま帰還しました!」

「あ、お帰りなさい、アリスちゃん……て、随分と大荷物になったね。また、みんなにおすそ分けしてもらったの?」

 

 勇者アリスの帰還。

 その手に山盛りの荷物を携えて。

 

「はい! 旅の途中であった人達に、体の熱を下げるものが欲しいと伝えたら、色々と貰いました。熱冷ましシートに、氷のう(ひょうのう)、氷や解熱鎮痛薬。他にはゼリーやスポーツドリンク、ジュースやアイスなどなどです」

「あー……もしかして、誰かが風邪でもひいたと思われたのかな。何か悪いなぁ、今度何かお礼しないと」

 

 ミレニアムの人気者のアリス。

 そのアイドル力は凄まじく、彼女が冒険に出かければ多くの者が応援に駆け付けるほどだ。

 そんなアリスが熱を下げるものを求めていれば、ゲーム開発部への心配も兼ねてこうなるのも当然。

 リアルお姉ちゃんであるモモイは、そんな事情を察してお礼に何かしようと考える。

 

「そうだね。私が何か用意するね。もとはと言えば、私のせいだし」

 

 エイミがモモイの言葉に頷きながら、いそいそとおでこに熱冷ましシートを張り、氷嚢(ひょうのう)に氷を入れていく。見た目は完全に風邪を引いた患者だが、本人曰く平熱なので健康に問題はない。

 

「ゼリーとスポーツドリンクはみんなで食べるとして……解熱鎮痛薬はどうしよう?」

「アリス知っています! 解熱鎮痛薬の成分は熱や頭痛だけなく、()()()()特有のデバフである腰痛や肩こりなどの様々な痛みに効きます! 先生どうぞ!」

「………ああ、すまんな」

 

 勇者アリスの攻撃。親切な悪意(イノセント・アタック)

 効果は抜群だ! 扉間に1アビドスダメージ!

 

「あ、すいません。大切なことを忘れていました! 先生は高血圧などの持病や、現在服用中の薬などはありますか? この解熱鎮痛薬の成分は、高血圧の人は医師又は登録販売者等に相談するようにと記載されていますので」

「……無い、そう心配するな」

「にははは! 嬉しさ半分、悲しさ半分の怒るに怒れないって顔してますよ、先生」

 

 屈託のない笑みを浮かべて渡された鎮痛薬に、何とも言えぬ表情を浮かべる、扉間。

 確かに、年寄りの自覚はあるし、この年になると腰とか肩が痛い。

 痛いのだが、こうも堂々とお年寄りに効きますと言って渡されると、心に来るものがある。

 それから、コユキはタイキックな。

 

「まだまだありますよ。今回手に入れたのはアイテムだけではありません。なんと、新たな仲間が加わりました!」

「な、仲間?」

 

 また知らない人が増えるのかと、ユズがロッカーの隙間から顔を覗かせる。

 

「パンパカパーン! トキです!」

 

 シャランと、アリスの後ろから少し緊張した雰囲気の瀟洒(しょうしゃ)なメイドが現れる。

 

「アリス曰く、C&Cの隠しキャラの飛鳥馬(あすま)トキです。普段はリオ会長のボディーガード兼、身の回りの世話をするメイドです。以後、お見知りおきを」

 

 優雅にスカートの裾を掴んで挨拶をする、青眼の金髪メイド(ブルーアイズ・ゴールドヘアーメイド)の、飛鳥馬トキ。

 まさに、完璧がメイド服を着て歩いているかのような仕草に、モモイがおおっと声を上げる。

 

「C&Cの隠しキャラ……5番目(アンノウン)のコールサインですね。恐らくは、部長であるネルですら知らない存在。存在する情報だけは知っていましたが……まさか、どこかの髪まで腹黒い姉を名乗る不審者の一味だったなんて」

 

 一方こちらは、全知が服を着て歩いている完璧美少女ヒマリちゃん。

 リオの名前が出たことで、最大限に警戒度を上げる。

 今は姉を名乗る不審者と化しているが、以前までのリオは超がつく秘密主義者。

 私兵を使って何を企んでいたのか分かったものではない。

 

「はい。私はリオ会長より、あるオーダーを受けてアリスに接触しました」

「アリス、こちらに来なさい。そのメイドは危険です」

「?」

 

 リオからの依頼を受けてここに居る。

 その言葉に最大限に警戒して、アリスを守ろうとするヒマリ。

 しかし、当のアリス本人は不思議そうな顔をするだけだ。

 それもそのはず、なぜなら。

 

 

「リオ様からのオーダーは──友達を作ってくることです」

「はい! なので、アリスが最初の友達になりました!」

 

 

 トキは勇者アリスの友達なのだから。

 アリスがトキの手を握ると、トキの顔が緊張のほどけた少し柔らかいものになる。

 

「……はい? あの、友達が居ないリオが友達を作れと? そう言ったのですか?」

「今まで私が、外との交流が少なかったことを気にされていました。なので、友達を作って遊んで来いと命令を」

「もう一度聞きます。アリスの爪の垢を煎じて飲ませたいほどに、友達が居ないリオが友達を作れと言ったのですか?」

「違います、ヒマリ! アリスはリオ先輩とも友達ですよ!」

 

 友達が居なさそうな自分を棚に上げて何を言っているんだと、驚愕の表情を浮かべる、ヒマリ。

 因みに、周囲からはヒマリとリオは友人だと思われていることは知らない。

 

「友達との交流。うんうん、それもゲームだね! 会長も分かってるじゃん」

「別に、私たちの所に行けと言ったわけじゃないと思うけど……取り敢えずやってみる?」

「アリスから聞いた乙女ゲーム。今からドキがムネムネします。トキだけに」

 

 ミドリからの問いかけに、まだ緊張しているのか真顔で冗談を飛ばす、トキ。

 時に、友達との初交流は絶滅危惧種を復活させる程度には難しいものになるのだ、トキだけに。

 

「では、次のプレイはトキからですね。コユキ、少し奥に詰めてください」

「いや~、随分と大所帯になりましたねぇ。私、帰りましょうか? サボ…人が多いですし」

「は!? ここがチャンスです。先生、あれをアリスに言ってください! 先生にのみ許された特権。『野比、廊下に立っておれ!』を!」

「授業中でもないのに廊下に立たせる理由はない。むしろ、遊びで誰かを除け者にする方が先生としては叱る場面だ。故に、コユキ。お前も継続だ」

「にはは……いや、冗談ですって。一人は寂しいですし」

 

 ユズ(INロッカー)、モモイ、ミドリ、アリス、ケイ、扉間、アロナ(INシッテムの箱)コユキ、ヒマリ、エイミ、トキ。

 以上の11名がゲーム開発部部室に集まり、トキのプレイが始まる。

 

「では……私はこのサメっぽい人……鬼鮫(シャーク)さんを攻略してみせます」

「げ、サメ!?」

「どうしたんですか? コユキ?」

「な、何でもないです。ちょっと、サメが苦手になっただけで」

 

 悩んだ末にネタっぽいキャラを選べば無難だろうと判断したトキが、鬼鮫(シャーク)を選択する。

 トビ(カイト)とも違った、なんか顔がサメっぽいキャラだ。

 故に、サメがトラウマになったコユキが嫌な顔をして、ケイに首を捻られている。

 

「それでは。不肖、飛鳥馬トキ。参ります」

 

 そして、トキの人生初であろう乙女ゲームが始まる。

 

『おや? これはこれは、可愛らしい顔のお嬢さんですね。このような場所には不釣り合いな程に』

「うわ~、開幕早々嫌味ですね。きっとサメ顔だから性根がねじ曲がってるんですよ」

「性根に関してはお前も人のことは言えんだろう、コユキ」

 

 場違いな女だと言ってくるシャークに、コユキが嫌な顔をする。

 まあ、性格で言えば、シャークもコユキにだけは言われたくないだろうが。

 

『ああ、申し遅れました。私の名前はシャーク、以後お見知りおきを。因みに自己紹介がてらに言っておくと……私、ここに来るまでは裏切り者の暗殺を生業としていました。願わくは、仲間を殺すあの感覚を思い出させないで貰えると嬉しいですね』

「なるほど、理解しました。これが先輩から後輩への可愛がりと言うやつですね。今から、ネル先輩達に会うのが怖くなってきました」

「大丈夫ですよ、トキ。チビネル先輩は怒りはしても許してくれますので」

「なるほど、では今の諢名(こんめい)を呼んでも許されるのですね。初対面の際に試してみます」

「やめなさい」

 

 トキとアリスの会話に、ヒマリが呆れた顔で注意する。

 最初はリオの配下と聞いて警戒していたが、所々幼くてだんだんと庇護欲が湧いてきたのだ。

 やっぱり、あなたにもお姉ちゃんの才能があるわよ、ヒマリ(byリオ)。

 

『雨の中、傘も差さずにいるとお体に(さわ)りますよ』

「セクハラ発言ですね。しかも、相手の自由意思を奪う発言。これがパワハラ?」

「もー、お姉ちゃん、また誤字?」

「テスト版なんだから、しょーがないじゃん! まあ、後で障るに修正しとくけど」

 

 これが現代社会の闇……と、シャークの発言に慄くトキ。

 その後ろでは、ミドリがまたかとモモイのデコを小突いている。

 ミドリの攻撃! 効果はいまいちのようだ。モモイに0.000000001アビドスダメージ。

 

『トキさん、あなたの出番はありませんよ。今回の仕事はあなたでは少々荷が重そうなので。何、こういう力仕事は男がやるものと相場が決まっていますので』

「……これは、ひょっとすると嫌味を言っているようで、そのままの意味なのでしょうか?」

「シャ、シャークは嘘は言わないから……」

「嘘が嫌いなキャラなので」

「あの大きな刀は嘘つきの皮を剥ぐため…?」

「はっちゃッ!?」

 

 女性に重いものを持たせずに、紳士的に接するシャーク。

 キヴォトス人なら女性でも重いものを持てる?

 ハァ、乙女心が分かってないなぁ(byモモイ)。

 

『なぜ暁に居るのかですか…? ククク、その質問をしたのが私でよかったですねぇ。他の方々であれば、地雷になる方もいらっしゃいますよ。私の理由は裏切り者を殺さなくて済む、嘘のない世界が欲しい……ですかね』

「ポテチとコーラ要る?」

「頂きます、エイミさん。しかし、ポテチはコントローラーが汚れてしまいますね……」

「パンパカパーン! 秘密兵器の割り箸です! これなら、手を汚さずにポテトチップスを食べられます!」

「なんと素晴らしい。流石です、アリス。アリスは勇者だけでなく、賢者の適性もあるのですね」

「飴ちゃんもありますよ? 欲しい方はどうぞ」

 

 フルアーマー夏装備になったエイミが、みんなにお菓子やジュースにアイスを配る。

 ヒマリも持参している飴を配り、ゲーム開発部はちょっとしたパーティー状態になる。

 

「ユズ、お前も欲しいものがあるなら言え。ワシがロッカーに入れる」

「えっと……全種類を少しずつ欲しいかな」

「みなさん、後でしっかり歯を磨いてくださいね」

 

 そしてケイもゲーム開発部のお母さんモードになる。

 

『ろくでもない人間はろくでもない死に様になると言いますが……想い人を守って死ねるとは。存外、私はろくでもない人間ではなかったようですね』

「これは……自分を犠牲に私を守ろうと…! させません、シャークさん!」

「シャークはね。情報の流出を防ぐために、仲間を殺す役割をしてたんだ。でも、その命令を出す上司自体が他の国と内通してたから、今までやってきた殺しが全部無意味なものになっちゃったんだ」

「”さん”をつけてください、デコ助」

「私、生みの親なのに!?」

 

 モモイに周りの民度を最悪にされた、シャークさんに悲しき過去。

 まあ、みんながみんな普通の過去だとお話にならないので、仕方ない。

 

「情報を残さないように仲間を殺すか……」

 

 そんなシャークさんの過去には、扉間も神妙な顔をする。

 穢土転生があるので、殺した程度なら生き返らせて聞き出す。

 だが、燃やしたりして完全に消せば情報の流出は抑えられる。

 兄者に止められなければ、まあ自分もやるだろうなと思っているので、仲間を殺すとか正気じゃないとか言えないのだ。

 

『私の人生を半分あげますので、あなたの人生を半分いただけませんか? 私のようなクズの人生では、シャークトレードになってしまうでしょうが』

「半分と言わず全部あげます。これでシャークトレードの完成ですね。逃げても一生背負わせます」

『あー、いいですねぇ(´▽`*) 全部あげちゃう、その気持ち。アロナちゃんも、よく分かります』

「おお! 一発でTRUE ENDなんて、才能あるよ。トキさん」

 

 コントローラーを天高く掲げ、自由の女神ポーズを取る、トキ。

 因みに、褒めているミドリも気合を入れて描いた、戦闘の余波で上半身裸になるCGが出てきてご満悦だ。

 

「非常に楽しかったです。製品版になるのが、今から楽しみです」

「お褒めの言葉、ありがとうございます。ですが、まだテストプレイは残っています」

「ふふふ。では次は、世界で一番告白したい病弱系美少女ハッカーの出番ですね」

 

 男女共学なら毎秒告白を受けて困ると豪語するヒマリがトキからコントローラーを受け取りフンスと鼻を鳴らす。

 

「しかし、困りましたね。この完璧超人儚げ美少女がプレイしたら、簡単に逆ハーレム状態になってしまいます。そうなると、R指定が上がってしまう恐れが出てきますね」

「ヒマリ先輩は美人だけど、ゲームの主人公はクラスで3番目設定だから大丈夫だって」

「フフ、このモテモテ系エンジェルスーパーハッカーにかかれば、内部データを弄って──」

「部長?」

「コホン……テストプレイですからね。変にハッキングしては意味がないですね。まあ、美少女という概念がヘイローを付けて歩いている私なら、髪をかき上げるだけで殿方が10000人は恋に落ちるので問題ありません」

 

 モテ期がジュラ紀で勝ちまくりのモテまくりなので、ゲームバランスが壊れると悩むヒマリ。

 まあ、モモイの言うように現実でどれだけ美少女でも、ゲームでは関係ない。

 その逆もまたしかり。

 

「とのことですが、先生はどう思われますか? 客観的に見て、今の状況はハーレムそのものですが」

「孫達に囲まれて感無量だな」

 

 トキからのからかい半分の言葉に、扉間は笑って応える。

 そういうセリフはもっと年を取ってから言えと。

 

「なら、おじいちゃん、お小遣いください!」

「ワシの大姪がお前と同じギャンブル好きでな。教育は甥夫妻に任せておったが……お前を見ておると、殴ってでも止めるべきだったかと猛烈に後悔するのだ、コユキ」

「あれ? 私、殴りたいって思われてます?」

「真っ当に育って欲しいと祈っておるだけだ。祈るために握りしめている手が、お前の頭上に行くかもしれんがな」

 

 なお、元凶の柱間に関しては、妻のミトの逆鱗に触れてこっぴどく叱られている。

 あのおっかなさには、柱間を叱りに来た扉間も即座に『ワシは飛雷神で帰る』したものだ。

 

『あ、先生。トビラマチャンネルとのコラボ依頼のメールですよ。百鬼夜行連合学院の生徒さんみたいです』

「む…? コラボのメール? しかも、まだワシと関わりのない学校の生徒からだと…?」

『メールに危険性はないので、ひとまず読んでみたらいかがでしょうか』

「ふむ……そうするか」

 

 そんな孫達と楽しく会話していた、おじいちゃんの下に一通のメールが届く。

 送り主はアロナ曰く、和風な百鬼夜行連合学院の生徒。

 自他共に認めるトビラマチャンネル(あのクソ動画)とコラボとは、一体何の目的でと扉間の警戒度が上がる。

 

 

 

【拝啓 千手トビラマ 先生殿

 

 突然のご連絡を差し上げますこと、失礼いたします。

 私は、百鬼夜行連合学院の忍術研究部の部長をしております、千鳥(チドリ)ミチルと申します。

 

 さて、この度は先生殿が配信する『トビラマチャンネル』へのコラボ企画についてご相談したく、筆を執らせていただきました。当部では、忍者・忍術の良さをキヴォトスに広めるため、『少女忍法帖ミチルっち』という名前の動画を配信させて頂いております。

 

 今回、先生殿へコラボのご依頼をしたのは、先生殿が忍者であるとキヴォトスで噂になっており、当部と非常に強い関係を築けるのではないかと、考えた次第です。そのため、もし可能であれば、『トビラマチャンネル』と『少女忍法帖ミチルっち』でのコラボ動画を共に、ご撮影していただけないでしょうか。

 

 ご多忙のところ誠に恐縮ではございますが、何卒ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。

 お手数をおかけいたしますが、ご回答をお待ち申し上げております。

 

 敬具

 

 百鬼夜行連合学院 忍術研究部一同 千鳥ミチル・大野ツクヨ・久田イズナ】

 

 

 

 メールを読み終わった扉間の目が、最後の一文に吸い寄せられる。

 それは名前。

 ()()研究部と言う異世界()()()を思い出させる部活名。

 そして何より──

 

 

「……イズナだと? まさかワシだけでなく…奴も?」

 

 

 ──自分が幼少期より殺し合いを続け、殺した忍の名前に。

 

 

 

 

小南(コナン)お姐様……」

「信じて送り出した部長が、百合ルートにハマってる……」

 

 なお、その頃ヒマリは唯一の同性キャラであるコナンに、逆に攻略されていたのだった。




今回書いてて思ったこと。サブタイトルが内容にかすりもしてねぇな。
船上もチェイサーもねぇ! 乙女ゲームしかない!

さて、次回から不忍ノ心ですね。
その後はトリニティ系のイベントかな。
一応、本作で今まで交流のある学校のイベントはやるつもり。
悪魔合体するかもしれないけど。

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