「それでは第44回『トビラマチャンネル』を開始する。本日は、『少女忍法帖ミチルっち』とのコラボを行う………ふむ。コラボとは何を行うものなのだ?」
「え? え~とまずは自己紹介?
「
「お、
ミチルからの依頼を受け、百鬼夜行に赴いた扉間。
そこで、記念すべき44回目のトビラマチャンネルの撮影を行う。
・うへー、ゲスト出演はしたけどコラボは先を越されちゃったねぇ。
・部員3人……ん、対策委員会の半分以下。勝利。
・百鬼夜行……そう言えば、万魔殿のタヌキが接触を図っていましたね。
・おや? 今日はどうやら睡眠導入動画ではないようだね。どうやら私の直感も偶にはハズれるようだね。
・コユキが居ない…? 撮影係ですか、先生?
・連邦生徒会の激務の中での癒し。待っていました。¥5000。
トビラマチャンネル=クソ動画。
以上の方程式がキヴォトスに広まって長くなるが、意外にコメント数は多い。
まあ、トビラマの生徒という身内同士での会話になるが。
後、割とネットリテラシーがガバガバである。
「うむ、皆元気なようだな。それと、投げ銭に関しては説明文にも書いているが、全て恵まれない子供達に寄付させてもらう。収支報告は連邦生徒会のホームページを確認すれば分かる」
「げぇっ! ユウカ先輩!? こんな所まで監視するなんて……暇なんですか?」
「それと、紹介が遅れたが撮影係は黒崎コユキだ。借金返済の仕事としてワシの手伝いとして連れ回しておる」
「あ! バラさないでくださいよぉ!?」
そして、今回からトビラマチャンネルの撮影係はコユキが務めている。
・コユキ……帰って来たら、覚えていなさいよ。
・借金? いや~、親近感が湧くね~。
・私を差し置いて先生と…!? お金を渡しているんですよ……? ¥10000。
・先生と共に冒険する権利のオークションかい? なら¥50000からスタートしようか。
・な! 先生を買い取る権利ですか!? すぐに風紀委員会の予算を…!
・ん、ブルジョワは許せない……革命の時。
約1名、コユキが連れ回されている事実に衝撃を受けているピンク髪がいるが、立場上無理なので仕方がない。
お前が選んだ
「やめんか! 馬鹿者共! 全て寄付すると言っておるだろう! そもそも、ワシに来て欲しいなら正式にシャーレに依頼を出せ。ワシはお前らの先生だぞ?」
「す、すごい人気だねぇ~、先生殿」
どこぞの大正義金満フォックスがマネーゲームを始めようとするが、扉間に一喝されて立ち消える。
因みに、寄付はちゃんと寄付(寄付)だし、恵まれない子供がアリウスやアビドスといったわけでもない。
恐らくは、この小説で初めて使われる何の裏もない寄付という名称だ。
アビドス『寄付(略奪)』
ミレニアム『寄付(コユキの栄養費)』
トリニティ『寄付(マネーロンダリング)』
防衛室『寄付(山吹色のお菓子)』
後、他は大体こんな感じになっている。
「……あれ? 私の立場がこんなに人気があるなら、私と交代する権利を売ればいい儲けが出るんじゃ?」
「コユキ。今から手裏剣投げの実践を行うのだが、ちょうどいい
「じょ、冗談ですよ~。にははは……」
今日は忍者の素晴らしさを広める動画。
リアル忍者である扉間が、久しぶりにその技能を披露する。
手裏剣投げしようぜ! お前、
「手裏剣投げですね! やっぱり、これぞ忍者! という感じがします」
「でも……いいんでしょうか? 以前、インタビューで『忍が無暗に情報を与えると思うか?』と言っていたみたいですけど……」
派手な術も好きだが、やはり忍者と言えば手裏剣。
イズナがピョンピョンと飛び跳ねる様を
「隠す必要がなくなったからな。ワシが元忍であったことを知る者がいる以上、いたずらに隠す理由もない」
・……大丈夫? 垢BANされない?
・極めて倫理に反する動画内容になりませんかね?
・何の話ですか? 何なんですか?
扉間が忍の術を解禁する。
その言葉に、話を聞いた暁のホルスとゲヘナの横乳が戦慄する。
まあ、初手穢土転生を聞かされれば、こうもなろう。
「え、えっと、何をするつもりなの?」
「ただの手裏剣投げだ。最悪
「その壊れる
「当たり前だ。的など木で十分だ。そもそも、ミチル達が初めから用意しておる」
「じゃあ、不穏なことを言わないでくださいよぉ!」
兄者が忍の開祖の息子の転生者!? しかも、ライバルとは兄弟関係!? ~開祖直々に助言をしてくれたが、もう遅い~
そんな人生を送ってきた扉間だが、現代コンプライアンスにも慣れてきた。
グロ動画などは流さない。
なお、人体に当たった場合にグロくなる技が無いとは言わない。
「
「は、はい!」
イズナから用意された8枚の手裏剣を受け取り、一つ一つを持ち上げ感触を確かめる、扉間。
(重さや硬さは均一。流石は現代技術で作られただけはある。だが……人を殺すために作られたものではないな)
手作りではなく、工場生産。その分、一つ一つのズレは少ない。
だが、あくまでも土産物か趣味で作られたもの。
動脈を斬る意思もなく、腹を抉る目的もなく、毒で殺す殺意もない。
あくまでも見栄え重視で、せいぜいが投げることを意識しただけのもの。
「ど、どうでしょうか?」
「悪くない。これだけあれば十分だ」
だからこそ、扉間は満足気に頷く。
これでいいのだと。殺しの道具など無くなってしまえばいいのだと。
なお、殺す意志があろうがなかろうが、鉄の塊を人に投げるのは危険なので良い子のみんなは真似したらダメだぞ?
「さて、せっかくのコラボだ。ワシの方はともかく、ミチル達の方のためにも手は抜けん。偶にはワシもバズりそうな動画を提供するとしよう。ミチル、ツクヨ、的をワシを囲うように置け」
「ぜ、全方向にですか?」
「ああ、そうだ。360度囲め」
扉間の指示を受けて、ミチルとツクヨが扉間を囲うように手作りの人型の的を置いていく。
その数、8人。
的
的 的
的 (゚卑゚) 的
的 的
的
「では……今より、この手裏剣8枚を
「い、一度の投擲でですか!?」
「真後ろにもあるんだよ? どうやって一回でやるの?」
一度の動作で的を全て射貫くと宣言する扉間に、イズナとミチルが驚く。
当然だろう。物を投げても、飛んでいく方向は基本一直線。
真横と真後ろまであるのに、どうやれば一回の動作で出来るのか?
「こうやるのだ」
両手に4枚ずつ。計8枚の手裏剣が扉間の手から放たれる。
次の瞬間に辺りに響く、
続いて、連続して聞こえてくる的に手裏剣が突き刺さる刺突音。
「……ふぅ、ワシも衰えたな」
心臓、心臓、心臓、頭、心臓、心臓、心臓、心臓。
ぐるりと見渡して、手裏剣が人型の的に当たった位置を確認して扉間はため息を吐く。
1つ、狙いが逸れてしまったと。
「ええぇえええ!? ほ、本当に全部当たっちゃった!?」
「空中で手裏剣同士をぶつけ合わせて、全方向に当たるように調整を……まさに神業」
「お、衰えているようには、ぜ、全然見えないです……」
しかし、忍者のいないキヴォトスでは、これが出来る人間などほぼ居ない。
忍術研究部から称賛の声が響く。
・すご! あ、ボールペン投げって、もしかして手裏剣の応用だったの?
・アリスちゃんが言ってた、先生はアサシンっていうのはこのことかしら?
・先生、今度教えて! 銃を持ち込めない銀行でも使える技!
・↑そんな所で何をするつもりですか…? 手裏剣も武器ですよ。やはり、キヴォトスから武器は消えるべきですね。
・これはパーティの余興にぴったりだね。今度来たら、私もぜひご教授願いたいね。
・しかし、これだけのことが出来るのにどうしていつもはクソ…コホン。つまらない動画を? 情報収集で見るのも中々に辛いんですよ?
もちろん、動画を見ている生徒達からも好評だ。
ついでに、こういうことが出来るのなら、いつもやれよとクレームも入っているが。
「はえ~、こんな技があるんなら、もう銃とか要らないんじゃないですか?」
そして、コユキがもう銃より手裏剣投げたら? と、提案する。
「いや、手裏剣より銃の方が便利だろう? 銃と手裏剣で手裏剣を選ぶのはバカだけだ」
「ええぇ~!?」
悲報。千手扉間、忍者の相棒を全否定。
「そ、そんな、手裏剣カッコいいよ! 先生殿ぉ!」
「いや、ただの道具だろう。銃の方が威力、速度、射程距離、携帯性、全てにおいて上回っておる。初めて銃を見たときは、赤子でも人を殺せる汎用性の高さに製作者は天才かと思ったものだ」
「こ、殺しませんよ…!?」
「手裏剣も工夫すれば銃に近づくことは出来るが、誰でも使えるという汎用性においては、銃に比べれば手裏剣はカスだ」
「ロマンというものがないのですか!?」
合理主義+忍者ガチ勢=塩対応。
そもそも、優秀な武器なら銃の代わりに今も使われているという、忍者からのマジレスにミチルとツクヨが涙を流し、イズナがロマンの不在を叫ぶ。
扉間。お前と忍者やるの息苦しいよ。
「ロマン? それで敵が死ぬのか?」
「し、思考が怖いです……」
「武器はどこまで行っても、武器でしかない。人を傷つける道具だ。銃も手裏剣も変わらん。使わないで済むのならそれが最良だ。そして、使うのなら出来る限り
・放 送 事 故。
・コユキ、カメラ止めて。
・流石は私の先生……良く分かっていらっしゃいます。
忍者動画なのに、肝心の忍者が忍具を否定する放送事故。
まあ、『トビラマチャンネル』も『少女忍法帖ミチルっち』も、大して視聴者は居ないので問題はないだろう。
「何より、このサイズの手裏剣では毒でも塗らねば、そこまでの殺傷力は出ん。お前達ならかすり傷。ワシですら、まともに食らっても軽傷で済む。故に、心臓を狙って投げた」
「あ、本当だ……一人以外、全部胸に当たってる」
「にはは……ゲームならヘッドショットで一発で気絶判定ですよ? 頭の方がいいんじゃないんですか?」
コユキの頭を狙った方がいいのではという言葉に、扉間は首を振る。
「いいや。頭は当たれば確かに致命傷になりやすいが、的が小さい。首を少し動かすだけで避けられる。しかし、心臓……胴体は違う。避けるならば大きく動かねばならず、打ち落とすにしても動作が要る。鎧で弾かれる場合は仕方ないが、それ以外の場合は当たろうが当たるまいが、相手の行動を制限することが出来る。次の
そもそも、忍者のメインウェポンは忍術。
即ち、印を手で結ぶ必要がある。
両手で武器を持って戦うよりも、けん制に使いつつ両手が空くようにした方がいい。
まあ、上に行けば平然と武器を持ちながら、術を使う忍はゴロゴロと居るのだが。
なんなら、言ってる本人が印不要の忍術を作ってる。飛雷神の術って言うんですけどね。
「術!? なになに! 火遁の術とか使えるの、先生殿!?」
「そういうのは、今は使えん」
「ガーン!」
あの手裏剣投げを見て、もしかしたらと期待したのだ。
だが、悲しいかな。別の星から来た扉間にはチャクラがないのだ。
あるのは、カイザー理事の財力と、先生としての名声、生徒達の暴力。
そして、Bluetooth銃とアロナパワーぐらいのもの。
富・名声・力、この世の全てを手にした男、千手トビラマである。
「はぁ……よいか? 武器も術も任務を達成するための道具に過ぎん。忍の良し悪しは、道具の良し悪しで決まるわけではない。術の威力や手数を増やすことに目が眩んで、基本を疎かにした忍の寿命は短い」
扉間、さり気なく大蛇丸の持論をディスる。
サル? 自分の術で相手の術を相殺して、基本の体術で叩き潰すので100点満点の忍だ。
「忍術が1つでも。なんなら、体術だけでも構わん。
ミチル、ツクヨ、そしてイズナを見つめ、扉間が問いかける。
忍にもっとも必要な資質は何かと。
・卑劣。
・ん、卑劣。
・卑の意志だね。
・卑劣さですね。
・そんな失礼なこと……否定できないかも。
・な、なんですか? 私の先生の愚弄は許しませんよ! 意志を紡ぐことですよ!
コメント欄では、恋は盲目な一人を除いて卑劣さで意見が一致する。
事実陳列罪である。
「え、えっと……忍者の鉄則は」
「
「です!」
「………正解だ」
3人の息を合わせた答えに、扉間は目を丸くして驚く。
まさか、当てられるとは思っていなかったのだ。
「忍にもっとも必要な資質は、諦めないド根性……忍者とは忍び耐える者だからな。なんだ、分かっておるではないか」
扉間の3人を見る目が、ただの生徒から見込みのある忍の卵へと変わる。
んほー! 若き火の意志たまんねぇなぁ!
・いや、ほら……先生の行動が卑劣じゃん。
・先生は忍者。でも、忍者は他にもいっぱい居る。だから、答えが違っていただけ。
・まさか私が
・つまり先生の卑劣成分は、忍者由来のものではない100%天然由来の成分なんですね。
・私が優勝ですね。
・答えがあっていたわけでもないでしょ?
後、卑劣一色でコメント欄を染めていた奴らは、反省しなさい。
「え! 当たった!?」
「流石ですね、部長」
「やっぱり、部長の忍者知識は正確でしたね!」
扉間のことだから、冷酷さとか合理性とかだろうと思っていたので、正解だったことに驚く、ミチル。
そんな部長をツクヨとイズナは褒め称える。
「いやー、先生も偶には良いこと言いますねー。でも、そうですよね。諦めなければ、どんな賭けにも最後は勝てますもんね」
「負け続けて、10億の負債を背負っているのをもう忘れたのか? コユキ」
そして、コユキも諦めない大切さに感銘を受ける。
これだけ負けてるんだから、次は勝つだろうというギャンカス思考だ。
・コユキィ…!(プルプル、ギィ…!)
・ん、真の仲間。
・お金がないなら、車や宝石を売ればいいじゃないか?
・ブルジョワ目線、腹が立ちますね。
・……私も借金を背負えば、先生とドキドキ更生ライフが?
・やめなよ。その先は地獄だよ。
そして、コメント欄ではピンク髪がピンク髪に、危険な賭けに出るのを止められていた。
『先生、そろそろお時間ですよ』
「む? 名残惜しいが、時間か。一先ず、今日の所はこれで終わりだ。だが、コラボはまだ始まったばかりだ。次回は鍔迫り合いになった際の、含み針による効果的な目つぶしの方法を実践するとしよう。それでは『トビラマチャンネル』より、千手トビラマと黒崎コユキ」
「『少女忍法帖ミチルっち』からは忍術研究部の3名でした~! みんな、チャンネル登録お願いねぇ!」
「というわけで忍術研究部を正式な部活にするための推薦状を書いてぇ~!」
「断る」
「一考の余地もなし!?」
動画撮影も終わり、打ち上げも兼ねて甘味処で息をつく
そんな中、ミチルは扉間に推薦状をお願いして、撃沈していた。
「なんで~! クイズに正解したじゃん!」
「報酬を出すと言った覚えはない」
「ぶ、部長、先生が困って……は、いないですね」
「当たり前だ。動画に証拠も残っておるのだ。ワシは質問しただけで、報酬を渡すとは言っておらん」
忍にとって、最も大切なことを当てたのだから報酬をくれというミチルに、扉間は塩対応する。
「そういうのは、僅かでも言質を取っておくのだ。『正解したら何かあるか?』などと、言ってから答えれば、次につなげられる」
「こ、これが本物の忍者の交渉術…!」
「そうですよ。報酬の設定はしっかりしないと私みたいに、無賃労働をすることになりますよ!」
「お前は借金で天引きになっておるだけで、ちゃんと払っておるわ。それに、リオから預かった栄養費で衣食住には困っておらんだろう」
相手に何か
因みに、コユキに生活費などを渡していない理由は、金を渡すとそのまま逃げかねないからだ。
その点、扉間が管理しておけば逃げても生活が出来ず、たかりに戻ってくるので安心である。
「そもそも、ワシの推薦状など大した価値もない。今のお前達に何が足りんのかは分からんが、人数不足などが理由ならばどうしようもない。
「むむむ……」
「何が、むむむだ! よいか?
アリスの時のモモイのように、例外処理を認めるわけにはいかない。
必ず、正規の手順を踏めと強調する扉間。
「先生のおっしゃる通りです。正規の手続きに則って申請をお願いします。そもそも、忍術研究部の皆さんの場合は、『部としての実績証明書』はあるので後は『活動に関する他の部活からの保証書』が3部あればいいだけです」
そんな扉間の言葉に頷くのは、
九尾を思わせる金色の髪に、アコに匹敵する横乳を持つ陰陽部の副部長だ。
「う…それは……というか、何でカホが居るのさぁ!?」
「部長のニヤ様より、先生を陰陽部にお招きするように頼まれましたので。そして、ちょうど百鬼夜行で動画撮影をされていましたので、こうしてお邪魔しているだけです。打ち上げ中に私も参加させて頂いたのは申し訳なく思っていますが」
「別に構わん。年寄りは自分で食べるより、若者に奢る方が好きなのだ」
「いったい何歳なの、先生殿は!?」
少しだけ、居心地が悪そうにするカホに気にするなと言いつつ、扉間は甘さ控えめの団子を頬張る。
甘味っていうのは、こういうのでいいんだよ、こういうので。
と、弱った胃にも好評だ。
「ううぅ……これは忍術研究部の発足のピンチ」
「どうしましょう、部長!」
「………部長」
「いえ。ですから、『活動に関する他の部活からの保証書』があればいいと言っているのですが……それに」
どうしようと悩むミチルとイズナ。それを静かに見つめる、ツクヨ。
一方のカホはミチルが悩む理由が分からずに困惑する。
「
「え?」
カホの言葉に忍術研究部の目が扉間に向く。
「……忍者は裏の裏を読むべし。
腕を組み、淡々と告げる扉間。
そもそも、正規の手段であれば扉間に断る権利はない。
すでに一度、ゲーム開発部から同じような依頼を受けているのだ。
ここで断れば、学校間での差別と言われかねない。
「もともと、しばらくはお前達を
扉間はミチル、ツクヨ、そして
コラボを一回で終わらせなかったのは、イズナを見極めるためだ。
どうせ、時間はあるので、ここは待ちを選択する。
「にはは、お団子おいしいですね。先生、おかわり良いですか?」
「……夕飯が入るように、一皿だけだぞ? お前達もコユキのように少しは遠慮を無くせ。使えるものは存分に使い倒してしまえばいい」
「うーん……で、でも」
甘えるのが上手いというか、遠慮を知らないコユキを横目にミチルに説く、扉間。
しかし、どういうわけかミチルはそれでも頷こうとはしない。
「部長? これは一体?」
「ミチルさん、私からしても悪い話ではないと思うのですが?」
これには、流石に何かがおかしいとイズナとカホが不審な目をミチルに向ける。
一体ミチルが何に悩んでいるのか、分からないのだ。
「あ、あの! すみません、少し時間をいただいてもいいですか?」
「……ああ。どうせ次のコラボまでは百鬼夜行にいるのだ。別にすぐに言わんでもいい」
そんな中、ツクヨが彼女には珍しいハッキリした声で扉間に告げる。
その強い意志の籠った目を見て、扉間も何か事情があるのだろうなと勘づく。
(事情は分からんが、少し時間を置くべきか)
ここはミチルの心の整理を待つべき。
そう判断して扉間は別件を先に進めることにする。
「カホ、待たせてすまんかったな。悪いが、陰陽部への案内を頼む」
「……はい、分かりました」
「コユキ、お前もだ」
「食後のお茶を飲んでからでもいいですか?」
「……熱い故、火傷するなよ」
席を立ちあがり、全員の支払いを済ませにいく扉間。
そんな扉間に続き、カホが立ち上がりコユキがお茶を飲む。
「部長……」
「何か理由があるのですか…?」
「ごめん……2人とも……」
そんな中、忍術研究部の3人は重苦しい空気で見つめ合うのだった。
「そこで、先生には百鬼夜行連合学院とゲヘナ学園の交流会が無事に終わるように、お力を貸していただきたいなぁ~と」
陰陽部。百鬼夜行連合学院の生徒会に近い役割をこなす部、その本拠地。
主である鬼の角を持つ
「先生はゲヘナと交流がおありなので、よ~くご存じでしょうが……ゲヘナの方は少~しばかりやんちゃな方が多いとお聞きしとりますので。万が一……いえいえ、億が一! 問題が起きては、これからの交流に差支えがありますので、ねぇ?」
「まあ、ワシなら問題児をどれだけ吹き飛ばしても、教育で済むからな。お前達と違って外交問題にはならん」
「にゃははは! 聞きしに勝る、歯に衣着せぬ物言いですねぇ」
扇子をぱっと広げて、お上品に口を隠して笑うニヤ。
だが、その細められた金色の瞳は、油断なく扉間を見つめていた。
「それでぇ……今回のご依頼。シャーレとして受けていただけますかぁ?」
「ああ、他学園との交流はキヴォトスの今後の平和に大きく影響する。ワシとしても是非とも成功してもらいたい」
「ありがとうございますぅ! いやはや、やはり大人は頼りになりますねぇ、ふむふむ」
今回、ニヤが頼みごとをしてきたのは、1週間後に行われるゲヘナとの交流会。
そして、その交流会の中心である体験型イベント“和楽姫”の成功のためだ。
ゲヘナの生徒はやんちゃ(歯にダウンジャケットを着せた物言い)。
身内の百鬼夜行の生徒なら問題を起こせば、容赦なくボコれるが客人相手ではそうもいかない。
ヒナなどが引率なら、問題児がボコられたら逆に謝るだろうが、そこはマコト。
開戦の引き金に利用する可能性も考えられる、腹黒狸。
なので、生徒なら全員教育的指導のできるシャーレの先生に助けを求めたのだ。
「それで、ワシはどこまでやればいいのだ? 学園同士での交流会と言う以上は、ワシがあまり出しゃばるべきではないと思うが」
「そうですねぇ~、先生が最初から全て取り締まれば、確かに何も起きないでしょうけどぉ……学校同士の交流と言うにはちょ~っと堅苦しいですよねぇ、にゃはは」
扉間がゲヘナを引率するのなら、まず連れて来る生徒を暴れないであろう風紀委員会に絞る。
その上で引率しながら案内すれば、まず問題は起きない。
だが、それでは扉間が居ない時の交流が出来ない。
そもそも、ゲヘナのメイン層は風紀委員会とは真逆の、秩序なめなめ小娘だ。
今後も交流を続けることを考えれば、百鬼夜行側もある程度慣れておいた方がいい。
「ですので、先生には問題が
「火事が起こらぬようにするのではなく、出来る限り火を広げぬ消火活動か……構わん。メインはお前達生徒だ。年寄りは若者の尻拭いでもするとしよう」
「にゃはは、流石は先生。耳にタコが出来るほど、ご活躍を聞くだけはありますねぇ」
「だが、協力そのものはしてもらうぞ。百鬼夜行連合学院」
助けはするが、協力はしてもらう。
そう告げる扉間に、ニヤがパシッと扇子を閉じる。
「ほうほう。私達に何を?」
「生徒を何人かシャーレに入れさせてもらう。他学園の生徒はあまり使いたくないからな」
「ええ、何せうちとゲヘナの交流会……よそ様に手伝ってもらったでは格好がつきませんからねぇ。私からは反対はありませんよぉ。それで、目星はついとります?」
「忍術研究部の3名をシャーレに入れさせてもらう」
「忍術研究部? ……ああ~! 何やら先生とコラボされていた子達ですね」
正式に認可されていない部活なので、すぐにはピンとこなかったが扉間の行動から誰かを思い出す、ニヤ。
9割はクソ動画なのに、見ていないと
「んふふ、構いませんよぉ。あらかじめ交流のある生徒の方が、先生もやりやすいでしょうしねぇ。もっちろん、本人達の了承は欲しいですが」
「ああ、感謝する。それと、他学園の生徒はあまり使いたくないと言ったが、連れてきておる黒崎コユキは許せ。ワシが面倒を見ておる故、関わらんことが不可能だ。ワシと一緒に百鬼夜行の
「はぁ……その程度なら大丈夫ですけどぉ……まだ若いのに借金持ちなんて、大変ですねぇ、その子も」
「自業自得だ」
忍術研究部とコユキを戦力にする許可を得て、二人の交渉が終わる。
若干、ニヤ側が利用しているように見えるが、扉間的には生徒は先生を利用するぐらいでちょうどいいと思っているので何も言わない。
なお、子供を利用しようとした場合は話は別だ。
「にゃはは! これはこれは手厳しい。まぁ、何はともあれ、1週間後の交流会。よろしくお願いしますよぉ、先生」
「ああ。シャーレがない故、それまでは
そう言って、最後に2人は友好の証である握手をするのだった。
(さてさて、シャーレの実力。この目で確かめさせてもらいますよぉ、先・生?)
(1週間もあれば、情報の裏取りには十分か。念のため、アコやイロハに確認を取るか)
お互いに腹に一物を抱えながら。
「え? 期間限定・忍者ニンペロさんグッズが百鬼夜行で復刻販売ですか…!?」
扉間「コユキ(電子セキュリティ無効化できる存在)を建物に入れてよいか?」
ニヤ「いいですよぉ(ギャンブルで借金10億とはギャンブル中毒ですかねぇ?)」
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