千手扉間のブルーアーカイブ   作:トマトルテ

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73話:アビドスVSラビット小隊VSダークバンク

 

「そう言えば、あの理事が過払い金とか言ってたけど、何のこと?」

 

 アビドス廃校対策委員会、本部。

 もとい、いつもの部屋でノノミが買ってきたお茶菓子に舌鼓を打ちながら、セリカが問う。

 PMC理事が最初に言っていたことが気になったのだ。

 

「ああ、あれか。お前達に援軍を頼まれたときに、ネタを握っておったのを思い出してな。カイザーのことだ。何かしら不正を働いておると考えてな」

「過払い金は、利息制限法の上限を超えて払い過ぎた利息のことだな。具体的には、年利15~20%を超える金利で返済した場合に、発生する可能性があるそうだ」

 

 セリカの質問に扉間とサキが答える。

 サキはケーキを食べながら、扉間は煎餅をかじりながら話す。

 

「年利って……うちってどれぐらいだっけ~?」

「以前の利息は毎月788万円だったので年利9.8%でしたね。今は横領事件の際に下がったので、5%ぐらいですが……」

「ん、以前は高いけど……サキの話を聞く限りだと、過払いにするのは難しい…?」

「相変わらず卑しい企業ですわね」

「先生、どうやったんですか?」

 

 ホシノ、アヤネ、シロコ、ワカモ、ノノミが揃って首を傾げる。

 カイザーはグレーゾーンを生きる会社。

 大っぴらに法律を破ることはしないので、法律的には過払い金を返す必要がないのだ。

 

「先生、これって私達は、耳栓でもしといた方が良い感じの話?」

「少し、お花を摘みに行ってきますね」

「わ、私も……」

「……あー、急に耳が遠くなったな! 今なら何を話されても聞こえないかもしれないな!」

 

 そして、モエ、ミヤコ、ミユ、サキのSRT組は空気を読んで聞こえないフリをする。

 扉間が何をやっているか分からないのだから、しょうがない。

 

「別におかしなことはしておらん。過払い金を請求したのは、()()を売って返済に充てた方だ」

「土地?」

 

 ホシノが土地と言う言葉に首を傾げる。

 

「ああ。目に見える金額では、法を破ってはいない。だが、あのカイザーがそれだけで終わるはずがない。必ず欲をかくと睨んでおってな」

 

 ちょっとグレーゾーンを歩くだけなら、カイザーはこうも悪名高くなってはいない。

 悪い意味で信頼されている。まるで、扉間のように。

 

「そこで、お前達の話を思い出したのだ。以前の生徒会がカイザーグループに土地を売っていた話をな」

「確かに、アビドスは学校の周り以外は全部カイザーに売ってるけど……」

「砂漠はまだいい。だが、まだ使えそうな都市や、実際に柴店長が運営している店などの土地もある。当初の借金額は分からんが……これだけの広大な土地を売り払ってもなお、足りないものかと思ってな」

 

 最初は砂漠対策のために金を借りた。

 最大校であったアビドスならば、少々金利が高くとも返せるだろうと。

 だが、そうはならずに更に借金を重ねる結果になってしまった。

 そこをつけ狙い、カイザーは土地を売るように仕向けたのだ。

 

「奴らの目的はこの土地そのもの。そして、砂漠と言えども自校の土地を売るのは恐らく生徒会長ならば戸惑う。つまり、纏めて一気に売り払って借金を完済するという提案はなかったはずだ。少しずつ、少しずつ切り取っていくように仕向けたはずだ」

 

 カイザーは全ての土地を欲していた。

 つまり、ここからここまでを一気に売るから、それで借金をチャラにしてと言われたら困る。

 砂漠化は自然災害なので、またアビドスがお金を借りる状況になるかは分からないのだから。

 故に、土地の正当な価格ではなく、自分達で額を操作していた可能性が高い。

 

「つまり……土地の値段はもっと高かったかもしれないということですか?」

「でも、土地の値段なんてお互いに合意があれば、相場より安くてもいいんじゃないの?」

 

 ノノミとホシノの言うように、別に相場以下で土地を買うのは問題ではない。

 売れない土地を売るために、二束三文で売るのは別に珍しくとも何ともないのだから。

 

「ここで重要なのは、借金を理由にした不動産への売却ではなく、借金との引き換えにした点だ。例えば、この土地を1000万円の価値で引き取る代わりに、借金を1000万円減らすとな」

「売却じゃないってなんで言い切れるのよ? うちにも証拠は残ってないのよ」

 

 セリカの質問に扉間が答える。

 

「差し押さえなどをした場合は、土地そのものを手に入れられる。もしくは、競売にかけて売却した金で貸した金の回収を行う。だが、カイザーの目的は土地そのもの。競売にかけるはずがない。競売に出した結果、ゲヘナやトリニティに買われては元も子もないからな。今はともかく、昔ならばカイザー以上の金を出して、敵対校の土地を買う価値はある。その場合、借金が返済される恐れも出て来る」

 

 敵の土地が売りに出されていたら、領土を広げるためにも買う。

 金だけで土地を広げられて、同時に相手の勢力を削げるのならそれに越したことはない。

 そして、アビドスとて他の学校に弱みは見せたくないので、競売に出すとは思えない。

 

「と、なれば、直接土地を貰えばいいが、それでは借金は減らずにアビドスが納得せん。土地を担保にして、借金の形として貰うという方法もあるが、その場合は返済期間が終わるまでは土地の開発などが出来ん。担保であれば、返済が終わった場合は返す必要があるからな。そして、現状では借金額だけが伝えられており、土地が担保になっているという情報はホシノですら知らんのも証拠となる。つまり、必ず何円分の土地かを決めて引き取っているはずだ……それだけでは全額は返済できん額でな」

 

 差し押さえという方法では、カイザーのアビドス全ての土地を手に入れるという目的が果たせない。

 他の存在には渡さずに、必ず自分のものにするという条件。

 そこを踏まえれば、アビドスが土地を借金の返済額の代わりにカイザーに渡していたのだと分かる。

 

「つまり、アビドスは土地を売りすぎて(過払いして)いる可能性があるのだ」

 

 扉間の言う過払いとは、土地をカイザーにあげ過ぎてはいないかと言う意味だ。

 

「土地の過払い……如何にも先生らしい嫌らしい視点だな」

「ですが、結局は土地を渡すと決めたのは、昔のアビドスの生徒会長さんなので……やはり、それを過払い金とするのは難しいと思います」

 

 だが、サキとミヤコが指摘するように、土地を渡すとアビドスが同意したのは痛い。

 裁判で勝てるかは微妙なところだ。

 

「ああ。これはあくまでも、裁判所に正当に訴え出るための材料に過ぎんからな」

「重箱の隅を突くと言うのは、まさにこのことですわね」

 

 あれだけ長々と説明したのに、それは前座と言われて呆れた声を出す、ワカモ。

 

「ワシが理事に告げた本命は『ワシは死ぬまで、裁判で争い続けても構わんぞ』ということだけだ」

「最悪の脅しじゃない!」

「うわ……絶対面倒じゃん。それこそこっちが心労で死にそう」

「先生と裁判で争うなんて、絶対したくない……」

 

 セリカとモエとミユが扉間の言葉にドン引きする。

 頭脳だけで好き放題やってくる奴と、裁判をするとか絶対にストレスで禿げる。

 

「でも、カイザーなら先生を殺そうとしたり……」

「忘れたか? ノノミ。ワシは既に2回も死亡詐欺をやっておるのだぞ」

「ん。死んでも蘇ってくるから、絶対相手にしたくない」

 

 そして、裏で消そうにも死にそうにないのが扉間だ。

 逆に、ジェネラルのように殺人未遂の罪で捕まえられかねない。

 

「そうなるぐらいなら……うん、和解した方がいいよねー」

「つまり、和解の条件にアビドスへの支援をお願いしたってこと?」

「今後、過払い金のことで裁判を起こさないのを条件にですね」

 

 そうなるなら、少しの金額でさっさと和解した方が良い。

 理事側がそう考えるのもある意味で納得である。

 

「そういうわけだ。本当にあるかどうかも分からない過払い金を盾に、一度の援助を引き出したと考えれば十分だろう」

 

 普通なら、相手も頷かないだろうが、そこは理事相手。

 度重なる脅しによって、扉間が心理的優位に立っているのが効いた。

 理事が新しく車を買った時に、その話を聞く前に即座に『いい車だな』とメールをしたりして、友好関係を築いたのも理由かもしれない。

 

「まあ、カイザーが無理だった場合は、アリウスを率いて来るつもりだったがな」

 

 お茶をすすって一息入れる、扉間。

 

「しかし……お前達も随分と成長したものだ」

「え、そうですか?」

「ああ。初めにワシが来た時は、5人だったのが6人に……生徒数20%増とは大躍進と言っていいだろう」

(わたくし)1人で大躍進と言われても、困るのですが……」

 

 しみじみとアビドスのメンツを見渡して、成長を実感する扉間。

 数字のマジックだとは言ってはいけない。

 

「それに何より、随分と明るい空気になった。借金の返済の目途が立ったおかげか」

「それに関しては先生のおかげだよ~。アビドスチャンネルとか、強盗略奪(寄付活動)で収益の目途が立ったからねぇ」

「何でしょうか……今、SRTとして見逃してはいけない言葉があったような……」

 

 アビドス流の隠語に何とも言えない顔をする、ミヤコ。

 だが、治安維持という点ではアビドスは良い事しかしていないので、法的にはセーフだ。

 法で裁けぬ悪党? 

 失礼だな。SRTだって法に縛られずに正義を実行しているので、同じようなものですよ。

 

「でも、ちょっとやりすぎたかもしれませんね……まさか、ヘルメット団が総出で襲撃してくるなんて」

「ん、反省。生かさず殺さずの塩梅を覚えないと」

「いや、襲撃するのをやめろよ!」

 

 ノノミとシロコが反省と口にするのを、サキがツッコむ。

 反省するところが違うだろうと。

 

「でも、こっちが何もしなくても、勝手にたむろするんだから、仕方ないでしょ!」

「はい。放置しておくと、地域の方の迷惑にもなりますし」

「それを言われると、こっちとしても反論しづらいんだよね」

「ご、ごめんなさい……役立たずの警察組織で」

 

 しかし、アビドスが法に見逃されている最大の理由は、不良などが勝手に湧いてきて治安を乱すからである。

 こっちに何もするなと言うのなら、そもそもお上がしっかり治安を維持しろという話なのだ。

 

「本当にそうですわ。もっと、ヴァルキューレやSRTが頑張って下さらないと、(わたくし)達の平穏が崩れ去ってしまいますもの」

「散々、こちらの手を煩わせたあなたが言わないでください、ワカモ」

「先生、こいつ本当に更生しているのか? また、牢屋にぶち込んだ方がいいんじゃないか?」

 

 だが、ワカモ。お前にだけは言われたくないと、ミヤコとサキが睨みつける。

 

「──ワカモ」

「ッ!?」

 

 扉間の低い声に、ワカモがゾクッと尻尾の毛を逆立たせる。

 また、拳骨を食らうのではないかと警戒しているのだ。

 

「お前はもう無敵ではないはずだ」

「……はい?」

 

 急に何を言っているのかと、ワカモが怪訝な声を上げる。

 

「俗に言う無敵の人と言うのは、守るべき者も帰る場所もない、失うもののない人間のことだ」

 

 具体的には、弟を全員失い、木の葉を捨てて、一族にも見捨てられたマダラとか。

 

「何も失うものがないからこそ、捨て身の行動が出来る。ムカつく者であれば上司でも殴れる。だが、守るべき者がいる人間にはそれは出来ない」

「……(わたくし)はもう捨て身の人間ではないと?」

「お前はアビドスを守った。以前のお前ならば、仲間や友を見捨てて自分だけで逃げていたはずだ」

「それは……」

 

 反論しようとするが、ワカモはアビドスを傷つけられたことに怒りを覚えた過去を思い出す。

 彼女にとって、アビドスは既に帰る場所になっているのだ。

 そして、他の生徒達もまた。

 

「守るべき者のために、頭を下げられるようになる。己のプライドよりも、愛する者達の平穏のために信念を捻じ曲げてでも、忌み嫌うものと手を取り合う。それが大人だ」

「……大人」

「お前も、もう18歳だ。少しは精神的に大人になってみろ」

 

 そう言って、扉間は説教を終える。

 

「…………」

 

 ワカモは黙ってそれを聞いているだけだった。

 アビドスという家が後ろにある以上は、SRTや扉間と敵対するのは得策ではないのだから。

 

「ん、違う、先生。ワカモは私達の後輩」

「年齢なんて関係ないですよー。ワカモちゃんは可愛い後輩なので、ゆっくり成長すればいいんです」

「そうそう、頭を下げるのはおじさんの仕事だからさ」

「こら! 先生がワカモちゃんをいじめたらダメでしょ!」

「ワカモちゃんは自分のペースで成長すればいいと思います」

 

「すいませんでした、先生。(わたくし)、少しでも早く大人になります」

 

 仲間達からの援護射撃。

 だが、それが逆にワカモの羞恥をかき立てた! 

 年下に庇われる年上とか、普通に情けない。

 

「えーと……そうだ! 先輩達は今何をしてるんだ?」

 

 このままワカモを煽っても良いが、それをすると自分達も精神的子ども扱いになるので、話題を変えることにしたサキ。

 

「ユキノ達か? 今はアリウスで教官役を務めてもらっておる」

「あー、以前、私達に頼んだ依頼が今度は先輩達の方に行ったんだね」

「具体的には、どのようなことを?」

 

 SRTの先輩であるFOX小隊は現在、アリウスで罪滅ぼし活動中、もとい面倒ごとを押し付けられている最中だ。

 集団リンチの横行する世紀末アリウスでの任務……という体になっている。

 

「簡単なものから言えば、ドローンやITなどの最新技術の使い方の指導や、戦闘訓練の指導、SRTの教本を用いた勉学だな」

「先輩達のことだから。しっかりと、指導しているんだろうな」

「優しいニコ先輩でも、訓練の時は、き、厳しいもんね……」

 

 自分達も指導された内容を思い出して、感慨にふけるラビット小隊達。

 あのスパルタ具合も、喉元を過ぎれば懐かしくなるものだ。

 

「そして、難しいもので言えば、キヴォトスにおける常識の指導だな」

「常識?」

 

 キヴォトスの常識の指導という言葉に、首を傾げるシロコ。

 

「アリウスの生徒は、長年閉鎖された環境におったからな。アリウスの常識と外の常識は違う。例えばだが……この砂糖」

 

 扉間が紅茶に入れる砂糖を一つ取り上げて見せる。

 

「以前のアリウスでは、貴重品でな。トリニティの茶屋で自由に取れる砂糖を見て、仲間のために大量に持ち帰ろうとする者も出たのだ。他には、店の調味料を全て使ってしまうなどの子らも居てな。さらには、ティッシュ配りのアルバイトの前を往復も……まあ、他にも細かい所が外の世界とはズレておってな」

「それは……その……」

 

 迷惑系Y〇utuberかよと言いたくなる、明らかなマナー違反。

 だが、アリウスの境遇を思えば非難も出来ない。

 そんな難しい顔をする、ノノミ。

 

「なるほどねぇ……昔のシロコちゃんを思い出すよー。この子ったら、もーすぐに銀行に突撃しようとしてたんだから。おじさんが勝負して毎回諦めさせてたけど」

「昔の話。今はちゃんと、配送ルートから調べ上げて計画を練ってる」

 

 そして、ホシノは記憶喪失だったシロコに常識を教えた過去を思い出す。

 今は落ち着いているが、昔のシロコは弱肉強食の考えが強かった。

 なので、自分よりも弱い者の意見は聞かないので、ホシノが力で押さえつけていたのだ。

 

「いや、ちょっと待てよ!」

「なんです?」

 

 そんな話の途中で、サキが耐え切れずに声を上げる。

 ワカモがそんな様子に首を傾げながら、オレオを摘まむ。

 彼女はアビドスの中でも生粋のアウトロー。

 更生はしているが、銀行強盗という言葉など日常会話なのだ。

 

「銀行強盗の計画を練るのもアウトだよ!!」

「はい。せめて、自分の中だけで納めていただけないと……あのSRTが黙っていませんよ」

 

 サキとアヤネにSRT()が目の前に居るのか、考えろとツッコまれる、シロコ。

 

「そうよ、シロコ先輩。いい加減、銀行強盗は卒業してよね、もう。時代は、このげるげるゲルマニウム・ブレスレットよ! 今回のは金運アップ効果もついてるらしいわ!」

「セリカちゃーん……それ誰から買ったの? ちょーと、おじさんに教えてくれない?」

「流石はセリカちゃんです。また騙されてますねー」

「ん。でも、金運アップは本当かもしれない。次の強盗略奪(寄付活動)先が決まった」

 

 後、セリカはまたどっかの白い奴に騙されたらしい。

 先輩達の()る気スイッチが、密かに押される。

 

「後……先輩を舐めないで、セリカ。今はちゃんと、趣味の範囲で抑えてる」

 

 そして、同時にシロコは言い訳スイッチも押す。

 秘伝の銀行強盗マニュアルに記載しているだけで、実行はしていないからセーフだと。

 え? 以前にやった? 

 ん、また、記憶喪失になった。悲しい。

 

「ねぇ、強盗予備罪って知ってる?」

「凶器の準備や、逃走経路を調べているだけでも、当てはまることがありますよ?」

「そう言えば……最初に会った時もカイザーローンの逃走経路を教えてくれたような……」

 

 だが、今回はそう簡単には逃げられない。

 相手は1年生と言えど、警察の特殊部隊。

 その手の知識はちゃんと持っている。

 

「というか、私達はお前達の罪を知ってるぞ? 先生が銀行強盗について自白したからな」

 

 そして、扉間が子ウサギ公園で便利屋と会った時にシレッと自白しているので、アビドスの罪は知られている。

 SRTの厳しい目が、シロコ達を捉える。

 

 

 

「………ん、罪を犯した人が、必ず罰せられるべきなんて考えは、間違い。厳しいだけの正義は、きっと社会全体の幸福に繋がらない。罪を犯した人が罰せられる中で、更生の機会を失って、また社会に危険な存在になるとしたら、その罰は正義じゃない。ただの復讐。罪の更生は、単純に罪を償うことだけじゃない。もう一度、社会の一員として、責任感を持って生きていく道筋を築くことが必要。そのためには、周りの温かい理解と支援が不可欠。確かに、被害者の受けた痛みを考えたら、犯罪者に情けをかけることなんて無理って考えも分かる。でも、その痛みを乗り越えて、未来へ向かって歩むためには、憎しみの連鎖を断ち切ることが何よりも大切だと思う。犯罪者の更生を、罪の償いを支援することは、罪を軽く見ることじゃない。これは、みんなが幸せな未来を築くための大切な投資だよ。犯罪者の更生活動は、その人達のためだけじゃなくて、社会全体の安全と調和のためでもあるよね? 再犯を防いで、新たな被害者を出さない。それが真の正義であるSRTが目指すべき姿だと思う。私達は過去の過ちに縛られるんじゃなくて、未来への希望を持って、犯罪者の罪を赦す勇気を持つべき。その勇気があれば、きっと私達はもっと人間らしくて、もっと優しい世界を作ることができるはず。だから、みんなで耐え忍ぼう」

 

「こんなに心に響かない演説、初めて聞いた……」

 

 シロコ渾身の理論武装。

 が、ダメ。

 ミユが胡乱気な瞳で、シロコを見つめる。

 

「……それで先生、アリウスの子達はどうやって常識を身につけてるの?」

「おい、逃げるな! 話はまだ終わっていないぞ!」

 

 理論武装が無駄だと悟るや否や、シロコはいっそ清々しい程に、話題の転換に走る。

 当然、生真面目なサキはシロコに怒る。

 

「落ち着け、サキ。以前にも言った通り、既に被害者(理事)とは脅し(和解)済みだ。邪魔なジェネラルも排除したからな。この件で訴え出る者が居ない限りは不起訴にしかならん。捜査するだけ、時間の無駄だ」

「これを銀行強盗の首謀者が言うんだから、世も末だよね」

 

 殺人の現行犯でもないのだから、当事者同士で示談(訴えたら道連れ)が成立しているのなら問題ない。

 そう言い切る、アビドスの親玉にモエが呆れた息を吐く。

 

「いやー、正義って難しいねー」

「私はSRTの揺らがない正義に憧れて入学したのですが……なぜだか、入学してからの方が正義が揺らいでいる気がします」

「本当の善は夢の中にしかない。Mr.ニコライさんの“善悪の彼方”でも書いてありますからー」

 

 ホシノの言葉にミヤコが力なく頷き、その様子をノノミが笑って見守る。

 まあ、銀行強盗(小さいこと)を責め始めると、SRT自身にもFOX小隊などの流れ弾が行くので、見逃すしかないのだ。

 こうして少女達は、また1つ大人に近づくのだった。

 

「さて、話を戻すぞ」

 

 そして、扉間がバームクーヘンもビックリの分厚い面の皮で話を元に戻す。

 

「先程も言った通り、アリウス生は戦闘で外に行くときはともかく、日常でキヴォトスの常識に馴染みがない。そこで、FOX小隊の引率の元、様々な体験活動をさせておる」

「アリウスさんの体験活動ですか?」

「まあ、硬く言ってはおるが、要は遊びに行かせておるだけだ。爺のワシが引率するより、同じぐらいの年の子の方が良いからな」

 

 トリニティの薩摩であるアリウスの世紀末的価値観では、誤チェストが発生しかねない。

 なので、いざとなればアリウス生を力で抑えられる、FOX小隊に任せているのだ。

 

「後は……FOX小隊の休暇兼、息抜きでもある」

「先輩達の休暇…ですか?」

 

 ミヤコが、わざわざそんなものを設定する必要があるのかと、首を捻る。

 

「FOX小隊の後輩であったお前達に聞くが……贖罪の最中に、ユキノが素直に休みを取ると思うか? ましてや、遊ぶなど」

「あー……なるほどね」

「ユキノ先輩が休まなかったら、他の先輩も休めないよね……」

 

 モエとミユが納得といった表情を見せる。

 ただでさえ、厳しい規律の中で生きて来たFOX小隊。

 そこに今までの罪の贖罪活動。

 人一倍、真面目でストイックなユキノの性格。

 

 以上が加わると、大真面目に『贖罪が終わるまでは私は休まない』とか言い出しかねない。

 そして、リーダーのユキノがそう言えば、他の3人も休むに休めない。

 たとえ、ユキノがお前達は休めと言ってもだ。

 

「そういう訳で、仕事として遊びに行かせておるのだ。無論、常識を学ぶ場なので、日常生活を営むようにと伝えた上でな」

「なるほど……納得しました」

「だが、ユキノ先輩の遊ぶ姿か……想像がつかないな」

 

 納得を見せる、ミヤコとサキ。

 だが、やはりユキノの遊ぶ姿が思い浮かばないのか、微妙そうな顔をしている。

 

「先輩のことだから、遊びに行く場所を初デート前日レベルで調べてそう」

「う、うん。私達もそこまで外に遊びに行けるわけじゃないし……」

 

 厳格な先輩。

 親の子供時代が想像できないように、ラビット小隊はユキノのプライベートが想像できないのだ。

 

「報告として、写真を提出させていてな……見るか?」

「「「「見る!」」」」

 

 そして、シッテムの箱に映し出されるのは、不器用な笑顔でアリウス生と共にピースをする、ユキノ。

 

「先輩の私服姿……初めて見ました」

「ここはトリニティのカフェか?」

「あ! この子、私がこの前オペレーションを教えてあげた子じゃん」

「ヒヨリちゃんもいる……あの大きなパフェを1人で…? それに何だか、前に会った時より丸いような……」

 

 口々に感想を言うRABBIT小隊のために、アロナが気を使って写真をスライドさせていく。

 

「こちらはニコ先輩ですね。おしゃれな服ですね」

「オトギ先輩は……なんというか、イメージ通りの服だな」

「クルミ先輩、なんかめっちゃ馴染んでるね。アリウスに金髪の子が多いからかな?」

「と、とにかく、先輩達が元気そうで良かったね」

 

 FOX小隊やアリウス生の様々な写真を見ながら、安堵の息を吐くRABBIT小隊の面々。

 贖罪活動を行うと聞いてからは、先輩達のことが心配だったのだ。

 

「アリウス……そう言えば、ホシノ先輩とシロコ先輩は行ったことあるのよね?」

「うん。メイドさん達との潜入ミッションで、ちょっとね~」

「アリウスってどんな感じの学校でしたか?」

 

 かつて、ベアトリーチェのミサイルを防ぐために、アリウスに向かった経験のある、ホシノ。

 セリカとアヤネがどんな場所だったのかと尋ねる。

 

「ん、アビドス以下の学校。勝ってるのは人数だけ」

「シロコ先輩、嘘つかないでよ。うち以下の学校なんてあるわけないでしょ」

「あはは……セリカちゃんの言葉が心に刺さりますね」

「アビドス以下の学校……百鬼夜行ならば探せばある気もしますが」

 

 シロコのアビドスの勝利発言に、セリカがため息交じりに吐き捨てる。

 キヴォトスにおいて、アビドスは最小……覚えておけ! 

 

「いやー、それがねぇ、学校に関してはそうでもないんだよねー」

「アリウスは以前は廃墟同然だったからな。とてもではないが、学び舎と呼べる状況ではなかった。もっとも、今は綺麗に掃除をして学習環境を整えているがな」

「え! シロコ先輩の嘘じゃないの!?」

「セリカは私のことを何だと思ってるの…?」

 

 ホシノと扉間も同意したことで、初めてシロコの発言が真実であると分かり、セリカは驚きの声を上げる。

 横で、シロコが不満そうに頬を膨らませているのを、ノノミがよしよしと宥める。

 しかし、セリカはどうして、こうした疑いは持てるのに、ゲルマニウムブレスレットには騙されるのだろうか? 

 

「世界って広いのね……ずっとアビドスがワースト1だと思ってたわ」

「いや、実際に一度は潰れたSRT(うち)も見ただろ」

 

 世界の広大さに驚くセリカに、サキがツッコむ。

 

「いや、頭では分かってたんだけど、実際に聞くと……それに写真のアリウスの人は楽しそうだし」

「私達から見ても、アビドスも借金を背負ってるようには見えないけどねぇ」

「う、うん。みんな、すごく逞しい……」

「SRTが閉校していた時は、私達から見るとアビドスの方が上に見えたのですから、そういうものだと思います」

 

 隣の芝生は青く見える。

 と言うよりも、どんぐりの背比べをしても仕方がない。

 借金のアビドス! 閉校のSRT! 世紀末のアリウス! 

 

 この中でどれがマシとか、酷いとか言い争うだけvanitas vanitatumだろう。

 

「まあ、アリウスもSRTも、そしてお前達アビドスも状況は改善されて来ておるのだ。下を見るのではなく、上を見ていけ。少しでも自分達を高めることが出来たのならば、他者と比べて劣等感を抱く必要はない」

 

 他人を見下して安心するのではなく、自分達を高めていけ。

 そう告げる扉間にホシノもうんうんと頷く。

 

「うんうん、借金も現実的に返せそうだからね~。ほんの少し前は生きてる間に返せるようになるとは思わなかったよ~」

「はいー。以前は300年先の未来までかかると思っていましたけど……これなら遅くとも、私達2年生が卒業するまでには何とかなりそうです」

「その後のことは……まだまだ問題が山積みですけど、私とセリカちゃんに任せてください」

「そう言えば、ワカモちゃんは何年生扱いになるんだっけ? 一緒に残れない?」

(わたくし)、今が1年生になると、卒業時には20歳で制服を着ることになるのですが……」

 

 借金が返せても、アビドスの問題はそれこそ砂の数程にある。

 人口問題! 産業問題! 環境問題! 

 アビドスにジェットストリームアタックをかけるぞ! 

 

「ん、先生、私に()()()()()()。出来れば、砂漠をオアシスに変えられるやつ」

「出来るわけないでしょ、シロコ先輩。仮に水を出せても、どれだけ砂漠が広いと思ってるのよ」

 

 シロコの忍術を教えてという言葉に、セリカが呆れる。

 アビドスの砂漠を湿地に変えるとなると、もはやノアの大洪水レベルが必要だ。

 

「今のワシに忍術は使えん。それに仮に使えても、ワシではチャクラ量が足りん」

「ほら、言ったじゃん」

「まあ、兄者がおれば砂漠を森に変えられるやもしれんが……」

「出来るんだ……」

 

 扉間の言葉にドン引きする、セリカ。

 

「忍術って凄いんですねー」

 

 忍術が凄い× 柱間がおかしい〇。

 

「忍術…? 何の話ですか、先生?」

「あー、そう言えばRABBIT小隊の子はあの時いなかったねー。先生はね、忍者の世界から異世界転生してるんだよー」

「頭でも打ったか? さっきの戦闘の余波かもしれないから、一度病院で見て貰え」

 

 そして、ホシノから扉間の事情を聴いたアビドス勢とは違い、RABBIT小隊は知らない。

 そのため、ミヤコが疑問符を浮かべ、サキが呆れた表情をする。

 

「ホシノの言葉は事実だ。ワシはこの星の人間ではない」

「先生、もしかしてボケた?」

「モエちゃん、失礼だよ」

 

 モエがついにボケが来たかと呟き、ミユがそれをとがめる。

 しかし、ミユの表情も全くと言って信じるようなものではない。

 

「FOX小隊には話しておったが、お前達には言っておらんかったな……ついでだ、お前達にも話しておくとしよう。ワシの過去をな」

「ん、忍術とかも一緒に聞かせて。バレずに強盗……違った、金遁の術とかない?」

「金遁か……金遁そのものはワシは見たことがないが、砂に磁遁使いの者がおったな。交戦した者の報告では磁力で砂鉄を操っておったらしい。それを応用すれば、砂金を操るぐらいは出来るかもしれんな」

 

 扉間は自分の死後に、三代目風影になった忍の情報を思い出して話す。

 因みに、砂金はその後の四代目風影が使っていたりする。

 まあ、そんな四代目でも砂の財政は変えられなかったのが、砂漠の終わりっぷりを示しているのだが。

 

「へー、忍術ってそんなのもあるんだ。ゲームみたいでちょっと面白いわね」

「そう言えば、穢土転生の術のインパクトが強すぎて忘れてたけど、他にも術があるんだよね。どうやって使うの?」

 

 穢土転生の術という、トップクラスの禁術のせいで忍術への認知が歪んでいた、ホシノ。

 しかし、よくよく考えると面白そうな話なので、警戒しながらも聞いてみる。

 

「……まあ、チャクラもない以上話のネタにしかならんゆえ、話しても構わんか。忍術は様々な物があるが、基本は火、水、風、土、雷の5つの性質をもった術を、チャクラというエネルギーをもとに、印を作ることで発動させる」

「印?」

「手と指を使って、十二支を表す文字を作ることだ。例としては亥、戌、酉、申、未といった具合にな」

 

 ゆっくりと、しかし一切の淀みなく印を作る扉間。

 その姿からは、明らかに何度も繰り返し練習した過去が見て取れた。

 

「どうやら……本当に昔からやっていたみたいですね」

「中二病でもなければな」

 

 その動きを見て、ミヤコとサキが確かな経験を感じ取り、扉間の話を信じる姿勢を見せる。

 

「そう言えば、百鬼夜行には忍術研究部があるけど……ワカモ、使える?」

「使えませんわ、そもそも百鬼夜行でも忍者は単なるおとぎ話です」

 

 シロコがもしかしてと、ワカモに期待の視線を向けるが当然、無理なものは無理だ。

 

「まあ、チャクラがない以上は手品にも劣る。術の再現ぐらいならば、()()()()()()()()使()()()可能なものも存在するが、それをするぐらいならエネルギーを直接ぶつけた方が早い」

 

 忍術研究部に教えたようにチャクラを使わずに、再現する術は存在するが結局は自己満足。

 火遁に使う火薬で銃をぶっぱなした方が強いのだ。

 

「そう言えば、先程おっしゃった磁遁の術は火、水、風、土、雷のうちのどれなのですか?」

「磁遁は……恐らくだが、土と雷か風と雷、あるいはその3種の複合だな」

「『空のファービィ』のミックス能力みたいですねー」

 

 ノノミが丸だけで構成された、ピンクの伝説の戦士を思い浮かべる。

 

「恐らくって、先生は使えないの?」

「複合の術は基本的に血継限界と言ってな。特定の一族の血を引く人間にしか使えんのだ。仮にそうでなくとも、敵の術の詳細は推測することしか出来ん」

 

 敵の術の詳細を知りたい? 

 よし、解剖するぞ! 

 これがまかり通るのが忍の世界である。

 子供にはとてもではないが、伝えられない。

 

「更に上には血継淘汰と言われる3性質以上の組み合わせもある。特に、塵遁という術は凶悪でな……触れた相手を分子レベルで分解する攻撃を、ステルス状態で空を飛びながら放ってくる卑劣な忍もおった」

「せ、先生が卑劣って言うなんて……どれだけ」

 

 扉間ですら、卑劣と言うしかなかった忍の存在にドン引きする、ミユ。

 まあ、二代目世代はどいつもこいつも卑劣なので、相対的卑劣度は低めだが。

 

「じゃあ、砂漠を森に変える術も?」

「兄者の木遁は………さらに珍しい、ワシの知る限りでは兄者専用の術だ。恐らくは“柱間細胞”の影響だとは思うが」

「柱間細胞…?」

 

 柱間細胞というパワーワードにシロコが宇宙狼状態になる。

 千手細胞ならともかく、柱間細胞ってなんだよ? 

 

「兄者は細胞から特殊でな。ちょっとした刺し傷や骨折なら、瞬時に自動的に治っておったのだ」

「ちょっとした…?」

 

 それは全然大したことのある傷なのでは? 

 と、ワカモが訝しむ。

 

「兄者がおれば、ワシがこの星の者ではないという説明に説得力が出てきたのだがな」

「え、先生も、オート回復するの!?」

「出来んわ! 兄者のような謎の細胞と一緒にするな!!」

「でも、兄弟なんだよね? そう言えば、先生って年齢の割に顔が若いし……まさか」

「………ワシは兄者ほど頑丈ではない。見た目が若いのは………いや、まさかな」

 

 ホシノの言葉に、もしや柱間細胞の影響が自分にもと思ってしまう、扉間。

 他の千手一族は普通に老けるので、影響が無いとは言い切れない。

 

「あの、別に傷が治ったり若いままなのなら、気にしなくてもいいのでは?」

「はい。メリットしかないですし……」

 

 衝撃を受ける扉間に、ミヤコとアヤネがフォローを出す。

 別に良い事ではないかと。

 

「………兄者の細胞はな、他人の体に移植すると生命力やチャクラが強化されるが、本体が力を失うと木に変わるのだ。後……移植部分に兄者の顔が生える」

「「「「…………」」」」

 

 スッと、無言で扉間から距離を取る生徒達。

 

「に、人間? 本当に人間なの? それ?」

「ん、先生が宇宙人だということが良く分かった」

「ていうか、細胞を移植すると強くなるとか、顔が生えるとか、忍者って言うよりエイリアンじゃん」

「もう、献血しないでね、先生」

 

 セリカ、シロコ、モエ、ミユが恐る恐る扉間を見つめる。

 視線が完全に、ホラー映画の怯える登場人物である。

 

「案ずるな! よくよく考えれば、兄者と同じ腹から生まれ、長年共に暮らしてきたワシが木になっておらんのだから、細胞移植でもしなければ大丈夫なはずだ! そもそも、兄者の子も孫にもその性質は受け継がれておらん! 義姉上も何事もなく生きておったしな! 献血は……念のため控えておくとしよう、うむ」

 

 そんな生徒達に必死に弁明を行う扉間。

 仮に柱間が聞いたら、ずぅーんとへこんでいただろうが知らない。

 そういう言い方はよさんかと、言ってくれる人はいないのだ。

 

「えっと……話がだいぶ逸れてしまいましたが、先生の過去の説明を聞きたいのですが? あ、いえ。今の流れで別の星の人だとは理解しました、はい」

「……まあ、先生と一緒に居たら木になるなら、とっくの昔になってるよね。おじさんとシロコちゃんはカタコンベで、3日間も一緒に生活してたし」

「まあ、それもそうか」

「そうですねー」

 

 ミヤコが場を取り直すために、話を元に戻す。

 そして、ホシノがカタコンベで一緒に生活した時のことを思い出して、戻ってくる。

 更に、サキとノノミもそれに続く。

 

「あはは……忍者って凄いんですね」

(わたくし)、柄にもなく百鬼夜行のことが心配になってきました。最近、忍者が増えたようなので」

 

 そして、愛想笑いしながらアヤネが戻ってきて、最後にワカモがチベットスナギツネのような顔で扉間を見る。

 

「兄者を忍者の基準にせんでくれ。細胞云々がなくとも、忍の神と呼ばれた最強の忍だぞ? それに比べて、ワシは平凡な忍びだ。誰にでも使える術や、誰にでも出来る政策しか出来んからな」

「……なんだろう? またセリカが騙されそうな感覚がする」

「ちょっ! 急にどうしたの、シロコ先輩?」

 

 誰にでも使える(ように開発した)術。

 誰にでも出来る(ように簡略化した)政策。

 嘘は言っていない。嘘は。

 ただ、その難易度も言ってはいないが。

 

「はぁ、とにかく……ワシの話の続きでもするか」

 

 そう言って、扉間はため息交じりに話を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ピピピとPMC理事の携帯に緊急の着信が入る。

 

「私だ」

『お疲れ様です! 理事長! ついに、ついに見つかりました!!』

「落ち着け、何が見つかったというのだ?」

 

 何やら興奮したように叫ぶ部下を落ち着かせながら、理事は尋ねる。

 一体、何の発見に成功したのかと。

 

 

『我々が長年、アビドスの砂漠で探していた──宝物を!!』

 

 

 ウトナピシュティムの本船を。

 




次回からは卒業編……最終章に突入します。

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