嵌められた。
アコがそのことに気づいたのは、扉間との待ち合わせ場所に到着した風紀委員達が爆撃を受けた時である。
「くそ! 敵はどこだ!? 総員、まとまって防御に徹しろ! いいか、敵が分かるまでは分散するな!」
「今の攻撃で負傷した人は私に言ってください」
約束の時間になっても現れない先生。
そして、あらかじめ準備しておいたとしか思えない攻撃。
部隊はイオリとチナツが指揮しているので、奇襲での動揺が少ないのがせめてもの救いか。
『敵はこちらで探します。2人はそのまま隊を維持していてください』
恐らくは、こちらの動きに気づいた扉間がアビドス対策委員会と共に、奇襲を仕掛けて来たのだろう。そう考えて、アコは通信越しに周囲の探知を始める。
『いえ、この反応は…!』
だが、捉えた反応は予想とは全く違うものだった。
「どうやら、ヒナは居ないようね。なら、大した相手じゃないわね」
「油断しないでよ、社長。明らかに一個中隊級の戦力はある」
「そのために、色々仕掛けて来たんだから大丈夫でしょ」
「全部壊します……アル様の敵は全部…全部!」
聞こえてきた声は、思い出すのも嫌な問題児達の声。
アル、カヨコ、ムツキ、ハルカの4人。
そう、便利屋68だ。
『便利屋ですか……』
「アコちゃん! これが私達のターゲットでいいの?」
イオリがこいつらを討てばいいのかと聞いてくる。
彼女の言う通り、表向きの理由としては便利屋を捕えるのが目的だ。
そのついでに先生をゲヘナに
しかし、このタイミングでの便利屋の強襲。
『なるほど……そういうことですか……』
「アコちゃん?」
アコはある可能性に思い当たり、溜息を吐く。
便利屋が自分達の待ち合わせ場所に来たのは、偶然ではない。
どうやってかは知らないが、先生がワザとぶつけて来たのだ。
そう。
『先生は風紀委員会の力を見極めたいのですね』
ゲヘナの実力を見極めるために。
「アコ行政官? 急に何を……」
『いえ、何でもありません。今は便利屋の捕縛に集中してください』
戦闘中の現場は他のことを考えなくていいと、チナツには言いながらアコは思考を回転させる。
認めたくはないが、扉間は自分達よりも1枚上手だ。
恐らく、こちらが自分の確保に動いているのを察知していたのだろう。
そしてそれは、これからも敵対することを意味する。
故に、仮の目的である便利屋とぶつけ合わせて、こちらの戦力を計ろうとしているのだ。
『やりますね……先生』
1人、モニター越しに唇を噛むアコ。
扉間という先生の脅威を、今更のように噛みしめながら。
まあ、ぶっちゃけるとただの勘違いなのだが。
「さあ、みんな気張って行くわよ! この依頼が終わったら1億円で豪遊よ!」
「豪遊…? 美味しいものをお腹いっぱい食べれるんですか…?」
「ええ、もちろんよ! 今夜は焼肉食べ放題にいくわよ! ハルカ!」
「アハハ、いいね、いいね! 食べ放題で微妙にひよってるあたりがアルちゃんらしい」
そしてこちらは、大嫌いな風紀委員会に嫌がらせをして、大金が貰える立場の便利屋である。
1億円の仕事ってどうしようと思って、考えた結果とにかく派手にやることにしたのだ。
故に、隠れることなく顔出しで堂々と戦う。
「………どうだろうね。1億円をポンと出すなんて胡散臭いし」
しかし、参謀役のカヨコは扉間のことを怪しんでいた。
先生という存在は良く分からないが、1億をはした金として扱えるほど稼いでいるとも思えない。
「ひょっとして、風紀委員会とは裏で繋がっていて挟み撃ちにするために、私達をおびき寄せたとか、あるかもしれないし」
さらに言えば、あちらは行政側でこちらは犯罪者。
普通に、騙し討ちを喰らう可能性もあるのだ。
「もしくは、風紀委員会と私達をぶつけ合わせて漁夫の利を狙うとか」
カヨコは扉間の意図を読もうとして、頭を働かせる。
扉間からの依頼は、風紀委員会の足止め。
足止めというからには、どこかに逃げていてもおかしくはないが、姿を見せない以上は隠れてこちらを討つチャンスを窺っていてもおかしくはない。
「そこまで心配しなくていいんじゃない? 代金を払わないなら、大人のカードを奪えばいいし。それにいざという時は今まで通り逃げればいいじゃん」
そんなカヨコに対して、ムツキは最悪先生の大人のカードを盗もうと提案する。
1億の依頼料だからといっても、この仕事自体には1億の価値はない。
大人のカードから金を毟り取れば、それなりに儲けは出るはずだと。
「……まあ、どっちにしてもここまで来たら、やるしかないか」
そんな気楽に考えていいものかとカヨコは思うが、ここまで来てしまった以上は戦うしかない。
風紀委員会に捕まってしまえば、依頼失敗どころか矯正局行きだ。
捕まらないように適度に戦うしかないのだと、自分に言い聞かせて。
そうした形で、両者は扉間の思惑を考察しながら対峙する。
しかしながら。
「貴様ら! 道を開けろ! ここはカイザーPMCの土地だ!!」
「一刻も早く銀行に行かねばならんというのに……なぜこんな所にゲヘナの部隊がいるのだ!」
「まさか……今回の強盗はゲヘナの生徒の仕業か!?」
『「は?」』
流石に自分達が、カイザーPMCへの嫌がらせのために利用されているとは、気づけなかった。
しかも、戦うことは二の次で道を塞ぐことが主な理由など、思いつきもしないだろう。
「ど、どうなってるんだ!? アコちゃん! ここは、アビドス自治区じゃないのか!?」
『……いえ、ここは何年か前にカイザーPMCによって買い取られた土地です。だからこそ、私達もこうして堂々と戦闘が出来るわけなんですが……』
イオリの混乱した叫びに、アコは何とか冷静になろうと指を噛む。
自治区ではない以上は、戦闘を禁じられるわけではない。
だが、土地の所有者である以上はそれを咎める権利はある。
『見たところ、私達が狙いというよりはどこかに出動する途中に見えますね。前には便利屋、後ろにはカイザーPMC……ここは、一度隊を動かすしかないですね』
このままでは最悪、カイザーとも敵対して挟み撃ちに遭ってしまうと判断したアコは、一度カイザーPMCに道を空けるように、部隊へ指示を出す。だが。
「ハルカ! ここよ!」
「はい、何もかも吹き飛ばしますね…!」
アルの指示で、ハルカが仕掛けておいた爆弾を一気に作動させる。
『なッ!?』
連鎖する激しい爆発音。
吹き飛んで気絶していく、風紀委員達。
ついでとばかりに、爆発に巻き込まれるカイザーPMCの兵士達。
まさに、地獄絵図である。
「どう? 見たかしら、私達の実力を! 風紀委員会なんて目じゃないんだから!」
「フヒヒヒ……もっと、もっと、壊さなきゃ…!」
だが、攻撃は爆弾だけでは終わらない。
ハルカが笑いながらショットガンを連射し、アル達もそれに続く。
便利屋は色々と抜けている集団だが、戦闘力はキヴォトスにおいても上位に来る集団なのだ。
「ちっ! 陣形を崩すな! 相手は所詮4人。その内、弾切れになる。それまで耐えろ!」
「ヒナの居ない風紀委員会なんて、所詮こんなものよ!」
圧倒的有利、しかも嫌いな風紀委員をボコボコにして。
アルの気分はまさに有頂天。
悪役令嬢のように高らかに笑い出してしまっている。
負けてる時は冷静な判断が下せるのに、勝っている時はつい気が大きくなってしまうのだ。
「社長。依頼は足止めだから、そろそろ退却しよう」
「そうそう、これ以上戦っても弾薬の無駄遣いだし」
誰がどう見ても、調子に乗っている。
あ、これは不味い兆候だなと判断したカヨコとムツキが、さり気なく帰ろうと促す。
「いいえ、まだよ。もっと暴れて最高のアウトローとして便利屋68の名前を広めないと!」
だが、調子に乗ったアルは心配するなと胸を張る。
そして、声高に便利屋68の名前を宣言するのだった。
「
「銀行強盗の集団か! まさか、もうここまで逃げてきているとは! 逃げ足の速い奴らめ!」
「だが、これでわざわざ銀行まで行く必要がなくなった! ここで仕留める!!」
「「「「………銀行?」」」」
便利屋68の名前に反応したカイザーPMC達が、一気に殺気を醸し出す。
そして、便利屋68の面々は訳が分からずにオウム返しする。
「惚けるな! 貴様達が先程カイザーローンを襲撃し、1億円を奪ったのは分かっているのだ!」
「はぁッ!? 銀行強盗なんて記憶に残ってないわよ!?」
「銀行強盗など記憶に残る犯罪ではないだと…! 何という恐ろしい集団だ! 奴らは危険すぎる!」
「だ、だから、本当に記憶にないんだってばぁ……」
「奴にとっては悪事など、今まで食べたパンの枚数のようなものだと言うのか……陸八魔アル…!」
銀行強盗なんて、カッコいい行動をしたら絶対に記憶に残るので、やっていないと告げる、アル。
その程度の犯罪、記憶にも残らないと豪語していると解釈するカイザーPMC。
喜べ、アルちゃん。今この瞬間から便利屋68はキヴォトスでも有数の悪党になったぞ。
「社長の言う通りだよ。私達はそこの風紀委員達と戦ってた。強盗に行く時間なんてない」
涙目でプルプルと震えるアルに代わり、カヨコが証人ならすぐそこに居ると風紀委員に目を向ける。先程まで戦っていたのに、銀行強盗なんて出来るわけない。その証言さえあれば、銀行強盗の疑いは晴れる。だが。
『……いえ、私達も明らかに不審な集団を見かけたので、足止めしていただけです。なるほど、やっぱり銀行強盗の犯人は便利屋68だったのですね』
アコはニッコリと笑ってそれを否定する。
完全な嫌がらせである。
銀行強盗など、知りもしないが今ここで庇ってやる理由もない。
むしろ、銀行強盗を捕まえるという名目なら、カイザーPMCを味方につけることが出来る。
そう、判断したが故の虚偽の報告だ。
「な!?」
『さあ、銀行強盗である便利屋68を捕まえますよ』
「良く分からんが、分かった」
そして、形勢は一気に逆転する。
今まではある意味で三つ巴状態だったが、今は完全に2対1。
しかも、数まで圧倒的に負けている。
慌てて、退却しようとするが残念。回り込まれてしまった。
「さあ、観念しろ!」
「……ちょーっと、これはヤバいんじゃない?」
「ハルカ、爆弾は残って……ないよね」
「あわわ、す、すみません、私が調子に乗って全部爆破させたから」
イオリが意気揚々と銃口を突き付けて笑う。
そんな嫌味な姿に、何か言い返したい便利屋の面々だが当然そんな余裕はない。
万事休すかと、心に諦めの二文字がよぎる。
「……ふざけないで」
「アルちゃん…?」
だが、ただ1人だけ諦めていない者が居た。
「私はキヴォトス1のアウトローになると決めたのよ! それなのに! それなのに!」
彼女の名前は陸八魔アル。
便利屋の社長にて、悪党の頂点に立つ存在。
そんな彼女が、この程度の逆境で諦めるわけがない。
「―――他人の手柄で有名になっても嬉しくないわよーッ!」
「そこ!?」
訂正。ただ単に、自分の
「こうなったら、死に花を咲かせてやるわ! 銀行強盗なんて目じゃない今日一番の悪行で、キヴォトス1の悪党の名を手に入れてみせるわよ!!」
なんかもう、色々とあり過ぎてキャパオーバーしたアルは吹っ切れて覚悟を決める。
基本情けないアルだが、やるときはやる女なのだ。
「ムツキ、カヨコ、ハルカ、あなた達は逃げなさい。退路は私が切り開くわ」
そして、なんだかんだ言っても社長。つまりは長だ。
社員に危機が迫れば、真っ先に自分が盾になりに行く。
どこぞの銀行強盗よりも余程、火の意志に溢れている。
「いや、アルちゃん1人じゃ無理でしょ」
「そうそう、どうせすぐにやられて私達も捕まるから。戦うなら全員で」
「あ、アル様を置いていくなんて出来ません…!」
だからこそ、人に好かれる。
このダメダメダメな社長を支えてあげようという気持ちが湧く。
社長になった者がみんなから認められるんじゃない。
みんなから認められたものが社長になるのだ。
「あ、あなた達……」
最後まで一緒に戦うと言ってくれた仲間の姿に、思わずジーンと涙を流す、アル。
『盛り上がっている所、悪いですけど逃がす気はありませんよ?』
だが、絶体絶命の状況は変わっていない。
やる気には満ち溢れているが、やる気だけで現実が変わるのなら誰も苦労はしない。
今必要なのはこの包囲網を破るだけの戦力だ。
『さあ、大人しくお縄について下さい。
「だから! 私達はやってないって言ってるでしょッ!!」
綺麗な笑顔で嘘を吐くアコに、アルは怒鳴り返す。
だが、犯罪者の言葉など誰も信じるはずがない。
「―――ん、信じる。その言葉」
銃声が響き渡り、便利屋を取り囲む兵が倒れていく。
そして、硝煙の中からゆっくりと現れる覆面姿の4人組。
「あ、あなた達は…?」
突如として現れた謎の集団。
敵か味方か、その判断がつかずにアルは問いかける。
「何だかんだと聞かれたらー、答えてあげるのが世の情けってねー」
「ん、アビドスの破壊を防ぐため、アビドスの平和を守るため」
「愛と真実の正義を貫く♪ はい、次」
「え? これ私も言わなきゃダメなやつ!? ラ、ラブリーチャーミーな正義の味方!」
『そ、その名も――』
覆面で覆われた素顔の下にあるのは、罪悪感か好奇心か羞恥心か。
それとも、卑劣な策謀か。
何はともあれ。
「―――覆面水着団! ここに参上!!」
覆面水着団、ここに見参。
『………あの、どちら様ですか?』
余りにも予想だにしない事態に真顔で聞く、アコ。
「………か、カッコいい!」
なんか目をキラキラさせる、アル。
(あれ? もしかしてアビドスの……)
相手が何者かを把握して、口にすべきか迷うカヨコ。
何はともあれ、その場を支配していたのは混乱だけだった。
「あなた達が悪人なのは知っている。でも、謂れのない罪で捕まえられるのは間違っている……と思う」
「し、信じてくれるの?」
「うん、他の誰が信じなくても、私達だけは信じる。ううん、
「あ、ありがとう……ううぅ、渡る世間は鬼ばかりじゃないのね」
そんな中、覆面水着団のブルーことシロコは便利屋の無実を主張して、アルを慰める。
つい先ほどまで、捕まえて依頼料を踏み倒そうとしていた者とは思えぬ面の皮の厚さである。
しかし、なぜ彼女達が便利屋を助けに来たのかというと。
(先生が言ってた。あの1億円は処分した方がいいお金だって。だから、後々遺恨が残らないように、ちゃんと便利屋に押し付け……依頼料を払う)
盗んだ金を押し付ける先が無くなると困るからである。
かつてここまで自分勝手な正義の味方がいたであろうか? いや、いない。
「今回は手を貸すよー」
「理由は……今はそんなこと気にしてる場合じゃないか」
「あはは、その覆面イカしてるー!」
「み、味方でいいんですね?」
だが、そんなことは露知らない便利屋は覆面水着団の手を取る。
実情を知っている人間から見れば、ドン引きすること間違いなしの光景だ。
どちらが犯罪者か分かったものではない。
というか、どっちも犯罪者である。
「アコちゃん……どうする?」
『どこのどなたか知りませんが、公務執行妨害です。まとめて倒してください、イオリ』
「分かった」
そして、こちらも混乱から回復したのか、指示を出す風紀委員会。
増援が来たと言っても、所詮は4人。
戦力的にこちらが勝っていることには変わりはない。
「それはどうでしょうかね? こっちには秘密兵器があるんですよ」
「
だが、ノノミは覆面の下で不敵に笑い、セリカは勢いよく何かをPMCと風紀委員会に投げつける。
「ぶっ飛ばす!? まさか、禁止兵器でも使ってるのか!? おい、あれを撃ち落とすぞ!」
手榴弾状の何かを、空中で撃ち落とそうと躍起になるイオリ。
これだけの数を吹き飛ばすと豪語したのだ。絶対に、直撃するわけにはいかない。
そう判断した風紀委員達の目のほとんどは、手榴弾状の何かに吸い寄せられる。
そして。
「それは囮だよー。えーと、忍法、隠れ
全員の視線が上に向いた隙にホシノが発煙弾を投げる。
そう、最初から手榴弾は相手の視線を引くためのものに過ぎないのだ。
「よし! あんた達も逃げるわよ!!」
「逃げるってどこッ!?」
「ここからなら、ブラックマーケットが近い。PMCは知らないけど、風紀委員会なら下手にあの中には進軍できないはず」
煙幕を張り、素早く逃走を始める覆面水着団に便利屋。
目的地はブラックマーケット。
後ろ暗いカイザーPMCは、マーケットガードと繋がっているかもしれないが風紀委員会はそうではない。
故に、ブラックマーケットと全面戦争を起こしかねない進軍は出来ないのだ。
「アコちゃん!」
『分かってます! すぐに追跡します』
だが、風紀委員会も、はい、そうですかと諦めるわけにはいかない。
すぐに、レーダーで感知しようとするが。
『反応が消えた! ……これはジャマー!?』
ジャマーによりレーダーを無効化されて見失ってしまう。
「くッ! 何としても奴らを逃がすな!! 分散して奴らを探し出せ!!」
「カイザーPMCはまだ追うみたいですが……私達はどうしますか?」
『便利屋は手強い相手です。少数に分散したら、こちらが逆にやられます』
打つ手がなく立ち止まる風紀委員会とは反対に、カイザーPMCは諦めるわけにもいかないので、人海戦術で探し出そうとする。そう、愚かにも数の利を放棄してしまったのだ。まあ、地元故に幾らでも兵士の補充が利くからこその作戦かもしれないが。ともかく、遠征で来ている風紀委員会には、同じことが出来ないことだけは確かだ。
「どうやら、便利屋を取り逃がしたようだな……
「え? ト、トビラマ先生!?」
「久しぶりだな、チナツ。シャーレとサンクトゥムタワーの奪還作戦以来か?」
どうしたものかと、迷う風紀委員会。
そこへ、堂々とした足取りで扉間が近づいて来て、ワザとらしく便利屋を逃したことを責める。
どんなメンタルをしているのだろうか? こいつは。
3代目雷影もビックリの硬さである。
『…! これはこれは、トビラマ先生……約束の時間からは随分と過ぎていると思うのですが?』
「すまんな。銀行強盗を見かけた故、つい正義感に駆られて追いかけてしまったのだ。今も対策委員会の者には
如何にも悪は許せないと言った風に、力強く語るがこいつが銀行強盗である。
ついでに、便利屋に罪を押し付けることも忘れていない。
「……えっと、私達も便利屋を追いかけろと言いたいのでしょうか?」
「いや、こうなってしまった以上はカイザーPMCに任せよう。奴らにも面子がある。あまりよそ者が手柄を立て過ぎるのはよくない」
「……あの覆面水着団って奴らは?」
「覆面水着団…? フ、クク……なんだ、そのふざけた名前の集団は? 思わずツボってしまったではないか」
ワザとらしくツボりながら、扉間は覆面水着団との関与を否定する。
もちろん、誰のことを言っているのかは分かっているので演技である。
まあ、若干本気でツボっていそうでもあるが。
『それで……先生は今更こんな場所に何の用ですか? 戦闘許可でしたら、ここは自治区ではないので必要ありませんよ』
「なに、ゲヘナの子らもワシの可愛い生徒だ。今日は顔合わせをしようと思ってな」
いけしゃあしゃあと話す扉間に、アコは若干青筋を立てながらも冷静に考える。
そもそも本命は先生を確保すること。
ならば、便利屋のことは一度忘れてここで確保すればいい。
幸いにも、現在扉間は1人。
如何に傷ついた部隊といえど、簡単に捕縛できる。
『でしたら、少しお話をしましょうか。ちょうど、先生のお知り合いのチナツも居ることですし。チナツ、一先ず先生を安全な所に案内してください』
「……分かりました」
『イオリは部隊を再編制して、先生を
「分かった」
扉間を囲い、安全な場所という名目で隔離する。
こうすれば、もう逃げだすことは出来ない。
こちらの勝利だと確信する。
「すまんな。ああ、それとだ。1つ言い忘れておったが――」
『はい、何でしょうか?』
だが、相手が勝利を確信した時を突くのが扉間の戦い方。
「―――お前達には今から、トビラマチャンネルにゲスト出演してもらう」
『…………はい?』
アヤネの操るドローン型のカメラが動き、生放送を開始する。
目が点になる風紀委員達。
まるで、親しみやすい小学校教諭のような笑顔を浮かべる扉間。
その笑顔の下で、扉間は暗に告げる。
「では、これより第6回トビラマチャンネルを開始する。ゲストにはゲヘナ学園風紀委員会の者達を呼んでおる。今回はゲヘナ最強と謳われる風紀委員会の実力について迫っていくつもりだ」
生放送で
ヒナ「……なんか知らない間にアコ達が動画に出演してる」
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