千手扉間のブルーアーカイブ   作:トマトルテ

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85話:望まぬ戦い

 

『私の弱点は、頭を消し飛ばすか心臓を撃ち抜いたら、一時的に動けなくなることよ。その隙をついて拘束して頂戴』

「それは弱点とは言いません! ただの自然の摂理です!!」

「ドラキュラみたいだな、あっちの委員長……」

「心臓に木の杭を刺したら、普通の生物は誰でも死にますよね……」

「ちょっとぉ、ドラキュラとか怖いこと言わないでちょうだい」

 

 穢土転生ヒナとの戦い。

 それは、どことなく緩い空気であった。

 全員が顔見知り。しかも、穢土転生ヒナは無理やり動かされている状態。

 やる気など出るはずもない。

 

「弱点を…! 言うぐらいなら、手を緩めてくれないかしら!」

『同じ私なんだから、このぐらいでへばらないで』

「そっちと違って、こっちは疲れるのだけど…ッ」

 

 しかし、その動きは最強という言葉そのものであった。

 忍術など必要ない。

 鍛え上げられたシンプルな強さが、こちらのヒナの前に立ち塞がる。

 

「と、というか、なんで弾切れしないんですか?」

「ワシがアツコに聞いた所、アリウスに出た天使と同じ理屈らしい」

「……ああ、不自然に武器だけ潤沢にあった理由ですか。そんな武器を買うぐらいなら、食料が欲しいと思っていましたが、納得です」

 

 しかし、ヒナは1人ではない。

 風紀委員会と万魔殿だけではない。

 今は、かつての不俱戴天の仇であったアリウスのマイアとスバルも背中に居る。

 

「ユキノ、ニコ、クルミ。適度に距離を取りつつ、ヒナの援護を行え! オトギは隙を見て、敵の武器を狙え! 攻撃の手を止めることが出来れば、形勢はこちらに傾く!」

「FOX1、了解しました」

「FOX2、援護に入ります」

「FOX3、了解……でも、距離を取りながらでいいの?」

 

 怪獣大決戦よろしく、瓦礫をまき散らしながら戦うヒナとヒナ。

 そんな2人と適度に距離を取りながら、ヒナの援護を行うユキノ、ニコ、クルミ。

 

「ヒナの強みは多対一でこそ発揮される。要するに、相手の土俵を整えてやる必要はないということだ」

「相手は何人纏めて撃とうが関係ないけど、こっちのヒナは私達を巻き込んだらいけない……まぁ、邪魔にならないようにやれってことだね」

 

 ヒナの戦術は、基本的に群れる雑魚(ヒナ基準)を纏めて一掃するためのものだ。

 逆に、数の優位を保った状態で1人を追い詰めるという状況はまれだ。

 そう考えると、戦いやすさでは穢土転生ヒナ側の方が、()()()()()違和感なく戦える。

 

「よいか。拘束のタイミングまでは耐え、時が来たら飛び込むのだ。手足を消し飛ばした状態での拘束では意味がない。手足ごと拘束せねば、再生部位を使って動くからな。あくまでも五体満足の状態で手足を縛り付ける必要がある」

「そして、私の催眠術を委員長ちゃんにかけるのね?」

「そうだ……しかし、万魔殿に幻術のスペシャリストが居たとはな。穢土転生にすら通用する幻術使いを、この段階まで隠し通しているとは……マコトめ、侮れん奴だ」

「フフン! も~っと、マコトちゃんを褒めていいのよ?」

 

 サツキと扉間は初対面。

 故に、扉間はサツキの普段のポンコツぶりを知らない。

 その結果として、穢土転生の強制力を上回る幻術(例:別天神(ことあまつかみ))を使えるのだと勘違いしている。

 しかも、彼女の隠された願いは全世界を平和にするという、マダラの無限月読計画のようなもの。

 やはり…うちはサツキか…! 

 

「しかし……こうして敵に回ると厄介なこと、この上ないな」

「当然です。相手を誰だと思っているんですか? ゲヘナ最強の空崎ヒナですよ」

 

 先程、催眠をかけた時よりも戦力は増えている。

 だというのに、押し切れない。

 圧倒的な才能に裏打ちされた、地道な努力の積み重ね。

 それらが、穢土転生ヒナのバックボーンを支える。

 

「アコ、先程はどのようにして、ヒナに催眠をかけたのだ?」

「それは……あちらのヒナ委員長が空を飛んだので、そこを一斉攻撃して最後はヒナ委員長が翼を撃ち落として、隙を生み出しました」

「そこに至るまでの過程は分かるか?」

「ヒナ委員長同士で均衡状態になったので、あちらのヒナ委員長が被弾覚悟で踏み込んできて、それをこちらのヒナ委員長が足を消し飛ばした結果、体が軽くなったのかいつも以上に空を飛べるようになったんです」

 

 ヒナヒナヒナヒナ、ヒナのゲシュタルト崩壊が起きているが仕方がない。

 事実を言っているだけなのだから。

 

「あちらのヒナは操られている状態……オートで戦闘をしているだけ。ふむ、ならば……」

 

 普段は穢土転生に()()()戦わせることはしなかったが、性能テストである程度は把握している。

 

「先程と同じ状況を作り出すぞ」

「はぁ? ヒナ委員長に同じ手が二度も通用するわけないだろ、先生」

「いや、穢土転生状態のヒナならば別だ」

 

 先輩を舐めるなとばかりに、イオリがその手は通じないと扉間に返す。

 だが、扉間は軽く首を振る。

 

「穢土転生はただの動く死体だ。()()()()()()。ましてや、自動で戦闘を行うようになっているのなら、決まった行動を繰り返すはずだ」

 

 穢土転生で蘇っても成長はしない。

 ただの、動く死体だ。

 最も成長して欲しかった子供達が、その先を奪われた。

 その事実に、僅かに表情を曇らせながらも扉間は冷静に振る舞う。

 

「……本当に大丈夫でしょうか? もしかしたら、そこを利用される可能性も」

「案ずるな、チナツ」

 

 ヒナと言う大きすぎる存在に、不安にも思うチナツ。

 しかし、扉間はとても頼もしい言葉で彼女を勇気づけるのだった。

 

「穢土転生の術はワシが作った。それに合った戦術もな……己の体でも2度ほど行ったが」

「すみません。私の耳がおかしくなったみたいです」

 

 意識がない場合の戦い方は一度目に大蛇丸に穢土転生されたときに。

 意識のある戦い方は、2度目の時に。

 なので、穢土転生がどういった行動を取るかはバッチリである。

 扉間は開発者と実験体、2つの性質を兼ね備える。

 

「………そう言えば、以前に人生4度目なんて、とんでもないことを言っていましたね」

「穢土転生の術は、既に伝えてあるように解術が存在する。つまり、術者の力量では扱いきれん死体も存在するということだ。そうした場合、あちらのヒナのように意識を縛って操ったりするのだが……自動で動くが故に、戦術は非常に単純なものになる」

 

 元々、アルの位置を知るためだけに、わざとヘッドショットを食らっても平然としているヒナなので、穢土転生の被弾上等の戦いになっても弱体化していないが、これが扉間のような頭脳タイプだと戦闘力が大幅に下がる。

 

 ヒルゼンと戦った時は、ヒルゼンもさぞや驚いたことだろう。

 二代目様が水の無い所でこのレベルの(大量にチャクラを消費するだけの)水遁を!? 

 (蒸気に紛れてのマーキングクナイも、互乗起爆札も使ってこないとは)信じられん! 

 

「もっとも、そのシンプルな戦術で最強なのが厄介なのだがな」

「ですが、これだけの数が居れば隙をつけるはずです……ヒナ委員長!」

「聞こえていたわ。最初と同じように戦えばいいのね?」

 

 同じ行動を再現するために、一度距離を取ろうとする、ヒナ。

 

『不思議ね。これだけバレバレの作戦を止めようと思っても、体が動かないなんて……でも、オートでも目の前の敵は逃がさないわ』

 

 だが、例えオートであっても、獲物をみすみす逃す空崎ヒナではない。

 相手に息をつかせぬ猛攻で、距離を取らせない。

 

「FOX2、FOX3。私に続け! 前に出てターゲットを抑える!!」

「はい! ヒナさん、私達が一度引き受けます!」

「自動でしか動けないなら、優先順位もつけれないわよね!」

 

 しかし、穢土転生とは違いヒナには仲間がいる。

 ユキノ、ニコ、クルミが3対1の形を作り、ヒナが後ろに下がる時間を稼ぐ。

 その様は三国志演義の呂布VS劉備・関羽・張飛のようであった。

 

「後はあの3人が離脱できるように、軽く動きを止めればOK。そのために、相手の目を狙撃するんだけど……どう出来そう?」

「ゲヘナ風紀委員会のスナイパーを舐めるなよ!」

 

 そして、3人を離脱させるために、狙撃手のオトギとイオリがヒナの目を狙う。

 穢土転生と言えど、ヒナは忍ではない。

 チャクラ感知が出来ないため、目を一時的に見えなくすれば立ち止まる。

 

「じゃあ、張り切っていこうか。3…2…1──」

「覚悟しろ!!」

 

 FOX小隊の3人に足を止められた一瞬の隙を突き、オトギとイオリのスナイプがヒナの目を射抜く。

 

『……腕を上げたわね、イオリ』

「委員長…!」

 

 奪われた視界。

 まだ、勝負は終わってはいないが、ヒナの意識はこの時点で終わりを悟っていた。

 もしも、意思のある動きが出来るのなら、何がなんでも動いていただろうが、体は止まることを選んだ。

 

「チェックメイトよ」

『……変ね。あれだけ、倒して欲しかったのに……今は全力で戦ってみたかったって思うんだもの』

 

 鏡合わせのように向かい合う、ヒナとヒナ。

 人間ならば同じことを繰り返さないだろうが、自動で動く死体は違う。

 機械的に、その時の最善手を打つ。

 

 同じようにヒナと弾丸をぶつけ合わせ、被弾覚悟で距離を詰める。

 そして、足を消し飛ばされたことで空を舞う。

 

「アリウス学園! ヒナが地面に堕ちた隙に、捕縛するぞ!!」

「任せてください。まさか、ゲヘナを捕らえるための技術が、ゲヘナのためになる時が来るとは思いませんでしたが」

「集団リンチですね! ま、任せてください!」

 

 そして、先程の焼き直しのように、翼を撃ち抜かれて地へと堕ちていく穢土転生のヒナ。

 ただし、先程とは違うのは、わらわらとアリウスの生徒が穢土転生のヒナを取り囲んでいくことだ。

 集団リンチをしに失礼します。

 

「うわッ!? 力強ッ!」

「あ、あたし達より小さいのにどこから、こんな力が…!」

 

 地に堕ちても、その力は衰え知らず。

 抑え込みにかかるアリウスの生徒を吹き飛ばしていく、穢土転生ヒナ。

 

「怯むんじゃねぇ! オレ達が拘束するんだよ!!」

「整列。隙を与えずに、襲い掛かります」

 

 しかし、ヴァニタス教育を受けて来たアリウス生徒に、自爆特攻は日常茶飯事。

 誰かが吹き飛ばされたら、また別の生徒がすぐさま代わりに入り、ロープで手足や関節を固定していく。

 まるで、スズメバチに立ち向かうミツバチのようだったと、目撃者が語る様だった。

 

 これぞ、アリウス流、熱殺蜂球である。

 なお、扉間が校長になった以上、死人は出さないので安心して欲しい。

 

『……動けない』

「はぁ…はぁ…! まさか…たった1人を拘束するだけで…こんなに…大変な思いを…するとは……はぁ…思いませんでしたよ…ッ」

 

 動けぬ! 

 アリウスにガッチガチに拘束された穢土転生ヒナが無表情で呟く。

 逆に、気合と根性で抑え込んでいたスバルは、息も絶え絶えで呼吸が荒くなっている。

 

「みんなご苦労様ぁ。それじゃあ、真打の登場よ。今度こそ、私の催眠術で洗脳してあげるんだから」

「……未だに、あんなものがヒナ委員長に効いたのが理解できません」

「5円玉に紐……なるほど、道具を使って視覚から幻術をかけるのか」

 

 そして、止めを刺すべくサツキが意気揚々と現れる。

 その横ではアコが、未だに半信半疑の目でサツキを見つめ、扉間が真面目に考察している。

 

「あなたは私の言うことを何でも聞くようなぁ~る。あなたは私の言うことを何でも聞くようなぁ~る………ねぇ、なんて命令したらいいのかしら?」

『それを普通、私に聞く?』

「あら? さっきは喋れるようになったのに効いてない? ……どうしてかしら」

 

 オラ! 催眠!! と、5円玉を振るサツキだったが、穢土転生のヒナには効かない。

 先程喋れるようになったのは、何だったのか。

 

「先生、ご説明お願いできますか?」

「……ワシは最初の状態は見ておらんので、仮定の話になるが……穢土転生の縛りには段階がある。完全に自由に動ける状態。意識はハッキリとしているが、体だけ縛られている状態。そして、完全な操り人形として動かす状態。恐らくは、サツキの幻術は最も強い縛りから段階を落とすには至ったが、完全な解除には力が足りておらんのだろう」

「つまり、少しだけ改善はしますが完全に解くには出力が足りないと?」

 

 催眠と言っても、薄い本の中ですら様々な種類がある。

 常識改変、意識は残して体だけ操る、意識も含めて操る。

 つまり、現状の穢土転生ヒナは意識だけ残して、体だけ催眠にかけられている状態なのだ。

 実にエ駄死である。

 

「な、なんですって? この私の催眠術が……いいえ、まだよ! ぐるぐる指回しに催眠アプリ! 私の催眠術は108式まであるわ!!」

『もう少し、真面目なことに時間を使った方がいいんじゃないかしら?』

 

 こうなれば、奥の手だとばかりにスマホを取り出すサツキに、穢土転生ヒナが呆れた声を出す。

 先程までの悲壮感はどこに行ったのやら。

 催眠アプリの効果? まだまだ心眼が足りんな。

 

「先生、せめて意識を奪うことは出来ないんでしょうか? 死なないにしても、眠らせられるのなら、監視も随分と楽になるかと」

「……いや、いかなる(すべ)を使っても穢土転生が夢を見ることはない」

 

 チナツからの提案に、扉間は首を振る。

 穢土転生は別天神(ことあまつかみ)は効くが、無限月読は効かない。

 一応は六道仙人化したマダラの術であるにも関わらずだ。

 

 扉間も知らなかったが夢が見られないようになっていたのか、それとも別天神(ことあまつかみ)が強すぎるのかは分からないが、催眠術の定番である、『あなたはだんだん眠くなぁ~る』が使えないのは痛い。

 

「良いことを思いついたわ」

「ヒナ委員長?」

「ヒノム火山の火口に投げ込めば、再生したそばから溶けるから、穢土転生を封じ込められるわ。流石の私もマグマを泳いだりは出来ないはずよ」

「ッ!」

「並行世界とは言え、ご自身の話ですよね!? 後、先生も『その手があったかッ!』みたいな顔をしないで頂けませんか!?」

 

 再生するなら、再生したそばから消せばいいじゃない。

 そんな卑劣戦法を告げるヒナに、アコがツッコム。

 いくら何でも、それは穢土転生ヒナが可哀想だろうと。

 

「じゃあ、ずっと動けないように抑えつけておくしかないな……」

「ヒナ委員長の上にずっと乗っていろと!? つまりそういうことですね! なんて破廉恥な!!」

「アコちゃん、ステイ」

 

 そして、今度は逆にアコがツッコまれる。

 ツッコんだりツッコまれたり、せわしない奴だな。

 

『やり方はどうでもいいけど……私を抑える役目をつけたら、早く虚妄のサンクトゥム(赤い塔)を壊しに行った方が良いわ。あれはキヴォトスを滅ぼすためのもの……ゲヘナだけの問題に留まらないわ』

「要するに、あの塔を放置しておくと何が起きるのかしら?」

『あれは爆弾みたいなものよ。エネルギーを貯めて、臨界点に到達したら爆発する。それが、ゲヘナを含めてキヴォトスに6個ある』

 

 サツキの質問に、機密事項をペラペラと答えてくれる、穢土転生ヒナ。

 現在はトリニティの虚妄のサンクトゥムは制圧完了。

 ゲヘナは今から制圧するので、残りは4個だ。

 

「6個もですか!? それはどこに…?」

『場所は私には教えられていない……でも、全部同じような形だから各地で報告は上がっているはずよ』

「今、ニュースでやっているわね。ゲヘナ、トリニティ、ミレニアム、百鬼夜行、アビドス……そして、D.U.シラトリ区。連邦生徒会が動いていないのは……いつもの如く動けないのかしら?」

 

 他にも虚妄のサンクトゥムはあると言われて、ニュース速報で確認するサツキ。

 因みに、D.U.とはDistrict of Utnapishtim。直訳すると()()()()()()()()()地区である。

 

 そして、その中心地にはウトナピシュティムの本船を操れるサンクトゥムタワーがある。

 昔からの地名が、その地域の本質を示している先人の知恵だ。

 蛇とか竜がつく地域に水害が多いとかのやつと同じである。

 

「既にトリニティの方は制圧した。ゲヘナを除けば、後は4つだ」

「まだ4つもあるのか……先生はここを私達に任せて、他に行った方がいいんじゃないか?」

 

 イオリがまだまだ、先の見えない戦いが起きているのだと察して、扉間に先に行くように急かす。

 だが、扉間はイオリを安心させるように笑う。

 

「案ずるな、イオリ。今のワシは──」

 

 同時多発的に発生した今回の騒動。

 扉間1人では、当然複数の現場での指揮が取り切れない。

 故に、扉間は。

 

 

「──本体を含めて6人程いる」

 

 

 ミカから譲り受けた、多重影分身の大人のカードを使ったのだ。

 

 

 

 

 

 ミレニアム。

 

「………なんなのだ、あの阿修羅像のようなアバンギャルド君は?」

「以前、トビラマチャンネルで先生に貰ったアドバイスを元に、作られた新型のアバンギャルド君……のはずよ」

 

 ミレニアムとは連絡がつかなくなっていたが、虚妄のサンクトゥムのおかげで異常事態が起きているのは分かったので、ヘリをかっ飛ばして来た扉間。

 まあ、現状は謎のアバンギャルド君Mk.Asuraに戸惑うしかないのだが。

 

「よぉ、新人。助けに来てやったぜ?」

「あなたは…! チビネル先輩!? 助けに来てくださったのですね!」

「だーれが、豆粒ドチビだ!! アリス! その言い方を教えたのは、お前だな!?」

「リーダー、誰も豆粒までは言っていない」

 

 そして、扉間と合流して異変の解決に来たC&Cも一緒にアバンギャルド君Mk.Asuraに相対する。

 まあ、約1名、敵ではなく味方と相対している豆粒ドチビネル先輩が居るが。

 

『先生? そう……私がジャミングをかけたアリウスを抜けて来たのね』

「リオ、お前だったのか。アリウスにジャミングをかけたのは」

 

 そんなどこか緩んだ空気を引き締めるように、アバンギャルド君Mk.Asuraを通して穢土転生リオが扉間に話しかける。

 

『出来ることなら、先生とは敵対したくはなかったわ』

「それは情からか?」

『………いいえ。先生という変数が加わることで、私の式が崩れる可能性が出て来るからよ』

「フ、嫌われたものだな」

 

 何の感慨もないと、わざわざ口にしながら穢土転生リオがアバンギャルド君Mk.Asuraを動かす。

 まるで、後悔の念を振り払うかのように。

 

『会話はもう必要ないわ。アバンギャルド君Mk.Asuraの力の前にひれ伏しなさい』

「全員、気を付けてちょうだい! 私の構想通りならアバンギャルド君Mk.Asuraは──」

 

 そして、動き出すアバンギャルド君Mk.Asura。

 6本の腕、3つの顔。

 その名の通り、阿修羅像を彷彿させるアバンギャルド君は──

 

 

 

「──ロケットパンチを放ってくるわッ!!」

 

 

 

 ──追加された2本の腕を惜しげもなく、こちらに発射してくるのだった。

 

 

 

 

 

 百鬼夜行。

 

「あらあら、本当にルンルンさんが2人いますねぇ……これが分身の術というものですか?」

「いや、あれは穢土転生の術だ。死者の魂を黄泉から呼んで死体に縛る。死ぬこともなければ、傷つくこともない。さらに安易に近づくと、自爆特攻を食らう可能性がある故、気をつけろ」

「マコト議長が忍者と聞いて、『極めて倫理に反する術』を疑っていた理由がやっと判明しましたねぇ……全く嬉しくないですが」

 

 忍法・音分身の術の爆音を聞きつけて駆け付けて来た、ニヤ達陰陽部と扉間。

 途中で穢土転生の術について聞いてドン引きする、いつもの光景を見せているが扉間的には何度も通った道なのでスルーする。

 

「せ、先生!! 来てくださったんですね!!」

「ツクヨ殿!! 何か言ったのですか!? み、耳が……聞こえません!!」

「えッ? なに!? あ、よく見たら先生殿じゃん!!」

 

 そして、忍術研究部達と合流するが、忍法・音分身の術をまともに受けた3人は聴力をやられているのか、耳が遠くなっている。

 

「すぐに3人の手当てをします! ミチルさん、手話は分かりますか?」

「? えっと、こっちに来いってこと…?」

 

 カホがジェスチャーで忍術研究部を呼び、連れて来た部隊に応急処置を受けさせる。

 そしてその隙を埋めるべく、穢土転生ミチルの前にカホとニヤが立つ。

 

「幸い、敵がミチルさんなので、そこまで警戒しないで良いのが救いでしょうか。百花繚乱のアヤメさんなどとは違い、戦闘集団ではありませんから」

「しかし、困りましたねぇ~。先程の爆音とミチルさん達の様子を見るに音で、こちらの聴覚を奪ってくるのは確実……連携がしにくくなりそうですね~。戦闘のプロの百花繚乱ならともかく、こちらは素人。何かしらのサインを決めた方がいいかなっと」

 

 百鬼夜行の戦力を担うのは、陰陽部ではなく百花繚乱紛争調停委員会。

 しかし、現在は部長のアヤメが失踪したゴタゴタで、機能不全に陥っている。

 そのため、応援は期待できない。

 故に、非常に不本意ながら、ニヤが陰陽部を動かすしかなくなったのだ。

 

『先生殿……』

「ミチルか……その額当ての傷は」

『こうなった(あたし)は……もう、先生殿の弟子は名乗れないから』

 

 そんな中、忍び装束の扉間と穢土転生ミチル、2人の忍が向かい合う。

 

『先生殿、逃げて。このままじゃ、先生殿まで殺しちゃう』

「随分と言うようになったではないか、ミチル。お前はまだ下忍のはずだが?」

『ああ……そっか。ここは並行世界だから……知らないんだね』

 

 自分の辿って来た過去とは違う。

 それを理解した穢土転生ミチルが、辛そうな顔をする。

 もう、自分のことを本当の意味で理解できる人間はどこにもいないのだと。

 

「何?」

『先生殿、(あたし)はね──上忍になれたんだ』

 

 穢土転生ミチルが数本のクナイを扉間へと投げる。

 鋭くまっすぐな投擲。

 だが、ただそれだけの──

 

(クナイか。ミチルの戦術ならば、クナイに爆弾を巻き付けているあれか──)

 

 瞬間、扉間の目に映ったのは、クナイに刻まれた()()()()()の文字だった。

 

「いや、これは…!」

 

 ワープ!? なにそれぇ! そんなカッコいい術があるの!? 

 ふ……自身をマーキングした場所まで飛ばす術でな。口寄せの原理を利用したものだが……ワシの自慢の術だ、ワシの。

 

 

『──飛雷神の術』

 

 

 マーキングクナイの位置までワープしてきたミチルが、扉間の眼前に現れる。

 そして、回避不能な距離で銃を構え──

 

『ごめんねぇ……先生殿』

 

 ──扉間の心臓を撃ち抜くのだった。




サツキ           マダラ
・顔と声が良い       ・顔と声が良い
・世界平和を目指している  ・世界平和を目指している
・催眠術が得意       ・催眠術が得意
・身内への愛情が深い    ・身内への愛情が深い
・胸にチャームポイントがある・胸にチャームポイントがある

やはり…うちはマダラか…!

次回は21日投稿。
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