千手扉間のブルーアーカイブ   作:トマトルテ

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86話:作るべき術ではなかった

 

「せ、先生!?」

 

 カホの声が響き渡る中、穢土転生ミチルに心臓を撃ち抜かれた扉間がゆっくりと倒れ──

 

「戦力が少ない故、本体で百鬼夜行に来たのは、どうやら正解だったようだな」

 

 ポン! と煙になって消えていく。

 

『これは…! 影分身の術…?』

「相手の情報を得るために、最も効率が良い方法は直接攻撃を食らうことだ。おかげで、お前が飛雷神を使うことが分かったのだからな」

 

 そして、シッテムの箱を持った()()()()()()()の扉間が、今更ながらに穢土転生ミチルの前に姿を現す。

 分身を犠牲にし、敵の情報を抜き出す……二代目火影の卑劣な術だ。

 

『先生殿…!』

「その術を使いこなせるのなら、確かに上忍クラスはある。だが、忘れたか? ワシは──」

 

 自分は既に上忍だと言ったミチルの言葉を踏まえ、褒めてやる扉間。

 しかし、ミチルは1つ重大なことを忘れている。

 上忍は忍のクラスとしては、確かにトップだ。

 だが、1つだけ、明確にその上の呼び名が存在する。

 

 

「──火影だ」

『火影……里の頂点の忍者』

 

 

 (かげ)。里を、国を守る、忍の頂点たる存在。

 それが、木ノ葉隠れが里、二代目火影、千手扉間だ。

 

「上忍は忍のランクで言えば、確かに最上位だ。ワシとて上忍だからな……だが、影の名前は軽くはないぞ?」

 

 シッテムの箱を胸に入れ、右手にBluetooth銃を構える、扉間。

 そして左手には──

 

 

「よく見ておけ──多重影分身の術!」

 

 

 ミカから譲り受けた大人のカードを持つ。

 

「はいぃ!? ほ、本当に忍術が使えるんですかぁ…?」

「何を今更言っておるのだ、ニヤ……先程、あちらのミチルが術を使ったばかりではないか?」

「えぇと、それはそうなんですが……何と言うか、こう……先生が使う方がインパクトがあると言いますかぁ」

 

 6人に増えた扉間を見て、目を見開く、ニヤ。

 ミチルの飛雷神の術は瞬間移動でのワープ。

 やっていることはヤバいのだが、視覚的には弱い。

 その反面、影分身の術はインパクト抜群。

 

 ワシが作った術だ! ワシの術だ! 

 

「ニヤ、カホ。そして、聞こえるか分からんがイズナ達。ここはワシに任せて、黙ってみておけ」

「はい? 先生はキヴォトスの外の人間……とてもではないですが、任せることは」

 

 ミチルの相手は、もちろんワシが行くと告げる扉間にカホが反論する。

 それもそうだろう。キヴォトスの外の人間は、銃弾一発で死ぬ。

 何より、か弱い生物。

 お前は後(ろ)! と言いたくなるのも仕方ない。

 

「案ずるな。これより、ワシは奥の手を使う……頼むぞ、アロナ!」

『お任せください! 先生には傷一つとしてつけさせません!!』

 

 しかしながら、扉間には奥の手。

 アロナガードがある。

 そして、ワカモとプレジデントを葬ったアロナパンチもある。

 攻撃力と防御力は一時的にだが、確保可能だ。

 何より。

 

「影分身があれば、ワシもある程度は昔のように戦えるはずだ」

 

 たった1つではあるが、忍術が使える。

 砂利を相手にするには十分だ。

 

「さて、ミチル。お前もワシの弟子であることに変わりはない。並行世界のワシの代わりに……試験をしてやろう」

『試験?』

「ああ、このワシと……二代目火影と戦い、お前が上忍として相応しい実力を持つか見定めてやる!」

 

 そう言うや否や、6人の扉間がBluetooth銃を穢土転生ミチルの目に発砲する。

 先手必勝、挨拶中に襲い掛かる、凄く失礼な行動である。

 

『目ッ! 視界を奪うつもりだね!! 飛雷神の術!』

 

 穢土転生相手ではダメージなど期待できない。

 だが、視界を奪うことは出来る。

 その狙いを即座に看破した穢土転生ミチルは、即座に飛雷神で飛ぶ。

 目標地点は、先程投げたマーキングクナイが落ちた地点──

 

「甘いわ! マーキングクナイの場所は既に把握しておる!」

 

 だが、それは開発者相手にはあまりにも迂闊な行動であった。

 飛雷神はワープではあるが、マーキング地点でなければ飛べない。

 つまり、そこに飛ぶと()()()()()()()、簡単に対処可能なのだ。

 

『しまった!?』

 

 飛んだ地点に即座に降り注ぐ弾丸。

 流石にそれを避けることは出来ずに、体に食らう穢土転生ミチル。

 一瞬ではあるが、穢土転生ミチルの動きが止まる。

 

「隙ありだ」

 

 その隙を逃す手はない。

 影分身の扉間達が、即座にミチルを抑えに行く。

 

『こうなったら…! とおっ!』

「苦し紛れのクナイ投げか? あまりよくない戦術だが……いや、マーキング場所を増やすのが目的か」

 

 だが、ミチルとてそれで動けなくなるわけではない。

 1つのマーキング場所が読まれているのなら、もっと数を増やして読めなくする手に出たのだ。

 

「だが、忘れたか、ミチル? ワシは多重影分身が使えるのだぞ。マーキングの数を増やしたところで、こちらも数を増やせば事足りる」

 

 敵の数が増えた? 

 じゃあ、こっちも増やすわ。

 そんな単純な解決法で、マーキングにワープ出来る利点を潰しにかかる、扉間。

 しかし、穢土転生ミチルもまた、忍であった。

 

『飛雷神の術! 飛雷神の術! 飛雷神の術!』

「とにかく、マーキング地点を変えて飛ぶとは……かく乱が目的か? だが、影分身の術はリアルタイムでの情報共有は出来ん。逆に言えば、1人が1つのマーキング地点を見張っておれば、混乱は起こすことはない」

 

 更に、分身を増やしてマーキング地点を固定で見られるようにする、扉間。

 影分身の術は輪廻眼や木遁分身と違い、リアルタイムでの情報共有は出来ないという欠点がある。

 だが逆に言えば、1人が1つのものに集中しておけば、視界を乱される心配はない。

 あちこちに飛ぶ穢土転生ミチルを追って混乱するぐらいなら、はなから見なければいいのだ。

 短所を長所に変える、扉間らしい作戦である。

 

『それは…どうかな!?』

 

 だが、ミチルもまた千手トビラマの弟子だ。

 

(マーキング地点に火薬を撒いて? 攻撃…いや…これは!)

 

 マーキングクナイが落ちた地点に飛ぶ度に、火薬を撒いていくミチル。

 それを繰り返すことによって、当然戦場は火薬に()ちる。

 

『先生殿に教わった忍術は、これだけじゃないもんね!』

(まずい! 水遁で…いや! 今は使えん忍術だ!)

 

 即座に、相手が何をしようとしているか理解する扉間。

 だが、その速すぎる理解力が、忍時代の記憶を引っ張ってしまう。

 久しぶりに忍術を使ったことで、昔の感覚に戻ってしまったのだ。

 

『火遁・灰積焼(はいせきしょう)の術!!』

 

 ミチルが火を吹く、自前の忍術を使うことによって、火薬に引火し──

 

「アロナ! 頼むッ!」

『はい! 先生!!』

 

 ──爆破する。

 

『これで、先生殿の影分身は消せたはず……』

 

 大量の熱された灰が辺りを包み込み、宙を漂って存在するものを灼熱で燃やし続ける。

 キヴォトス人なら、軽傷だろうが相手は影分身。ましてや、扉間。

 影分身を一掃するだけなら十分すぎる威力である。

 

『いたずらに自分の視界まで塞ぐのは、感心せんな』

()()!? 本体から…!』

 

 しかし、影分身はやれても本体はそう簡単にやれない。

 アロナガードが発動したのだ。

 

『でも! 今の銃撃で場所は分かった!』

 

 しかし、単なる銃撃では牽制程度にしかならない。

 むしろ、音と弾丸で位置を知らせてしまっている。

 ミチルは即座に、銃声と声のした灰の中に撃ち返す。

 

 弾丸そのものは、まだ()()()()()というのに。

 

「そっちには、もう誰もおらんぞ?」

『え!? なんで、もうこんな近くに!?』

 

 音のした方とは別の方角。

 その煙の中から、()()を握り締めた扉間が勢いよく飛び出してくる。

 

『ッ! イズナ流忍術・含伏(ぷくぷく)の術!!』

「天泣かッ!」

 

 ガガ!! と、音を立てて、仕込み針がアロナガードに刺さり、扉間は攻撃の手を止める。

 それは、イズナが天泣を自分なりにアレンジした術。

 部員に出来るのだから、部長に出来ない道理などない。

 

『飛雷神の術!』

「距離を取ったか……」

『アロナパンチまであと少しだったのに……』

 

 飛雷神で飛んで逃げたミチルに、扉間は軽く舌打ちをする。

 灰積焼で分身が消されているため、マーキングポイントへの対策が出来ていないのだ。

 

『あれは……』

 

 そんな中、穢土転生ミチルは灰積焼の煙が風で流された場所を見つめる。

 

『先生殿のBluetooth銃…?』

 

 そこに落ちていたのは、地面に突き立てられ()()()()()()()()()Bluetooth銃。

 

『あ! さっきの声と銃声はもしかして……』

「気がついたか……お前の予想通りだ。偽の音声とワシの言葉を流して囮にした」

 

 Bluetooth銃「囮役はもちろん、私が行くよ」

 つまりは、そういった作戦だったのだ。

 相手の作った煙幕を利用し、自分の位置をBluetoothの音声で誤認させる。

 扉間がキヴォトスに来て得た、新たな忍術である。

 

「武器を捨てての乾坤一擲(けんこんいってき)の策だったのだがな……よく躱した。流石はワシの弟子だ」

 

 そう言いながら、扉間は再び影分身で数を増やす。

 攻撃力、耐久力、スピードはミチルが上。

 ならば、数だけは常に上回っておく必要がある。

 

『先生殿の弟子……でも、(あたし)は……何も守れなかった。イズナもツクヨも……先生殿も』

「お前の世界で何が起きたかは聞かん。だが、これだけは言わせてもらうぞ」

 

 イズナやツクヨ、扉間。

 そして自分自身まで命を失った世界。

 幸せな日常から一転。どんな地獄を見たのか、それは分からない。

 だが、それでもこれだけはハッキリしていた。

 

「その額当てはただの飾りではない。それをつけている限り、皆──(ワシ)の家族だ」

 

 額当てをつけている者は、みな仲間なのだと。

 

「並行世界であろうと、お前は火影が選んだ忍だ。どのような失敗をしたとしても、弟子であることに変わりはない」

 

 例え、大蛇丸のように抜け忍になったのだとしても。

 木ノ葉に仇なす者になったのだとしても。

 弟子であるという過去は決して変わらない。

 三代目と大蛇丸がお互いに最後の最後まで、情を持っていたように。

 

『でも……もう(あたし)の額当ては……』

「額当ては防具でもあるのだ。傷つき、壊れることもあろう。安心しろ。新しいものを支給してやる」

 

 そう言って、扉間の本体はその場で仁王立ちをしたまま、額当てを外して掲げて見せる。

 

「と言っても、現状新品の持ち合わせが無くてな……すまんがワシのお下がりになる」

『先生殿のを…!』

「さあ、今度はお前の方から来い。腰にぶら下げた額当てをワシから奪えれば合格だ」

 

 額から、取りやすい腰にぶら下げる形に額当ての位置を変える扉間。

 明らかな挑発。

 遠距離攻撃の武器を失ったため、近づいてこさせようとする作戦。

 穢土転生の縛りがある状態では、相手は無視をする確率の高い策。

 

『……うん。それじゃあ、先生殿──』

 

 だが。

 

 

『──ちょ~っとお時間貰っちゃうねぇ?』

「……ああ! 来いッ!」

 

 

 ミチルは少し涙ぐみながら、自らの意志で扉間に近づくことを()()()

 

『ミチル流忍術・影走りの術!』

「影走りか、忍の基本技能だな」

 

 重心がぶれておるぞ、ミチル。”影走りの術”というのなら、頭と手を動かすな。

 はぁ…はぁ…キツ~イ……。

 

 ミチルの脳内に溢れ出す、楽しかった日の思い出達。

 

『加えて、先生殿直伝、瞬身の術!』

(瞬身の術…! 大人のカードか? いや、純粋に速度差を出すことで、こちらを幻惑させる高速移動か)

 

 先生殿! 飛雷神の術を教えて! 教えて~! 

 それは構わんが……まずは、“瞬身の術”からだな。

 “瞬身の術”? 

 こちらは単なる高速移動だが。まずは、速さになれんことには始まらんからな。それに、瞬身と飛雷神は組み合わせて使うことで、最大限の効果を発揮する。

 

 もう、どれだけ泣いても戻ってくることのない、共に過ごした優しい日々。

 

『からの~飛雷神の術!!』

「こちらではなく左右に飛んだ…? 何を?」

『先生殿のお墨付き──音分身の術!!』

「イズナ達の耳を聞こえなくした術だな…! アロナッ! 頼む!!」

『たとえ音であっても、先生を傷つけさせません!!』

 

 扉間達の左右に3D分身装置を一瞬で設置するやいなや、爆音を鳴らす、ミチル。

 耳を塞がねば、まず防ぐことのできない攻撃だが、アロナガードは概念防御に近い。

 そのため、アロナ入りのシッテムの箱を持つ本体は、防ぐことが出来る。

 

「鼓膜をやられた程度で消えるか……やはりチャクラが使えんと素の防御力はどうにもならんな」

 

 だが、シッテムの箱を持たない分身は別。

 鼓膜を破られたダメージで半数が消える。

 チャクラを練りこめていないので、脆くなっているのだ。

 

『さあさあ! どんどん行くよぉ!』

(飛雷神で左右に交互に飛んで、そこから更にマーキングクナイを投げるか……こちらにどこに飛ぶか読ませぬためだな)

 

 更に、左右から交互にマーキングクナイを投げることで、的を絞らせないように立ち回る、ミチル。

 こうすることで、左右どちらにも飛べるようにしながら、距離を詰めていくのだ。

 

「だが、まだまだだな。性質変化もない、ただのクナイならば分身との衝突で落ちる」

 

 扉間の本体は()()()()()()()()()、影分身にワザとマーキングクナイにぶつかるように、前に進ませる。

 そうすることで、クナイの勢いを殺してこちらまで届かなくするのだ。

 

「さあ、どうする? この距離では不意はつけんぞ。そして、アロナガードはただの銃火器では貫けん。正面突破で来るか?」

『じゃあ、こうする!』

 

 即座にオリジナル改造ショットガンを放ち、扉間を牽制するミチル。

 だが、当然ながらその弾丸は、アロナに阻まれてしまう。

 

(穢土転生の特性を利用して、持久戦に出たか? アロナガードは無敵だが、無限ではない……何とか、早めにこちらに誘い込まねばな)

 

 そんなことを考えている扉間の背後から、銃声が聞こえてくる。

 今度は飛雷神で背後に回り、撃って来たのだ。

 しかし、これもしっかりとアロナガードに防がれる。

 

「先程のワシの言葉は聞いておっただろう? このアロナガードに一切の攻撃は通用しないと」

 

 だが、打つ手がないのは扉間も同じ。影分身もこの状況では即座に撃たれて消える。

 相手を近づかせて、カウンター気味にアロナパンチを叩き込む以外に勝ち筋はない。

 故にその場から動くことなく、ミチルを焦らせて誘い込もうとしているのだ。

 

『攻撃が通じなくても……額当てを取ればいいだけ! 絶対諦めないもんね!!』

「フ、そうか」

 

 銃弾を()()()()、宙に放り上げてからリロードを行うミチル。

 昔は失敗したりしていたそれも、今はもう失敗しなかった。

 

『くらえ!』

「性懲りもなく撃って来たところで──」

『飛雷神の術!』

(銃弾に飛んだ!? 先程、銃弾を持った際にマーキングをしておったのか!)

 

 リロードをした際に銃弾にマーキングを施しておいたミチルが、文字通り目にも留まらぬ速さで、扉間のすぐそばに飛ぶ。

 

「だが……その程度は想定の範囲内だ!!」

 

 しかし、戦闘中にマーキング出来そうなものや場所にマーキングするのは、基本。

 自分も通ったことのある道だとばかりに、扉間は即座に背後へとアロナパンチを放つ。

 弾丸の軌道、こちらの不意を突きたい相手の考え、最も不意打ちが成立しやすい位置。

 そこを考えれば、必ず相手は自分の背中に飛んでくると読んでいたのだ。

 

『うそぉッ!?』

 

 そして、その予想は完璧に当たっていた。

 完全に不意を突いたと思っていたミチルの眼前に拳が迫る。

 

『──なんてね? 奥の手は最後まで隠しておくものだって、教わったからね!』

(飛雷神・二の段…!?)

 

 だが、その拳は虚しく宙を切る。

 ミチルが超ショートワープ。

 詳しく言えば、飛雷神での出現位置を調整することで、上下に反転し、頭を逆さにして宙に飛んだことで躱したのだ。

 

(だが、なんだ? 何に飛んだ? 銃弾は既に去ったはず……なるほどな。銃本体に予めマーキングをしておったのか!)

 

 そして、起点にしたものはミチルの銃“ミチル流オーバーフローショットガン”。

 ショットガンにもう一挺のショットガンを括り付けた、割とゲテモノな銃だ。

 誰が見ても、使いにくそうなだけのロマン重視の武器。

 だが、ロマンに突っ走った結果、この銃には()()()()()()がある。

 

 

『こっちの先生は、ショットガンに仕込んだ刀を知らなかったみたいだね!』

(仕込み刀…ッ! そういうことか! マーキングをしているのは鞘部分……つまり、飛雷神で飛ぶと同時に鞘部分と分離して、刀を動作無しで抜刀できるのだな。考えおるわ)

 

 

 二挺の組み合わされたショットガンの上の方は、鞘。

 一般的な銃の持ち手は、実は刀の柄だったのだ。

 そして、鞘部分にだけマーキングをすることで、刀部分だけ持って飛雷神で飛ぶと鞘を置き去りに出来る。

 つまり、自動的に刀部分だけ持っていき、ノーモーションで抜刀が出来るのだ。

 

『二代目火影! 千手トビラマが()()()()()!! 千鳥ミチル、参るッ!!』

 

 そして、更なるロマン性能。

 鞘の中に入れておいた焼夷剤が刃についているので、燃える刃となる。

 さながら、火の性質変化である。

 

「アロナ──」

 

 炎の刀が扉間の首筋に迫る。

 当然、扉間は自身を守るためにアロナに指示を出す。

 

 

「──撃て」

 

 

 だが、下された指示は防御ではなく攻撃。

 しかも、扉間の銃は置いてきているというのに。

 

『はい、先生!』

『うえッ!? どこから!?』

 

 しかし、そんな無茶も実現できる。

 そう、Bluetooth銃ならね? 

 

「Bluetooth銃を甘く見過ぎたな。何故ワシが不自然なまでに、同じ場所から動かなかったと思う? 何故、音声を出せばいいだけなのを態々地面に突き立てて、ワシの方に向けていたと思う? 全ては、遠隔操作で相手が忘れたころに撃つためだ」

 

 Bluetooth機能による遠隔操作。

 そして、それを活かすために、扉間は銃口の方角に立ち続けていたのだ。

 

「まだまだ、観察眼が足りんな」

 

 Bluetooth銃に撃たれて一瞬だけ動きが遅くなる、ミチル。

 その隙を狙い、再びアロナパンチを放つ扉間。

 

『う…でも、まだ! まだ諦めないもんね!!』

 

 しかし、ミチルは諦めなかった。

 (あたし)が諦めるのを、諦めろ。

 まるで、そう言うかのように──()()()()()()()()()()()

 

『うげ!? ……ううぅ……届かなかった』

「……いや」

 

 刀よりも一瞬早く叩き込まれたアロナパンチ。

 衝撃で左手から零れ落ちる刀。

 だが、その右手には──

 

 

「合格だ……ミチル」

 

 

 ──しっかりと扉間の額当てが握られていた。

 最後の最後で、ミチルが穢土転生の束縛が()()()()、扉間への攻撃ではなく額当てを取ることを選択出来たのだ。

 

「見事だ。お前は確かに上忍としての実力がある。何せ、この火影から里の象徴たる額当てを奪ってみせたのだからな」

『ほ、本当に…?』

「ワシがお前を上忍として認めるのだ。これ以上の証明は存在せん」

 

 “ワシがお前達を忍として認めるのだ。これ以上の証明は存在せん”。

 

『あ……』

 

 ミチルは思い出す。

 

 “忍者本の完成、おめでとう。これでお前達は──―一人前の忍だ”。

 

 扉間に忍術研究部の3人で額当てを貰ったあの日を。あの言葉を。

 

『う…うわぁあああん!』

 

 額当てを貰った後に、4人で食べた冷やし中華の味を。

 

『ごめんね…! ごめんなさい! (あたし)が弱いから……誰も守れなくてッ!!』

 

 一緒に夏休みの宿題をやったことを。

 カキ氷を食べさせたり、アイスを食べた事も。

 何もかもが遅すぎた、もう戻らない日々。

 

「……アロナ、()()

『………はい、どうぞ』

 

 泣きじゃくる穢土転生ミチルの前に立ち、扉間は攻撃される可能性を無視して彼女の頭を撫で、抱きしめる。

 

「今まで本当に辛かっただろう。苦しかっただろう。だが……よくぞ、ここまで1人で耐え忍んだ。お前は本当に強い子だ」

『先生殿…先生殿ぉ…!』

 

 穢土転生ミチルの体が白く光輝く。

 成仏しようとしているのだ

 

(あの大蛇丸とかいう若造が言った言葉も……間違いではないな)

 

 作るべきではなかった術。

 今までは、あまり良くない術という認識だったが、今は心から賛同する。

 どうやら、扉間も生徒達と同じ価値観に染まったらしい。

 やはり、禁術は使うべきではない。

 

「ミチル……お前を責める者は誰もおらん。だが、それでも、あの世でワシやイズナ達に会うのが気まずいと言うのなら……千手柱間を探してみろ」

『千手……先生殿のお兄さん?』

「ああ。兄者なら、ワシの弟子と知れば……いや、その額当てを見れば誰であろうと我が子のように接するはずだ。昔からこういうことは、ワシよりも兄者の方が得意だ」

 

 扉間は光に包まれ、体が崩れていく穢土転生ミチルの頭に額当てをつけてやる。

 あの世まで持っていけるように。

 

『うん、そうする。先生殿……これ』

「大人のカードか……」

『私はもう要らないから、返すね。やっぱり、忍術は人の力じゃなくて自分で使えるようにならないと面白くないからね!』

 

 一層強く光り輝くミチルが、涙を振り払うように笑う。

 そして、腕を伸ばして大人のカードを扉間に差し出すのだった。

 

 

「ああ、そうだな……お前は本当に──忍術が好きな子だな」

 

 

 扉間は、最後に柔らかな笑みを浮かべて、大人の(カード)に手を伸ばすのだった。

 

 

 

 

 

 

 互乗起爆札の術。

 

「じ、自爆ッ!? 先生ッ!!」

 

 穢土転生ミチルの体が連続爆破を起こし、辺り一帯を巻き込む大爆発と化す。

 それは、ミチルの意志によるものではない。

 ミチルの意識を奪っている間に、予め()()()()()()()()()()()

 

 相手が完全に終わったと、油断した隙を突く術であり、敵へと情報が渡るのを防ぐための情報抹消法。

 そんな吐き気がする程の()()()()()()()()()()が使う術。

 

『せん…せ…い…どの……』

 

 穢土転生ミチルの伸ばされた手が、額当てが、()()()()()()と共に爆発に吞まれて消えていく。

 スパイを葬り、相手に大人のカード(戦力や情報)が渡るのを防ぎ、()()()()敵を葬る。

 

 

 

「ん、穢土転生の術は本来こうやって道連れに使うもの……先生に教わった通りのやり方」

 

 

 

 それが扉間が作り出した、穢土転生と互乗起爆札を組み合わせる卑劣な戦術だ。

 




ナルト「…このエドテンとかいう術…気にくわねぇ!」
カカシ「穢土転生…この術は許せない…!」
再不斬「死人まで利用するか……そんなヤローに利用されるとは……気にくわねェ…」
半蔵「何より許せないのはこの術のようだ……体が勝手に動く…」
幻月「他里の者ならともかく自里の忍と戦わされるのは忍びない」
無様「これは二代目火影の卑劣な術だ。死者を黄泉から寄んで縛る…」
柱間「確かに…あまりいい術とは言えぬな」
大蛇丸「作るべき術ではなかった……」

扉間「!?」

穢土転生って本来、こういう術だよなと。
次回は24日更新予定。
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