前回までのあらすじ。
穢土転生の被害も収束に向かおうとしていた最中、アビドス高校のメンバーの元に、砂漠の奥地で常識では考えられない急成長を遂げる、謎の森が目撃されたという連絡が入った。
その情報を提供してくれた千手トビラマ氏は生まれも育ちも森の、柱間細胞研究の第一人者である。
アビドス高校の屋上で、急成長を遂げる謎の森の姿を確認した我々は、探検の目的を謎の森の探索に転向し、アビドス砂漠のジャングルへ向かうのだった。
本文。
「突如として現れた謎の巨大森林。我々アビドス探検隊はその謎を解き明かすべく、森林の奥地へと向かうのだった……」
「ホシノ、森林とは人の手が加えられた土地のことを言う。人が入ることを想定されていない、未開の森はジャングルと言う呼称の方が正しい」
「よく調べたね、先生……まるでジャングル博士だ」
「ワシは森で生まれて、森で育つ、森の千手一族の人間だからな。まあ、大人になってからはある程度
取り敢えず、増殖する森を放置するわけにもいかない。
そう結論付けた、アビドス組と扉間は砂漠を渡り、謎のジャングルへと踏み込んでいた。
まあ、ジャングルと森を使い分けるのも面倒なので、以後は森で統一するが。
「でも……なんだかワクワクしますねぇ。こんな未開の森に入るなんて、冒険みたいです」
「ん、他の学区で森を見たことはあるけど……こんなに大きいのは初めて」
「あ、どうせなら、アビドスチャンネルを回せばよかったですね」
「いや、こんな時までやってたら、不謹慎って炎上しそうじゃない…アヤネちゃん?」
「
水の無い砂漠で、これ程の森を……信じられん!
などと、口々に言い合うアビドスメンバー達。
「カブト虫! カブト虫探そう!!」
「流石に、今さっき生えた森には居ないんじゃないかなぁ、シロコちゃん……居ないよね? 先生」
「恐らくはな。そもそも、木が生えたからと言っても、土は砂のままだ。カブト虫の幼虫が生きられる場所ではない」
みんなでカブト虫を捕ろうと提案するシロコに、ホシノが苦笑いをする。
女の子なのに虫が平気なのか?
北海道民がゴキブリを初めて見た時だけは、テンションが上がるようなものだ。
「あらら……それだと砂漠の緑化は難しそうですねぇ」
「木が育つには水がいる。人工で水をやれるのならともかく、自然に任せるのならば水を用意できなければ、いずれは枯れるだろう」
ノノミの少しがっかりしたような言葉に、扉間が付け加える。
動物も植物も、環境に影響される小さな存在だ。
砂漠には砂漠の、森には森の生態系が作られるのは、全ての生物は環境に依存しているからだ。
「ただ……枯れ落ちた木や葉は消えてなくなるわけではない。次の命のための糧となるのだ」
ただ一種。
人間という存在を除いて。
「木が枯れ、砂の下に埋もれれば、大地が水を貯められるようになる。つまり、砂から土へと変わるのだ。そうすれば、僅かな水分であろうとも生きていける砂漠の植物が、ここに根付くだろう。そして、その植物を求めて虫や動物が集まる。ひょっとすると、100年後にはこの場所はオアシスになるやもしれんな」
「100年後ですか……気の遠くなる話ですわね」
森を砂漠に変えたのが人間のせいということもある。
だが、砂漠を緑の大地へと変えるのも人間の行いである。
「今この時では、無駄な行いに見えるかもしれん。だが、種を蒔き、水を与えるという行為は、必ず未来へと大いなる恵みをもたらす。そう考えれば、この森も次の世代のためになるだろう……ちと性急に見えるがな」
扉間は一際大きな大樹に手を触れ、静かに目を閉じる。
思い出すのは柱間の大きな背中。
荒れていた時の孫の綱手に、無駄死にとすら言われた、戦死。
平和への願いを叫びながらも、結局は一度も争いの無い世界を見ることなく死んだ、兄。
(兄者……世界は違うが、オレ達の残した火の意志は確かに芽吹いているぞ)
だが、柱間は今もなお大地の養分(not柱間細胞)となり、若葉達の芽吹きを支えている。
争いの絶えない世界で、僅かでも平和を築いた。
そのことにより、後世では牛歩であっても平和な世界へと近づいている。
「無駄なことなどこの世に何一つとしてない。木は何も言わずにただ立っているだけだが……いつもそれを教えてくれる」
だからね、ホシノちゃん。
困っている人がいたら、手を差し伸べるの。
お腹を空かせてたり、寒さに凍えている人がいたら助けてあげるの。
「ユメ先輩……」
無駄なことなどない。
その言葉に、ホシノはユメの言葉を思い出す。
もしも自分が、どうせ裏切られるからと、この教えを捨てていたら……少なくともシロコはここには居なかっただろう。
「さて、話は終わりだ。森が成長している方角にもう少し近づくぞ」
「はい……一体、鬼が出るか蛇が出るか分かりませんが、みなさん気を引き締めていきましょう」
目を開けて、再び歩き出す扉間にアヤネが続く。
実は先程、木に手を当てていたのは、振動などの情報を感知するためもあったのだ。
感知タイプの忍の面目躍如である。
「ああ、それとだ、お前達。木の成長に決して巻き込まれるでないぞ? 死ぬぞ」
「死ぬの!? ただの木なのに!」
そして、子供達に警告を出してセリカに驚かれる。
現代っ子かつ、砂漠の民の彼女達は植物の恐ろしさを知らないのだ。
「当たり前だ。木が人間に対して無害に見えるのは、成長速度が遅く動いていないからだ。お前達も竹は知っておるだろう? あれなど、脆い床ならば簡単に突き破ってくるぞ」
「竹……百鬼夜行でもたまに問題になっていましたわね。切っても切っても生えて来る、厄介者。たけのこは美味しいのですが」
成長速度の速い竹などを例にすれば、植物の恐ろしさが分かる。
そして、木遁はそれ以上の速度で広大な森を作りだせる術。
何十年もかけて家を破壊する木や、車を持ち上げる写真などを見たことのある人は多いだろう。
あれが一瞬で発生するのが、木遁の術なのだ。
おまけに、花の花粉が麻痺毒を持っている上に、火をつけると爆発までする。
やはり、兄者の術はキモイのだ。
「故に注意して進むのだぞ。相手に殺意があれば、この森全てが敵と化すのだからな」
そう言って、扉間は生徒の先頭に立って進んでいくのだった。
「お腹空いた~……また、何も食べずに死にたくはないよぉ……」
一方、こちら迷子の迷子の梔子ユメさん。
ホシノが聞いたら、拒食症を発症しそうなことを呟きながら、森の中を彷徨っている。
なお、自分で森を広げているので、いつまで経っても森を抜け出られない。
アホかな?
「……あのキノコとかタケノコって食べられないかな?」
しかし、前回死んだ砂漠とは違い、ここは森。
木や葉っぱから水分を取ることも出来るし、なんか生えてるキノコやタケノコもチラホラと見える。
「うーん……タケノコって生だとアクが強いって言うし…よし! キノコにしよっか」
少し悩んだ末に、ユメはなんか見た目美味しそうなキノコを手に取る。
キノコタケノコ戦争の勝者はキノコになったのだ。
所詮、タケノコは敗北者じゃけぇ。
「いただきまーす!」
そして、ためらうことなくパクリとキノコを口にする、ユメ。
※野生のキノコを食べるのはとても危険な行為なので、素人は自己判断で食べないでください※
良い子の諸君は絶対に真似をしたらダメだぞ?
野生のキノコの見分け方は、専門家でも完璧には出来ない代物だ。
松茸っぽい毒キノコや、地味な見た目でもしっかり毒があったり、明らかに毒キノコな見た目なのに毒がないキノコがあったりする。
間違っても、美味しそうという理由で食べてはいけない。
まあ、ユメは脱水と飢えで死んだので、そのことを考えれば、考え無しの行動も擁護……やっぱ出来ねぇわ。
野生のキノコを食べるの、ダメ、ゼッタイ!
「あれれ…? ホシノちゃんが1人…2人…うわぁ~いっぱいいる~」
そして、何を隠そうこのキノコ。
幻覚作用のあるキノコ(第53話、全盛期柱間伝説・参照)である。
全身柱間細胞の人間でもなければ、こんな風におかしくなるのは必至だ。
「あははは! アビドスにこんなに一杯人が来るなんて……ホシノちゃん頑張ったんだね」
立ち並ぶ木を人間だと思って、酔っ払いのように笑いだす、ユメ。
お労しいのか、呆れるべきか非常に判断に困る状況である。
「なんだか、とにかく笑いたい気持ちに……ユ~メユメユメ!」
何故か本人なのにエアプユメ先輩みたいな笑い方をする、ユメ。
後輩には見せたくない光景である。
「………何者だ?」
そして、見て欲しくないことをしている時ほど、人は来るもの。
「木遁の術者か…? しかし……アビドスの制服? ワシの知らないアビドスの生徒が居るのか……」
笑い声を聞きつけて現れた扉間が、一人困惑した表情を浮かべる。
ワシ、こんな穢土転生の設定ってしたか?
「ユ、ユメ…せんぱ…い…?」
「ひぃぃん……こんなにいっぱいの人の対応できないよぉ」
そして、その後ろから息を切らせた
髪:緑色。
顔:ユメ先輩。
鳴き声:ひぃん。
おっぱい:巨乳。
梔子ユメでヨシ!
「じゃ、じゃあ、あの夢は夢じゃなくて……オエッ!」
「ホ、ホシノ先輩!? 大丈夫ですか!!」
──うらめしや~。
あの言葉は夢ではなく現実だったのだと理解して、ホシノは罪悪感から胃の中身を吐き出す。
アヤネに背中をさすられて心配されるが、それでも嘔吐は収まらない。
ユメだけど夢じゃなかった!
「攻撃か!? ホシノに一瞬でダメージを与えるとは……何者だ?」
「あ、あの方は……梔子ユメさん…アビドス高校の──前生徒会長です」
突如として、嘔吐したホシノの姿に扉間が警戒心を高める。
そして、ホシノを除けば最もユメを知るノノミが、説明を行う。
彼女はアビドス高校の前生徒会長。つまり、ホシノの先輩であると。
「そして………2年前に砂漠で死んだ方でもあります」
「…! つまり、穢土転生の術…?」
死人が居る。
つまり、それは扉間から聞いた、キヴォトスを脅かしている穢土転生の術だと、即座に理解する、シロコ。
並行世界とはいえ、術者であるのが効いているのかもしれない。
「あれが、穢土転生って言うのね……本当に生きてるようにしか見えないのに、死体だなんて信じられないわ」
「本当にそうですわね。
今もユ~メユメユメ! と笑う、ユメの姿にセリカとワカモが信じられないと目を見開く。
寿命の無い状態で、これ程の肉体を!? 信じられん!
「………いや、通常の穢土転生ならば、目の色や肌に変化がある。そうなると、変化の術を大人のカードで?」
だが、製作者であるはずの扉間ですら、ユメの現在の状態には首を傾げざるを得ない。
彼女の今の体に、不審な点は見受けられない。
一応、バレないように変化で見た目を整えさせてから、仲間の元へ送り返す手もあるがそれにしては違和感が残る。
変化の術を使えるのなら、こちらの人間に化けた方が不意打ちが出来るのだから。
さらに、ユメはこの世界でも過去に死んだ人間。騙しようがない。
「ホシノちゃ~ん、(喉が渇いたから)お水ちょうだ~い」
「(水が飲めずに死んだから)水をちょうだい…? オボェッ!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「幻術か!? いや、幻術ではない…? 精神攻撃か!」
ユメの酔っぱらい染みた言葉にも、致命傷を負って謝罪マシーンになり果てる、ホシノ。
扉間はその様子に、月読でも使ったのかと警戒して、ホシノに解を行う。
もちろん、幻術ではないので、効果はないのだが。
「………先生。お話ししたことが無かったですが、ホシノ先輩は…その……自分が原因で前会長が亡くなったと思っているんです……」
「罪悪感か……様子を見るに、己の過失が原因か」
そして、ノノミが扉間へと推測できる理由を語る。
ホシノはユメへの罪の意識から、未だに割り切れていないのだと。
「……でも、なんか様子がおかしくない?」
「セリカちゃん? 確かに、ホシノ先輩の様子はおかしいけど……」
「いや、そっちじゃなくて…えっと…ユメ…先輩の方」
そんなシリアスな空気の中、最もユメと学年が離れているセリカとアヤネが、違和感に気づく。
「ホシノちゃ~ん、見てみて~アビドスにこんなにいっぱいの観光客さんが来たよ~」
「………木に話しかけてる?」
「穢土転生の術……まさか、精神まで蝕む術なのですか? なんて卑劣な…!」
「ん、穢土転生の術は許せない」
ホシノと呼んでる割には、現実のホシノの方は見ておらず、木に話しかけている。
さらに言えば、その目も焦点が合っておらず、口からは軽く涎が流れている。
完全に薬物中毒のそれだ。
「意識は縛れるので、狂ったようにすることは可能だが……目的が分からん」
しかし、扉間からしても想定外の行動だ。
幻術などと組み合わせれば可能だが、やる理由が分からない。
(穢土転生の術者は、並行世界のシロコだ。そう考えれば、ホシノへの特効のために精神攻撃を行っていると考えることも出来るが……その割には、こちらに仕掛けて来る気配がないな)
色々と考えるが、どうにもチグハグで噛み合わない。
まるで、何も考えていない馬鹿が行動を起こしたような──
「む? あれは……」
そして、扉間は気づく。
ユメが笑っているそばに生えている、キノコの存在に。
かつて、柱間が術で作った幻覚キノコに。
「まさか……あのキノコを食べたのか…? あれは、幻覚作用がある禁術だぞ…?」
「ま、まさか、野生のキノコをそのまま食べるなんて馬鹿な真似をするわけ…しないですよね? ホシノ先輩」
いくらなんでも、そんなことはしないだろうとホシノの背中をさすりながら、アヤネが問いかける。
「………ユメ先輩なら…あり得る。それに…死因も砂漠で砂嵐に巻き込まれて…帰って来られなくなったものだから…オエッ」
「お、お腹空いてたのね……それならあり得るのかしら?」
「……生きるためならやるよ。虫でも何でも食べる」
ホシノがユメの死因を思い出し、再び胃液を吐き出しそうになるが、何とか耐える。
その様子を見ながら、セリカが納得を見せ、飢えと寒さを知るシロコは深く頷く。
シロコはユメの教えに救われたと言っても、過言ではない存在なのだ。
(餓死寸前なら、何でも口に入れるか……しかし、穢土転生に単なるキノコが効くか? どうなっておるのだ? 梔子ユメ……本当に死人か?)
そして、扉間は術の仕様を知っているからこそ、深い混乱に陥る。
ノノミとユメの反応からして、ユメは死んでいるのは間違いない。
だが、見た目や行動、反応は死んでいるとは思えない。
「………もしや、シロコのように並行世界の人間が来ておるのか?」
「ん? 呼んだ、先生」
「いや、お前ではない。敵の方に並行世界のシロコがおってな。そやつは、穢土転生ではなく生きておる」
「初耳ですわね……」
もしかすると、穢土転生体ではなく並行世界の生きた人間かもしれないと当たりをつける、扉間。
それならば、キノコの毒に
「まあ、取り敢えず生きておると仮定して動くのが無難だな」
「ユメ先輩が…生きて…!?」
「……お前の知る梔子ユメである可能性は低いぞ、ホシノ」
「それでも…それでも…! 先生、どうしたらいいん
ユメが生きているかもしれない。
その言葉に、吐くのをやめてガバッと顔を上げる、ホシノ。
鬼気迫る表情に加えて、胃液の混じったねっとりとした唾液が垂れているので、恐ろしい顔になっているが、それを気にする余裕は今の彼女にはない。
「……恐らく、キノコか何かの毒に犯されているのは間違いない」
そんな鬼気迫った表情を見ながら扉間も考える。
色々と分からないことだらけなので、情報を吐かせる必要があると。
「……梔子ユメの生死を確認しつつ、事を知るなら……一度捕らえて、問いただしてみればハッキリする……そして吐かせる」
吐かせる(情報とキノコのダブルミーニング)。
「食べたものを吐かせた後に、水で胃を洗わせてから、安静にさせておけば正常な状態に戻るはずだ」
「分かりました! ユメ先輩! ユメ先輩ッ! ほら、ペッしてください! ペッ!!」
「ホ、ホシノ先輩、子供じゃないんですから……」
「大丈夫! ユメ先輩は子供みたいに純粋な人だから!!」
必死に、キノコを口から吐けと叫ぶホシノに、アヤネが呆れた顔をする。
しかし、ユメを知るホシノからすれば、割と適正な対応だ。
ひょっとして、小学生レベルなのでは…? と、ユメに対して思ったことは数知れないのだから。
「ほら! こうやって人差し指を喉の奥に差し込めば──オェエエッ!?」
「あなた、馬鹿ですか?」
「……何だか、この2人の昔のやり取りが思い起こされる気がしますねぇ」
まるで、子供に例を見せようとして、自分が吐いてしまうお母さんのように再び吐き出す、ホシノ。
ワカモとノノミにちょっと引かれた表情をされるが、今のホシノにはユメしか映らない。
「ん~? あ、新しいお客さんだ~」
「ん、こっち見た」
「むしろ、あれだけ騒いでたのに、やっとこっちを見たのね」
そして、そんなホシノの嘔吐のおかげか、ユメの焦点の合っていない目がこちらに向く。
「それじゃあ、歓迎の印にお花をあげるよぉ~」
ユメが
「いかん!? 全員下がれ!!」
「それ~」
ユメの合図と共に、辺りの木々から花が咲き誇る。
「は、花?」
「あの花の花粉には、吸うと麻痺する効果がある! さらに、まき散らした花粉で粉塵爆発を起こす術にもつなげられるのだ! 近づくべきではない!」
「なにそれ、危なッ!?」
まるで、手品のような光景に呆気にとられていたセリカだったが、扉間の説明を聞くとすぐに逃げ出す。
「しかし、そうなりますと……銃は使えない、ということでしょうか?」
「遠方から撃つ分には、相手を逆に爆発に巻き込めるので構わん。だが、問題は火だ。木々に燃え移ると、ワシらの逃げ場がなくなる」
「厄介ですね、ただの木と思わない方がいいですわね」
奴は全ての術が桁違い。
木遁のくせに、組み合わせで平然と爆発も仕掛けて来るわ、火をつけて殺傷力を上げるわ。
そのくせ、相手からの火遁はマダラクラス以外は土と水の複合なので、あっさり弾くわ。
とにかく、何でもありなのが柱間の木遁である。
「でも……花が開いただけですね…?」
「ん、本当に歓迎してくれてるだけ…?」
「まあ……キノコでおかしくなっておるだけなら、敵意が無いのは分かる。だが、敵であるならば、別の人間が操作して本人の意思を無視しての攻撃が可能だ」
しかし、幸か不幸か。
ユメは柱間以上の平和主義者。
キノコでラリっている状態でも、人を傷つける意志はないらしい。
「分かった……じゃあ、銃は使わずに行くね」
「ホシノ先輩…!」
そして、それを聞いたホシノは自身の銃を放り投げて、盾だけを構える。
梔子ユメ、その人の遺品である、それを。
「みんなは下がってて」
「何を言っているんですか、ホシノ先輩!?」
「ユメ先輩なら、絶対に意味なく人を傷つけたりはしない。でも、もし、そんなユメ先輩が私を攻撃するのなら……」
戦うことはあっても、まずは話し合いから。
武器は大きな盾とは似ても似つかない、小さなハンドガン。
ユメは常日頃から、ホシノに対して『どんな理不尽を受けようと争いに慣れるべきじゃない』と口にしていた。
「……それが私への罰だから」
故に、そんなユメに攻撃されることがあれば、自分が悪なのだとホシノは言い切る。
「馬鹿者。攻撃を受けたら、防御のために攻撃をするのが生物という存在だ。ただの反射行動でしかない。しかも、毒キノコで意識が錯乱しておるやもしれん状態なら、猶更だ。お前の下らん感傷を、勝手に相手へと押し付けるな。相手からすれば、迷惑でしかない」
「………うん、先生ってこういう空気の読めない人だったよね~。よく知らない相手から言われたら、喧嘩を売られてると思うよ」
だが、扉間からのマジレスに少し冷静になる。
優しい人だって、突然目の前に虫が現れたらビックリして手で弾いたりする。
別に、攻撃を受けたからといって、真剣に捉える必要はないのだ。
「失ったものばかり見るな、未来のことだけを考えろ。時は巻き戻らないのだからな」
「そう簡単に割り切れないのが人間なんだけどね~……先生に言われたら、返す言葉がないなぁ」
失ったものは戻ってこない。
だが、それでもあの時こうしていればと後悔するのが人間だ。
まるで、イェソドのレイドの減りが予想以上に速く、チケット40枚を失った作者のように。
先にこの話を書き上げてから、やろうと油断せずに先にやっておけば……。
チケットは犠牲になったのだ。(ゲームは寝る前にやる)古くから続く習慣…その犠牲にな……。
「一気に近づいて、大人のカードを取り上げろ。そうすれば、もう忍術は使えん」
「うへへ……そう来なくちゃ、分かったよ、先生」
しかし、こうやってマジレスしているからといって、戦わせないわけではない。
この中で最も硬いホシノならば、木遁の攻撃を食らって何とかなる可能性が高いのだから。
何より、この中の誰よりもモチベーションが高い。
「だが、くれぐれも自爆には気を付けるのだぞ? 百鬼夜行の方で、ワシの本体が食らったからな」
「うーん……なんだろう、心配したいけど心配する気が起きないや」
「ん…自業自得……」
「自分で作った術を自分で食らうのは、因果応報としか言えませんわね」
そして、扉間的には大真面目に自爆の可能性を忠告するのだが、実物を見ていないアビドス勢からの反応は薄い。
まあ、自爆を食らったという、本人から平然と忠告されているのでさもあらん。
もっとも、感動の場面ぶち壊しの瞬間を見れば、反応は違ったであろうが。
「ま、いいか。それじゃあ──」
しかし、そんな呆れた空気が功を奏したのか。
肩の力が抜けたように、ホシノは目を細める。
「──ユメ先輩、行きます!」
そして、かつての思い出と共に、ユメの方へと走り寄って行くのだった。
「ひぃぃんッ!? 痛いよぉ!?」
「あ……やっちゃった」
そして、タックルの一撃で押し倒されたユメを見て、思い出すのだった。
「ユメ先輩って……本当に弱かったですよね」
梔子ユメの本体は、クソ雑魚ナメクジだったという事実を。
次回予告(仮)
アリス「だって…! ケイ…! 髪が!!」
ケイ「安いものです。髪が白く染まったぐらい……アリスが無事でよかった」
次回の投稿なんですが、29日のケイちゃんの実装を見てから内容に反映させるので投稿日は未定です。
未定と言っても、最低でも一週間後の2/4には投稿しますが、早めに書きあがったら早めに投稿します。
しかし、マルクトが無茶苦茶お姉ちゃんしてて、うちのリオと気が合いそうだな……。
リオ「妹、いいわよね」
マルクト「いい……」
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