ミレニアムは後!
「オロロロロロ…!」
少女、嘔吐中。
「まったく……いくら、食べるものが無いとは言え、野生のキノコに手を出すとは……単なる幻覚で済んだから良かったものの、致死性のキノコも珍しくはないのだぞ?」
「で、でもぉ、お腹が減ったのに何にも食べられなかったから…つい……」
「何も食べられ……オボェエ!」
「なんで、ホシノ先輩まで吐いてるのよ!?」
ホシノのタックルで一撃でやられた後に、大人のカードを回収したユメの毒抜きを行う、扉間達。
ついでに約一名、罪の意識からオートで
乙女の尊厳? 生命の尊厳を踏みにじる穢土転生が横行している状況で、気にすることか?
「ライディング用の飴ならあるけど……食べる?」
「ありがとー、えーと……」
「ん、砂狼シロコ」
「そっかぁ、シロコちゃんだね。あの子と同姓同名だなんて、珍しいね」
シロコ*テラーとシロコが同一人物だと気づいていないのか、暢気に珍しいねと呟く、ユメ。
やはり、どう見ても操られているようには見えない。
「梔子ユメだな? 2年前にアビドス砂漠にて消息を絶ったという」
「あ、はい。そうです……えっと」
「千手トビラマだ。色々と役職はあるが、簡単に言うと先生だ」
「先生!? 私、初めて見ました! 先生ってどんなことをするんですか?」
「……ざっくり言うと、生徒の手伝いだ。アビドスでも何度か依頼を受けて仕事をしておる」
そして、ユメの尋問を開始する扉間だったが、ユメが無警戒すぎるためにどこかやり辛そうな表情を見せる。
この無警戒っぷり…まるで兄者のようだ……。
「さて、お前には聞きたいことが山のようにあるが……まずは、本人確認からだ」
「え? 私、梔子ユメですよ?」
「お前は一度死んだ身だ。別の人間がなり替わっている可能性もある。そのため、お前を良く知るホシノに確認を取らせてもらう」
「そ、そんなぁ……ホシノちゃん、私だよ、私」
「わたしわたし詐欺ですか? ユメ先輩」
自分も死んで生き返った身なので、あまり強くは言えないが、死んだ人間が現れたらまずは偽物を疑う。
そのため、ホシノの本人確認作業から入る。
「ホシノ、お前とユメしか
「………ユメ先輩。ユメ先輩が騙された会社の名前は覚えてますか?」
ホシノが出した問題は、人の善意を信じすぎるが故によく騙されていた時のこと。
そして、情報を抜き取っただけの偽物と本物を見分けるための引っかけである。
「え? えーと……ど、どれのこと?」
ろくな思い出がねェ……。
正直、騙された記憶で溢れかえっているので、ユメは目を白黒させる。
「あんなに酷い目に遭ったのに忘れたんですか?」
「ど、どれか分からないよぉ! それに、いつもホシノちゃんが助けに来てくれてたから、本当に酷い目にはあってないし……後、本当に困ってる人もちゃんと居たから!」
数が多すぎてどれか分かんねェ!
後、本人的には騙されても、そこまで気にしないタイプなので良く分からない。
砂漠で遭難しなくても、そのうち死んでしまったのではないだろうか、こいつは。
「……多分、本物だよ、先生。ユメ先輩がそんなに細かいことまで覚えてるわけないから。むしろ、ちゃんと名前が出てきた方が偽物だよ」
「ひ、酷いよぉ、ホシノちゃん……ちゃんと、ホシノちゃんがクジラが好きとかは覚えてるのに……」
「情報は当てになりませんので。ユメ先輩を蘇らせた術は、ユメ先輩の知っている情報は全部抜き取れるそうなので」
「ひぃん……怖いこと言わないでよぉ」
後輩から、馬鹿扱いされたことに少し傷つきながらユメは涙を流す。
感情豊かで、とても砂漠で脱水を起こして死んだようには見えない。
因みに、死因などを聞かなかったのは、それを聞くとホシノのメンタルが逆にやられるからだ。
「本人確認は十分か。さて、では次の質問だ。お前は何の目的で木遁で森を生やしていたのだ?」
「え? シロコちゃん……あ、もう1人のです。シロコちゃんに、赤い塔の周りに木を生やしていくと砂漠問題が解決するって言われたから…です」
「……
「何か、凄い塔としか聞いてませんけど……緑化活動のついでに守って欲しいって言われたので」
砂漠問題の解決をしてくれる代わりに、あの塔を守ればいいの?
うん、いいよ。分かった。
そんな、あっさりとしたやり取りで、ユメは塔を守る守護者になったのだった。
「呆れた奴だ……どう見ても、まともな建造物ではなかろう」
「で、でも、お願いされたし……」
「別の私のことは知らないけど、多分、あっさり行き過ぎてビックリしてる……」
「この人を疑うことを知らないア…コホン。善良さは……やっぱりユメ先輩だ」
人を疑わずに信じる。
どこまでも寛容。
柱間に似ているが、残念なことにユメはクソ雑魚ナメクジ。
柱間がやれば、強者の余裕だが、ユメがやると情報弱者だ。
「あの塔は時限爆弾のようなものだ。時間が経過する前に壊さなければ、アビドスが崩壊する」
「そーなの!? ひぃん、ホシノちゃんどうしよう!? みんなが
「…………」
「ノノミ、ワカモ。ホシノを押さえろ。流石に銃を咥えて自害すれば、頑丈なキヴォトスの人間でも傷が残りかねん」
「ホシノ先輩、ちょっと大人しくしましょうねぇ」
「何をやっているんですか、まったく……」
ユメの言葉に無表情で、ショットガンの銃口を口に入れるホシノをノノミとワカモが取り押さえる。
躁鬱が激しいな、こいつ。
「ホ、ホシノちゃん!? ダメだよ! 何やってるの!!」
「先輩を殺した私に生きる権利なんてないんです……先輩だって私のことを恨んでいるんでしょう…?」
「ホシノちゃんが私を…? え? 恨み? 何のこと?」
銃口へねっとりとした唾液を垂らしながら、ホシノが死んだ目でユメに語り掛ける。
当然、とうのユメは何のことか分からずに困惑する。
「だって……ユメ先輩は私に
「………うらめしやって、幽霊が言う定番の言葉だよね?」
キョトンとした表情で、そんなことをのたまうユメの姿に、ホシノ以外の人間の心が一致する。
この人、バ……アホだ。
「あの……恨めしやは、恨むという意味で、あなたのことが憎いという意味ですが……」
「そーなの!? ごめんね、ホシノちゃん! 私はホシノちゃんのことを恨んでなんていないからね!!」
「ユメ先輩って……」
今になって、アヤネから自分が行った所業の意味を教わり、ホシノを誤解だと抱きしめるユメ。
セリカがそんな様子に呆れているが、やはり最後の一線は越えない。
「よし……お前は兄者以上のバカだ」
「バ、バカなのは自分でも自覚してるけど、凄くバカにされた気がする……」
「せ、先生、一応は故人に対して、そんな言い方は……」
「ワシも一応は故人だぞ、ノノミ? ならば何も問題はあるまい」
だが、扉間があっさりその一線を越えてバカと断言する。
ユメ(New!)≧ヒフミ≧ナルト>柱間>>>>>>バカ。
ヒフミとユメ、2人の火の意志がキヴォトスの未来を支える。
「で、でも、私が子供みたいに癇癪を起して、先輩を1人にしたから……先輩は死んだんです」
「…………あ! そう言えば、最後に会った時に喧嘩しちゃってたね? ごめんね、ホシノちゃん。いつも迷惑ばかりかけて。ホシノちゃんが怒るのもしょうがないよ」
たっぷりと考えてから、自分とホシノが最後に喧嘩をしたことを思い出す、ユメ。
本人的には、本当に日常の一部で大したことではなかったのだ。
もっとも、そんな日常の喧嘩の延長で死んでしまったので、ホシノは引きずっていたのだが。
「……え? で、でも……私はもう先輩のことなんて知らないなんて、酷いことを言って……1人で勝手にやっていろだなんて……」
「そっか……仲直り出来てなかったよね。ホシノちゃんは、いつも私を助けてくれてたんだから、ちょっと喧嘩しただけで嫌いになんてなったりしないよ? それにいつも騙される私が悪いんだし」
「ユメ…先輩…ッ。ごめんなさい…ごめんなさい…!」
「うん……私もごめんね。それから……ありがとう。最後まで私を探してくれたんだよね? 分かるよ、ホシノちゃんは優しい子だから」
ポンポンと子供をあやすように、ホシノの背中を叩く、ユメ。
その豊かな胸の中で、泣きじゃくる、ホシノ。
もう、謝ることすら出来ないと思っていた者達の出会い。
これも全て、扉間が作った穢土転生のおかげである。
(2人の話が繋がっている所を見るに、並行世界の場合でもかなりこちらと近いものか……)
因みに、そんな感動的な場面を見ながら、製作者は冷静にそんなことを考えていた。
「……ユメ先輩、ところでどうして砂漠になんか行ったんですか? あの時は何も用事はなかったはずですけど」
「えーとね、ホシノちゃんが帰った後に、“砂漠横断鉄道の施設使用権”を買わないかって連絡があってね」
「“砂漠横断鉄道の施設使用権”…?」
「…! アビドス生徒会とネフティスの共同計画の件ですね?」
ユメの言葉にノノミが、ホシノよりも早く反応する。
ネフティスとは正式名称セイント・ネフティスという名の大企業であり、ノノミの実家だ。
アビドス出身の大企業ではあるのだが、アビドスの衰退に伴いアビドスから出て行った。
因みに、ノノミがこんな貧乏校に通い始めたのは、その負い目からである。
まあ、今では立派な覆面水着団の一員なので、本人の性質は元々こっち側だったのだろうが。
「うんうん、それを100万円で買わないかって話でね……アビドスの歴史を残そうと思って購入したんだけど、その振り込みに銀行に行くときに砂嵐に巻き込まれちゃって……あ! そうだ、まだ残りの金額を振り込んでないんだった! ど、どうしよう、ホシノちゃん!?」
「ははは……」
今から銀行に行かなきゃと、慌てるユメの姿にホシノは半笑いで膝をつく。
てっきり事件に巻き込まれたのかとか思っていたが、いつものような行動。
やっぱり、ユメ先輩はユメ先輩だなと、呆れたように笑うしかない。
「まあ……100万円ぐらいなら、今なら問題なく払えますけど」
「え! 本当に!? あ! それに、よく考えたら後ろの子達って……」
そして、ここに来てユメはようやく気付く。
ホシノの後ろに居る大勢(当社比)のアビドス生徒に。
「私の後輩達ですよ……ユメ先輩」
「ゆ、夢じゃないんだよね!? アビドスにこんなにたくさんの後輩が来てくれるなんて…! ホシノちゃん、本当に頑張ったんだね!」
嬉しさのあまりに、再度ホシノを抱きしめる、ユメ。
あの絶望的な状況から、1人でここまで立て直しているのだから、その感動も一入だろう。
「い、いえ、これも全部ユメ先輩の教えのおかげや、後輩達や先生の頑張りのおかげで……」
「何を言ってるんですか、ホシノ先輩? ホシノ先輩が1人でもアビドスに残ってくれたから、私とシロコちゃんが入学出来たんですよー」
「ん、私を助けて、マフラーをくれたのはホシノ先輩。そこのユメ先輩じゃない。私は弱い人には従わないから」
しかし、罪悪感がまだ消えないホシノは、自分の頑張りなど関係ないと言おうとするが、即座に後輩達にインターセプトされる。
「そうよ、ホシノ先輩は………色々と困ったところもあるけど、ちゃんと私達の委員長をやってくれてるし」
「隠してますけど、アビドスの治安のために見回りもしていますし」
「少なくとも、ホシノさんでなければ、
ホシノが居なければ、そこで終わっていた。
何の進捗もなく、ただ借金が増えていただけの日々。
もう、何度も学校を閉めて終わらせようと思いながらも、罪悪感だけで続けた時間。
そんな一見、何の意味もないような行動であっても。
「無駄なことなど、この世に何一つとしてない。森に入ってすぐに話したことを、もう忘れたか? ホシノ」
無駄ではなかったのだ。
ユメが蒔き、ホシノが守ってきた未来への種は、今確かに芽吹いている。
「………こんな時、どんな表情をすればいいか分かんないよ」
「笑えばいいんだよ、ホシノちゃん。ほら、うへ~って笑ってみて?」
ホシノの鷹の目から、ゆっくりと涙が流れ落ちるのをユメが笑顔で拭う。
やっぱり、ホシノは笑っている顔が一番かわいいのだと。
「う…うへ~」
「うんうん。それでこそ、ホシノちゃんだよ」
おじさんみたい。
かつて、ユメに言われた笑い方。
そして、今では自分の代名詞となっている言葉。
ホシノはようやく、ユメが死んだあの日から解放されたのだった。
やっぱり、穢土転生は作るべき術だったわ(卑遁・手の平返しの術)。
「さて、感動的な空気の所悪いが、本題だ」
「本題?」
「お前はどういった存在なのだ? 反応を見るに、死んだことに間違いはないのだろうが……動きがどう見ても生きているようにしか見えん」
よしよしと、ホシノの頭を撫でながら疑問符を浮かべる、ユメ。
そんな彼女に対して、扉間はなぜ生きていると問いかける。
「え? 私って生きてるの!?」
「………よし、ユメ。今からワシの真似をしろ」
本人に説明しても時間がかかりそうだと判断した扉間は、即座に肉体言語に切り替える。
バカとの付き合い方は慣れているのだ。
「あ、はい」
「指をこのように組み合わせてな……」
「こ、こうですか?」
「そう、そうだ。そして──解ッ! と、言ってみろ」
「えーと……解!」
穢土転生の解術の印を何の抵抗もなく結ぶ、ユメ。
「何か変化は感じるか?」
「えーと……良く分からないです」
実際、扉間自身も解術をしたことはないので、感覚は分からない。
だが、傍目に見てもやはり変化があるようには見えない。
しかし、確実に解は完了した。
「何の反応も見えないということは、穢土転生ではないのか……もしくは最初から縛りがないのか……」
「あの……」
「もう1つ質問だ。お前の記憶は死んだ後は、どこから始まっている? この世界に呼び出された時からか?」
穢土転生、というよりもあの世の記憶はどういう原理か現世には持ち込めない。
時間経過に気づかない穢土転生が多くいたのは、そういった理由からだ。
だが逆に言えば、死んだ後も記憶が続いているのならば、以前にも呼び出されたことがあると分かる。
「んーと……シロコちゃんと会う前に、不思議な子に会ってます」
「それは、こんな顔ではなかったか? 現在の連邦生徒会長なのだが……」
「あ! そうです! ふぇー、あの子って連邦生徒会長だったんだぁ。ちょっと話して、応援したぐらいだから分からなかったなぁ」
連邦生徒会長の顔写真を見て、以前に会っていると頷く、ユメ。
連邦生徒会長は現在、3年生。ホシノと同学年。
要するにホシノの先輩であるユメの方が先輩なのだ。
彼女が生きている間は、ギリギリ連邦生徒会長ではなかった可能性はある。
「応援? 何かそやつについて話せる情報はあるか? 何でもいい。話していたこと、やっていたこと。断片的で構わん」
「はい、えっとですね……“オシリスと十字の聖者の共通点”とか、“2つの神秘の複合”とか“半死半生のミイラ”とか、良く分からないことを言っていたような……」
「また神秘か……ワシはその手のことは門外漢なのだがな。黒服にでも問いただすか?」
アヌビスに続き、オシリス。
エジプト神話のことなど知らない扉間は、難しそうに顔をしかめる。
また、ゲマトリアを利用しなければならなそうだ。
「後……“実験”とも言ってました」
「実験?」
「蘇らせたい人がいるから……その実験だって」
(穢土転生を使って死者蘇生を行おうとしておったのか? そうなると、何かしらの方法でユメを生者に近い状態にしておるのか)
実験的に特別な処理が行われた存在。
扉間はそれを聞いて、何故か死んだ時ではなく、全盛期の肉体年齢になっていたマダラを思い出す。
「あ! 思い出した!! そう言えば、
「……何?」
「『冥界の神のあなたなら、あの世での記憶を引き継げないでしょうか? 私は
「………そう言えば、あちらのアロナがワシは死んだと言っておったな」
ユメは扉間が来る前に死んだ。
そして、扉間はユメのことをホシノから聞く前に死んだ。
例え、あの世のことを覚えていても、交流があったかは分からないが、それでも連邦生徒会長は藁にもすがる思いで聞いたのだろう。
まるで、イザナミを追って黄泉まで下りたイザナギのように。
「それから……」
「それから?」
「あの時は私がお腹が空いたって言ったら、カステラとイチゴミルクをくれました! いい子ですよね! 何をやってるのかは分かりませんけど、いい子なので『諦めないで』って言いました!」
わたしが命のパンである。
わたしに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者は決して乾くことがない。
反対に、わたしを去る者は飢えと渇きに苦しむだろう。
「好物は変わらんか……どうやら
わたしを信じ、契約を結んだ者は全ての罪が赦され、蘇るだろう。
「えっと……こんな感じですけど、何か分かりましたか?」
「ああ、感謝する。お前のおかげで、何も分からんことが分かった」
「そんな!?」
しかし、結局ユメがどのような存在かは分からなかった。
と言うよりも、情報の決定打がない。
「だが、これは前進だ。やはり直接、連邦生徒会長かあちらのシロコを問いただすしかない。黒服とベアトリーチェにも吐かせる。この地の虚妄のサンクトゥムを破壊次第、サンクトゥムタワーに向かう。カヤからの連絡で、そこに連邦生徒会長が居ることが分かったからな」
だが、こちらでは何も分からないという事実が分かったのだから、分かる奴が絞れた。
ならば、原因究明よりも打倒することを優先すればいい。
モモイもそうだそうだと、頷くことだろう。
「よし、行くぞ、お前達。森の拡大は収まった故、塔の破壊に集中すればよいだけだ」
「うふふふ、いつぞやのシャーレの襲撃のことを思い出しますわね。あの時は、破壊出来ませんでしたが……別に壊してしまっても構わないんでしょう?」
「ああ、好きなように壊せ。あのような害悪なもの、ストレス発散のサンドバッグにした方がマシだ」
コキと首を鳴らして、自分暴れていースか? と、狐のお面を着けなおすワカモ。
災厄の狐の本領発揮である。
「……あの、私もついて行っていいですか?」
「何?」
そんな光景を見ていたユメが、何かを決意したように発言する。
「ユメ先輩は安全な所にいてください! クソ雑魚ナメクジなんですから!!」
「ひ、ひどいよぉ、ホシノちゃん……」
しかし、ホシノによって即座に否定されてしまう。
彼女にとっては、ユメはいつまた消えてしまうか分からない存在。
過保護になってしまうのも仕方ない。
「でも……私は行くよ」
「だから、安全な場所に──」
「ホ、ホシノ先輩、少し落ち着いてください!」
「ん、先輩の言うことは聞くべき……ホシノ先輩が良く言ってた」
ユメはホシノの言葉に涙目になりながらも、意地を張る。
そんな姿に、ホシノはやはり止めようとするが、逆にノノミとシロコに止められてしまう。
「ホシノちゃんの言いたいことは分かるよ? 私が行ったって何の役にも立てないかもしれない。だとしても……お話をしたいんだ」
「もう1人のシロコ先輩と…?」
「それと、もう1人の連邦生徒会長ですね」
話がしたい。
そう告げるユメの姿に、セリカとアヤネは初めて彼女がアビドスの生徒会長なのだと理解する。
金も頭も力もお金も土地も資産も現金も足りないが、それでもその意志の強さだけは長たるものだった。
「きっとあっちにも事情があると思うの。いけないことをしようとしているのは分かったけど……それでも、困っているのは本当なんだと思うんだ。だから、まずはちゃんとお話をしないと。もしかしたら、みんなが幸せになれる方法があるかもしれないし」
「そんな、また夢みたいな綺麗ごとを……」
いつものように、馬鹿で現実を見ていない夢のような甘い理想を語る、ユメ。
それを、どこか眩しそうに見つめながら、ホシノが溜息を吐く。
「ご、ごめんね」
「ハァ……いいですよ。今だから言えますけど……ユメ先輩の無茶ぶりに応えるのは意外と楽しかったですから」
「ホシノちゃん…!」
やっぱり、ユメ先輩はこうじゃないと。
そんな諦めの籠った笑みを零しながら。
「まあ……何度も連続されると怒りたくもなりますが」
ただし、限度はある。
人の
「先生、大丈夫?」
「……バカで甘く、綺麗ごとを大声で口にするガキか」
「ひぃん…先生って怖いんだねぇ、ホシノちゃん」
「……どっちも事実なので、特に言い返せることがないですね。でも──」
扉間はジッとユメの目を見つめる。
弱そうな見た目。押せば簡単に引きそうな顔。
だが、その目に宿る火の意志だけは爛々と輝いている。
「──ユメ先輩みたいにロマンチストな所もありますよ、似合わないですけど」
「似合わんは余計だ」
仏頂面のままホシノのデコを指でつつく、扉間。
「ホシノ。お前がユメの面倒を見ろ。仮に敵に操られた場合は、お前が即座に押さえろ」
「はいはーい、任せて。ワカモちゃんで散々練習したおじさんの得意分野だから……ほら、ユメ先輩。今度は勝手にどこかに行かないでくださいよ?」
「えっと…じゃあ! ついて行っていいんですか?」
「ワシとて、可愛い教え子と戦いたくはない。話し合いで片が付くのならその方が良い」
踵を返し、背中で語る扉間。
その表情は、先頭に立っているため誰の目にも映らなかったが、何となく生徒達には分かった。
教え子と戦い続けなければならない、あなたが今何を考えているのか心中察するものがありますが、泣いているように見えますよ。
お心に触りますよ?
「では……行くぞ、アビドス全校生徒!」
「「「「「「「はい! 先生!!」」」」」」」
グウ~……。
「あ…ご、ごめんね、さっき飴を貰ったのに……」
「……カステラとイチゴミルクならあるが」
「いや、なんでそんなの持ってるのよ? 先生って甘いもの苦手なのに」
「
こうして、アビドス高校メンバーが16%増加したのだった。
オシリスはパンとワインの作り方を教えたそうです。
どっかの救世主と似ていますよね。
次回は2/7に投稿。
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