ミレニアム。ビッグシスターの会長室。
そこで、扉間の影分身と敵のアバンギャルド君が向かい合っていた。
『アバンギャルド君Mk.
アバンギャルド君Mk.
ロケットパンチ、ロケットパンチ、そしてロケットパンチ。
普段の合理性は、ロケットパンチと一緒に飛んで行ったのかと思う程の、ゴリ押しだ。
「おいおいおい! いくら撃ち落としても、腕がまた生えて来るってどうなってんだ!?」
「リオ! 今度はどんな機能を付けたんですか!? どうせあなたのことだから、オーパーツや名もなき神の技術を積み込んだのでしょう!!」
「いえ、確かにアバンギャルド君Mk.Asuraは私の構想通りの見た目だけど……あんな技術は私の頭には無いわ。ロケットパンチはウタハのアイデアも取り入れてみようと思ってつけた結果だもの。無限にロケットパンチを撃つなんて、どんな技術を使って……」
他のC&Cと協力しながら、ネルがロケットパンチを着弾前に撃ち落としているが、焼け石に水。
ロケットパンチが終わる前に、ロケットパンチがさらに撃ち込まれる悪夢のウロボロス。
ヒマリが理不尽にこちらのリオに怒る気持ちも分かる。
『所詮は1つの世界の知識しか持たない貴女如きでは、理解することすら出来ないわ、調月リオ。今のアバンギャルド君Mk.Asuraは忍の力を得ているのよ』
低次元なこの世界の私では理解できないだろうと、穢土転生リオがアバンギャルド君につけたスピーカー越しに告げる。
厄介なことに、本体はここには居ないのだ。
「……こやつ、アリウスの秘術だけではないな。ロケットパンチがロケットパンチを口寄せする、互乗起爆札の原理を応用しているのか」
そして、その言葉から扉間は即座にリオの持つ大人のカードの効果を理解する。
互乗起爆札。起爆札が起爆札を口寄せし続ける術。
ビールに枝豆的なノリで繰り出される穢土転生のお供である。
「ミチルに仕込んでいたものを考えれば、選んだ物体に口寄せを行わせることが出来る形になっておるのだな。爆弾なら爆弾、ロケットパンチならロケットパンチ。そして、口寄せする在庫は、アリウスの秘術で無限に生み出されるという訳か……考えたな」
互乗起爆札は術者が近くに居なくとも、発動させられる。
あくまでも、起爆札が起爆札を口寄せするという原理で無限爆破にしているのだから。
故に、敵里に送り込んで、感動の再会の瞬間に爆破という卑劣な手が使えるのだ。
『流石は先生ね。想定外のことが起きると、使い物にならなくなる
「ワシの教え子への侮辱は許さんぞ。例え、それがお前自身であってもな」
『………そう』
可愛い妹の悪口を止めるように告げる扉間に、スピーカー越しのリオは震えた声を返す。
『でも、原理が分かったところで対策は無いわ。圧倒的物量で磨り潰す。それが最も合理的な戦略。どんな戦術も、この戦略には勝てないわ』
「そうですよ! 相手が本当に無限の数を持つなら、こちらが耐えきれる確率は0%! そして、先にこちらが弾切れになる確率は100%です!!」
「なんで、そんな嫌なことまでしっかり数値化するんですか、ユウカ先輩!?」
「これがお話なら0%と100%は俗に言うフラグというものになるのですが……現実は厳しそうですね」
「ノア先輩まで!?」
しかし、スピーカー越しのリオが告げるように、無限の物量はそれだけで脅威なのだ。
奇策というものは、所詮は弱者の策。
圧倒的強者は順当に数を揃えて、正攻法で潰す方が強いのだ。
「リオ様! 私がアビ・エシュフで、アバンギャルド君に近づいて破壊します。無限に出現すると言っても、撃ち出す機能が壊れれば脅威ではないはずです!」
「確かに本体を潰してしまえば、これ以上の攻撃は出来ないはず……でもトキ、忘れたのかしら? 今のエリドゥはあちらの私に掌握されているわ。アビ・エシュフの未来予知による回避は使えないわ。そのまま突撃しても、返り討ちよ」
「く…! こんな
エリドゥは掌握されたが、ケイが居ればアビ・エシュフはその真価を発揮できる。
しかし、今のケイはウトナピシュティムで受けたダメージの確認のため、エンジニア部で検査中。
そして、今は穢土転生リオの策略により連絡が取れない。
ビッグシスターアルゴリズムを悪用した結果である。
一体、誰がこんな厄介なものを作ったんだ……。
「……ケイを呼んでくればいいのですね?」
「アリス?」
「なら、アリスがケイを呼んできます! 大丈夫です、ケイの居場所はなんとなく分かります!!」
電子機器で連絡が取れないなら、直接会いに行けばいいじゃない。
アリスは何の役にも立てていなかった焦りからか、居ても立ってもいられずにケイを呼びに行こうとする。
だが。
「待って頂戴! アリス!」
『貴女だけは逃がさないわ…アリス!』
穢土転生リオがそれを見逃すわけがない。
彼女は
『アバンギャルド君Mk.Asuraの視界に一切の死角は無いわ! アバンギャルド君レーザー!!』
「わ、わわ!? アバンギャルド君の目からビームが出てきました!?」
ロケットパンチだけがアバンギャルド君Mk.Asuraの武装ではない。
3つの頭、6つ目の。
それらが、360度の視野を実現したばかりではなく、その目からはレーザーを放てるのだ。
ぶっちゃけキモイが、その性能は折り紙付きだ。
「うっ!?」
「アリスちゃん!? 早くこっちに戻って!!」
「オラ! 早いとこ、こっちに隠れろ!」
「わ、分かりました、ユウカ、ネル先輩……」
1人で飛び出たアリスを集中砲火で狙うアバンギャルド君Mk.Asuraから助けるべく、ユウカとネルが守りに入る。そんな姿に申し訳なさそうな顔をしながら、アリスはとぼとぼと後ろに下がる。
『悪いけど……何があっても貴女と
「アリスが魔王だと?」
「それは………そちらのリオ先輩の世界のアリスが王女として目覚めたからですか…?」
魔王。
ゲームでしか登場しない単語を告げる穢土転生リオに、アリスは何があったかを悟る。
王女として目覚めたAL-1Sは誰にも止めることが出来ないのだから。
『……そうよ。存在の本質を、生まれ持った使命を変えることは出来ない。どれだけ、人間のように振る舞おうとも、貴女は
「あの存在…?」
『答えるつもりはないわ。私はこの世界を滅ぼすつもりではあるけど……貴女を目覚めさせるつもりはないわ。リスクが大きすぎるもの。利用しようとしてもこちらまで、呑み込まれてしまう』
意味深なセリフをスピーカー越しに話しながら、ロケットパンチを放つ穢土転生リオ。
こうして、わざわざ会話に付き合っているのも、時間が経てば経つ程、彼女が有利になるからだ。
『私は、私の世界の妹達を蘇らせる。それが、愚かな姉の唯一の務めだから』
「………何があったかは分かる気もありませんが、少しは妹達の気持ちも確かめたらどうですか? 少なくとも、
「ヒマリ…! やっと、妹であることを認めてくれたのね!」
「今真面目な話をしているので、後にしてくれませんか? このデカい妹は」
ドシリアスな会話をする穢土転生リオとヒマリ。
そして、その横で場違いにも、嬉しそうな顔をするこちらのリオ。
お前は後!
『分かるわけがないでしょう……死人の言葉なんて』
「あら、おかしいですね。あなた自身が死人だと先生からお聞きしているのですが? それに、穢土転生…でしたか? この術があれば、あなたの妹達をこちら側に呼び寄せられるのでは? こういったオカルトは出来ることなら、私が研究してみたかったのですが」
妹達がアリスを始末しようとすることを許容するのか?
ヒマリの言葉に、言葉を濁す穢土転生リオ。
そこに突破口があると見たヒマリは、チクチクと精神攻撃を開始する。
普段の軽口とは違うガチ目な悪口だ。
「あなたは妹達を蘇らせると言っていますが、結局の所、それはただの自己満足でしょう? 自分の犯した罪から目を逸らすための逃避行動。子供がおねしょをした時に、汚れたシーツをどこかに隠そうとしているようなもの。必要なのは汚点を隠すことではなく、汚れを洗い流すことではないでしょうか?」
間違いを犯したので、全部なかったことにする。
そのために、更に間違った行いをして罪を重ねる。
リオを慕う者程、そのことに胸を痛めるはずだと。
『………所詮貴女には分からないわ。まだ何も失っていない貴女には』
「随分と感情的な人間になりましたね、リオ。
滅んだ世界を蘇らせることに、労力を割くぐらいなら生きてる世界のために動けよ。
それが合理的な解ではないのかと、穢土転生リオを煽り倒す、ヒマリ。
『……先生、貴方になら分かるはずよ。妹達が自分よりも先に死ぬ苦しみが』
戦況はリオの圧倒的有利。
だが、心理戦はヒマリが圧倒している。
故に、リオは理解者を増やすように扉間へと話しかける。
弟を救えなかった兄ならば、自分の気持ちが分かるはずだと。
「苦しみは痛い程分かるが……未来の、ましてや別世界の人間を傷つけてまで行うことではない。耐え忍ばねばならんのだ」
『分かっているわ……先生の言っている言葉が正しいことも、私が間違っていることも、このままだとダメなことも……でも、それでも──』
分かってんだよと、重々しい声を零す、穢土転生リオ。
『──私は
だとしても、彼女の本質はどこまで行っても臆病で幼い妹のままであった。
『私は私の世界のために…私の願いのために貴方達を滅ぼすわ! たとえそれが……友であろうと、姉妹であろうと、先生であろうとも……私の邪魔をするものは許さない!!』
「そうか……お前の横にはもう……支えてくれる者がおらんのだな」
兄者ほど強くはなれない。
扉間とて、一度も思ったことが無いとは言えない。
柱間以上にマダラへの理解力を見せていたのも、結局は柱間にはない
だが、扉間には多くの仲間や弟子達が居た。
彼らが居たからこそ、劣等感や無力感に苛まれることはなかったのだ。
だが、マダラやリオにはそれがない。
孤独は闇を深めていく。
『アバンギャルド君Mk.Asura! このまま一気に押し切るわ!!』
真のアバンギャルドは目で殺す。
3対6つの目が扉間達の方を向く。
レーザーとロケットパンチ、ついでに残りの腕を使った銃撃。
それらが、妹達に容赦なく降り注ぐ。
「このままでは…! 何か、何か弱点はないのですか、リオ様!?」
「……アバンギャルド君の弱点は以前、トビラマチャンネルで先生が指摘した通り5つ。空からの爆撃・落とし穴・ハッキングをかけて機能を低下させる・重さがないから引きずり倒せる・純然たる力押し……」
「じゃあ、それやろうよ、会長。何でやらないの?」
「それは……アバンギャルド君Mk.Asuraが改良型だからよ」
弱点があるのに、どうしてそこを突かないのかとアスナが首を傾げる。
それに対して、リオは渋い顔でアバンギャルド君Mk.Asuraはアバンギャルド君の改良型だからだと言う。
『前回の課題を全てクリアして初めて、改良と呼べるのよ』
つまり、弱点は全て克服済みという話だ。
「そのようなことが可能なのですか?」
「空からの爆撃はここが室内である以上は、私達を巻き込んでしまう。落とし穴はそもそも事前準備が必要。落としても、2足歩行型である以上は、人間と同じように這い上がるだけ。ハッキングをかけて機能を低下させようにも、ビッグシスターアルゴリズムで常にウィルスを流されている状況では、こちらの動きは通常よりも遅くなる。その状態であちらの私の防御を破るのは、ヒマリでも厳しいわ。そして、直接ハッキングするには近づかないと出来ない以上は、この状況を打破しないといけない。本末転倒よ」
アカネからの疑問に1つ1つ丁寧に、出来ない理由をあげていく、リオ。
彼女もまた1人のエンジニア。
扉間にここがダメだと言われて、そのまま放置するわけがなかった。
「重さがないから引きずり倒せる。先生にそう言われたから、アバンギャルド君Mk.Asuraの装甲は軽量化したものでなく、戦車数台でも引けない重量のあるものに変えたわ。もちろん、その分だけ装甲の防御力も上がっているわ。そして、最後の純然たる力押しだけど……それが出来るなら苦労はしていないわ。通信を絶たれている以上は、増援も望めないもの」
「流石はリオ会長の最高傑作と言った所ですね……」
「そんなことを言っている場合じゃないわよ、ノア!」
漆黒のアバンギャルドボディは特殊合金によるもの。
重さと硬さ。それらを重点的にケアした結果の産物だ。
一体誰が、鬼に金棒なアイデアを提供してしまったんだ……。
「とにかく、一度仕切りなおさないとダメだ……コユキ、ゴールデンフリース号の時みたいに飛行用のドローンはないのか?」
「持ってませんよ~! ただでさえ、お金を先生に管理されてるのに、そんな無駄なものに買うお金なんてあるわけないじゃないですか! ゲームとかお菓子とか、遊びに使いますって!!」
「て、ことはこの狭い空間で、このままやり合うしかねぇのか……キツイな。近づけりゃ、やりようはあるんだけどよ」
カリンが打開策はないかと、コユキにまで尋ねるが当然何もない。
圧倒的手数(物理)とタフネス。
この状況から切り抜けるにはとにかく、一方的な防戦態勢を崩す必要がある。
「……リオ、お前は以前『生徒が定期的に校舎を破壊する』と言っておったな?」
「ええ。実験、制作物、ちょっとした喧嘩で壊れるとは言ったけど……この状況で何を?」
「つまり、校舎はこの会長室も含めて破壊出来るということで、間違いはないな」
「まさか……」
扉間が今から何をやろうとしているかを即座に理解して、悩むそぶりを見せる、リオ。
「逃げるにせよ、攻めるにせよ、一手に固まっているこの状況では数の利が活かせん。散らばるには、一度奴の視界から逃れる必要がある」
「逃れるって……でも、あのアバンギャルド君には、360度死角は無いって言っていましたよね!」
一対多で戦う際には、相手を一纏めにして数の利を活かさせない。
その鉄則を守る穢土転生リオにどうするのだと、コユキが叫ぶ。
「視界とは360度だけではない──
それに対して、扉間は上下に穴があると告げるのだった。
「アリス! 床に向けて、全力全開で光の剣を放て!! 床を壊して活路を開く!!」
「!? で、でも、アリス達はともかく先生は落下に耐えられません…!」
「ワシは分身体だ。最悪お前達を残して消える可能性もあるが、少なくとも死ぬことはない」
床をぶっ壊して、下に逃げる。
そんなことを告げる扉間に、アリスがもっともなことを言うが、今の扉間は影分身。
生徒を残して自分だけ消えたくはないが、背に腹は代えられない。
それに消えた場合は、電子封鎖されたミレニアムの情報を本体と他の分身に共有できる利点もある。
「リオ先輩! 下の階に人はいますか?」
「会長室の下は会議室になっているわ。今日の使用はなかったはず……でも、その銃でも床を崩壊させられるまで行けるかどうかは……」
「やるしかなかろう。他に道がないのだから」
「そうね……でも…いえ…先生を信じるわ」
床に穴を空けても無事かと確認を取るアリスに、リオが少し困惑しながら答える。
敵の前でこんなに堂々と作戦を話していいのかと。
「アスナ! お前の勘で出来るだけ安全そうな落ちる場所は分かるか?」
「うん?
「ええ!? また、紐無しバンジーしないといけないんですか!? なんで、いつもいつも酷い目に……」
「前回はコユキさんの自業自得だと思いますが……」
「…! では、チャージします!!」
声に出して、指示を出しながら扉間は相手から見えないように
『無駄よ。例え、ネルであっても落下から着陸までの瞬間は無防備になる。あなた達が下に落ちると言うのなら、そこを狙い撃つまでよ』
当然、そんな作戦が丸聞こえな穢土転生リオは、スピーカー越しにアバンギャルド君Mk.Asuraへと指示を出す。
高性能な射撃システムを搭載するアバンギャルド君は、空中を落ちる標的であっても難なく撃ち抜くことが出来る。
(でも、おかしいわね。先生が私に聞こえるように作戦を言うなんて……そうなると考えられる作戦は陽動。私の注意をアリスに向けさせた所での、背後からの不意打ちが狙いかしら)
しかし、穢土転生リオもまた扉間の妹。
お兄ちゃんが素直に作戦を教えてくれるなんて、信じられん!
と、疑念を抱く。
(なら、アバンギャルド君Mk.Asuraの取るべき行動は、アリス達が床を破るのを見張りつつ、目を後ろに向けて不意打ちへのカウンター。6本の腕と6つの目を持つ、改良されたアバンギャルド君Mk.Asuraに弱点は無いわ)
故に、あらゆる事態を想定してこちらも策を講じる。
改良されたアバンギャルド君Mk.Asuraに短所などないのだ。
「1、2──」
「ほ、本当に床を壊すんですか、先生!? 今月の支出がまた増えて!!」
「ユウカちゃん、今は考えないようにしましょうか」
同意を得る前に始まる扉間のカウントダウンに、ユウカがテンパった声を出す。
既にアバンギャルド君Mk.Asuraの攻撃や、ビッグシスターアルゴリズムで結構な損害額が出ていることは内緒だぞ?
これも全部、ビッグシスターって奴が悪いんだ。
「──3!!」
「──光よッ!!」
『アバンギャルド君Mk.Asura、精密射撃に切り替えて落下する相手を狙ってちょうだい!』
光の剣:スーパーノヴァから極限まで威力を高めた弾丸が放たれる。
アバンギャルド君Mk.Asuraが、空中で敵を撃ち落とすためにロケットパンチからスコープ付きの銃へと装備を変える。
そんな、タイミングであった。
『こっちの床に攻撃を? まさか…!』
アバンギャルド君Mk.Asuraの足元にスーパーノヴァが撃ちこまれたのは。
「は? 誤射ですか! こんな大切な時に!? しかも、せっかく攻撃したのに床が崩れてませんし!!」
「いえ、誤射ではありませんよ、コユキ。
声ではなく、こっそりとスマホの文字入力でアリスに与えていた指示。
それは自分達の足元ではなく、相手の足元の床を破壊しろというもの。
「指示通り? 先生、どういうことでしょうか?」
「待って、ノア。見て、アバンギャルド君の足元がヒビ割れていってる」
「そういうことね…! アバンギャルド君Mk.Asuraの改良された
キヴォトスでは爆破や射撃は日常茶飯事。
故に、建築業は花形業界とすら言われる。
そのため、光の剣:スーパーノヴァでもそう簡単に床全体は壊せない。
だが、攻撃で
『アバンギャルド君Mk.Asura! すぐに、その場を離れて安全な足場に移動してちょうだい!』
「無駄だ。その重量では、機敏な動きは出来ん。何より、二足歩行になったのが仇になったな。キャタピラの時とは違い──
扉間の本当の狙いを理解して、即座にアバンギャルド君を逃がそうとする穢土転生リオだったが、時すでに遅し。
アリスの攻撃で脆くなった床が
落とし穴対策と阿修羅像を意識した2本の足が、自ら
「ワシの行動に違和感を覚えて、背後に意識を向けたのは誉めてやろう。だが、前と後ろに意識を集中させ過ぎたせいで、足元がお留守になったな」
ガラガラと崩れていく床に沈み込んでいく、アバンギャルド君Mk.Asura。
そのボディは傷一つとして負っていない。
だが、黄泉沼に嵌ったような状況になっては身動きが取れない。
(昇らせ…いえ、いっそ下の階に落ちて体勢を立て直した方が…でも、それだと先生達に時間を与えることに…!)
「どんな術にも弱点はある。一見すれば長所に見えるものも、見方を変えれば短所となりえる。故に、人は1人ではなく仲間と戦うのだ」
下半身は下の階に。
6本の腕は会長室から落ちないように、床を掴もうとする。
穢土転生リオの混乱と焦りが、ちぐはぐな行動をアバンギャルド君Mk.Asuraに取らせてしまう。
「ハッ! それじゃあ、自慢のロケットパンチも形無しだな?」
「目からのレーザーは驚きましたが、人間の眼球と同じです。動かせる範囲はそれぞれ決まっています」
「レーザーの射程はさっきの戦闘で把握した。最低限の防御があれば十分防げる」
「攻撃してくる位置が分かっているのなら、避ける必要もありません。アビ・エシュフの回避能力の出番はなさそうですね」
「よーし! それじゃあ──」
そして、落ち目(物理)の人間を容赦なく叩くのが、人間の本質。
5人のメイドが、
これより始まるは、人類が生み出した最強戦術。
「──みんなで反撃開始ーっ!」
集団リンチである。
『………アバンギャルド君Mk.Asuraはもう駄目ね。でも、問題は無いわ。エリドゥの掌握は既に完了している。ここからは──』
だが、忘れてはならない。
数の利が活きるのは、同じ理の存在の間だけだと。
人間がどれだけ集まろうとも──
『──アバンギャルド君
──ただ一柱の神には間違っても勝てないのだと。
実は、ネオアバンギャルド君というネーミングをアバンギャルド君Mk.Asuraにつけようかなと考えていた時期もありました。
公式と被らなくて良かったぜ。
次回投稿日は11日になります。
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