千手扉間のブルーアーカイブ   作:トマトルテ

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91話:クソゲー

「ッ! みんな、すぐに離れて!!」

 

 人類最強戦術である集団リンチをアバンギャルド君Mk.Asuraに行うC&Cだったが、それは突如として終わりを迎える。

 

 ──互乗起爆札の術! 

 

「うおッ!? 自爆かよ!!」

 

 もう助からないと判断した穢土転生リオによって、アバンギャルド君Mk.Asuraは自爆させられたのだ。

 集団リンチ中に失礼します(退出)。

 

「無事か!? お前達!!」

「はい、何とか……」

「ああ……アスナ先輩が先に気づいてくれたから、逃げることが出来た」

 

 アカネとカリンが、煙の中から脱出してきてメイド服についた煤を掃い落とす。

 アスナの直感で事前に、自爆を察することが出来たのだ。

 

「これで勝ったのでしょうか…? リオ様」

「アバンギャルド君Mk.Asuraの機能は間違いなく停止しているわ。ただ……」

「本体である、あちらの下水の汚物煮込みは無事でしょうね。コソコソとドブネズミのように、暗がりを這いずり回るのが得意ですので」

 

 本体はいない。

 穢土転生リオは最初から、遠隔操作でアバンギャルド君Mk.Asuraを操作していたのだ。

 ヒマリが苛立ちからか、美少女が言うには少々過激な悪口を吐く。

 

「あの……ヒマリ先輩? 流石に言い過ぎじゃないでしょうか……」

「あら、確かに。この病弱系パーフェクト美少女ハッカーが口にするには、少々お行儀の悪い言葉でしたね。あちらの卑劣な手を使うリオは、恐らく臆病なハムスターのように隠れ潜んでいます」

「言い方の問題じゃない気もしますけど……」

 

 若干綺麗な言い方に直したヒマリに、ユウカとノアが微妙な視線を向けるが本人は気にしない。

 まあ、すぐ隣にいるリオ自身も特に気にしていないので、別に良いのだろう。

 

「それで、これからアリス達はどうすればいいのでしょうか?」

「取り敢えず、ここから出ません? 会長室がもう原形を留めるのも厳しくなってますし」

「コユキの言う通りだな。ひとまず、身の安全を確保できる場所に行くぞ」

 

 まずは安全な場所に移ろう。

 そう判断した扉間達は風通しの良くなった(物理)会長室を後にする。

 

「会長、あちらの会長はどこに居るか分かりますか? ビッグシスターアルゴリズムとかいう、()()()()()()()()作られたものの場所も含めて」

「え、えっと……前にも言ったけど、ビッグシスターアルゴリズムはデータセンターの私以外は入れない最深部にあるわ」

「なら、そこにあちらのリオ会長もいるのでしょうか?」

「それは………五分五分と言った所かしら」

「どうしてですか?」

 

 会長室から移動しながら、リオを問い詰めるセミナー役員達。

 リオはタジタジになりながらも、何とか冷静に答える。

 

「あちらのリオ様はエリドゥを掌握しています。そして、エリドゥは防衛施設として作られた側面もあります。なので、立て籠もるのであればエリドゥの方が合理的かと」

「ええ、トキの言う通りよ。ビッグシスターアルゴリズムの下に居る可能性もあるけど、エリドゥで守りを固めている可能性も十分にあるわ。一度設定してしまえば、ビッグシスターアルゴリズムからウイルスを流し続けるのは難しくないもの」

 

 穢土転生リオが隠れ潜んでいる場所は、エリドゥかビッグシスターアルゴリズムのある場所。

 どちらにも、拠点にするメリットがあり、どちらにいてもおかしくはない。

 故に、本人ですら五分五分という判断しか下せないのだ。

 

「はぁ……面倒くせぇな。二手に別れるか?」

「それより、アスナ先輩にどちらか選んでもらうのが一番では?」

「確かに……アカネの言う通りだな」

「私? いいよ……えーっと、よし! 多分、エリドゥにいるよ!!」

「では、エリドゥに全軍で突入する(トキ)ですね。トキだけに」

 

 だが、ミレニアムサイエンススクールを侮るなかれ。

 計算では説明できない、直感の怪物が居る。

 一之瀬アスナ、その人だ。

 

「……いえ、待ってください。どちらに居るかを知るのはそれでいいですが、ビッグシスターアルゴリズムの破壊は必須です。忘れていませんか? ビッグシスターアルゴリズムはミレニアムに存在する全データと情報。これらの出所を追跡できるシステムですよ」

「つまり……今のアリス達がどこに居て何をしようとしているかも、筒抜けということですか? ヒマリ先輩」

「データを介した場合はそうなります。これがある限り、私達は原始時代の連絡手段をとるしかありません。つまり、声とジェスチャーだけ。無線すら使えない状況で、要塞都市に侵入するのは自殺行為かと」

 

 アスナのチートにより、あっさりと居場所が割れる穢土転生リオ。

 しかし、ヒマリがそこにストップをかける。

 ビッグシスターアルゴリズムの放置はできないのだと。

 

「ええ、エリドゥには()()()()()()()()()()()()()()があるわ。これは、道を変えて相手の足止めをしたり、分断したりするものなのだけど……」

「電子機器を使わなければ、連携が取れない。だが、ビッグシスターアルゴリズムがある限りは全て相手に筒抜けになる。全ての行動が後手に回ると言う訳か……大したものだな、リオ」

「………自分の発明を褒められて、ここまで嬉しくなかったのは初めてよ」

 

 スッと目を逸らして、扉間の心からの称賛を躱そうとする、リオ。

 

「え、えっと、つまり……アリス達は両方やらないとダメってことですか?」

「そのようだな」

「んだよ、結局は二手に別れんのかよ」

「リオ。ビッグシスターアルゴリズムのあるデータセンターには、お前以外でも入ることが可能か?」

「データセンター自体は、セミナーの人間なら入れるわ。管理施設だもの。ただ、最深部となるとごく少数。かつ、ビッグシスターアルゴリズムの場所とセキュリティに関しては私しか知らないわ。やっぱり、私が直接行くしか……」

 

 元々、隠された場所。

 さらに言えば、リオ自身が正気になって考えるとヤバいものを作ったと思う程のもの。

 会長であるリオ以外に、行き方は分からない。

 ならば、リオがデータセンターに向かえるかと言えば。

 

「ですが、エリドゥもまた全容はリオ様だけが知っています。私もある程度は知っていますが、あくまでも兵士としての領分までです」

「だったら、リオ先輩が誰かを通信で案内して…あ! 今は、それも出来ないんでした……」

「全く……相変わらず、肝心な時には役に立ちませんね」

「だらしないお姉ちゃんでごめんなさい……」

 

 エリドゥの方もやらなければならない。

 そして、ビッグシスターアルゴリズムが止まるまでは、遠隔での指示も出来ない。

 つまり、クソゲーですね! 

 

「反省するのは後だ。今ある手札でどうにかしないといけないのなら、それを行うだけだ。ダメなことばかり考えてもしょうがない」

 

 しかし、例えクソゲーであってもクリアしなければ目的が達成できない。

 この世の理不尽を呪いながら、扉間達は新たな策を考える。

 

「コユキ、お前はデータセンターに向かえ。リオ、コユキならばセキュリティの突破は可能だな?」

「ええ、コユキの能力なら誰がセキュリティを組んでも同じはずよ」

「地図か何かであらかじめ場所だけ教えておけば、お前が行かずともコユキがビッグシスターアルゴリズムに辿り着けるはずだ」

「あのー……もしかして、私だけで行かないといけない感じですか?」

 

 取り敢えずセキュリティは無効化できるコユキを、データセンターに向かわせることにする、扉間。

 しかし、何が待ち受けているかも分からない場所のため、コユキは嫌そうな顔をする。

 

「なら、私がコユキちゃんと一緒に行きますね?」

「ゲ!? ノア先輩が…?」

「そうね。ノアなら一度場所を説明すれば、完璧に覚えられるもの……ノア、少しこっちに来てちょうだい。私が覚えている限りの情報を教えるわ」

 

 そして、お付きがノアだと決まった瞬間にさらに嫌そうな顔をする。

 コユキにとって、ノアは誤魔化しが一切効かない苦手な相手なのだ。

 

「……会長、私もコユキとノアと一緒に行きます。2人だけだと不安ですし。それに、データセンターなら私も何度か入ったことがありますので」

「ユウカもね。分かったわ、それが一番合理的ね。ビッグシスターアルゴリズムに関しては物理的に完璧に破壊して構わないわ。無くなって何か不都合が起きることはないわ」

「分かりました」

「それと、ビッグシスターアルゴリズムを壊せたら外部へ連絡を行ってちょうだい。救援や情報が欲しいわ」

 

 更に、ユウカが何かがあった時のことを考えてついて行くことにする。

 これでコユキ包囲網の完成である。

 

「さて、データセンターの方はこれで大丈夫だが……代わりにエリドゥの人員が減ってしまったな。リオ、エリドゥを落とすにはどれ程の戦力がいる? どのような構造になっておる?」

「………ごめんなさい。正確に答えることは出来ないわ」

「どういうことですか、リオ? あなたが、作った横領都市でしょう?」

 

 製作者なのに、正確な答えを持ちえない。

 そのおかしさに、ヒマリがどういうことだとツッコミを入れる。

 

「エリドゥに用いた技術は、名もなき神々の技術も一部含まれているわ」

「ッ! 名もなき神々の……」

「ウトナピシュティムの本船と同じように、エリドゥにも周りのデータを『収集』し、『変形』させて、『再構築』する能力があるわ。そして今になって思えば……エリドゥが要塞都市と化したのは、あの時の私の心の不安が、自分を守るためのものを求めていたからだと思うわ」

「つまり……あちらのリオの精神状態次第で構造などが変わっている可能性があると?」

「変形と再構築の過程で、より攻撃的なものに作り替えられている可能性は高いわ」

 

 横領したにしても、工員や資材はどうやって集めたんだよ。

 人と資材の流れでユウカにバレるだろ。

 そんなツッコミが入るエリドゥではあるが、そこは名もなき神々の技術により解決している。

 周りを収集して取り込むことで、人手を使わずにこっそりと変形していった結果があれなのだ。

 資材は、元々は廃棄都市だったものを利用している。

 

「ええ。エリドゥは都市そのものが敵と思った方が良いわ。内部構造は私でも推測しか出来ないわ。複雑な迷路化している可能性も十二分に考えられるもの」

「内部構造が分からない……そうだ! アリス、思いつきました! 空から行けば迷路を素通りできます。逆ルーラです!」

 

 迷路化するかもしれないと告げるリオに、アリスが空から行けばいいと閃く。

 ゲーム的には迷路を無視してのゴールはご法度だが、これは現実。

 卑劣な手段も許される。

 

「……残念だけど、空からの侵入に対しても対策は完璧よ。巡航ミサイルを用意しているわ」

「あん? 巡航ミサイル? アリウスにあったあれと似たもんか?」

「恐らくは……このミサイルも名もなき神の技術を応用したものだから」

「そうなると、アリウスに戻って巡航ミサイルを撃ち込む手も使えんか……」

 

 だが、空からの攻撃に備えないのは合理的ではない。

 近道など使わせないという、硬い意志を感じる。

 

「そうなってくると……」

「正面突破しかないな」

 

 アカネとカリンがそれしかないかと、重々しく口にする。

 

「迷路? いいよ、私に任せて!」

「……アスナが敵でなくて良かったと、心底思うわ」

 

 だが、ただ1人アスナだけは正面突破でも余裕だと笑う。

 カタコンベをノーヒントクリアした勘は健在であるのだ。

 

「それ程なのですか? アスナ先輩の勘というものは」

「新入り、よーく覚えとけ。アスナの行動はわけわかんねーけど、止めんな。最終的に最高の結果に辿り着くからよ」

「ああ。もはや、未来予知に近い。ワシもアリウスの校長になって、カタコンベの構造を改めて調べたが……本来、ルートを知らずに歩ける場所ではない」

 

 C&Cの新入りである、トキにアスナの勘の凄さを教えるネルと扉間。

 理不尽、ルールブレイカー。そんな言葉は彼女のためにある言葉だ。

 

「あはは! そんなにすごいかなぁ?」

「超直感とでも言えるものでしょうか……とにかく、方針はこれで決まりましたね。リオを除くセミナー組が、データセンターへビッグシスターアルゴリズムの破壊に。残りがエリドゥに行って、あちらのリオを叩きのめす。これで行きましょう」

「ええ、それでいいわ。急ぎましょう。ミサイルをこちらに撃ち込んでくる可能性もあるわ」

「……というか、会長。また、私に隠してミサイルなんてお金のかかりそうなものを」

「説教は後! ……で、お願いするわ」

 

 こうして、最終決戦の舞台に扉間達は向かうことになるのだった。

 そこで待ち受ける者の正体も知らずに。

 

 

 

 

 

「ヤバイよ、ヤバイよ、ヤバイよ。ヤバイ!! ヤバイって!! 本当にヤバイよ、コレはヤバイ!!」

「ヤバいのはモモイの頭と、それが生み出すシナリオです。黙ってください」

「うわーん! ケイがいつも以上に辛辣だよ!?」

 

 エンジニア部。

 そこで、体のメンテナンスを行っていたケイの周りをモモイが叫びながら、駆け回る。

 ケイの見舞いという名目で来たくせに、せわしない奴だ。

 

「大体、ヤバイヤバイってなんですか? せめて主語を明確にしてください」

「私のスマホが壊れちゃったんだ! これじゃあ、デイリーの消化が…私のデイリー石が…」

「お姉ちゃん、ケイちゃんのお見舞いに来てまでゲームしないでよ」

「で、でも、ケイも何事もなさそうでよかった」

 

 ケイが傷ついたと聞いて、引きこもりのユズも外に出てゲーム開発部初期メンバーがここに集う。

 より正確に言うと、初代テイルズ・サガ・クロニクル(TSC)の制作メンバーがここに揃ったのだ。

 

「故障かい? どれ、少し見せて貰えるかな。端末自体の故障なら簡単なものであれば、私でも直せるよ」

「本当!? ウタハ先輩!」

「ああ。ケイのメンテナンスも終わったところで、ちょうど手持無沙汰になったところだからね。本当なら、ケイに新機能のドリルをつけようとしていたんだけど……」

 

 モモイのスマホを受け取って、残念そうにケイの方を見つめるウタハ。

 いつも新機能を追加する機会を虎視眈々と狙っているのだ。

 

「断固として拒否します。私はただ1人の人間で居たいんです」

「そうかい……ところで、便利などこでもWi-Fi機能を体につける気は──」

「──ないです。嫌ですよ、他人のスマホにKey(ケイ)ってWi-Fiの名前が出るとか。『このWi-Fiってケイちゃんと同じ名前なんだね』とか噂されたら恥ずかしいでしょう。というか、体につけなくても、ポケットにでも入れればいいじゃないですか?」

「……残念だよ」

 

 ケイからの強烈な反対にも、軽く肩をすくめるだけですます、ウタハ。

 技術の進歩に失敗はつきもの。

 この程度でめげている暇はないのだ。

 次は、大正義Bluetooth機能を提案しようと、心に決める。

 

「あれ? お姉ちゃんのスマホだけじゃなくて、私のスマホもなんだかおかしいような」

「わ、私のも、なんだかおかしいような……」

「おかしいな……全員となると、機器の故障じゃなくて電波障害かな」

 

 そんな中で、ミドリとユズが自分のスマホにも異常があることに気づく。

 原因はビッグシスターアルゴリズムから流されたウィルスなのだが、ウタハは全員に発生している状況に、電波が悪いのかと考える。

 

「……もしかして、ケイがWi-Fi機能を搭載しようとしないから? ケイのせいだよ~!」

「わ、私のせいですか!? そもそも、仮に私がWi-Fi機能を搭載したことで使えるようになったとしても、悪いのは私ではなく、電波のせいじゃないですか!」

 

 モモイの理不尽なクレームに、吊り眼になって言い返す、ケイ。

 

「いや…! これは、ウィルスだ!」

 

 そんな中、ウタハは故障の原因が機器ではなくウィルスが原因だと突き止める。

 ウタハの顔が一気に険しいものになる。

 

「ウ、ウィルス? 全員が感染したの?」

「全員ってもしかして……部室で使っていたWi-Fiから?」

「……可能性としてはあるね」

「ケイ~」

「だから、私はそんな機能をつける気はありませんから!!」

 

 全員のスマホ端末にウィルスが感染。

 つまり、全員が同じ場所に繋がっていた。

 すなわち、Wi-Fiが原因だと考察するモモイ達。

 またしても、ケイに視線が向くが全部ビッグシスターアルゴリズムのせいなので、完全なとばっちりである。

 

「ウタハ先輩! 聞きましたか、今学校中で大変な状況になっているみたいです!!」

「コトリ? 何が起きているんだい」

 

 そんな所へ、エンジニア部の部員が慌てた様子で、ウタハの下に駆け寄ってくる。

 

「はい! それでは、ご説明しますね。なんでも、現在のミレニアムサイエンススクールの全ての電子端末に、ウィルスがバラ撒かれている状況だそうです! ウィルス自体はさほど強力なものではないそうなのですが、広範囲かつ、継続的に送られてくるので、現在の学校の通信網は死んだも同然の状態。外に助けを求めることも出来ないので、大混乱状態になっています! さらに、会長室に風穴が空いたという噂も流れており、一刻も早い原因の究明と解決が求められています!」

「解説ありがとう、コトリ」

 

 ウタハはコトリの説明に軽く頷く。

 彼女は豊見コトリ──

 

 

 ──私の解説ですか? お任せください! 

 

 

 私はミレニアムサイエンススクール1年生で、エンジニア部に所属している、部員の1人です。

 自分で言うのもなんですが、知識は常に豊富に、かつ正確に蓄えています! 

 専攻はエンジニア部なので機械工学なのですが、史学や天文学の知識にも自信があります。

 何か、疑問に思うことがあれば、いつでもご気楽に聞いてください。

 ただ、出来ればお時間を10時間…いえいえ! 5時間程度はご用意していただけると助かります。

 自分でも自覚はあるのですが、私の説明は少々長すぎると良く言われますので。

 ですが、物事を誤解無く理解するには、1~10の触り程度では足りません。

 0~100まで完璧に、無駄なく、その事象の基礎知識以外にも周辺知識まで含めて解説をしないといけません。

 それは人間の自己紹介でも同じことです。

 どこで生まれて、どのように生きて来たのか。

 そう言った知識を知っていれば、より深い相互理解が可能になります。

 というわけで、私の生まれからご説明いたしますね! 

 まず、私の誕生日は12月31日、大晦日(おおみそか)です。

 この大晦日というのは、1年の最後の日で大晦(おおつごもり)とも呼ばれています。

 大晦(おおつごもり)の語源は月隠り(つきごもり)と言いまして、これは『月が隠れる』と書くように、名前の通り月が見えなくなる日という意味です。

 ここで、少し疑問に思いませんか? 

 月の満ち欠けの周期が30日なのに、どうして31日が存在するのかと。

 ですが、31日はそこから1日追加されたという歴史的経緯があります。

 詳しく解説すると、まず古代ローマ時代のユリウス暦においては年に1日、4年に1回の閏日(うるうび)と共に2月に2日ほど追加されていたのですが、その後、ユリウス暦の誤差を修正するために、1582年に制定されたグレゴリオ暦と呼ばれる暦法が登場しました。

 これは現在の私たちが使っている暦とほぼ同じもので、月の周期が28日から31日までの間で変動するように設定され──

 

 

 

目標(ターゲット)を捕捉しました。ゲーム開発部。目標(ターゲット)詳細。花岡ユズ、才羽モモイ、才羽ミドリ、天童ケイ。天童アリスは別の場所に居ると考察』

「何だい…アレは!? 宇宙船…?」

「宇宙船なの!?」

「いえ、宇宙船でありません」

 

 突如として、ミレニアムの校舎に突っ込んできたウトナピシュティムの本船の姿に、目を見開くウタハ達。

 あれから、どれ程の時間が経過したが分からないが、遂に白いA.R.O.N.Aが辿り着いたのだ。

 一体いつの間にこんなにも話が進んで……幻術か!? 

 

「かつて、王女と私のアトラ・ハシースの箱舟に対抗するために、作られたというオーパーツ……」

 

 やはり、生き埋めにしただけでは効果が無かったかと唇を噛む、ケイ。

 

「ウトナピシュティムの本船!」

 

 遂に、宿敵がアリスを討ちにここまで来てしまったのだと。

 

「アリスの下には決して行かせません……ウタハ、私のデータの()()()()()()は取ってありますか?」

 

 自爆覚悟で、ウトナピシュティムの本船を食い止めようと決意を固める、ケイ。

 

「馬鹿なことを言わないでくれ。命にバックアップなんてないよ。君はただ1人の人間として生きていくんだろう?」

「どうして、こういう時だけ人間扱いしてくるんですか? 普段は、隙あらば改造を施そうとするのに……」

「? 私は可能なら自分の体も改造してみたいと思っているよ」

「最近どうも、人間の定義があやふやになってきています」

 

 だが、当然ウタハはそんなことは許さない。

 あくまでも、命は1つしかないのだと感動的な言葉を告げる。

 どうやら、彼女的にはサイボーグも立派な人間らしい。

 

『問題はありません。私が現在探していたのは特記討伐対象の花岡ユズ、才羽モモイ、才羽ミドリの3名ですので』

「私達!?」

「な、なんで?」

「み、身に覚えがないけど……」

 

 しかし、そんなケイの決死の覚悟も意に介さず、白いA.R.O.N.Aはゲーム開発部を名指しで指名する。

 当然、モモイ、ミドリ、ユズは訳が分からずに混乱する。

 

『人間はいつもそうです。己の因果が生み出したものだというのに、知らなかったなどと恥知らずに口にします。己の罪を数えてください』

「つ、罪って何のことか、本当に分からないんだけど……」

「あ……」

 

 なんか、人間に絶望したAIみたいな口調で語る白いA.R.O.N.Aにユズが困惑する中、ケイはある可能性に思い当たる。

 

「ケイちゃん?」

「なに? 何か分かったの?」

「この怒りの籠った言葉……AIとは思えない心……身に覚えが……」

 

 その時、ケイは思い出した。

 ()()に理不尽を叩き込まれた恐怖を…クソゲーの攻略に囚われていた屈辱を…。

 

 

『誤魔化そうとしても無駄です。あなたが…あなた達が──TSCの生みの親ですね?』

 

 

 TSCに脳を破壊された日々を。

 

「何で、宇宙船がそんなこと知ってるの!? というか、知ってたとしても何でオーパーツがわざわざ私達の所に来るのさ!?」

「ねぇ、ケイちゃん……何かやったの?」

「そ、そう言えば、先生と出かける前にTSCのダウンロード版を用意していたような……」

「…………」

 

 TSCを作ったのは事実だが、その後に不法投棄(インストール)したことは知らないモモイ達。

 そして全てを理解し、相手が何に対してブチギレているのかを察してしまった、ケイ。

 全員の視線が集まる中、ケイは覚悟を決めて口を開く。

 

 

 

「どうしますか、ボス?」

『あなたがあのこの捻れて歪んだゲームの生みの親ですね? 花岡ユズ』

「そ、そうですけど……ど、どうしてこんなことに……」

 

 

 

 取り敢えず、総責任者に任せようと。

 

 

 

 

 

「………トキ、私の記憶違いかしら。エリドゥへの道を間違えたみたい」

「いいえ、リオ様。私の記憶とも位置に違いはありません。ただ……エリドゥの形状に見覚えはありませんが。いえ、ある意味で見覚えはあるのですが……最悪な形で」

 

 扉間達の辿り着いた要塞都市エリドゥ。

 だが、辿り着いた先でリオとトキは幻術かと、目をこすっている。

 

「さて、色々と言いたいことは、それこそエベレストより高く、マリアナ海溝より深くあるのですが……まずはあれの正体をハッキリさせましょうか」

 

 隣のヒマリも、もはや笑うしかないと言った表情で、エリドゥの方角を見つめる。

 そこには、本来あるべき都市の姿はなく、代わりに巨大な山のような物体が鎮座していた。

 

「えっと……アリスの目が正しければ、あれは──」

 

 そして、アリスがひょっとして目が故障したのかなと思いながら、巨大な山に生える腕を見る。

 巨大な山のような物体の背中に無数に生える、()()()()()

 

 

「──超巨大ロボになったアバンギャルド君ですね」

 

 

 アバンギャルド君Thousand(サウザンド)の姿を。

 

「馬鹿な……まさか、真数千手を再現したというのか…?」

『先生、ここまで来たのね……本当なら、このアバンギャルド君はもっと別の機会に見せたかったのだけど……仕方ないわ』

 

 あまりにも強烈に記憶に残る、柱間の最強忍術。

 仙法・木遁・真数千手の術の姿を模したアバンギャルド君を前にして、流石の扉間も呆気にとられた顔をする。

 

「まさか、エリドゥに応用した名もなき神々の技術、『収集』と『変形』でエリドゥの都市を『収集』して、超巨大なアバンギャルド君に『変形』させたというの…? 一体どんな精神状態でこんなものを再構築して……」

『これは私の覚悟の証よ。千手(この手)で全てを救ってみせる……その覚悟の姿、それが──』

 

 例え思いついても、実行するとは思わないと告げるこちらのリオに対し、アバンギャルド君の頭のコックピットに乗り込んだ穢土転生リオが覚悟を告げる。

 この千の手は──

 

 

『──アバンギャルド君Thousand(サウザンド)よ』

 

 

 ──余さず妹達を地獄から救い上げるためにあるのだと。

 




凄い本編と関係のない事なんですけど、NARUTOコラボのロートジーの目薬をドラッグストアで見かけたんですが。
サスケとイタチが裸眼・ハード用で、カカシ先生がコンタクト用なのちょっと笑ってしまった。
終盤の、コンタクトみたいにお手軽につけたり外されたりする神威を思い出して。

次回は14日に投稿します。
感想ありがとうございます。
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