千手扉間のブルーアーカイブ   作:トマトルテ

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97話:Unwelcome School

 

 全盛期の陸八魔アル伝説。

 NEW!・連邦生徒会の本拠地であり、キヴォトスの象徴であるサンクトゥムタワーの占拠を行う。

 

「ねえねえ、アルちゃん。ここの爆薬ってどれぐらい設置すればいいんだっけ?」

「せっかくの大仕事なんだから、()()()行きましょう、ムツキ」

「流石、アルちゃん! 何かミスしてたら、先生にはアルちゃんの指示って言うね? 社員のミスは社長の責任って言うしね」

「ちょっ! ムツキ!? 確かにそうだけど、そうじゃないと言うか…!」

 

 占拠したサンクトゥムタワーの中に爆薬を仕掛けていきながら、会話するムツキとアル。

 久しぶりの娑婆のためか、いつもよりテンションが高めだ。

 

「社長。そっちは終わった? 私とハルカの方は終わったよ」

「カヨコ! ええ、こっちも今終わったところよ」

 

 そんないつもの漫才を行うアルとムツキの後ろから、他の場所に爆薬を仕掛けて来たカヨコとハルカが合流する。

 

「久しぶりの娑婆で少し勘が鈍ってるけど、無事に完了できたみたいだね」

「す、すみません。あの時、私が一番最初に捕まったばっかりに皆さんを巻き込んでしまって……」

 

 他の3人が久しぶりの娑婆の空気を堪能している中、ハルカは仲間に対して謝り通してばかりいる。

 自分が一番最初に捕まったことに、責任を感じているのだ。

 

「それは、ハルカちゃんが『囮役はもちろん、私が行きます』なんて言ったからじゃん」

「そうよ。あなたは私達を守ろうとしたんだから、もっと胸を張りなさい」

「で、でも、結局全員で捕まってしまいましたし……私が囮役すら満足にこなせない無能だから……ごめんなさい」

 

 物資は枯渇。

 シャーレの自爆で、なんだかんだ体中は傷だらけ。

 不良達の期待の眼差しに負けて、泥臭い戦い方も出来ず。

 その上、アルは爆破でアフロヘアーに。

 とてもではないが、カンナ率いる公安局に真正面で勝てる状態ではなかったのだ。

 

 故に、ハルカが『囮役はもちろん、私が行きます』を実行して、一番に捕まってしまったのだ。

 

「はぁ……謝らないで。最初から便利屋は一蓮托生だよ。全員で逃げるか、全員で捕まるかの二択しかないから」

「良いこと言うわね、カヨコ! ハルカ、それが私達便利屋のポリシーよ。仲間を切り捨てた先に、私の理想は無いわ。アウトローは決して身内を見捨てないものよ」

「そうそう。それにハルカちゃんだって、私達が囮役になったら逃げずに助けようとするでしょ?」

「も、もちろんです! 皆さんを置いて自分1人だけ逃げるなんて……死にたくなります、いえ! 死にます!!」

 

 だが、便利屋に仲間を切り捨てるという選択は存在しない。

 カヨコの言うように、ALL ALIVE(全員生存) or ALL DEAD(全滅)しか存在しないのだ。

 

「いや、死んだらダメよ! 今はせっかく、サンクトゥムタワーの占拠なんて最高にアウトローなことが出来てるのに、死んだらもったいないわ!」

「しかも、矯正局から司法取引で仮釈放だからね。マフィアの大物みたいだよね? よ! キヴォトス1のアウトロー!」

「キヴォトスの他の人には悪いけど……今回の騒動でちょっと助かった」

 

 根っこは善人の便利屋の面々ではあるが、普通に悪事も働いている。

 公文書の偽造(欠席届の偽造)などという、どこかの政治家のような卒業証書の偽装に近い行為も行っている悪党だ。

 なので、あのままでは、罪を償うまで矯正局から出てこられなかっただろう。

 

「そうね。これで晴れて自由の身になれば、また事業を再開できるわ!」

「先生には感謝しないといけませんね。アル様を釈放してくれたので」

「体のいい、駒として利用されてるような気もするけど……」

「まあ、脱獄するよりかは楽に出られたからいいじゃん」

 

 真面目に刑務作業に取り組んでいたアルとハルカとは違い、カヨコとムツキは脱獄の機会を密かに窺っていた。

 カヤちゃん危機一髪である。

 

「でも、矯正局では毎日3食出てたし……ちゃんと屋根のある場所で寝られたから、素寒貧の時よりは、よっぽどマシな生活を送れたわよね」

「そう言えば……矯正局から出たら私達は帰るところがないような」

「また野宿だね。取り敢えず、軍資金をどうにかして稼がないと」

 

 基本的な人権が保障され、健康的生活を送れるステキ空間。

 それが、矯正局である。

 便利屋以外にも、ベアトリーチェ時代のヒヨリなら『幸せを味わわせてから、突き落とすんですね…?』と刑務所ライフを満喫していたことだろう。

 

「もしかして……私達は牢屋の中の方が、良い生活を送れていたんでしょうか…?」

「…………」

「…………」

「…………」

「ご、ごめんなさい!」

 

 気がついたか……。

 ハルカのふとした呟きに、他の3人は目を逸らす。

 真実の言葉とは時に、鋭利なナイフよりもなお鋭く人の胸を抉る。

 

「やめよう……ちょっと悲しくなってきた」

「それに不自由なく暮らすことが目的なら、学校に帰ればいいだけだし」

「やりたいことをやるために、飛び出して来たんだから……それを曲げるのも…ね?」

 

 自由のために不自由な生活を選んだのだ。

 ならば、それで被るデメリットもまた楽しんで乗り越えるしかない。

 それもまた、アウトローな生き方と言えるだろう。

 

「ワシとしては、さっさと悪事から足を洗って、真っ当な企業になって欲しいのだがな」

「先生! それは言わない約束でしょ!」

「恩には恩を。仇には仇を。それが便利屋68の流儀だと聞いたが? 社会に仇を為せば、仇を受ける。お前の言っていた通りにな」

 

 ()()()()()()()()部屋に戻って来た分身の扉間が、呆れた表情で便利屋を見る。

 真っ当に社会復帰を目指すのなら、喜んで力を貸すのだが。

 

「そ、そんなこと言ったかしら?」

「はい! 私達が捕まった際の戦いの前に言っていました! メモも録ってあります!」

「アルちゃんって、その時のテンションで、よくとんでもないこと言うよね~」

「吐いた唾は吞みこめない……」

 

 ハルカのメモによると、この発言は57話:フェイクニュースでの出来事。

 カンナに『覚えておきなさい。恩には恩を。仇には仇を。それが便利屋68の流儀よ』と見得を切ったときである。

 

「矯正局で出る飯もタダではない。これらは、お前達の更生を祈って税金から出されたものだ。これも恩を受けたと捉えることは出来んか? お前は自分の受けた恩を返すことも出来んのか、アル?」

 

 社会に仇を為したのだから、自分達への仇も受け入れろ。

 矯正局から恩を受けたのだから、矯正局へと恩を返せ。

 

 それがお前達の信条だろう? 

 扉間にそう言われて、アルは返す言葉を失う。

 過去とは、忘れた頃に襲ってくるものなのだ。

 

「お、恩は返すわよ!! 矯正局って連邦生徒会でしょ? 私達が連邦生徒会のピンチを救ってあげるわ!! 具体的には、この事件を解決して!!」

「あはは! そうやって、無意識に自分を極限まで追い込むところ、好きだよ!」

「流石はアル様です! 私も微力を尽くして、文字通り粉骨砕身で働きます!!」

「口は災いの元……」

 

 こうして、全盛期陸八魔アル伝説は積みあがっていくのだ。

 便利屋の平穏な生活を犠牲にしてな。

 

「それで先生。ウトナピシュティムっていうのは、操作出来たの?」

「ああ。カイザープレジデントより聞き出した情報の通りだった。これで、少しは時間が稼げるだろう」

 

 本体と連邦生徒会長の戦いのフォローを行ったと、カヨコの問いに答える扉間。

 実はこの操作は、特定の者にしか使えない仕様なのだが、そこは扉間。

 この世界の連邦生徒会長こと、アロナちゃんに『全部あげます』されているので、問題なく使えたのだ。

 

「このまま、ここに残って時間稼ぎでもするの?」

「いや、相手も馬鹿ではない。すぐに、通信を切り離してこちらの干渉から逃れるだろう」

「じゃ、じゃあ、私達はこれから何をすればいいんでしょうか?」

 

 相手もA.R.O.N.Aを名乗る者。

 サンクトゥムタワーを上回る力を持つ可能性が高い。

 そう判断した扉間は嫌がらせを終わらせて、次の行動に動く。

 

「ここから離れて、虚妄のサンクトゥムの方に行くぞ。恐らくはそこにも敵が居るはずだ。お前達の力が、必ず必要になるだろう」

「ああ。サンクトゥムタワーの()()()()()()、あの趣味の悪い赤色の塔のことね? 任せなさい。上品な赤色に塗り替えてあげるわ」

 

 サンクトゥムタワー。つまりは6本目の虚妄のサンクトゥムの場所である。

 シロコ*テラーの守る最後のサンクトゥムであり、こちらの扉間は知らないが他のサンクトゥムのバックアップ。

 ここを破壊しない限り、虚妄のサンクトゥムは何度でも復活するだろう。

 

「よし。ならば時間もない故、急いでここを出るぞ──」

 

 そして、もちろん連邦生徒会長への更なる嫌がらせも忘れない。

 要するに。

 

 

「──お前達に仕掛けて貰った爆薬の、時限タイマーを作動させるからな」

 

 

 サンクトゥムタワーを潰す。

 

「フフフ、サンクトゥムタワーの破壊……もう、これはキヴォトス史に残る犯罪ね!!」

「で、でも、本当にサンクトゥムタワーを爆破させていいんでしょうか…? すごく大切なものって、聞きましたけど……」

「構わん。現在のトップであるリンより、許可は得ている。ちゃんとビル解体の要領で爆破すれば、周辺被害も抑えられるはずだ。そして、わざわざ敵がここを占拠したということは、占拠するメリットがあるということ。相手のメリットを消すには、やはり自爆しかあるまい」

「まあ……私が捕まった時も先生はシャーレを爆破してたよね……呆れるけど」

 

 一度の自爆でダメだったらなんだ! 

 こっちは、諦めないド根性で何度でも自爆してやる! 

 そんなリンちゃんの覚悟が伝わってくる作戦である。

 

「アハハハ! 行政官ってお堅いイメージがあったけど、面白いじゃん!」

「もしかして、連邦生徒会って結構ヤバイ人間の集まり…?」

 

 ニトログリセ()()。白()()弾。

 リンという名は、ひょっとすると爆発にとても縁のある名前なのかもしれない。

 のはらリンも尾獣爆弾になったしな! 

 

「では、ワシらはこのまま、最後のサンクトゥムに乗り込むぞ!」

 

 こうして、サンクトゥムタワーの時限爆弾のタイマーが作動するのだった。

 

 

 

 

 

「ん、来たね、先生。それに……便利屋」

「え、あなたもしかしてシロコなの!? 私達が矯正局に入ってる間に、成長しすぎじゃない!?」

「いや、並行世界のシロコだから……こっちのシロコは、チビシロコのまま」

 

 そして、最後のサンクトゥムで待ち受けていた、シロコ*テラーの前に辿り着く扉間達。

 便利屋達は矯正局に入っていた期間は、浦島太郎状態だったので、純粋にシロコが成長したと思って驚いている。

 

「別世界のシロコ……」

「懐かしい顔ぶれだね……」

 

 カヨコが少し複雑そうな顔で、シロコの方を見つめる。

 同じ釜の飯ならぬ、焼き肉を食べた仲。

 シロコ*テラーの方も、何か思うような表情を見せる。

 

「えーと……とにかく、シロコ。あなたに恨みは無いわ。でも、これが仕事だから……倒させてもらうわ」

「私も恨みはないけど……銀行強盗の罪を押し付けた時が懐かしいね」

「さっきの言葉は訂正するわ。銀行強盗の冤罪の件はまだ恨んでるから! こっちの世界のシロコの代わりに、恨みを晴らさせてもらうわ!」

「ん、過去のことをいつまでも、ねちねちと……これだから敗北者は」

 

 売り言葉に買い言葉。

 まあ、アビドスにも便利屋にも、何かを買うような金はないのだが。

 

「ハァ…ハァ…敗北者…? 今、アル様を侮辱しましたね…! 赦しません! 許せません!!」

「乗っちゃダメだよ! ハルカちゃん? ちょっとストップ。相手は変な奴みたいだから、ここは先生の指示に従おうよ」

 

 所詮、便利屋は矯正局にぶち込まれた敗北者じゃけぇ。

 刑務所の中で悠々自適に過ごす、表の権力者も頼りにする裏社会のフィクサー? 

 敗北者と書くだけで、この文字数? 

 

「ムツキの言う通りだ。落ち着け、ハルカ」

「す、すみません……」

「シロコ、お前もだ。過去に執着しておるのはお前もではないか?」

「………そもそも、便利屋に押し付けようって言ったのは先生」

「便利屋がアビドスに襲って来なければ、何もせんかったわ」

 

 これが復讐の連鎖の醜さだ。

 お前達が先にやったから、こっちもやり返していい。

 そんな負の連鎖を断ち切るために、耐え忍ばねばならないのだ。

 え? 扉間が責任の所在をうやむやにしようとしている? ……どう見えるかだ。

 

「と、とにかく、あなたはここで倒させてもらうわ、シロコ。いずれ私が支配する予定のキヴォトスに、勝手に手を出すことは許さないわ」

「社長……また、よく考えてもないことを」

 

 お前を倒すのは俺の役目だ。別の奴に勝手にやられるのは気にくわん。

 そんな、ライバルキャラ的なセリフを言い放つ、アルにカヨコは溜息を吐く。

 こうやって大見得を切る度、面倒な事態が降りかかってくると何故学習しないのだろうか? 

 

「そう……無駄だと思うけど」

 

 そう言いながら、シロコ*テラーは大人のカードを取りだす。

 

「ん、口寄せ──」

「手筈通り、あのカードを撃て!!」

 

 だが、その瞬間。

 扉間達は待っていましたとばかりに、大人のカードに向けて銃弾を放つ。

 大人のカードが壊れることは、皮肉にも他ならぬシロコ*テラーが穢土転生のミチルを爆破したことで証明されている。

 

(次は誰を呼ぶ気かは知らんが、カードさえ破壊してしまえば、もう使えんはずだ…!)

 

 故に、先手を打って破壊する作戦をとったのだ。

 だが。

 

「甘いよ」

(チッ! ワープか!)

 

 シロコ*テラーとて、その程度の想定はしている。

 即座にワープで飛んで扉間達の後ろに回り込むことで、安全と時間を確保する。

 

「ムツキ!」

「本当に後ろに飛んできた! じゃあ、爆発!!」

 

 

 だが、後ろに回り込まれる可能性は扉間も想定していた。

 ムツキの爆弾を爆破させて、シロコ*テラーを仕留めにかかる。

 

「──穢土転生(えどてんせい)の術」

 

 だが、時を同じくして、シロコ*テラーの方も術の発動を完了させる。

 

 

「時間は十分にあった。何かを仕込んでいたのは先生だけじゃない」

「口寄せした棺桶で爆発を防いだか……」

 

 

 爆炎がゆっくりと晴れる中。

 シロコ*テラーを守るように、複数の棺桶が現れる。

 

「まさか……並行世界のアビドスの人間を口寄せするつもりか!?」

「……武器で口寄せできるなら、やってたかもね」

 

 無数の棺桶に囲まれながら、シロコ*テラーが否定する。

 彼女には死んでいったアビドスメンバーを口寄せする勇気がない。

 ただ、形見として持ち続けている、みんなの生徒証と武器で呼び出せないか、考えなかったわけでもない。

 

「穢土転生の術の本質は強い人を蘇らせることじゃない。情報を抜くこと。そして……」

 

 ゆっくりと、棺桶が開かれる。

 そこから出てきたのは──

 

「死なない盾を呼び出すこと」

 

 

 ──ハイレグにガスマスク姿のシスター達だった。

 

 

「え…? なにあれ……は、破廉恥よ!」

「あの格好……まさか」

 

 そんなとんでもない格好の穢土転生の登場に、アルは素っ頓狂な声を上げる。

 だが、その横では、情報通のカヨコが何かに気づいたように、目を細める。

 

「こやつらはシスターフッド……いや、その前身のユスティナ聖徒会か?」

「正解」

 

 ユスティナ聖徒会。

 シスターフッドの前身の組織であり、かつてアリウスを匿った組織である。

 同時に、マエストロとベアトリーチェがアツコを使うことで、複製(ミメシス)として蘇らせようとした兵器でもある。

 

「アビドスのお前が何故、ユスティナ聖徒会などを…?」

「……そっか。こっちの先生も、ゲマトリアの複製(ミメシス)を見たことがないんだ」

「またゲマトリアか…!」

「未完成だったものだけど、ゲマトリアを襲った時に()()()()()。生贄代わりに使わせてもらった」

 

 シロコ*テラーが告げる、ゲマトリア強襲の真実。

 大体の並行世界で、なんか便利そうなアイテムを持っている。

 しかも、殺しても胸が痛まない。

 そんな、便利枠がシロコ*テラーにとってのゲマトリアなのだ。

 

「穢土転生とは別物か? いや、だが確かにあの棺桶は……何より、生贄と言っている以上は、何者かの遺伝子情報を……」

 

 しかし、扉間の疑問はまだ晴れない。

 複製(ミメシス)が似たような力と用途を持つのなら、わざわざ穢土転生を使う必要がないのだから。

 

「口寄せ──」

 

 そんな扉間の疑問に答えるように、シロコ*テラーが更に穢土転生を呼び出す。

 

「なんか、私達の周りにまで棺桶が生えて来たんだけど!?」

「こ、殺しますか、先生?」

「穢土転生体は撃っても死なん。悪戯に弾薬を消費するな、ハルカ」

 

 最後のサンクトゥム。

 すなわち、いくらでも仕込みをする時間はあった。

 敵陣のど真ん中に取り残されたかのように、扉間達の周りを無数の棺桶が囲む。

 

「──穢土転生の術」

「また、ユスティナ聖徒会…いや、あの校章は──アリウス?」

 

 そして、棺桶から現れるユスティナ聖徒会と、()()()()()()()をつけた生徒達。

 

「混ざってたんだ……まあ、そうだよね」

(幸い、奴らの顔に見覚えはない、殺されたわけではないか。そうなると……ユスティナ聖徒会とアリウスの穢土転生……つまり、2つの死体を漁れる場所が必要なはず…そうか!)

 

 扉間は2つの死体が置いてあるであろう場所に気づく。

 そうだ。あそこであれば、砂狼シロコは知っている。

 何せ、3日間もの間、共にそこで過ごしたのだから。

 

「シロコ……お前──カタコンベの死体を使ったな?」

「正解。あそこがアリウスへの道だけじゃなくて、集合墓地なのはよく知ってるでしょ?」

 

 大量の死体をどこで確保したのか。

 その答えは、カタコンベで回収したからだ。

 

「しかし、カタコンベの入り口は連邦生徒会長が爆破したはず……いや、ワープが出来るお前ならば入り口が潰れても問題なく入れるか。そして、道に迷っても飛べばいい」

「うん。だから、あそこから大量の死体を拾わせてもらった。安心して、みんな最低限の行動しか出来ないから」

(つまり、解をすることも出来んと言う訳か……)

 

 穢土転生の特性を理解して、数で押しつぶしにかかるシロコ*テラー。

 実に(いや)らしい戦い方である。

 

「じゃあ、私は高みの見物をしてるから……頑張って」

「あ! ちょっと、待ちなさいよ!!」

「ワープであんなに遠くまで……持久戦でこっちを削るつもりだね」

 

 おまけに、穢土転生に任せて、自分は高みの見物を決め込むという徹底ぶり。

 伊達に、いくつもの世界を破壊してきてはいない。

 

「うわぁー、(いや)らしー」

「と、とにかく、襲ってくる敵から皆さんを守ればいいんですね…! 撃ちます!!」

「いや、待て!」

「ああ、それから……」

 

 声1つ発することなく、淡々と機械的に扉間達に襲い掛かってくるユスティナ聖徒会達と過去のアリウスの怨念達。

 そんな様子を、遠くから冷たく眺めながらシロコ*テラーはポツリと呟く。

 

「10人に1人の割合で──()()()()()()()()を中に仕込んでるから気を付けて」

「下がれ! ハルカッ!!」

 

 扉間の制止が間に合わずに、ハルカが穢土転生達にショットガンを放った瞬間。

 穢土転生の体は、内部に仕込まれた爆弾によって爆散するのだった。

 

「じ、自爆!? どうして、そんな悪いことをするのよ!?」

「ハルカ! 怪我はない…!?」

「は、はい……ただの爆発でした」

 

 ヘイロー破壊爆弾を仕込んでいる。

 シロコ*テラーがそう告げたが、結果はただの爆弾だった。

 

「ん、ハズレだったみたい」

「というか、()()()()()()()()って何? 名前からして、ヤバそうなのは分かるけど」

「かつて、百合園セイアの暗殺に使われた爆弾だ。頑丈な生徒であろうとも、死に至らせる可能性がある……」

 

 ムツキからの問いかけに、扉間が険しい顔で答える。

 かつて、アズサがセイアの暗殺のために、ゲマトリアから借り受けたもの。

 実際には使われることなく終わったが、生徒を殺害するに足る力は確かにある。

 

「そんなのは聞いたことがないけど……ハッタリの可能性は?」

「可能性はある。だが、ヘイロー破壊爆弾は複製(ミメシス)の製作者が作ったもの。片方があり、実際に効果を発揮しているのならば……」

「無視はできない…か。嘘でも本当でも、こっちの動きを制限させる手だね」

 

 そして、実際の効果がどれ程かはこの際関係ない。

 まさに、地雷原を歩くようなものだ。

 誰だって、今いる場所が地雷原だと知れば、慎重に動かざるを得なくなる。

 

 え? この小説には自爆以外のネタがないのかって?

 許せ、サスケ。これが一番効率的なんだ、うん。

 

「さあ、どうする、先生? 別に撤退してもいいよ。時間は私の味方だから」

「言いおるわ……」

「ど、どうするのよ、これ!?」

 

 完全に扉間達を包囲できる数が居るというのに、退路を塞ぐことはしない。

 常に、退却の可能性を相手に与えて、背水の陣にはさせない。

 そうすることで、何をするか分からないアルや扉間の行動を縛りつつ、時間を稼いでいるのだ。

 虚妄のサンクトゥムが臨界点に達すれば、シロコ*テラーの勝ちなのだから。

 

(今はウトナピシュティムが居ない……この状況なら、虚妄のサンクトゥムにミサイルを撃ち込めば何とかなるか? しかし、緊急時とは言え、流石に他校からD.U.にミサイルを撃ち込むのは不味いか?)

 

 だが、扉間とて手がないわけではない。

 アリウスのベアトリーチェの遺産か、ミレニアムの隠しミサイルを撃ち込めばあるいはと考える。

 まあ、宣戦布告もビックリな行為なので、流石の扉間も少し悩んでいるのだが。

 

「ん? 爆音…?」

「ああ……タイマーの時間か」

 

 そんな時だった。

 

「あ、サンクトゥムタワーの時限爆弾が作動したのね……こんなに敵が大勢いるなら、爆薬を全部使わずに、こっちに持ってきておけばよかったわ……」

 

 爆音が轟き、便利屋達がサンクトゥムタワーに仕掛けて来た爆薬が作動する。

 これだけならば、驚きはない。

 扉間達は当然知っているし、シロコ*テラーもリンが自爆しようとした件は知っている。

 

 だが。

 

 

「………ねぇ、なんかこっちに倒れてきてない?」

 

 

 サンクトゥムタワーがこちら側に向かって倒れて来るのは、どちらにとっても想定外だった。

 

「馬鹿な…ッ。周辺被害を抑えるために、下から崩壊するように爆薬の量は計算したはずだぞ!?」

「………あ!」

 

 ──ねえねえ、アルちゃん。ここの爆薬ってどれぐらい設置すればいいんだっけ? 

 ──せっかくの大仕事なんだから、()()()行きましょう、ムツキ。

 

 突如として、アルの脳内に溢れ出す、存在した記憶。

 

「アル…? 今の声は何だ? 何をやったのだ? ……答えろ」

「え、えーと……その……爆薬をちょっと…いえ、少し派手に……設置しました…はい……」

「アルちゃんの指示だから、私は知らないよ」

「何やってるの、社長……ビルの解体なんて慎重にやらないと不味いのに。周りに建物があるのが見えないの…!」

 

 派手にやろうぜと、久々の娑婆でテンションが上がった結果。

 ストッパーのカヨコが不在の時にやってしまった、やらかし。

 そして、その結果が。

 

「こっちに──虚妄のサンクトゥムにサンクトゥムタワーが倒れてきて…!?」

 

 まるでドミノの様にサンクトゥムタワーが、虚妄のサンクトゥムへと倒れ掛かってくる光景だ。

 これには、流石のシロコ*テラーも目を見開いて、感情を露にするしかない。

 

「まさか、これも先生の仕込み!?」

「ワシを責めるな……知らん」

 

 シロコ*テラーの『出た、先生考案の…!』という視線に、頭を抱えながら首を横に振る、扉間。

 サンクトゥムタワーの自爆は考えていたが、流石に周辺地域への被害ぐらい考えている。

 もし避難が遅れて街に人が残っていたら、普通に死ぬわ。

 

「と、とにかく逃げましょう!! 瓦礫に巻き込まれるわよ!?」

「アハハハ! もう笑うしかないよね!?」

「本当にもう! 結果オーライにしても、やり方ってものがあるよね!!」

「せ、先生も逃げてください!! 私達以上に危険です!!」

「ワシは分身だ。消えても問題はない。お前達はワシを気にせず、全力で撤退しろ。どうせ、虚妄のサンクトゥムが消えれば、穢土転生は無視で構わんのだからな。しかし、はぁ……アリウスかミレニアムからミサイルを撃ち込んで、後で外交問題になるよりかはマシだろうが……ふぅー……」

 

 Unwelcome Schoolの幻聴が流れる中、サンクトゥムタワーが虚妄のサンクトゥムへと近づいていき。

 そして──

 

 

「ま、まさか、こんな方法で──最後のサンクトゥムが壊されるなんて」

 

 

 ──虚妄のサンクトゥムを巻き込んで崩れ倒れるのだった。

 

 

 全盛期の陸八魔アル伝説。

 NEW!・占拠したサンクトゥムタワーを派手という理由だけで粉砕し、D.U.を瓦礫の山に変えた。

 

 

 

 

 

「A.R.O.N.Aちゃん…帰って来たとたんに…わ、私の家が……」

『ホームレス……』

「ゆ、許しませんよ……陸八魔アル!」

 

 




全盛期、陸八魔アル伝説。

 ・カイザーローン本店を襲撃。僅か5分で1億円を強奪する。
 ・キヴォトス最強と言われるゲヘナ風紀委員会を撃破。
 ・ブラックマーケットで、PMCとマーケットガードを相手に大立ち回りを見せる。
 ・SRT特殊部隊と死闘を繰り広げてブラックマーケットを火の海に変える。
 ・不良達とカイザーPMCを率いて、連邦生徒会のシャーレを襲撃する。
 ・シャーレの先生を土下座で謝らせた。
 ・たった一度、恩を受けた相手を助けるためだけに、ヴァルキューレを襲撃。
新・その後、矯正局に入るがシャーレの先生の手引きにより悠々と出所。
新・連邦生徒会の本拠地であり、キヴォトスの象徴であるサンクトゥムタワーの占拠を行う。
新・占拠したサンクトゥムタワーを派手という理由だけで粉砕し、D.U.を瓦礫の山に変えた。

次回は忙しいので、ちょっと遅れます。3/14投稿予定。
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