IS~Ichika Strange~ あるいはこんな織斑一夏   作:Exnyas

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手慰みと生存報告で投稿します。
続くかどうかは分かりません。
メインヒロインはまだ出ません。

本作の一夏は非常に強いです。
具体的には本気のヒュームと引き分けるぐらい。
つまり、舐めプ状態の百代に勝ち目はありません。


1.春先、多馬大橋にて

川神(かわかみ)市北端、多馬大橋(たまおおはし)橋上、午前7時30分。

まだ朝も早い時間から、少女が1人、橋の上で仁王立ちをしていた。

 

「おい、見ろよあれ」

 

「川神先輩じゃね?」

 

「またバトルか!?」

 

少女は名を【川神 百代(ももよ)】と言い、近くにある【川神学園】に通う、高校3年生。

 

整った美貌と、グラビアアイドルを凌駕するスタイルを備えた百代は、その容姿から学内の男子生徒から人気が高く、これまでも数多くの男子生徒から告白を受けてきたが、そのことごとくを断っている。

 

何故なら百代にとって交際とは、自らを打倒した異性とするモノであり、自らを打倒出来ない男とは、交際なんぞ出来ないと考えていたからである。

 

……だが、それも今となっては過去の話。

いまの百代には、恋い焦がれている男がいる。

 

名は【織斑(おりむら) 一夏(いちか)】と言い、自分と同じ川神学園に通う、1年下の後輩で、半年前、初めて百代に黒星を付けた男である。

 

黒星を付けられた、即ち一夏に負けた百代は、それから毎日一夏に言い寄り、自分と交際しろと迫っているのだが、一夏の反応はすげなく、婚約者がいるからと断られ続けている。

 

だが、百代は諦めが悪かった。

来る日も来る日も一夏に詰め寄り、その度に袖にされ、ならば体でと色仕掛けを試みるも、婚約者がいる一夏には無意味。

最近では色仕掛けを使いすぎた反動か、一夏の事を考える度に、体がまるで発情期を迎えたようになり、高まった性欲を激しい自慰で解消する始末。

 

今も目は血走り、呼吸は荒く、一刻も早く自慰に耽りたいところだが、流石にそれなりの羞恥心はあるため、何とか堪える事が出来ている。

 

「……8時か、そろそろ来ると思うが」

 

一夏は毎朝8時頃、川神学園に通うために、この多馬大橋を通る。

だがこの日は8時を過ぎても一向に姿を見せなかった。

 

「何故だ? 何故来ない?」

 

流石にこれはおかしいと感じた百代の横に、1台のリムジンが停車する。

 

「……リムジン? こんなところに?」

 

どこの誰だと考える百代の横で、リムジンの運転手が降りてきた。

運転手が後部座席のドアをガチャと開くと、中から見知った顔の女が降りてきた。

 

「久しいな、百代」

 

揚羽(あげは)さん?」

 

リムジンから降りてきたのは、かつて四天王と呼ばれた世界強者の4人の1人で、百代に負けてその座を退いた【九鬼(くき) 揚羽】だった。

 

「調子はどうだ? と、聞くまでもないか」

 

「何の話です?」

 

「言わずとも良い。我には分かる」

 

言って揚羽はリムジンの中から、小さな紙袋を取り出し、使えと言ってそれを百代に投げ渡す。

紙袋の中身は、レースがあしらわれた、セクシーな黒いパンティだった。

 

「穿き替えるなら乗れ。話もある」

 

「……わかった」

 

百代は紙袋を手に、リムジンに乗り込んだ。

そしてその広い車内で、グショグショになったパンティを脱ぎ、紙袋に入っていたパンティを穿いた。

穿いていたパンティは、紙袋に入れる。

 

「穿き替えたか?」

 

「ああ」

 

「それはこっちに。処分しておく」

 

言うと揚羽は百代から紙袋を受け取り、それを座席横の収納に入れる。

 

「出してくれ」

 

百代の向かいに座った揚羽が、インターコムにそう告げると、リムジンは静かに走り出した。

 

「……で、話って?」

 

「我が財閥で宇宙開発部の部長を勤めている【篠ノ之(しののの) (たばね)】を知っているか?」

 

「もちろん。あのIS(アイエス)……インフィニット・ストラトスという、パワードスーツの開発者だろう?」

 

「そうだ」

 

「そして、私の恋敵……もとい、一夏の婚約者でもある」

 

「恋敵……まあ、お前の主観ではそうなのだろうな。世間的には、お前がいわゆる泥棒猫だが」

 

「泥棒猫って……まあいい。それで?」

 

「その束が異動になってな」

 

「異動?」

 

「そうだ。IS学園に出向する事になってな」

 

「IS学園?」

 

実は百代、戦いに明け暮れた生き方をしていたため世事に疎く、ISと聞いてもピンと来ていなかったりする。

 

「ISが希少なのは知っているな?」

 

「ああ。たしか……コアと呼ばれる中枢部品が、世界に1193個しかないから、だったか? クラスメイトがそう言っていたのを覚えている」

 

「そうだ。そしてそんなコアの実に3割……400個近くを保有するのがIS学園なのだが、今回、少々厄介な事になってな」

 

「……と言うと?」

 

「……ISを起動できる男が見つかった」

 

「……は?」

 

いくら世事に疎い百代でも、ISの基本的な要項は知っている。

 

ISは着用すれば、着用者は単身で空を飛び、戦闘機を抜き去り、酸素ボンベや専用装備無しに長時間深海に潜り、潜水艦よりも自在に水中を泳ぎ、銃弾や爆発物からダメージを受けなくなる。

 

まさしく新時代の超兵器。

百代も適性検査で起動させ、着用して数分だけ空を飛んだ事があるが、生身で跳んだ方が速いし、小回りが利くな……というのが感想だった。

 

そんなISには1つ、致命的な欠陥がある。

 

それが『女性にしか起動・着用が出来ない』事である。

 

だからこそISが世に出た当初は、ISを起動・着用可能な女こそ種の上位と謳う、後世で女性権利団体……通称【女権団(じょけんだん)】が発足し、政治に宗教に企業にと、あちこちにその手を広げる事になったのだが、詳細は割愛する。

 

「ISは女にしか起動・着用が出来ないはずだろう?」

 

「そのはずだった。一昨々日まではな」

 

揚羽曰く一昨々日、都内のIS学園が設けた入学試験の会場に、同じ建物で開催されていた【藍越(あいえつ)学園】の入試会場と間違って1人の少年が入り込み、試験端末として置いてあったIS【打鉄(うちがね)】を起動させたらしい。

 

「本人曰く、熱で意識が朦朧としていて、藍越学園の入試会場が分からず、施設内を歩き回った末に、打鉄が置いてあった部屋に進入。興味本位で打鉄に触れたところ、何故か打鉄が起動してしまったそうだ」

 

「……それで?」

 

「IS学園は上から下まで大騒ぎになった。当然だろう。それまで女にしか起動・着用が出来なかったISを、一般の少年が起動させてしまったのだからな」

 

世論は2つに割れた。

少年をIS学園に入れ、専門知識と専門技術を備えさせる一派と、少年を捕らえて研究施設に送り込み、そのメカニズムを解析しようとする……主に女権団の一派に。

 

「ここで注目されたのが少年の姉だ」

 

「姉?」

 

「実は少年の姉はな、連覇のブリュンヒルデでな」

 

「連覇のブリュンヒルデって……国際IS大会【モンド・グロッソ】の連覇王者【四季(しき) 十春(とわ)】の事か!?」

 

百代はIS自体の事には疎いが、強者については敏感だった。

 

モンド・グロッソ。

それは百代が口にしたとおり、ISの国際大会の名称。

 

モンド・グロッソには、IS着用者同士が戦い、戦闘能力の高さを競う格闘部門、IS着用状態で射撃を行い、目標の撃破速度や精度を競う射撃部門、IS着用者同士が規定のコースを飛行し、その速さや正確さを競う機動部門の3部門があり、それぞれの部門優勝者をヴァルキリー、3部門制覇のヴァルキリーをブリュンヒルデと呼称する習わしがある。

 

そんなブリュンヒルデに二回連続でなった女こそ、名を【四季 十春】と言い、件の少年の姉だと揚羽は語る。

 

「……いくら女権団と言えど、ブリュンヒルデの実弟を排除する事は叶わなかったらしくてな。ブリュンヒルデの弟は男でありながら、IS学園へ通う事が決まった」

 

「それが恋敵の異動とどう繋がる?」

 

「それがな……IS学園へ通う事が決まった弟くんが、こんな事を言い出したのだ。こんな女子校に男は俺1人とか冗談じゃない、他に動かせる男はいないのか、と」

 

十春の弟【四季 百秋(ももき)】の言葉を受け、各国は取り急ぎ、ISの適性検査を実施した。

 

「……そして一昨日見つかったんだ、2人目が」

 

そんな揚羽の言葉に、百代は背筋に、冷たい汗が流れるのを感じた。

 

イヤな予感がする。

 

「……まさか!?」

 

「そうだ、一夏だ」

 

「何と言う事だ」

 

一夏のIS適性確認の報告を受け、真っ先に動いたのが、何を隠そう束だった。

 

一夏もIS学園に入る事になるだろうから、私も着いていくと言い出した束に対し、IS学園はこれを承諾。

 

何故なら束は、これ以上ないISの専門家。

誰もが欲して止まない最高の人材。

 

それが一夏を受け入れれば着いてくるのだから、受け入れる以外の答えはない。

 

「……と言うわけで、一夏はいまIS学園で、事前指導を受けていて、川神学園にいない」

 

「一夏は、川神学園はどうするんだ?」

 

「総代……鉄心(てっしん)さんとも、途中退学という事で話がついている」

 

「……なら私は、私はどうすればいい?」

 

百代は半ば絶望しかかっていた。

これから先訪れる、長きに渡る一夏との別れに。

 

「……1つ、提案がある」

 

「提案?」

 

「卒業後、我が九鬼財閥で働いてもらう事を条件に、百代。お前をIS学園にねじ込む用意がある」

 

「それは……」

 

百代には将来、実家である川神院を継ぎ、祖父である鉄心に代わり、総代として働く道があった。

 

揚羽はそれを蹴れば、想い人のところに送り込むと言っているのだ。

 

百代は悩んだ。

 

武に生きる者として、川神院を継ぐ事は必定である。

ましてやそれがかの武神ともなれば、尚更。

自分を義姉(あね)と慕う少女も喜ぶだろう。

 

だが、その道を選んだ場合、想い人は近くにいない。

同じ首都圏の、近くて遠い場所で、恋敵……束との絆を深めるだろう。

 

百代は苦悩した。

いままでこれほど悩んだ事はない程に。

 

……そんな折、制服の上着の胸ポケットで、スマホが振動する。

 

「……出なくていいのか?」

 

「……くっ」

 

静寂を切り裂くかの如く震えるスマホ。

その振動は音として、揚羽の耳にも届いており、揚羽は百代に、電話に出るよう促した。

 

「誰だ……ジジイか」

 

百代が言うジジイとは、即ち祖父、鉄心の事である。

百代は通話ボタンをタップし、スマホを耳に当てる。

 

《もしもし? モモかの? ワシじゃ、鉄心じゃ》

 

「……ジジイ、何の用だ。私は今、忙しい」

 

《その様子じゃと、揚羽ちゃんから話を聞いたみたいじゃの》

 

鉄心は百代の心境が分かっているらしい。

 

「だとしたら何だ?」

 

《自分の心に誠実たれ》

 

「ッ……」

 

誠実。

それは百代が好きな言葉であり、生き方を示す言葉でもあった。

 

《IS学園の理事長轡木(くつわぎ)くんはワシの教え子での》

 

「IS学園の理事長が、ジジイの教え子?」

 

《モモにとっては兄弟子にあたるのう》

 

百代は聞いた事がなかった。

自分に兄弟子がいるだなんて。

 

《アヤツはルーと同じ、素質がある一般人がゼロから鍛え上げ、師範代試験までこぎ着けた実力者でな。僅かに届かんかったが》

 

「師範代試験で落ちた……つまり、IS学園の理事長が、准師範代!?」

 

川神院において、師範代という肩書きが持つネームバリューは非常に強く、それだけで道場を開き、武術を教える先生として、職に就けるほど。

 

そんな師範代の地位に迫る、准師範代が理事長を務めるIS学園。

百代は俄然興味が湧いてきた。

 

《学園や川神院の事は心配するな。なに、モモを1人では行かさんよ。一子(かずこ)も一緒じゃ》

 

「ワン子が一緒か……なら、集会はどうなる? ファミリーとも会えなくなるんじゃ……」

 

ちなみにワン子とは一子……百代の義妹【川神 一子】の愛称で、一を1、即ちoneと読めばいい。

one子でワン子、という訳だ。

 

《それも心配いらんよ。轡木くんと話をしてな、モモは秘密基地近くのアパートからIS学園に通ってもらうつもりじゃ》

 

鉄心曰く、ファミリーが集う秘密基地から歩いて7分位の立地に、2LDKのアパートがあり、そこを鉄心名義で借りたらしい。

 

そしてそのアパートから徒歩8分ぐらいの立地に、IS学園最寄り駅行きのモノレールが通っているそうだ。

 

《モモの荷物は川神院の僧に運んでもらったし、もう一子が先んじて向かっておる》

 

「そうか、もうワン子が」

 

「横槍を入れて悪いが、そこまでしてもらって、何を躊躇う必要がある?」

 

「揚羽さん……」

 

《おお、揚羽ちゃんもそこにおるのか?》

 

「いるもなにも、今、揚羽さんのリムジンの中だ」

 

《なるほど、校門前に停まっとるリムジン。あれがそうか》

 

「……何? 見えてるのか?」

 

百代はリムジンの窓を開け、そこから川神学園の学長室が、窓辺に立つ鉄心が、こちらに向けて手を振っているのが見える事を確認した。

 

「確かに見えてるな」

 

《じゃろう?》

 

「ああ」

 

この時点で百代は決断した。

自分は、一夏を追って、IS学園に向かう。

 

幸い、百代のIS適性はB+と平均より高い。

IS学園に行っても、ちゃんとやっていけるだろう。

 

……サボりさえしなければ。

 

そして今日は金曜日。

ファミリーで集まる集会の日だ。

 

学園で友達に事情を話し、集会でファミリーに事情を話そう。

聞き分けが悪いやつはいない。

ファミリーはそういう連中の集まりだ。

 

「わかった。ジジイ、私はIS学園に向かう」

 

《それが良い。後悔せんようにな》

 

「揚羽さんも、ありがとう」

 

「なに、将来的に百代を部下に出来るなら、この程度は安いものだ。先行投資だな」

 

百代はスマホの時計を確認する。

時刻は8時45分。

そろそろ入らないと遅刻する。

 

「じゃあ、最後の学園生活と洒落込みますか」

 

《頑張るんじゃぞ》

 

「ああ……揚羽さん、車、ありがとう」

 

「気にするな。我と百代の仲ではないか」

 

百代はリムジンを降り、正門に向かった。

その足取りはどこか軽いものだった。

 

もちろんその後、全校朝礼で悲鳴が飛び交い、放課後の集会でも悲鳴が飛び交う事になった。

 

ちなみに集会で一番悲鳴を上げたのは、百代の舎弟を名乗る少年【直江(なおえ) 大和(やまと)】だったのは、言うまでもない。

 

 




原作との主な変更点

1.白騎士事件は起きていない(束が白い)
2.白騎士事件が起きていないため、篠ノ之家は健在
3.白騎士事件は起きていないのにISが普及している
4.一夏は川神市在住……つまり?
5.IS学園理事長の轡木十蔵は百代の兄弟子
6.百代は川神院からアパートに引っ越している(一子も一緒)


続きはまたいずれ
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