IS~Ichika Strange~ あるいはこんな織斑一夏 作:Exnyas
続くかどうかは分かりません。
メインヒロインはまだ出ません。
本作の一夏は非常に強いです。
具体的には本気のヒュームと引き分けるぐらい。
つまり、舐めプ状態の百代に勝ち目はありません。
まだ朝も早い時間から、少女が1人、橋の上で仁王立ちをしていた。
「おい、見ろよあれ」
「川神先輩じゃね?」
「またバトルか!?」
少女は名を【川神
整った美貌と、グラビアアイドルを凌駕するスタイルを備えた百代は、その容姿から学内の男子生徒から人気が高く、これまでも数多くの男子生徒から告白を受けてきたが、そのことごとくを断っている。
何故なら百代にとって交際とは、自らを打倒した異性とするモノであり、自らを打倒出来ない男とは、交際なんぞ出来ないと考えていたからである。
……だが、それも今となっては過去の話。
いまの百代には、恋い焦がれている男がいる。
名は【
黒星を付けられた、即ち一夏に負けた百代は、それから毎日一夏に言い寄り、自分と交際しろと迫っているのだが、一夏の反応はすげなく、婚約者がいるからと断られ続けている。
だが、百代は諦めが悪かった。
来る日も来る日も一夏に詰め寄り、その度に袖にされ、ならば体でと色仕掛けを試みるも、婚約者がいる一夏には無意味。
最近では色仕掛けを使いすぎた反動か、一夏の事を考える度に、体がまるで発情期を迎えたようになり、高まった性欲を激しい自慰で解消する始末。
今も目は血走り、呼吸は荒く、一刻も早く自慰に耽りたいところだが、流石にそれなりの羞恥心はあるため、何とか堪える事が出来ている。
「……8時か、そろそろ来ると思うが」
一夏は毎朝8時頃、川神学園に通うために、この多馬大橋を通る。
だがこの日は8時を過ぎても一向に姿を見せなかった。
「何故だ? 何故来ない?」
流石にこれはおかしいと感じた百代の横に、1台のリムジンが停車する。
「……リムジン? こんなところに?」
どこの誰だと考える百代の横で、リムジンの運転手が降りてきた。
運転手が後部座席のドアをガチャと開くと、中から見知った顔の女が降りてきた。
「久しいな、百代」
「
リムジンから降りてきたのは、かつて四天王と呼ばれた世界強者の4人の1人で、百代に負けてその座を退いた【
「調子はどうだ? と、聞くまでもないか」
「何の話です?」
「言わずとも良い。我には分かる」
言って揚羽はリムジンの中から、小さな紙袋を取り出し、使えと言ってそれを百代に投げ渡す。
紙袋の中身は、レースがあしらわれた、セクシーな黒いパンティだった。
「穿き替えるなら乗れ。話もある」
「……わかった」
百代は紙袋を手に、リムジンに乗り込んだ。
そしてその広い車内で、グショグショになったパンティを脱ぎ、紙袋に入っていたパンティを穿いた。
穿いていたパンティは、紙袋に入れる。
「穿き替えたか?」
「ああ」
「それはこっちに。処分しておく」
言うと揚羽は百代から紙袋を受け取り、それを座席横の収納に入れる。
「出してくれ」
百代の向かいに座った揚羽が、インターコムにそう告げると、リムジンは静かに走り出した。
「……で、話って?」
「我が財閥で宇宙開発部の部長を勤めている【
「もちろん。あの
「そうだ」
「そして、私の恋敵……もとい、一夏の婚約者でもある」
「恋敵……まあ、お前の主観ではそうなのだろうな。世間的には、お前がいわゆる泥棒猫だが」
「泥棒猫って……まあいい。それで?」
「その束が異動になってな」
「異動?」
「そうだ。IS学園に出向する事になってな」
「IS学園?」
実は百代、戦いに明け暮れた生き方をしていたため世事に疎く、ISと聞いてもピンと来ていなかったりする。
「ISが希少なのは知っているな?」
「ああ。たしか……コアと呼ばれる中枢部品が、世界に1193個しかないから、だったか? クラスメイトがそう言っていたのを覚えている」
「そうだ。そしてそんなコアの実に3割……400個近くを保有するのがIS学園なのだが、今回、少々厄介な事になってな」
「……と言うと?」
「……ISを起動できる男が見つかった」
「……は?」
いくら世事に疎い百代でも、ISの基本的な要項は知っている。
ISは着用すれば、着用者は単身で空を飛び、戦闘機を抜き去り、酸素ボンベや専用装備無しに長時間深海に潜り、潜水艦よりも自在に水中を泳ぎ、銃弾や爆発物からダメージを受けなくなる。
まさしく新時代の超兵器。
百代も適性検査で起動させ、着用して数分だけ空を飛んだ事があるが、生身で跳んだ方が速いし、小回りが利くな……というのが感想だった。
そんなISには1つ、致命的な欠陥がある。
それが『女性にしか起動・着用が出来ない』事である。
だからこそISが世に出た当初は、ISを起動・着用可能な女こそ種の上位と謳う、後世で女性権利団体……通称【
「ISは女にしか起動・着用が出来ないはずだろう?」
「そのはずだった。一昨々日まではな」
揚羽曰く一昨々日、都内のIS学園が設けた入学試験の会場に、同じ建物で開催されていた【
「本人曰く、熱で意識が朦朧としていて、藍越学園の入試会場が分からず、施設内を歩き回った末に、打鉄が置いてあった部屋に進入。興味本位で打鉄に触れたところ、何故か打鉄が起動してしまったそうだ」
「……それで?」
「IS学園は上から下まで大騒ぎになった。当然だろう。それまで女にしか起動・着用が出来なかったISを、一般の少年が起動させてしまったのだからな」
世論は2つに割れた。
少年をIS学園に入れ、専門知識と専門技術を備えさせる一派と、少年を捕らえて研究施設に送り込み、そのメカニズムを解析しようとする……主に女権団の一派に。
「ここで注目されたのが少年の姉だ」
「姉?」
「実は少年の姉はな、連覇のブリュンヒルデでな」
「連覇のブリュンヒルデって……国際IS大会【モンド・グロッソ】の連覇王者【
百代はIS自体の事には疎いが、強者については敏感だった。
モンド・グロッソ。
それは百代が口にしたとおり、ISの国際大会の名称。
モンド・グロッソには、IS着用者同士が戦い、戦闘能力の高さを競う格闘部門、IS着用状態で射撃を行い、目標の撃破速度や精度を競う射撃部門、IS着用者同士が規定のコースを飛行し、その速さや正確さを競う機動部門の3部門があり、それぞれの部門優勝者をヴァルキリー、3部門制覇のヴァルキリーをブリュンヒルデと呼称する習わしがある。
そんなブリュンヒルデに二回連続でなった女こそ、名を【四季 十春】と言い、件の少年の姉だと揚羽は語る。
「……いくら女権団と言えど、ブリュンヒルデの実弟を排除する事は叶わなかったらしくてな。ブリュンヒルデの弟は男でありながら、IS学園へ通う事が決まった」
「それが恋敵の異動とどう繋がる?」
「それがな……IS学園へ通う事が決まった弟くんが、こんな事を言い出したのだ。こんな女子校に男は俺1人とか冗談じゃない、他に動かせる男はいないのか、と」
十春の弟【四季
「……そして一昨日見つかったんだ、2人目が」
そんな揚羽の言葉に、百代は背筋に、冷たい汗が流れるのを感じた。
イヤな予感がする。
「……まさか!?」
「そうだ、一夏だ」
「何と言う事だ」
一夏のIS適性確認の報告を受け、真っ先に動いたのが、何を隠そう束だった。
一夏もIS学園に入る事になるだろうから、私も着いていくと言い出した束に対し、IS学園はこれを承諾。
何故なら束は、これ以上ないISの専門家。
誰もが欲して止まない最高の人材。
それが一夏を受け入れれば着いてくるのだから、受け入れる以外の答えはない。
「……と言うわけで、一夏はいまIS学園で、事前指導を受けていて、川神学園にいない」
「一夏は、川神学園はどうするんだ?」
「総代……
「……なら私は、私はどうすればいい?」
百代は半ば絶望しかかっていた。
これから先訪れる、長きに渡る一夏との別れに。
「……1つ、提案がある」
「提案?」
「卒業後、我が九鬼財閥で働いてもらう事を条件に、百代。お前をIS学園にねじ込む用意がある」
「それは……」
百代には将来、実家である川神院を継ぎ、祖父である鉄心に代わり、総代として働く道があった。
揚羽はそれを蹴れば、想い人のところに送り込むと言っているのだ。
百代は悩んだ。
武に生きる者として、川神院を継ぐ事は必定である。
ましてやそれがかの武神ともなれば、尚更。
自分を
だが、その道を選んだ場合、想い人は近くにいない。
同じ首都圏の、近くて遠い場所で、恋敵……束との絆を深めるだろう。
百代は苦悩した。
いままでこれほど悩んだ事はない程に。
……そんな折、制服の上着の胸ポケットで、スマホが振動する。
「……出なくていいのか?」
「……くっ」
静寂を切り裂くかの如く震えるスマホ。
その振動は音として、揚羽の耳にも届いており、揚羽は百代に、電話に出るよう促した。
「誰だ……ジジイか」
百代が言うジジイとは、即ち祖父、鉄心の事である。
百代は通話ボタンをタップし、スマホを耳に当てる。
《もしもし? モモかの? ワシじゃ、鉄心じゃ》
「……ジジイ、何の用だ。私は今、忙しい」
《その様子じゃと、揚羽ちゃんから話を聞いたみたいじゃの》
鉄心は百代の心境が分かっているらしい。
「だとしたら何だ?」
《自分の心に誠実たれ》
「ッ……」
誠実。
それは百代が好きな言葉であり、生き方を示す言葉でもあった。
《IS学園の理事長
「IS学園の理事長が、ジジイの教え子?」
《モモにとっては兄弟子にあたるのう》
百代は聞いた事がなかった。
自分に兄弟子がいるだなんて。
《アヤツはルーと同じ、素質がある一般人がゼロから鍛え上げ、師範代試験までこぎ着けた実力者でな。僅かに届かんかったが》
「師範代試験で落ちた……つまり、IS学園の理事長が、准師範代!?」
川神院において、師範代という肩書きが持つネームバリューは非常に強く、それだけで道場を開き、武術を教える先生として、職に就けるほど。
そんな師範代の地位に迫る、准師範代が理事長を務めるIS学園。
百代は俄然興味が湧いてきた。
《学園や川神院の事は心配するな。なに、モモを1人では行かさんよ。
「ワン子が一緒か……なら、集会はどうなる? ファミリーとも会えなくなるんじゃ……」
ちなみにワン子とは一子……百代の義妹【川神 一子】の愛称で、一を1、即ちoneと読めばいい。
one子でワン子、という訳だ。
《それも心配いらんよ。轡木くんと話をしてな、モモは秘密基地近くのアパートからIS学園に通ってもらうつもりじゃ》
鉄心曰く、ファミリーが集う秘密基地から歩いて7分位の立地に、2LDKのアパートがあり、そこを鉄心名義で借りたらしい。
そしてそのアパートから徒歩8分ぐらいの立地に、IS学園最寄り駅行きのモノレールが通っているそうだ。
《モモの荷物は川神院の僧に運んでもらったし、もう一子が先んじて向かっておる》
「そうか、もうワン子が」
「横槍を入れて悪いが、そこまでしてもらって、何を躊躇う必要がある?」
「揚羽さん……」
《おお、揚羽ちゃんもそこにおるのか?》
「いるもなにも、今、揚羽さんのリムジンの中だ」
《なるほど、校門前に停まっとるリムジン。あれがそうか》
「……何? 見えてるのか?」
百代はリムジンの窓を開け、そこから川神学園の学長室が、窓辺に立つ鉄心が、こちらに向けて手を振っているのが見える事を確認した。
「確かに見えてるな」
《じゃろう?》
「ああ」
この時点で百代は決断した。
自分は、一夏を追って、IS学園に向かう。
幸い、百代のIS適性はB+と平均より高い。
IS学園に行っても、ちゃんとやっていけるだろう。
……サボりさえしなければ。
そして今日は金曜日。
ファミリーで集まる集会の日だ。
学園で友達に事情を話し、集会でファミリーに事情を話そう。
聞き分けが悪いやつはいない。
ファミリーはそういう連中の集まりだ。
「わかった。ジジイ、私はIS学園に向かう」
《それが良い。後悔せんようにな》
「揚羽さんも、ありがとう」
「なに、将来的に百代を部下に出来るなら、この程度は安いものだ。先行投資だな」
百代はスマホの時計を確認する。
時刻は8時45分。
そろそろ入らないと遅刻する。
「じゃあ、最後の学園生活と洒落込みますか」
《頑張るんじゃぞ》
「ああ……揚羽さん、車、ありがとう」
「気にするな。我と百代の仲ではないか」
百代はリムジンを降り、正門に向かった。
その足取りはどこか軽いものだった。
もちろんその後、全校朝礼で悲鳴が飛び交い、放課後の集会でも悲鳴が飛び交う事になった。
ちなみに集会で一番悲鳴を上げたのは、百代の舎弟を名乗る少年【
原作との主な変更点
1.白騎士事件は起きていない(束が白い)
2.白騎士事件が起きていないため、篠ノ之家は健在
3.白騎士事件は起きていないのにISが普及している
4.一夏は川神市在住……つまり?
5.IS学園理事長の轡木十蔵は百代の兄弟子
6.百代は川神院からアパートに引っ越している(一子も一緒)
続きはまたいずれ