IS~Ichika Strange~ あるいはこんな織斑一夏   作:Exnyas

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アンケートは……四季姉弟フェードアウト+まじこいメンバー登場増加……でしょうか?


18.第二種、接近遭遇にて

-_- other

 

 

「あ……これ、もしかして……」

 

その日、師岡卓也は行きつけのプラモデルショップで、プレミアがついて近年は入手がきわめて困難になった、とある製品を手にしていた。

 

「……やっぱり。ISガールズアクションフィギュアじゃないか」

 

それは九鬼財閥の玩具部門が開発・販売をしている、きわめて精巧に作られた、ISおよびそのパイロットの1/7スケールの大型アクションフィギュアシリーズ。

 

世界中の著名なISとそのパイロットを、精密なディテールでアクションフィギュアに落とし込んだそのシリーズは、ファンから絶大な人気を博しており、最近ではマニアが好んで買い集めるため、市場に出回らず、値段が高騰している。

 

その価格たるや、メーカー希望小売価格が1体6980円(税別)のところ、近年の流通価格は1体あたり平均38500円だというのだから、その人気がいかほどかよく分かるというもの。

 

「しかもこれ、初期に発売された、今じゃ流通量がメチャクチャ少ないシリーズじゃない? 誰だろう……あ、イーリスさんだ! やった、ツイてる。僕、イーリスさんだけ、唯一買い漏らしたんだよね」

 

卓也は棚に1つだけあったそのアクションフィギュアを手に取ると、ルンルンでレジに持っていく。

 

その途中、すれ違った店員が手にした商品を見て、卓也は顎を外しそうになった。

 

「(え? ちょっと待って? いますれ違った店員さん、とんでもないISガールズアクションフィギュアの箱を持ってなかった?)」

 

レジに向かう足を止め、後ろを振り向き、店員の後ろを歩いて棚の前に戻った卓也は、店員が棚に置いた商品を見て愕然とした。

 

「うわ、マジ? マジなの?」

 

棚に新しく置かれたISガールズアクションフィギュアは、全部で6箱。

3箱と3箱の組み合わせで、それぞれが同じ商品だった。

 

卓也は3箱組の、黒ベースで配色されたISガールズアクションフィギュアの箱を手に取り、箱の表面に描かれたキャラクターを見て、思わずツッコミを入れた。

 

「やっぱり! どこかで見た顔だと思ったら、モモ先輩じゃないか!」

 

それは見慣れぬ装甲に身を包んではいるが、確かに自分も知っている少女……川神百代のイラストだった。

 

卓也は表面フラップを開き、ブリスターパック越しに中身を確認する。

 

「うわぁ、出来が良いなぁ……ちゃんとモモ先輩の特徴があるし……えっと、専用機『グラップラー』か……パーツもディテール凄いし、うん。買おう」

 

百代の箱を小脇に抱え、隣の3箱組になった商品にも手を伸ばそうとして……

 

「「あっ」」

 

……卓也の手は、タイミングを同じくして差し出された、誰かの手とぶつかった。

 

「すみませ……っ!?」

 

そこにいたのは、どこかで見たことがあるような顔立ちで、マゼンタ色のロングヘアを持つ、きわめて重厚な胸部装甲を携えた美女だった。

 

美女は卓也を見てニコリと微笑む。

 

卓也は心臓が高鳴ったのを感じるが、自分には想い人がいるんだと細く息を吐き、自らを落ち着かせる。

 

「キミもこのフィギュア集めてるの?」

 

「はい。発売当初からのファンで、これまでに発売されたものはひととおり」

 

「なるほどね。じゃあ、はい」

 

美女は棚に置いてあった、白基調の3箱組の1箱を、卓也に手渡した。

 

「小売店に卸す個数が決まってる限定品なんだって」

 

「へえ……って、これ一夏じゃん!?」

 

美女から手渡された箱のイラストを見て、卓也は人目も憚らず叫んだ。

 

白を基調とした箱に描かれているのは、つい先日お茶の間を賑わせた第二IS適合男性(セカンドマン)で、卓也の得難い友人の1人だったからだ。

 

卓也は受け取った箱の表面フラップを開き、中身を確認、先ほど手に取った百代のパッケージと同じく、精巧に作られた素体やパーツの数々に破顔する。

 

「へえ、すっごい出来だなぁ。フィギュアになってもイケメンだなんて、ちょっと嫉妬しちゃうよ一夏」

 

「キミ、いっくん……一夏くんの知り合い?」

 

「一夏は友達です。小学4年の頃からずっと」

 

言って卓也は昔の記憶を掘り起こした。

 

あれは川神小学校4年の2学期。

当時、既に風間ファミリーの雛型は出来上がっており、翔一・一子・大和・卓也・岳人の5人は、何をするにも一緒だった。

 

そんなある日、同じ学校の上級生……6年生が、翔一が調子に乗っているからという意味不明な理由で、徒党を組んでケンカを売ってきた。

 

力自慢の岳人がいたから、最初こそ優位だったが、隙を突かれて一子が人質に取られ、さらに相手の人数が倍になり、なす術がなくなった岳人は、翔一ともどもボコボコにされ、当時の秘密基地が奪われてしまった。

 

そんな折、何とか状況を打破せんと動いた大和と卓也は、それぞれ助っ人を探した。

 

そうして見つかったのが、プロ野球選手カードを報酬に、大和に連れられてやってきた百代(5年生)と、新作ゲームのセーブデータ1つのコピーを報酬に、卓也に連れられてやってきた一夏(卓也のクラスメイト)だった。

 

百代と一夏。

この2人の暴れっぷりと言ったら、それはもう凄まじいものだった。

 

開幕、一夏は一子に、耳を塞いで目を閉じるよう言いつつ、6年生軍団めがけ、火を点けた爆竹を投げつける。

 

意外すぎる奇襲にパニックを起こす6年生軍団に、事前に作戦を聞いていた百代が冷静に襲いかかり、小学5年生にしてはあり得ない威力と速度を持つ拳を振るう。

 

百代が大立ち回りをしている間に、一夏は一子を救出し、大和と卓也へ一子を連れて安全圏まで下がるよう伝えると、百代と一緒になって、6年生軍団を容赦なく蹴り飛ばした。

 

6年生軍団の全滅まで、5分と掛かってないだろう。

ズタズタのボロボロにされた6年生軍団は、全員、首からクラスと名前が書かれたボードを提げ『もう二度と風間翔一たちには手出ししません』という旨の宣誓をさせられ、その様子がスマホで録画される事になった。

 

後にその6年生軍団は全員、様々な方面から、それまでに行ってきた悪事の数々が告発され、全員が全員、転校していった。

 

「……ってな感じでして。以来、一夏とはその渡したセーブデータのコピーをきっかけに、一緒に遊んだりする仲なんです」

 

「たば……私より付き合いが長いんだね」

 

「お姉さんも一夏の知り合いですか?」

 

「知り合いもなにも、こ・ん・や・く・しゃ、だよ」

 

「こんやくしゃ……え? 婚約者!?」

 

「ふっふーん」

 

「──っ、じゃあお姉さんが日本九鬼が1人拳打鬼で、兼IS開発者の篠ノ之束さん!?」

 

「いえーすあいあむ」

 

驚く卓也に肯定の意を示し、ドヤ顔をする美女こと束。

 

「うわぁ、僕、凄い人と会って話をしてるんだよね……あ、改めまして。僕、師岡卓也っていいます」

 

言いつつ、卓也は納得した。

一夏の婚約者だからこそ、一夏グッズを買い集めているのだと。

 

「へぇ……ほうほう。こりゃまた凄い出来だね……三面図1枚から、ここまで立体的で緻密なフィギュアが出来るんだね」

 

「えっ? このシリーズのフィギュア、ベースは三面図1枚なんですか?」

 

「そうだよ? 束さん……私が描いた三面図」

 

どこからともなく取り出され、ホレと差し出された1枚の紙には、いま話題にした一夏の三面図が描かれていた。

 

曰く、束が三面図を描き、それを九鬼財閥の玩具部門に持ち込み、精密なサイズ計測が行われたのち、デザインが決定。

数回ブラッシュアップが施され、素体や各パーツが作られ、雛型に。

そして雛型を元に量産品が作られ、その内の1体が、いま卓也や束の手にあるそれらしい。

 

「へえ……昔のフィギュアみたいに、イラストレーターと原型師っていう関係が無いんだ」

 

「その手法でやってるメーカーもあるにはあるけどね」

 

言いながら卓也は、モモ先輩へのお土産にと、一夏モデルのフィギュアをもう1箱、手に取る。

 

それを見た束も、だったら束さんはいっくんにお土産、と百代モデルのフィギュアを手に取る。

 

これで卓也はイーリス1・百代1・一夏2の計4箱を、束は百代2・一夏1の計3箱を、それぞれ購入する事になった。

 

レジに並ぶ卓也と束。

その時卓也は、自分の前に並んでいる精算待ちの客が、知り合いである事に気がついた。

 

「……あれ? もしかしてスグル?」

 

「あ?」

 

名前を呼ばれて振り返った前の客は、確かに卓也のクラスメイト【大串(おおぐし) スグル】だった。

 

大串スグル。

割と高い身長にやせ形の体格を持ち、伸ばした髪を無造作にオールバックにし、後頭部のあたりでゴムで束ねている。

卓也のクラスメイトで、現実に絶望し、二次元に生きる事を決めたオタク。

1日のうち、学校と寝る時間以外の全てをパソコンの前で過ごす強者で、こうして街中で出会うケースは非常に稀。

 

「モロか。珍しいな、こんなとこで会うのは」

 

「スグルこそ。今日は買い物?」

 

「ああ。すみりんのナナイチ(1/7)フィギュアが出回ってるみたいでな。こういう、知る人ぞ知るマイナーな店ならあるんじゃないかと思って寄ってみたんだ」

 

すみりん。

スグルがこれぞ人生と絶賛する『オータム~永劫の契約~』と言う、大人気PCゲームに登場するメインヒロインの1人で、すみりんはファンからの愛称。

本名は氷川澄子。

 

真面目で委員長気質なツンデレ少女だが、その正体は海の女王で、子供の頃、主人公に救われた事がある。

 

王の座で育ったため、想いをストレートに言えない面があるが、そんな彼女がラストで大津波を食い止めるために海に帰るシーンは圧巻で壮大。

 

このシーンで涙腺が崩壊したスグル曰く、このシーンで泣けない奴とは友達になれない、との事。

 

「あったの?」

 

「……あった。それも未開封の新品が。ワンサマーという、俺が知らない造形師の作品だが、出来は非常に良い。1体3万弱と少々割高だが、すみりんの為なら惜しくない」

 

「スグルらしいや」

 

2人の会話を後ろで聞いていた束は、表情筋の操作に苦労していた。

 

何故なら束は、いまスグルが大切に抱えているそのフィギュアを、誰が作ったか知っていたからだ。

 

「(ワンサマー、1つの夏。意外と案外バレないもんなんだね……いっくん)」

 

「……ところでモロ。さっきから気になっていたんだが、お前の後ろでISGAFを3箱も抱えてる人は、お前の知り合いか?」

 

「正確にはさっき知り合いになった人。大物だよ」

 

「大物……初めまして、大串スグルだ。モロ……コイツのクラスメイトだ。好きに呼んでくれ」

 

「篠ノ之束だよ。よろしく」

 

「しののっ!? おわっ!」

 

束が自己紹介をした瞬間、スグルは凄まじいまでの動揺を見せ、抱えていたすみりんのフィギュアを落としそうになった。

 

「おっと」

 

もちろん、束がそれを片手で受け止める。

 

「な、なんでアンタみたいな大物がこんな店に……!?」

 

スグルの口調からして、スグルは束の正体を知っているようだ。

 

「あー、私もISGAFのファンでね」

 

「……なるほど、開発者だし、ある種の同類でもあるのか……失礼した」

 

「はいコレ」

 

「ああ、ありがとう。助かった」

 

3人は順番に精算を済ませ、店から出る。

3人ともホクホク顔だ。

 

「……束さん、でいいか?」

 

「なんだい? スグルくん」

 

「アンタ、メカに……いや、PCに強いか?」

 

「パソコン? 組み立ても扱いもお茶の子さいさいだよ?」

 

「なら手伝ってくれないか? 家にある愛用のパソコンをアップグレードしたいんだが、グラボ選びに困っていてな」

 

言ってスグルは望みのスペックを話す。

それをフンフンと聞いた束は、なるほどと1つ頷くと、その超大な双球の谷間からズルリと、平らな箱を取り出した。

 

「なっ!?」

 

「ええっ!?」

 

その光景に驚く卓也とスグル。

束からすれば【保管庫(ストレージ)】の拡張領域(バススロット)から取り出したに過ぎないが、そんな事、卓也もスグルも知る術はない。

 

「はい、コレあげる」

 

「こ、コレって……まさか!」

 

「く、クキフォースGTXの8120だと!? あの、40万もする超高級ハイスペックグラボか!?」

 

「暇潰しに送った懸賞で当たったんだけどね。要らないからあげる」

 

「い、要らないの!? ゲーミングPCユーザーなら誰もが欲しがる逸品なのに!?」

 

「束さんにはコレがあるからね」

 

言って右手人差し指で、自分の側頭部をツンツンつつく束。

 

「……な、なるほどな。ISなんていうスーパーメカを作れるだけの頭脳があるなら、その図形描画処理能力は、市販のグラボよりよっぽど確かだな。あ、ありがたく」

 

「スグル、大切にね!?」

 

「あ、ああ……済まない束さん。早々に取り付けないと落ち着かないから、俺はここで失礼する」

 

「うん、バイバイ」

 

「あ、束さん。僕、スグルを手伝うよ」

 

「わかった。じゃあね、卓也くん」

 

去り行くスグルと卓也を見送る束は、その背中を見ながらボソッと呟いた。

 

「……この程度のグラボなら、束さんの【保管庫(ストレージ)】の拡張領域(バススロット)に、山ほど入ってるけど」

 

知らぬが仏とはこのことだろう。

 

 

 




時間軸は前話の翌日にあたります。
注:クキフォースなどというグラボは存在しません。
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