IS~Ichika Strange~ あるいはこんな織斑一夏 作:Exnyas
そのせいで終盤の構成が難しく、何度も調整してようやく完成しました。
お楽しみ頂ければ幸いです。
-_- 百代
ファンとの距離が加速度的に詰まり、互いに正面衝突をする寸前、ファンがその右手に携えた青竜刀を、私の左肩目掛けて袈裟懸けに振るった。
「でぇいっ!」
──ブォンッ!──
良い太刀筋だが、いささか遅い。
それに素直すぎる。
……まあ、まゆっちの剣速を基準にすると当然の結果か。
私はファンの青竜刀を、左肩アーマー表面から5mm上で空振りさせ、ファンの胸元目掛けてハンディクレイモアの銃口を押し当て、トリガーを引く。
──ドンドンドンドンドンッ!!──
「なっ!? 避け、マズ……ぐはぁっ!」
ハンディクレイモアは双発……ダブルバレルの大口径
音からして5回、つまり双発ゆえに10発分のペレットが全弾直撃したファンは、いわゆるノックバックを受け、体をくの字に折り曲げ、私との距離を開けた。
「行くぞ!」
私は追撃のため、ロデオホースの銃口をファンに向け、トリガーを引いたが……
──ドガガガガガガガガ!──
「ちいっ!」
──ガギギギギギギギギギンッ!──
……ファンは左手の青竜刀を盾にし、私の射撃を凌いだ。
「……やるわね。流石は武術四天王、といったところかしら?」
「私を知っているのか?」
私がそう問いかけると、ファンは当然と答えた。
「当たり前じゃない。武に携わる者なら、誰だってその名を1度は耳にするわ。ましてや私は数千年の歴史を持つ、武術国家の出身なの……これでアンタを知らなかったら、ただのモグリだわ」
「なるほど……だが、些か情報が古いな」
私は直近半年以内に、19回も負けている事をファンに告げた。
「……は? 冗談でしょ!?」
ファンは目を見開いて驚くが、私は嘘を言っていないし、嘘をつく事が嫌いだ。
「アンタほどの武術家が、誰に負けたって言うのよ!? それもわずか半年で19回も!」
「言って分かるかは知らないが、織斑一夏という男に負けた」
「オリムライチカ……イチカですって!?」
「知っているのか?」
私の質問に、首を縦に振って『ええ』と答えるファン。
曰く、先日IS学園に到着した際、寮棟の端で迷子になったのだが、偶然その場に居合わせた一夏に助けられ、無事に編入を果たせたのだと言う。
「アイツがアンタを19回も負かしたって言うの!?」
「ああ」
「あんな、優男に……信じられる訳ないじゃないっ!」
そう叫んだファンが纏う
何か来る。
──ヒュゴッ!──
刹那、反射的に体を捩った私の顔の横を、見えないナニカが過ぎ去った。
「……初見の『
言うファンの視線が私を捉える。
続けて頬に力が入った。
──ドンドンドンドンドンドンッ!──
「くそっ、なんで、当たらない、のよっ!」
……なるほど。
視線で狙いを付け、奥歯の噛みしめをトリガーに発射。
連射も可能、と。
だが……
「見切った!」
私はファンが放つリュウホウとやらを、ファンの視線から弾道を見切ると、まるでダンスでも踊るように、宙を滑り、跳ね、回転し、身を捩り……捩った身の慣性をそのままに前方へ空転……同時に脚部打撃装甲【唯我独尊】を起動、空手の技の1つ『胴回し回転蹴り』をファンに浴びせる。
──ガゴォンッ!──
「ぐうっ! なんて重たい蹴り……ってか、ISに蹴りとか効く訳……ウソでしょ。
「ISによる近接格闘は、アメリカの……何と言ったか。そう、クエイク型だ。クエイク型だけの特権じゃない。日本のオウガ型でも同様の事が出来るのさ」
まさかの近接格闘打撃を受け、呆然とするファン。
……隙だらけだぞ?
私はファンにロデオホースとハンディクレイモアの銃口を向け、引き金を引く。
──ドンドンドンドンドンドンドンッ!──
──ドガガガガガガガガッ!──
「きゃああああっ!」
2丁4門の銃口から放たれた全弾をその身に浴び、ファンは姿勢を崩すも、負けじと手にした青竜刀2本を柄尻で連結させ、それを勢いよく投げつけてきた。
「こなくそっ!」
「温いっ!」
──ガィンッ!──
高速で回転しながら、高速で飛来する──青竜刀手裏剣とでも呼ぶべきシロモノ──を、ファン目掛けて、ファンが投げたより速い速度で蹴り返す。
……思いの外、一夏の影響が強いな。
我ながら、随分と足癖が悪くなったもんだ。
「な、くうっ!」
私が蹴り返した青竜刀手裏剣を強引に掴み取ったせいで、再度姿勢を崩したファンを見ながら、私は1マガジンを撃ちきったハンディクレイモアを
──ドンッドンッドンッドンッ!──
──ドガガガァンッ!──
放たれた榴弾は白煙の尾を引き、見事
「【龍咆】が破壊された!? なんて威力の砲弾よ!」
……これまでの私なら、ここで遊びに入るのだが、今日は……いや、闘いにおいて金輪際、遊びに入る事は無い。
私はロデオホースを
「そろそろ決める!」
私はスラスターを吹かすと、ファンを中心に円または球体を描くように飛び、ファン目掛けてミリオンクラッカーを連射する。
このミリオンクラッカーには、私たちが普段『ピストル』と聞いて思い浮かべる銃に装填されるような、いわゆる9mmパラベラム弾が使われている。
ISのアーマーを相手にして9mm弾は火力不足感が否めないが、ミリオンクラッカーにはそれを補って余りある長所が3つある。
それは弾速と発射間隔、それに装弾数だ。
まずは弾速。
銃のみならず、何かを撃ち出す武器は、その投射物が大きくなればなるほど、投射物の飛行速度が遅くなる。
これは単純に飛行中の投射物が受ける空気抵抗によるもので、木刀を振るうのとバットを振るうのでは、木刀の方が明らかに速いのと同じだ。
だがミリオンクラッカーの弾丸は9mmという小口径のおかげで、撃ち出した弾丸が受ける空気抵抗が極めて小さいのだ。
故に弾速は非常に速い。
速いとどうなるか?
単純に避けにくい……つまり当てやすい。
次に発射間隔。
銃弾の発射には、いろいろな手順が必要で、それを1から10までこなしてようやく、弾丸が1発発射される。
この初弾と次弾の間隔を発射間隔と呼び、これが高いほど連射力が高くなり、秒間に与えるダメージ比率……シューティングゲームで言う
ミリオンクラッカーの発射間隔は、分間1400発と非常に速く、断続的に当て続ける事で、凄まじいダメージを稼げる。
おまけに反動が非常に少ないせいで、発射に伴う銃口のブレが小さく、練習すれば相手の頭部に1マガジン分の弾丸を、全弾ヘッドショットする事も出来る。
最後に装弾数。
要は1マガジン内の弾丸の数。
多くのIS用サブマシンガンが、1マガジンあたり平均400~500発となっている中、ミリオンクラッカーは1マガジン驚異の3000発が装填されている。
これはミリオンクラッカーの弾丸が9mmと言う非常に小さな弾丸で、故にマガジン内のスペースをさほど圧迫しないがため、大量に装填されているのだと束さんから聞いた。
ちなみにミリオンクラッカー自体は構造が非常にシンプルで、使われているパーツ数が少なく、故に操作が簡単で、極めて頑丈だ。
──パララララララララララッ!──
「……があああっ! チマチマチマチマと鬱陶しい!」
電動エアガン(いわゆるBB弾を発射する玩具)のサブマシンガンやアサルトライフルを、中距離からひたすら撃たれるイメージが近いだろうか?
それがあまりにも鬱陶しいのだろう。
ファンは雄叫びを上げ、両手に携えた青竜刀を、がむしゃらに振り回し、私が放ったミリオンクラッカーの弾丸を叩き落とす事に執着し始めた。
私はファンのまわりを円軌道で動きながら、ミリオンクラッカーの弾幕に、ドラゴンブレスを混ぜる。
──ドォンッ!ドォンッ!──
「ぐっ! くそっ!」
ドラゴンブレスの弾薬が切れ次第、ドラゴンブレスは
やがてミリオンクラッカーもハンディクレイモアも弾薬が尽きた頃、ファンの
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
全身のアーマーの各所に大小様々なヒビが入り、中には配線が剥き出しになっている部分もある。
「降参する事を奨めるが?」
言って私は両手にロデオホースを
「……アンタ、モモヨって言ったかしら?」
「ああ」
「参考までに聞かせて欲しいのだけど、ISの搭乗時間はどのくらい?」
言われて私は考えた。
私のISの搭乗時間か。
グラップラーを受領してからは、暇さえあったらグラップラーを起動し、生身での修行と並行し、運用訓練をしていた。
とは言え1日あたりに起動出来る時間は限られているし、訓練で起動したあとは、少なくない時間をメンテと調整に費やした。
整備室にだって、何回通ったか分からないし、何なら軽いメンテなら自力で出来るようにさえなった。
それらを踏まえると……
「そうだな。大体40時間ぐらいじゃないか?」
「よ、40時間!?」
私の答えを聞き、ファンがその身を戦慄かせた。
「……どうした?」
「そんなの、そんなの、認められる訳ないじゃない! こちとら400時間以上はこの
ファンが青竜刀を構える。
「まだやるつもりか?」
「当たり前じゃない!」
私はファンの眼に、まだ闘志の炎が燃え盛っている事を確認すると、両手に構えていたロデオホースを
「武器を
「……いや?」
私は空中で半身の構えを取り、右手に気を集中させる。
「
「ッ! バカにしてぇっ!!」
私の一言に激昂したファンは、青竜刀を最上段に構えたまま、まだ生きていたらしいスラスターを吹かし、私目掛けて一直線に突っ込んでくる。
私もタイミングを合わせて
そして、激突の瞬間。
「──ぁぁぁあああああっ!」
「川神流・
──ドッゴォッ!!──
蠍が獲物に、自らの尾の毒針を刺すようなモーションで、低い姿勢から相手のみぞおち目掛けて、振り下ろし気味の下段突きを打ち込む川神流・蠍打ち。
それがファンのスラスター推力と、私の
「ぐはぁっ!」
青竜刀を手放して吹き飛んだファンは、アリーナの壁に叩き付けられ、動かなくなった。
『それまで! 鳳選手
こうして私の勝利が決まり、私はピットに帰還したのだった。
……まあ、如何に武術国家出身の代表候補生とは言え、百代に勝てる道理はありません。
鈴ちゃんの今後は?