IS~Ichika Strange~ あるいはこんな織斑一夏   作:Exnyas

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当初、考えていた草稿とは違う形になりました。
そのせいで終盤の構成が難しく、何度も調整してようやく完成しました。
お楽しみ頂ければ幸いです。


21.1組vs3組、決着にて

-_- 百代

 

 

ファンとの距離が加速度的に詰まり、互いに正面衝突をする寸前、ファンがその右手に携えた青竜刀を、私の左肩目掛けて袈裟懸けに振るった。

 

「でぇいっ!」

 

──ブォンッ!──

 

良い太刀筋だが、いささか遅い。

それに素直すぎる。

……まあ、まゆっちの剣速を基準にすると当然の結果か。

 

私はファンの青竜刀を、左肩アーマー表面から5mm上で空振りさせ、ファンの胸元目掛けてハンディクレイモアの銃口を押し当て、トリガーを引く。

 

──ドンドンドンドンドンッ!!──

 

「なっ!? 避け、マズ……ぐはぁっ!」

 

ハンディクレイモアは双発……ダブルバレルの大口径オート(・・・)ショットガンで、引き金を引いている間は、接続されたドラムマガジン内の弾が尽きるまで、その銃口から膨大な量のペレットを吐き出す。

 

音からして5回、つまり双発ゆえに10発分のペレットが全弾直撃したファンは、いわゆるノックバックを受け、体をくの字に折り曲げ、私との距離を開けた。

 

「行くぞ!」

 

私は追撃のため、ロデオホースの銃口をファンに向け、トリガーを引いたが……

 

──ドガガガガガガガガ!──

 

「ちいっ!」

 

──ガギギギギギギギギギンッ!──

 

……ファンは左手の青竜刀を盾にし、私の射撃を凌いだ。

 

「……やるわね。流石は武術四天王、といったところかしら?」

 

「私を知っているのか?」

 

私がそう問いかけると、ファンは当然と答えた。

 

「当たり前じゃない。武に携わる者なら、誰だってその名を1度は耳にするわ。ましてや私は数千年の歴史を持つ、武術国家の出身なの……これでアンタを知らなかったら、ただのモグリだわ」

 

「なるほど……だが、些か情報が古いな」

 

私は直近半年以内に、19回も負けている事をファンに告げた。

 

「……は? 冗談でしょ!?」

 

ファンは目を見開いて驚くが、私は嘘を言っていないし、嘘をつく事が嫌いだ。

 

「アンタほどの武術家が、誰に負けたって言うのよ!? それもわずか半年で19回も!」

 

「言って分かるかは知らないが、織斑一夏という男に負けた」

 

「オリムライチカ……イチカですって!?」

 

「知っているのか?」

 

私の質問に、首を縦に振って『ええ』と答えるファン。

 

曰く、先日IS学園に到着した際、寮棟の端で迷子になったのだが、偶然その場に居合わせた一夏に助けられ、無事に編入を果たせたのだと言う。

 

「アイツがアンタを19回も負かしたって言うの!?」

 

「ああ」

 

「あんな、優男に……信じられる訳ないじゃないっ!」

 

そう叫んだファンが纏う甲龍(シェンロン)の肩部非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)の装甲がスライドし、同時に私のグラップラーのハイパーセンサーが、甲龍の特殊兵装の起動を検知、ヘッドバイザーに被ロックオンアラートを表示した。

 

何か来る。

 

──ヒュゴッ!──

 

刹那、反射的に体を捩った私の顔の横を、見えないナニカが過ぎ去った。

 

「……初見の『龍咆(りゅうほう)』が、クロスレンジで躱されるなんて……くっ」

 

言うファンの視線が私を捉える。

続けて頬に力が入った。

 

──ドンドンドンドンドンドンッ!──

 

「くそっ、なんで、当たらない、のよっ!」

 

……なるほど。

視線で狙いを付け、奥歯の噛みしめをトリガーに発射。

連射も可能、と。

 

だが……

 

「見切った!」

 

私はファンが放つリュウホウとやらを、ファンの視線から弾道を見切ると、まるでダンスでも踊るように、宙を滑り、跳ね、回転し、身を捩り……捩った身の慣性をそのままに前方へ空転……同時に脚部打撃装甲【唯我独尊】を起動、空手の技の1つ『胴回し回転蹴り』をファンに浴びせる。

 

──ガゴォンッ!──

 

「ぐうっ! なんて重たい蹴り……ってか、ISに蹴りとか効く訳……ウソでしょ。SE(シールド・エネルギー)が減ってる!?」

 

「ISによる近接格闘は、アメリカの……何と言ったか。そう、クエイク型だ。クエイク型だけの特権じゃない。日本のオウガ型でも同様の事が出来るのさ」

 

まさかの近接格闘打撃を受け、呆然とするファン。

……隙だらけだぞ?

 

私はファンにロデオホースとハンディクレイモアの銃口を向け、引き金を引く。

 

──ドンドンドンドンドンドンドンッ!──

──ドガガガガガガガガッ!──

 

「きゃああああっ!」

 

2丁4門の銃口から放たれた全弾をその身に浴び、ファンは姿勢を崩すも、負けじと手にした青竜刀2本を柄尻で連結させ、それを勢いよく投げつけてきた。

 

「こなくそっ!」

 

「温いっ!」

 

──ガィンッ!──

 

高速で回転しながら、高速で飛来する──青竜刀手裏剣とでも呼ぶべきシロモノ──を、ファン目掛けて、ファンが投げたより速い速度で蹴り返す。

 

……思いの外、一夏の影響が強いな。

我ながら、随分と足癖が悪くなったもんだ。

 

「な、くうっ!」

 

私が蹴り返した青竜刀手裏剣を強引に掴み取ったせいで、再度姿勢を崩したファンを見ながら、私は1マガジンを撃ちきったハンディクレイモアを収納(クローズ)し、空いた手に連装速射バズーカ『ドラゴンブレス』を展開(オープン)……甲龍(シェンロン)の肩部非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)目掛け、連続で4回、引き金を引いた。

 

──ドンッドンッドンッドンッ!──

──ドガガガァンッ!──

 

放たれた榴弾は白煙の尾を引き、見事甲龍(シェンロン)の肩部非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)に着弾し、炸裂……大爆発を起こした。

 

「【龍咆】が破壊された!? なんて威力の砲弾よ!」

 

……これまでの私なら、ここで遊びに入るのだが、今日は……いや、闘いにおいて金輪際、遊びに入る事は無い。

 

私はロデオホースを収納(クローズ)し、空いた手にサブマシンガン『ミリオンクラッカー』を展開(オープン)する。

 

「そろそろ決める!」

 

私はスラスターを吹かすと、ファンを中心に円または球体を描くように飛び、ファン目掛けてミリオンクラッカーを連射する。

 

このミリオンクラッカーには、私たちが普段『ピストル』と聞いて思い浮かべる銃に装填されるような、いわゆる9mmパラベラム弾が使われている。

 

ISのアーマーを相手にして9mm弾は火力不足感が否めないが、ミリオンクラッカーにはそれを補って余りある長所が3つある。

 

それは弾速と発射間隔、それに装弾数だ。

 

まずは弾速。

銃のみならず、何かを撃ち出す武器は、その投射物が大きくなればなるほど、投射物の飛行速度が遅くなる。

これは単純に飛行中の投射物が受ける空気抵抗によるもので、木刀を振るうのとバットを振るうのでは、木刀の方が明らかに速いのと同じだ。

 

だがミリオンクラッカーの弾丸は9mmという小口径のおかげで、撃ち出した弾丸が受ける空気抵抗が極めて小さいのだ。

故に弾速は非常に速い。

速いとどうなるか?

単純に避けにくい……つまり当てやすい。

 

次に発射間隔。

銃弾の発射には、いろいろな手順が必要で、それを1から10までこなしてようやく、弾丸が1発発射される。

この初弾と次弾の間隔を発射間隔と呼び、これが高いほど連射力が高くなり、秒間に与えるダメージ比率……シューティングゲームで言うDPS(ダメージパーセコンド)が高くなる。

 

ミリオンクラッカーの発射間隔は、分間1400発と非常に速く、断続的に当て続ける事で、凄まじいダメージを稼げる。

おまけに反動が非常に少ないせいで、発射に伴う銃口のブレが小さく、練習すれば相手の頭部に1マガジン分の弾丸を、全弾ヘッドショットする事も出来る。

 

最後に装弾数。

要は1マガジン内の弾丸の数。

多くのIS用サブマシンガンが、1マガジンあたり平均400~500発となっている中、ミリオンクラッカーは1マガジン驚異の3000発が装填されている。

 

これはミリオンクラッカーの弾丸が9mmと言う非常に小さな弾丸で、故にマガジン内のスペースをさほど圧迫しないがため、大量に装填されているのだと束さんから聞いた。

 

ちなみにミリオンクラッカー自体は構造が非常にシンプルで、使われているパーツ数が少なく、故に操作が簡単で、極めて頑丈だ。

 

──パララララララララララッ!──

 

「……があああっ! チマチマチマチマと鬱陶しい!」

 

百万(ミリオン)は言い過ぎにしても、爆竹(クラッカー)は言い得て妙で、ミリオンクラッカーを断続的に当て続けられる事で受けるダメージは、SE(シールド・エネルギー)的な被害よりも、精神的な被害の方が高かったりする。

 

電動エアガン(いわゆるBB弾を発射する玩具)のサブマシンガンやアサルトライフルを、中距離からひたすら撃たれるイメージが近いだろうか?

 

それがあまりにも鬱陶しいのだろう。

ファンは雄叫びを上げ、両手に携えた青竜刀を、がむしゃらに振り回し、私が放ったミリオンクラッカーの弾丸を叩き落とす事に執着し始めた。

 

私はファンのまわりを円軌道で動きながら、ミリオンクラッカーの弾幕に、ドラゴンブレスを混ぜる。

 

──ドォンッ!ドォンッ!──

 

「ぐっ! くそっ!」

 

ドラゴンブレスの弾薬が切れ次第、ドラゴンブレスは収納(クローズ)し、拡張領域(バススロット)内で弾薬をリロードしたハンディクレイモアを展開(オープン)……ジリジリと距離を縮めながら、なおも弾幕を浴びせ続ける。

 

やがてミリオンクラッカーもハンディクレイモアも弾薬が尽きた頃、ファンの甲龍(シェンロン)は、見るも無惨な姿になっていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

全身のアーマーの各所に大小様々なヒビが入り、中には配線が剥き出しになっている部分もある。

 

「降参する事を奨めるが?」

 

言って私は両手にロデオホースを展開(オープン)、ファンの真正面で静止し、銃口をファンに向けた。

 

「……アンタ、モモヨって言ったかしら?」

 

「ああ」

 

「参考までに聞かせて欲しいのだけど、ISの搭乗時間はどのくらい?」

 

言われて私は考えた。

私のISの搭乗時間か。

 

グラップラーを受領してからは、暇さえあったらグラップラーを起動し、生身での修行と並行し、運用訓練をしていた。

 

とは言え1日あたりに起動出来る時間は限られているし、訓練で起動したあとは、少なくない時間をメンテと調整に費やした。

整備室にだって、何回通ったか分からないし、何なら軽いメンテなら自力で出来るようにさえなった。

 

それらを踏まえると……

 

「そうだな。大体40時間ぐらいじゃないか?」

 

「よ、40時間!?」

 

私の答えを聞き、ファンがその身を戦慄かせた。

 

「……どうした?」

 

「そんなの、そんなの、認められる訳ないじゃない! こちとら400時間以上はこの甲龍(シェンロン)に乗って訓練してきたのよ!? それが、搭乗時間わずか40時間の、素人に毛が生えたような相手に、ここまでされるなんて!!」

 

ファンが青竜刀を構える。

 

「まだやるつもりか?」

 

「当たり前じゃない!」

 

私はファンの眼に、まだ闘志の炎が燃え盛っている事を確認すると、両手に構えていたロデオホースを収納(クローズ)し、腕部打撃装甲『天上天下』を起動する。

 

「武器を収納(クローズ)して、何のつもり? まさか、降参してくれるの?」

 

「……いや?」

 

私は空中で半身の構えを取り、右手に気を集中させる。

 

(はなむけ)に、川神流の一撃で沈んでもらおうかと思ってな」

 

「ッ! バカにしてぇっ!!」

 

私の一言に激昂したファンは、青竜刀を最上段に構えたまま、まだ生きていたらしいスラスターを吹かし、私目掛けて一直線に突っ込んでくる。

 

私もタイミングを合わせて瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動させ、身を低くしてファンに肉薄する。

 

そして、激突の瞬間。

 

「──ぁぁぁあああああっ!」

 

「川神流・蠍打(さそりう)ちぃっ!」

 

──ドッゴォッ!!──

 

蠍が獲物に、自らの尾の毒針を刺すようなモーションで、低い姿勢から相手のみぞおち目掛けて、振り下ろし気味の下段突きを打ち込む川神流・蠍打ち。

 

それがファンのスラスター推力と、私の瞬時加速(イグニッション・ブースト)の推力と合わさり、何倍……いや、下手をすれば何十倍もの威力になって、ファンのみぞおちに突き刺さった。

 

「ぐはぁっ!」

 

青竜刀を手放して吹き飛んだファンは、アリーナの壁に叩き付けられ、動かなくなった。

 

『それまで! 鳳選手SE(シールド・エネルギー)エンプティ! 勝者、1年1組、川神百代選手!』

 

こうして私の勝利が決まり、私はピットに帰還したのだった。

 




……まあ、如何に武術国家出身の代表候補生とは言え、百代に勝てる道理はありません。

鈴ちゃんの今後は?
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