IS~Ichika Strange~ あるいはこんな織斑一夏   作:Exnyas

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22.超人対戦、勃発にて

-_- other

 

 

「……というわけで、初戦は川神さんが勝ちましたが……」

 

「問題はこの後、だな」

 

「蹴撃鬼と武神の勝負か」

 

「激しい戦いになりそうですね」

 

一般人枠である百代が、国家代表候補生である鈴音(リンイン)を下し、興奮冷めやらぬ観客席が見える管制室で、山田真耶・織斑千冬・オータム・スコールという4人の美女が話し込んでいた。

 

「……オータム先生の所見は?」

 

真耶がオータムに問う。

 

「五分五分……と言いたいが、蹴撃鬼の蹴りを直接体感したアタシからすると、川神の勝率は低い。良くて3割だ……千冬センセは?」

 

「私か? そうだな……ああ、似たような意見だな。それも、川神が一切遊ばなくてやっと3割だ」

 

「川神さん……戦いを楽しむあまり、手を抜く(遊ぶ)クセがありますものね」

 

手にしたバインダーを見ながら、スコールがそう締めくくる。

 

バインダーには川神学園時代の一夏と百代の調査書が綴じられている。

 

 

織斑一夏:17

九鬼財閥総帥【九鬼帝】とその妻【九鬼局】の養子で、地頭が良く、成績優秀で容姿端麗、運動神経抜群の快男児

コミュニケーション能力が高く、学内の様々な生徒や教師を筆頭に、日本の政府首脳陣や、世界各国の重鎮・著名人とも深い交流関係を持っている

好色漢を自認しており、特に乳房が大きな美(少)女を好み、七賢人(しちけんじん)の1人で日本が誇る9人の英傑『日本九鬼』の1人『拳打鬼』を兼任する【篠ノ之束】とは婚約関係にある

世界最高峰の足技・蹴り技の使い手で、同じく卓越した脚技の持ち主の格闘家ルガール・バーンシュタインこと、九鬼家従者部隊永久欠番ゼロの【ヒューム・ヘルシング】と互角に蹴り合って、五体満足で立っていられるだけの実力と技量を持ち、ヒュームからは愛弟子と認められ、日本九鬼の1人で『蹴撃鬼』の肩書きを持つ

同じく日本九鬼の1人で『斬撃鬼』である【織斑千冬】は、血の繋がらない姉

 

川神百代:17

日本九鬼の1人『気功鬼』こと【川神鉄心】の実の孫で、日本九鬼には劣るものの、それでも世界に通じる強者の肩書きである『武術四天王』の一角を担っている

学内のみならず、国の内外を問わず、同性からも憧れられる非常に整った美麗な容姿を持つが、口を開けば常に誰かと戦いたい旨の言葉を発する生粋の戦闘狂(バトルジャンキー)で、肩書きどおり、凄まじいまでの戦闘能力と病的なまでの戦闘欲求を持つ

自身のあまりの強さ故に、如何なる戦いもすぐに終わってしまう為、常日頃から全力を出さず、手を抜く事で、より長く戦おうとする傾向が強い

川神学園在学中は美女を好み、度の過ぎたスキンシップを繰り返していたが、ある日を境にスキンシップを止め、真面目に勉学に励み、真面目に修行に勤しむようになった

当時の担任曰く『人が変わった』

3年に在籍中に高いIS適性が発覚し、IS学園に編入、川神学園を中退する事になったが、それまでに築いた交遊関係はそのまま

 

 

「……あれ? 一夏と百代って同い年なのに、川神学園では学年が違ったのか?」

 

「ああ。一夏は遅生まれの17歳だから2年、川神は早生まれの17歳だから3年だ」

 

「なるほど?」

 

「日本の年齢別在籍学年制度はややこしいわ」

 

よく分かっていない様子のオータムと、悩ましげな表情を浮かべるスコールに、千冬と真耶は乾いた笑いを返した。

 

「……さて、そろそろ時間なわけだが」

 

「両者、準備は?」

 

「織斑くんには先ほど、整備室からBピットに移動するよう伝えました。束さんと箒さんを伴って移動中です」

 

「百代ちゃんはAピットでグラップラーの弾薬を補充してるわ。鈴音さんとの戦いで、直撃打をもらってないのが幸いして、弾薬の補充だけで済んでるみたい」

 

言ってスコールはコンソールのスイッチを操作し、管制室のモニターに、AピットとBピット、それぞれの様子を映し出した。

 

モニターには百代と辰子、そしてその2人が見守る中、グラップラーに手入れを施す整備班の様子が映るAピットの映像と、クッキーを装着した一夏と、そのクッキーにケーブルでパソコンを接続し、パラメーター調整をする束、そしてそんな2人を見守る箒の様子が映るBピットに様子が、それぞれ表示されている。

 

「……こうして見ると、百代ちゃんのグラップラーと一夏くんのクッキー。瓜二つね」

 

「それはそうだ。ここだけの話だが、織斑のクッキーは、現行のオウガの初期モデルを徹底的にカスタムした機体。対して川神のグラップラーは、オウガを元に作られた新型機だからな。クッキーがオウガのプロトタイプである以上、ベースフレームからして、両機が似るのはある意味では必然だ」

 

なお、千冬は1つ、嘘をついている。

というのも、クッキーはオウガの初期モデルではない。

 

実際はクッキーが最初に完成し、クッキーを元にオウガが作られ、そのオウガの新型機を百代の専用機としているのだ。

 

「なるほど、道理で似てるわけだ」

 

余談だがクッキーの正式な開発コードはKUKI-High-Intelligence-Full-Automatic-Life-Support-Robotと言う。

九鬼財閥製高知能型全自動生活支援ロボット、といったところか。

略称は『K-Hifals-R(ケー・ハイファルス・アール)

 

それを誕生日プレゼントとして受け取った一夏が、当時のセンスで『妙に厳つい開発コードと略称だ』と感じ、その場で『九鬼財閥製のロボットで、いずれは量産して売り出すんだから、親しみやすく【クッキー】でいいじゃん』と評し、以降は財閥内でもクッキー呼びが定着した……と言う経緯がある。

 

「……あ、2人とも準備が出来たみたいですよ、先輩」

 

そうこうしている内に、AピットとBピットのそれぞれで、次の試合の準備が出来たらしく、真耶が千冬に声をかける。

 

「山田先生、今は先生の時間だ……さて、オータム先生は実況席に連絡を。スコール先生はそれぞれのピットに発進指示をお願いします」

 

学生時代のクセが抜けないのか、時折自身を先輩と呼ぶ真耶を嗜め、千冬はオータムとスコールに指示を出す。

 

「了解」

 

「分かったわ」

 

オータムはインカムで、スコールはコンソールマイクで、それぞれ連絡を行う。

やがてモニターに、Aピットでグラップラーを纏い、カタパルトに乗った百代と、Bピットでクッキーを纏い、カタパルトに乗った一夏が、それぞれ映し出された。

 

「……両者、カタパルトへの騎乗を確認したわ。5カウント後に射出よ、準備はいい?」

 

スコールが口頭で5秒数え……

 

《1年2組織斑一夏、クッキー、行くぜ!》

《1年1組川神百代、グラップラー、出る!》

 

……似たような口上を述べ、2機の同型ISがアリーナへと飛び出して行った。

 

 

******

 

 

+_+ 一夏

 

『クラス代表交流戦、1年の部、決勝戦! 両選手の入場でーす!』

 

そんなアナウンスと共に、俺とモモセンパイはアリーナで向かい合った。

 

『西側Aピットより飛び出しましたのは、鮮やかな機動で被弾をゼロに抑え、かつ怒涛の攻撃をしかけ、強烈な一撃で国家代表候補生を下した、1年1組川神百代選手!』

 

紹介されたモモセンパイは、グラップラーを纏ったまま、四方に礼をする。

 

『東側Bピットより飛び出しましたのは、希少な男性IS適合者にして、入学試験であの山田先生を蹴り技で下し、1年最強とも噂される蹴撃鬼、1年2組織斑一夏選手!』

 

言われて俺もクッキーを纏ったまま、四方に礼をする。

するとモモセンパイがその全身に闘気を滾らせ、一部界隈の武芸者にしか伝わらない、とある構えを取った。

 

「……一夏。私はお前と、思い切りやれる今日この日を、一日千秋の思いで待っていた」

 

「待っていたのは分かりますけど、その構えの意味、知ってます?」

 

「もちろん」

 

モモセンパイが取っている構えは、意味が通じる界隈では『善牙(ぜんが)の構え』と呼ばれ、その構えを取る事は、一切の武器を使わず、己の肉体と闘気のみで戦う事を宣言するのと同義だ。

 

「お前と真剣(マジ)()り合うなら、これしかないと思ってな」

 

「……なるほど。なら、応じないのは失礼か」

 

言って俺も善牙の構えを取り、闘気を滾らせ、モモセンパイと向き合う。

 

『おおっと! 両者、まったく同じ構えを取りました! 武器は展開(オープン)しな……え? 織斑先生? あ、始めさせろ? 分かりました……では、ルールは先ほどと同じく、国際IS競技法に則り、試合時間は30分! 時間以内に相手ISのSE(シールド・エネルギー)を削りきると勝利です! ただし、決着が着いて絶対防御起動中の相手への攻撃は禁止、場合によっては懲罰の対象となります!』

 

「……私たちの場合SE(シールド・エネルギー)は、ある種の(かせ)だよな」

 

「当たり前に徹します(・・・・)からね」

 

『それでは! 試合開始っ!』

 

──ドンッ!──

 

そうアナウンスが告げた次の瞬間、俺の胸にモモセンパイの左正拳突き……いや、コークスクリューが刺さった。

 

「ぐっ!」

 

「せいっ! どりゃっ!」

 

──ゴッ!──

──ドカッ!──

 

続けざまに右アッパーが顎を、左の打ち下ろしが俺の頭部を叩く。

 

「うっ、くっ! クソ、まさかこれは……チッ!」

 

俺はその一連のモーションに覚えがあった。

舌打ちをしてスラスターを吹かし、モモセンパイから距離を取る。

 

「おーいて……まさかモモセンパイから、格ゲーの技を受けるとは思わなかったぜ」

 

いまモモセンパイが放った3連撃(コンボ)は、ギルティギアという格闘ゲームに登場する、スレイヤーというキャラクターの代表的な必殺技。

 

最初の左コークスクリューが『パイルバンカー』で、続く右アッパーが『アンダープレッシャー』

そしてラストの左打ち下ろし(スカイフック)を『イッツレイト』と言う。

 

本来のスレイヤーであれば『ダンディーステップ』という前提技を出してからしか放てないコンボだが、モモセンパイはダンディーステップをスラスターブーストで代用したとみえる。

 

「パイルバンカー、アンダープレッシャー、イッツレイト……スレイヤーか」

 

「見破られたか。なかなか高い再現率だろう?」

 

「ああ、完コピと言っていい。モロやスグルあたりにでも監修させたか?」

 

「良く分かったな」

 

アイツらもよくやる。

モモセンパイに格ゲームーブを仕込むなんてな。

 

「なら……俺もギルギアでお返しだっ!」

 

言って俺はモモセンパイ目掛けスラスターブーストを吹かし、同時にモモセンパイの胸元に右の飛び蹴りを当てて、即座に空中で逆立ちするような姿勢を取りつつ、下から上に跳ね上がるようなモーションでモモセンパイの顎に連続蹴りを入れ、余韻の空中で転身しながら振ったカカトをモモセンパイの頭頂部に当てる。

 

──ドスッ!──

──ガガガッ!──

──ゴッ!──

 

「ぐっ! あがっ! がっ! チイッ、やるな……紗夢(ジャム)の『龍刃(りゅうじん)』『剱楼閣(けんろうかく)』『逆鱗(げきりん)』のコンボか」

 

「正解だ……受けて紗夢の技だと見抜くあたり、だいぶやり込んだな?」

 

「ああ、ギルギアのみならず、色んな格ゲーから技を盗んだ。こんな具合に……虎煌拳(こおうけん)!」

 

──ドッ!──

 

言ってモモセンパイが右の掌底を前方に突き出すと、オレンジ色の気弾……気功波が飛んできた。

 

「おい、急に龍虎かよ! なんでもありか!? ベノムストライク!」

 

──ボッ!──

 

それを見て、かなりの威力だと察した俺は、直撃を回避し、あわよくば相殺するため、中段回し蹴りのモーションで、足先から水色の気弾を蹴り放つ。

 

──バシュッ……──

 

俺とモモセンパイのちょうど真ん中で激突した互いの気弾は、同時に打ち消し合って消滅する。

 

「むう……足から撃てる気功波もあるのか……知らなかった」

 

「……つーかモモセンパイ、前にKOFは女性格闘家チームが好きだって言ってなかったか?」

 

「ああ、言った。それが?」

 

「ベノムストライクの使い手『キング』は、女性格闘家チームのレギュラーだぞ?」

 

「……あー、悪い。誤解させたな。私は確かに女性格闘家チームが好きだが、実際に使ってプレイした事はないんだ」

 

なんだそりゃ。

 

「KOFでは大抵、龍虎チームを使ってプレイしているからな」

 

「……ならベノムストライクじゃなくて、龍撃閃(りゅうげきせん)で迎撃した方がよかったかもな」

 

「ロバートか、なるほど──ッ!」

 

直後、モモセンパイがスラスターブーストで距離を詰めてきて、暫烈拳(ざんれつけん)を放ってきたため……

 

「ッ!」

 

──ガガガガガガガガガガガガガッ!──

 

……放たれる拳の1発1発に幻影脚(げんえいきゃく)を合わせて捌くと、互いに距離を取って仕切り直しになった。

 

SE(シールド・エネルギー)には、互いにまだまだ余裕がある。

 

楽しくなってきたぜ。

 

 




善牙の構え
正式名称?は親分の空手の構え
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