IS~Ichika Strange~ あるいはこんな織斑一夏   作:Exnyas

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24.戦後、保健室にて

倒されてしまったモモセンパイを保健室に連れ込んだ俺は、そこで想像もしない怪現象に遭遇してしまい、どうしたものかと頭を抱えていた。

 

と言うのも、モモセンパイを保健室のベッドに寝かせた直後の事。

目を閉じたまま、意識がないはずのモモセンパイが、急にモゾモゾと体を動かしたかと思ったら、着ていたISスーツを全て脱ぎ、全裸になった。

 

そして次の瞬間……

 

──……ドンッ!──

──ミチッ、ミチミチミチ……──

 

……モモセンパイの体から闘気が迸り、かと思ったらモモセンパイの双球が、ミチミチと音を立てながら、大きく膨らんでいくのだ。

 

「なんだこれ。え? どういう現象?」

 

するとそれを横で見ていた辰姉(ピットから駆けつけてきた)が口を開いた。

 

「……たぶん、いちくんの気を取り込む事で、急速な肉体改造をしてるんだと思う」

 

「俺の気を取り込んで?」

 

「うん。噂でしか聞いたことはなかったんだけど、一部の壁を越えた武術家は、他人の気を受ける事で肉体が変質して、その気に適応した肉体になる事があるんだって」

 

辰姉曰く、壁を越えた武術家であっても、普段ならこの現象は起こらない。

何故なら本人には本人の気が存在し、肉体は普段、その本人の気で満たされているから。

 

だが今回のモモセンパイは事情が異なる。

 

モモセンパイは俺と戦い、あのバカに撃墜されるまでの間に、自分の気をほぼ全て使いきっていた。

多分、あの龍虎乱舞が最後だったんだろう。

 

しかし、その体から、気が全てなくなったわけではない。

その体には、俺からの攻撃を受ける事で、俺の気が蓄積されていた。

 

それを取り込む事で、肉体が俺の気に適応するよう、急速に変質している、というのが辰姉の見解だった。

 

「一部の道場では、才能がある門弟に、師範がこの方法で気を注入し、気の才能を開花させる事もあるらしいよ」

 

「あー、前にモモセンパイから聞いた事があるな。ワン子がその方法で鉄心さんの気を受けて、気の扱いに目覚めたとか」

 

ただ、この方法で気の扱いに目覚めたとしても、扱える気の初期総量は本人の次第だし、努力(修行)で増やすにしても、目に見えて増える訳ではない。

……一部の例外以外は。

 

ちなみに鉄心さんから聞いた話だと、キャップや大和、モロやガクトみたいな一般人を10程度とした場合、モモセンパイの気の総量がだいたい1200程度で、俺が1150程度。

 

他にも、目覚めたばかりのワン子が50程度で、千冬姉が1000程度らしい。

 

ちなみに千冬姉の1000は、本人の剣術の腕前には一切作用していない。

千冬姉曰く『私の剣術は技術と経験が100%だ。気は1%も使っていない。むしろ気を使うと太刀筋が鈍る』との事。

 

「え”!? あのおねーさん、日本九鬼なのに1000で、いちくんより少ないの!?」

 

「らしいよ。鉄心さん直々に見てもらった結果だから、間違いない」

 

「じゃああの、おっぱいぷるんぷるーんな彼女さんは?」

 

「束姉か? 鉄心さんの評価だと推定3万だったか。鉄心さんをして、束姉が血縁者だったら、モモセンパイを差し置いて後継者に指名していたって言わしめる逸材」

 

「うえぇ……私なんか、プーだった頃のししょーに見てもらったとき、900ぐらいだって言われたのに」

 

辰姉が言う『プーだった頃の師匠』とは、梅屋に就職が決まる前の釈迦堂さんの事を指す。

あの人も大概な気の総量があり、確か……20000くらいだったか?

 

……鉄心さん本人はざっと10万だそうだ。

まあ、納得こそしても、驚きはしない。

だって気功鬼だぜ?

 

「んで? この現象はいつ治まるんだ?」

 

言う間も、モモセンパイの体は、劇的な変化を続けている。

 

膨らみ続ける双球には、既にかつての面影がなく、サイズ的には束姉の1ランク下程度にまで急成長を遂げた。

もっと言えば、箒より2ランクは上。

 

手足はさらにキュッと引き締まり、筋肉が付いて長くなり、腰がグッと括れ、腹には割れた腹筋がうっすらと見える。

わずかだが、尻も大きくなっている。

 

俺はモモセンパイにタオルケットをかけた。

 

「んー、いちくんに撃ち込まれた気が尽きれば止まるんじゃない?」

 

「何を悠長な……」

 

とか言っていたら、ガラリというドアが開く音が耳に届いた。

 

「ほほ、邪魔するぞい」

 

誰かと思ったら、そこに立っていたのはモモセンパイの実の祖父で、川神院総代の川神鉄心さんだった。

 

「鉄心さん!?」

 

「なんでここに!?」

 

「ほうほう……外部からの気は充分じゃの。これならワシも簡単じゃ」

 

鉄心さんは驚く俺たちに目もくれず、ベッドに寝ているモモセンパイに近づき、モモセンパイの額と喉、みぞおちと下腹部のそれぞれを指先で突いた。

 

するとそれまで荒かったモモセンパイの呼吸がゆるやかになり、眉間に寄っていたシワがスッとなくなったではないか。

 

「うむ。これで良いじゃろう」

 

「あの、鉄心さん?」

 

「おお、こんにちわじゃ一夏くん、辰子ちゃん」

 

「「こんにちわ、鉄心さん」」

 

挨拶をされて反射的に挨拶を返した俺と辰姉を見て、満足そうに頷く鉄心さん。

……いや、そうじゃなくて!

 

「あの、鉄心さん。鉄心さんは何故ここに?」

 

「ワシがここにおる理由か? 簡単じゃ。モモと一夏くんの戦いを観客席で見ておってな。あの結末じゃったろう? すぐにモモが飢餓状態になったと察してのう。このあいえす学園の先生に話をして、手当てをしに来たのじゃ」

 

「飢餓状態?」

 

「うむ」

 

鉄心さんの話によれば、一般的な気功術者は、体内の気を全て使いきると体が休眠状態となり、身体能力が一般人に近しいレベルにまで低下する。

 

そうして肉体が休眠状態に入る事で、下丹田と呼ばれる気功術的な急所が活性化し、気の残量が徐々に回復していく。

 

だがモモセンパイの場合、気を全て使いきった場合、体が休眠状態になっても下丹田は活性化しない体質らしい。

 

気を使いきり、体が休眠状態になり、下丹田は活性化していない状態のモモセンパイは、外部から受けた気ならば、それがどんな気であれ、下丹田に回そうとする。

 

「というのがモモの飢餓状態じゃ。飢える餓えるで飢餓ではなく、いっそ『気に餓える』で気餓(きが)状態と呼ぶべきな気がするぞい」

 

「治す方法はあるんですか?」

 

「もちろんじゃとも。気餓状態に陥ったモモを元に戻すには、似た質の気を、モモが失ったに近しいだけの量を外部から注ぎ入れ、額・喉・鳩尾・下丹田のそれぞれにある点穴(てんけつ)を突いてやれば良い」

 

言ってその顎に蓄えた長い髭をさすり、久しぶりじゃのうと呟く鉄心さん。

聞けばモモセンパイがこうして気餓状態に陥るのは、実に3年ぶりだと言う。

 

「……で、1つ疑問なのじゃが?」

 

「何でしょう?」

 

「モモの乳房、こんなにデカかったかのう?」

 

「いえ、気餓状態の途中でグングン膨らみまして」

 

「……なるほどのう。さては一夏くん、お主、筋金入り……いや、鉄骨入りのおっぱい星人じゃな?」

 

「何故、お分かりに?」

 

「気餓状態を回復させるには、外部から似た質の気を、失ったに近しいだけの量で注ぎ込む必要がある……というのはさっき言ったとおりじゃが、それをすると取り込んだ気の持ち主に適応出来るよう、肉体の一部が作り替えられるんじゃ」

 

辰姉の話は本当だった。

 

「ここで肝心なのは気の持ち主に適応出来るよう、肉体の一部が作り替えられる事。これは何も気功術的な側面のみならず、その気の持ち主の趣味や嗜好に合うよう、肉体も改造される事も含んでおる。目は口ほどに物を言うという言葉があるが、ワシら気功術者からすれば、気も口ほどに物を言うんじゃ」

 

気質を見れば、その人間がどんな人物かはだいたい分かるぞい、と鉄心さんは言う。

 

「つまりいちくんが巨乳狂い(ボイニスト)だから、そのいちくんの気を取り込んだモモちゃんの体は、いちくん好みに進化した……?」

 

「そのとおりじゃ。しかし一夏くんも若いのう。胸が第一、しかも小さいより大きい方が好きとはのう?」

 

うわぁ、公開処刑かよ、勘弁してくれ。

 

「……うっ」

 

その時、モモセンパイが意識を取り戻した。

 

「モモセンパイ」

 

「モモちゃん」

 

「一夏……それに、辰子も。ここは……?」

 

「学園の保健室。モモセンパイは気が尽きた状態で、あのレーザー砲を持った襲撃犯にナタ状の剣で斬られ、SE(シールド・エネルギー)が尽きたんだ」

 

「……つまり私は飢餓状態に陥ったのか。だが今は体内に溢れんばかりの気を感じる……この気は誰が?」

 

「多分、いちくんの気だと思うよ。モモちゃん、いちくんと気で激しく戦ってたから、いちくんの気が体内に蓄積されてたんだ」

 

「それをワシが点穴で整えたんじゃ」

 

「ジジイ……悪い、助かった」

 

言って体を起こそうとするモモセンパイだったが、その肩を辰姉に押し留められる。

 

「あー、モモちゃん。今は起きない方がいいよ」

 

「何故だ?」

 

「モモちゃん、いま素っ裸だし、いちくんの気を取り込んだ関係で、おっぱいが特盛になったし。起きたらタオルケット落ちちゃうよ」

 

「……何だと?」

 

言われてモモセンパイはタオルケットの中で自分の体をまさぐり、ふおおと小さな歓声を発した。

 

「モモが意識を取り戻したことじゃし、ワシは帰るぞい」

 

「お戻りになられるんですか?」

 

「うむ。モモよ」

 

「なんだ?」

 

「一夏くんとあいえすで戦う前後で、モモの体型が大きく変化しておる。体幹バランスの把握を忘れずにな」

 

「分かった」

 

鉄心さんは去っていった。

入れ替わりに千冬姉と、小型の箱状の機械を手にした束姉が保健室に入ってきた。

 

「失礼する」

 

「やっはろー」

 

「織斑先生、束姉も。あのバカ1とバカ2はどうなったんですか?」

 

「ああ、アイツらか?」

 

千冬姉曰く、日本九鬼の中でも(俺を含めて)とりわけ武力色の強い鬼を前に、全身装甲(フル・スキン)とは言えISを纏っているだけの一般人が、手も足も出せるはずがなく、マッハでバカは叩きのめされ、千冬姉の連絡でアリーナに入ってきたその他教員に捕縛されたらしい。

 

「モモちゃんのグラップラーと、バカ1とバカ2のISから吸い出したデータが決定的な証拠になったよ。アイツらはIS学園法で『数百人を対象とした殺人未遂罪』が適用されて拘束、今は隔離区画に放り込まれてる。そう時間もかからないうちに、薬物処理がされると思うよ」

 

「薬物処理って?」

 

「ここだけの話だが……束が作った数々の道具の中には、世間には出せないヤバい物がいくつもあってな。そのうちの1つに、摂取すると、ISを起動出来なくなる、という薬効を持つ薬物がある」

 

ノレマセンと銘打たれたその薬物は、摂取した人間の遺伝子に作用する。

 

束姉曰くISは、起動に際して人間の遺伝子の一部を参照しており、そこが女性ならば、ISは問題なく起動するのだが、ノレマセンを投与された人間は、その参照される部分だけを男性に変える効能があるらしい。

 

ちなみにIS起動に際して参照される遺伝子だが、いわゆる『IS適性値(ランク)』やIS操縦の上手い・下手には関係が無い。

 

「そんな……ノレマセンだっけ? それを投与する事になる……と?」

 

「ほぼ間違いないだろう」

 

「もちろん、国際IS委員会や日本政府、九鬼財閥もこの薬の存在は知ってるし、国際IS委員会と日本政府のそれぞれから許可がおりないと使えないけど、これまでに何回か使った事はあるよ」

 

ちなみにこのノレマセンを投与されると、ISの起動こそ出来なくなるだけで、ISの研究や開発は可能なんだそうだ。

 

あくまで乗れなくなるだけ。

だから名前が『ノレマセン(乗れません)』なんだろうな。

 

「くくっ、可哀想に……女性上位思想なんぞに染まらなければ、IS適性を失う事も無かっただろうになぁ」

 

まあ、総勢数百人を相手にした殺人未遂だ。

自業自得と言える。

 

「……で? 川神の具合は?」

 

「それが……」

 

俺はモモセンパイに、これまでの一連の流れを、千冬姉や束姉に説明していいか許可を求める。

するとモモセンパイからは、頼むと許可が得られた。

 

モモセンパイを保健室に連れ込んでから起こった一連の流れを説明すると、千冬姉に後ろを向くよう指示された。

 

「……川神、立てるか?」

 

「は、はい……よっ、おおっと」

 

「っと、大丈夫か?」

 

「す、すみません。なんか、体のバ、バランスが……」

 

「一目で分かるほどに体型が変わっているからな。無理もあるまい」

 

後ろから千冬姉とモモセンパイの声が聞こえる。

 

「これはこれは……ほうほう。グラップラーから吸い出した情報でもそうだけど、体型がかなり変わったね」

 

「そんなに変わりましたか?」

 

「背骨と足が長くなったから、身長が伸びて、胸がメチャクチャ膨らんでる。手足が筋肉で少し太くなった。グラップラーのオーバーホールは必須だし、制服もISスーツも新調すべきだよ。とりあえずこれ持ってきたから、制服とISスーツ以外で何か作って着るといいよ」

 

「あ、着れるんですだ……ありがとうございます」

 

後ろからザザザザザザという、何かの機械が動くような音が聞こえ、少ししてから肩を叩かれる。

 

「もうこっちを向いていいぞ、織斑」

 

「あ、はい」

 

千冬姉に言われて後ろを振り返ると、そこにはむしゃぶりつきたくなるような美少女が、頬を赤らめて立っていた。

 

「うわぁ」

 

「な、なんだ一夏。その『うわぁ』って……ど、どこか変か?」

 

言って自分の体をまさぐるモモセンパイ。

 

「いや、その。えらく、俺好みになったな、って」

 

正直に言おう。

俺はいま、激しく勃○している。

人の目が無かったならば、モモセンパイに飛びかかり、押し倒す事が間違いないぐらいには。

 

「ほう? そんなにか」

 

「ちーちゃんちーちゃん。今、いっくんのいっくんは全力全開状態だよ。クッキーのスキャン結果だから、間違いない」

 

おいコラ、クッキー。

お前何俺のパーソナルデータを……何?

整備主任の命令には逆らえないだと?

 

「束さん」

 

「なんだい? モモちゃん」

 

「今の話は、本当ですか?」

 

「いっくんのいっくんが全力全開モードって話? 本当だよ?」

 

「なら……一夏、頼みがある」

 

モモセンパイの頬の赤みが増す。

この流れは、もしかして……

 

「私を、抱いてくれ。抱いて、一夏の女にしてくれ」

 

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