IS~Ichika Strange~ あるいはこんな織斑一夏 作:Exnyas
サブヒロインの登場です。
いろいろ捏造してるので、あらかじめご容赦ください。
波乱の記者会見から数日、俺は事前学習という名目で、IS学園の整備室棟に急増された部屋に詰め、参考書を読んでいた。
表紙にデカデカと必読の文字が印刷されたその参考書は、一昔前の電話帳のようなサイズと文章ボリュームを誇り、必読と印刷がされてなければ、進んで読む事がなさそうな代物だった。
「……ちょっと休憩するか」
俺は手にしていた参考書をテーブルに置き、俺の補佐役を名乗る【
「山田先生」
「はい、何でしょうか? 織斑くん」
「集中力が欠けてきたので、ちょっと休憩します。甘いものが補給したいです」
「でしたら購買へ行きましょうか。いずれは1人でも行ってもらうので、場所を覚えてくださいね?」
そう言ってソファーから立ち、廊下へ続くドアに向かう山田先生。
「分かりました」
俺は山田先生の後に続き、廊下に出る。
「参考書の進捗はどうですか?」
リノリウムの床にコツコツと靴音を響かせ、廊下を歩いていると、山田先生からそんな質問をされた。
「そうですね。昔から篠ノ之博士にくっついて、IS整備を手伝っていたので、知識面は問題ありません……が、知識面だけなので、実技が不安です」
「入学試験で私を倒したのに、ですか?」
山田先生を相手にISで戦い、どれだけ動けるか、というのが入学試験の実技部門だったのだが……そこで俺は学園に配備されている九鬼財閥の量産型IS【オウガ】に搭乗し、山田先生と壮絶な撃ち合いの末に近接格闘に持ち込み、自身の【
監督官を務めた千冬姉曰く『防御力重視の打鉄なら落ちてた。火力重視のラファールでも危うい。学園配備の量産ISで唯一、近接格闘武装を積んだオウガだから勝てたな』との事。
「いやぁ……あれは山田先生が手加減してくれたからの辛勝であって、山田先生が本気なら勝ててませんよ」
山田先生はこう見えてISの元日本代表候補で【
現役時代はラファールをフルカスタムした【ラファール・リヴァイヴ・スペシャル】その名も【
4枚の巨大なシールドが2枚ずつ、ウイング状に連結された武装と、豊富な実弾銃が特徴で、この4枚のシールドを射出し、有線遠隔操作で動かして相手をシールドの内側に閉じ込め、シールドに銃を乱射して、跳弾で四方八方から削りきる【
「そうでしょうか? 織斑くんなら、私の必殺技も、何とか切り抜けそうですが」
「あー、どうでしょうね?」
言ってこちらを見上げる山田先生から目を反らす。
山田先生は……束姉に勝るとも劣らない、凄いサイズの双球の持ち主で、近くで下から見上げられると、その超大な双球に、否応なしに視線が向いてしまう。
だから目を反らすのだ。
一応、
射出されたシールドに完全に閉じ込められる前に、飛んできたシールドを破壊すれば良い。
閉じ込められる前に
クッキーでやるなら後者だな。
そのまま
「そうですか……」
言って再び歩き始めた山田先生を追う。
歩く事体感5分、山田先生がT字路になった廊下の真ん中で立ち止まった。
「はい、織斑くん」
「何でしょう?」
「ここを左に曲がると教室棟。右に曲がると購買と食堂です。学園に通い始めると、よく使う通路なので覚えてください」
「左が教室棟で、右が購買と食堂……分かりました」
記憶力には自信がある。
一度通った道は、9割がた覚えている。
……行く度に地形が変わる、親不孝通りみたいな場所じゃない限りは。
「じゃあ購買に向かいますよ」
「はい」
そう言って山田先生はT字路廊下を右に向かい、購買および食堂への道を歩きだす。
「この廊下、アリーナが見えるんですね」
「ああ、第3アリーナですね。学園で一番広いアリーナです」
IS学園のアリーナは全部で7つあり、この廊下から見える第3アリーナは、大規模なスタジアムに匹敵する広さを持つそうだ。
アリーナでは打鉄を纏った生徒2人が、ライフルの撃ち合いをしているのが見えるのだが、片方がなんと、モモセンパイにそっくりなのが恐ろしい。
あのセンパイの場合、俺を追ってIS学園に来かねない恐ろしさもある。
「着きましたよ。ここが購買です」
「……え?」
購買に着いたと言われて、目をそちらに向けると、そこは購買とは名ばかりの……スーパーマーケットのような広い売り場を持つ一角だった。
「広いですね」
「IS学園は世界中から教師や生徒が集まります。それだけ文化や風習が異なるので、取り扱う商品も幅広くて」
「なるほど」
そんな時、購買から1人の女子生徒が出てきた。
青く長い髪を持つ、長身の女子生徒だった。
彼女はその手に、弁当と思わしき容器が満載されたビニール袋を提げているのだが、俺はその女子生徒の顔に見覚えがあった。
「……え?
「んー……?」
俺に辰姉と呼ばれた女子生徒は、気が抜けたような声を発しながら、ゆっくりと目線をこちらに向けた。
そして……
「あー! いちくんだぁ!」
……ガバリと抱きしめられる。
「貴女は確か新入生の……
「はい」
彼女の名は【板垣
あのモモセンパイとタメを張る腕前の持ち主で、普段はその力をセーブしているが、リミッターを外す事により、その力が爆発的に上昇し、素手の一撃で広範囲のアスファルトを陥没させ、蜘蛛の巣状のヒビを入れるほどになる。
束姉や山田先生には劣るが、立派な双球の持ち主で、本人が意識していないボディータッチが多く、ボイニストの俺はたびたび勘違いをしそうになる。
ちなみに俺より2つ年上。
つまり、モモセンパイの1つ上。
「……あれー? けどいちくん、男の子だよねー? どうしてIS学園にいるのー?」
「ニュース見てないんですか?」
「いちくん忘れたー? ウチ、テレビ無いよー?」
「あー、そうだった」
そう言えば忘れていた。
彼女たち板垣家は親を早くに亡くし、以降は長女の【板垣
だから板垣家には、パソコンはおろかテレビも無い。
「実はですね。俺、男ですけど、ISを起動・操縦出来る事が発覚しまして」
「へえー?」
ぐりんぐりん。
むにゅんむにゅん。
……辰姉の双球、きもちえー。
「それでIS学園に入学する事になったんですよ」
「なるほどー」
「今は事前学習の途中で、休憩をしようとしてます。甘いものが欲しくて」
「甘いものー? じゃあ、これあげるー」
言われて手渡されたのは、未開封のスイーツ詰め合わせ。
イチゴのショートケーキ2個と、イチゴクリームを織り込んだミルクレープ3個のセットだ。
「あとこれもー」
「あ、俺が好きなカフェオレ。しかも2本も。ありがとう辰姉」
「お礼はー……いちくんのお嫁さんになれる権利でいいよー」
「いやいやいや、辰姉と結婚しようと思ったら、亜巳さんと【
板垣家は早くに親を亡くしたせいか、残された子供たち……亜巳さんと辰姉、天使と竜兵さんの結束力が非常に強い。
つまり、家族愛が強い。
そんな家族から辰姉を引っこ抜くなど、天地がひっくり返っても無理だ。
「えー? 亜巳
「いやいや、それでも無理ですって。俺、婚約者いますから」
俺がそう言うと、辰姉はハグを解除し、むくれた表情になった。
「むー」
「膨らんでもダメですって」
「むー、本気なのにー」
「板垣さん」
「あー、山田先生ー」
「ダメですよ? 婚約者がいる男の人を誘惑しては」
「むー! 山田先生もいちくんみたいな事言うんだー! こうなったら……はむっ」
「んむ!?」
「なあっ!?」
次の瞬間、俺の口が温かいモノで塞がれた。
直後、ニュルリとしたナニカが、口の中を蹂躙し始めた。
これは……
「ん、じゅるる、れる、あむ……」
……俺、辰姉にキスされてる?
しかもディープでエグいやつ。
「んむ、んむむ。ぷはっ、ちょ、まちぁ、はむ」
「じゅぞぞぞ、ちゅぱっ、れろれろ、ちゅっ、じゅるるる」
……いかん。
辰姉とのキスが気持ちよすぎて、股間の愚息がエネルギーチャージを開始した。
辰姉はそれを知ってか知らずか、俺の両手を取ると、俺の手を自身の双球に這わせる。
「ッ!」
辰姉の双球、弾力すっげ。
「……ちゅぱっ」
口内が蹂躙され、5分ほどしてようやく解放された。
「っはぁ、はぁ、はぁ! こ、困るって辰姉。言ったでしょ? 俺には婚約者が……」
「知ってる。けど私は何も、私を正妻にしろとは言ってない」
それまで細めていた目を開き、間延びしてない、シリアスな声色でそう言う辰姉。
「私は、側室になりたいって言ってるの」
「側室って……」
正妻に対する側室とは、
妾や愛人は財産を相続できないし、生まれた子も、面倒な手続きをしないと、財産の相続が出来ないが……側室は別。
側室は夫の財産相続権を持ち、生まれた子供も普通に子供として扱われるため、なにもしなくても財産の相続が可能である。
そんな側室にしてくれ、と辰姉は言っているのだ。
……もちろん、現代日本では無理な話だ。
何故なら……
「辰姉の気持ちはありがたいけど、やっぱり無理だよ。辰姉を側室にするには、法律が邪魔だ」
……そう、現行の日本の法律は、夫婦は一夫一妻が原則。
第二夫人や第三夫人を作る事は出来ないのだ。
「それなんだけどねー、私、予感じみたモノがあるんだー」
一夫一妻制を盾に、辰姉を説得しようとしたのだが、辰姉は、俺が考えてもいなかった事を口にした。
「近い将来、いちくんともう1人の男の子を対象に、一夫多妻制法案が適用される気がするんだー」
「俺と
辰姉は言う。
貴重な男性IS適合者だからこそ、その血を引く子供を、数多く作る必要が出てくる。
そうしたら当然、母体の数は1つじゃ足りない。
だから一夫多妻制法案を可決して、可能な限り多くの女性と結婚し、たくさんの子供を作る事が求められるだろう、と。
そんな辰姉の言葉を聞き、山田先生がさもありなんと頷く。
「確かに、一理ありますね」
「ええ?」
「優れた遺伝子は、より多く、後世に残していくべきです。それを踏まえた場合、一夫多妻制はとても都合が良いんです。ましてやここはIS学園……世界中から人が集まります。そうなったら日本国内はもちろん、海外の人でさえ、そのチャンスに預かれるようになるので」
……そうやって生まれてきた子供を愛せるかどうかは、多分、別問題なんだろうな。
そんな事を考えていると、チャイムが鳴った。
「ありゃ、もうこんな時間かー。さっさとお弁当食べて、また教室に戻らないと、先生に怒られちゃうよー」
辰姉はそう言いながら、俺に投げキッスを寄越し、側室の話、待ってるからねと言い残し、教室棟へと走り去った。
「……織斑くんってモテるんですね」
走り去る辰姉の背中を見ながら、山田先生がボソッとそう呟く。
「昔から、年上の女の人に好かれやすいんですよ。理由は分かりませんけど」
「なるほど」
「じゃあ戻りましょうか。参考書、あと20ページは読んでおきたいので」
「そうですね……あ、お昼からはどうしますか?」
「量産機を借りて訓練ですかね。ライフルの命中精度を、もう少し上げたいので」
「良いですね。お手伝いしましょう」
「よろしくお願いします」
そんな話をしながら、俺と山田先生は、整備室棟への道を引き返した。
……俺たちの背中を見つめる人物の存在には、全く気付かないまま。
原作との主な変更点
1.一夏はIS学園入学前から事前学習を受けている
2.一夏が必読の参考書を捨てていない
3.辰子が同級生(ただし年齢は2つ上)
4.一夏と板垣家の関係は良好
続きはまたいずれ