IS~Ichika Strange~ あるいはこんな織斑一夏   作:Exnyas

3 / 25
続きました。
サブヒロインの登場です。
いろいろ捏造してるので、あらかじめご容赦ください。


3.入学式前期間、IS学園にて

波乱の記者会見から数日、俺は事前学習という名目で、IS学園の整備室棟に急増された部屋に詰め、参考書を読んでいた。

 

表紙にデカデカと必読の文字が印刷されたその参考書は、一昔前の電話帳のようなサイズと文章ボリュームを誇り、必読と印刷がされてなければ、進んで読む事がなさそうな代物だった。

 

「……ちょっと休憩するか」

 

俺は手にしていた参考書をテーブルに置き、俺の補佐役を名乗る【山田(やまだ) 真耶(まや)】と言う先生に声をかける。

 

「山田先生」

 

「はい、何でしょうか? 織斑くん」

 

「集中力が欠けてきたので、ちょっと休憩します。甘いものが補給したいです」

 

「でしたら購買へ行きましょうか。いずれは1人でも行ってもらうので、場所を覚えてくださいね?」

 

そう言ってソファーから立ち、廊下へ続くドアに向かう山田先生。

 

「分かりました」

 

俺は山田先生の後に続き、廊下に出る。

 

「参考書の進捗はどうですか?」

 

リノリウムの床にコツコツと靴音を響かせ、廊下を歩いていると、山田先生からそんな質問をされた。

 

「そうですね。昔から篠ノ之博士にくっついて、IS整備を手伝っていたので、知識面は問題ありません……が、知識面だけなので、実技が不安です」

 

「入学試験で私を倒したのに、ですか?」

 

山田先生を相手にISで戦い、どれだけ動けるか、というのが入学試験の実技部門だったのだが……そこで俺は学園に配備されている九鬼財閥の量産型IS【オウガ】に搭乗し、山田先生と壮絶な撃ち合いの末に近接格闘に持ち込み、自身の【SE(シールド・エネルギー)】を30%残した状態で、彼女のISのSEを枯渇させた。

 

監督官を務めた千冬姉曰く『防御力重視の打鉄なら落ちてた。火力重視のラファールでも危うい。学園配備の量産ISで唯一、近接格闘武装を積んだオウガだから勝てたな』との事。

 

「いやぁ……あれは山田先生が手加減してくれたからの辛勝であって、山田先生が本気なら勝ててませんよ」

 

山田先生はこう見えてISの元日本代表候補で【銃央矛塵(キリング・シールド)】の異名を持つ猛者。

 

現役時代はラファールをフルカスタムした【ラファール・リヴァイヴ・スペシャル】その名も【幕は上げられた(ショウ・マスト・ゴー・オン)】と言う専用機を駆っていた。

 

4枚の巨大なシールドが2枚ずつ、ウイング状に連結された武装と、豊富な実弾銃が特徴で、この4枚のシールドを射出し、有線遠隔操作で動かして相手をシールドの内側に閉じ込め、シールドに銃を乱射して、跳弾で四方八方から削りきる【絶対制空領域(シャッタード・スカイ)】という、えげつない必殺技を持つ。

 

「そうでしょうか? 織斑くんなら、私の必殺技も、何とか切り抜けそうですが」

 

「あー、どうでしょうね?」

 

言ってこちらを見上げる山田先生から目を反らす。

 

山田先生は……束姉に勝るとも劣らない、凄いサイズの双球の持ち主で、近くで下から見上げられると、その超大な双球に、否応なしに視線が向いてしまう。

 

だから目を反らすのだ。

 

一応、絶対制空領域(シャッタード・スカイ)に対して、対応策が無いわけではない。

 

射出されたシールドに完全に閉じ込められる前に、飛んできたシールドを破壊すれば良い。

閉じ込められる前に瞬時加速(イグニッション・ブースト)で、距離を詰めるのもアリかもしれない。

 

クッキーでやるなら後者だな。

個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)で開幕ダッシュ。

そのまま鳳凰脚(ほうおうきゃく)をブチ込んで武装を破壊し、ジェノサイド・カッターでトドメだ。

 

「そうですか……」

 

言って再び歩き始めた山田先生を追う。

歩く事体感5分、山田先生がT字路になった廊下の真ん中で立ち止まった。

 

「はい、織斑くん」

 

「何でしょう?」

 

「ここを左に曲がると教室棟。右に曲がると購買と食堂です。学園に通い始めると、よく使う通路なので覚えてください」

 

「左が教室棟で、右が購買と食堂……分かりました」

 

記憶力には自信がある。

一度通った道は、9割がた覚えている。

……行く度に地形が変わる、親不孝通りみたいな場所じゃない限りは。

 

「じゃあ購買に向かいますよ」

 

「はい」

 

そう言って山田先生はT字路廊下を右に向かい、購買および食堂への道を歩きだす。

 

「この廊下、アリーナが見えるんですね」

 

「ああ、第3アリーナですね。学園で一番広いアリーナです」

 

IS学園のアリーナは全部で7つあり、この廊下から見える第3アリーナは、大規模なスタジアムに匹敵する広さを持つそうだ。

 

アリーナでは打鉄を纏った生徒2人が、ライフルの撃ち合いをしているのが見えるのだが、片方がなんと、モモセンパイにそっくりなのが恐ろしい。

 

あのセンパイの場合、俺を追ってIS学園に来かねない恐ろしさもある。

 

「着きましたよ。ここが購買です」

 

「……え?」

 

購買に着いたと言われて、目をそちらに向けると、そこは購買とは名ばかりの……スーパーマーケットのような広い売り場を持つ一角だった。

 

「広いですね」

 

「IS学園は世界中から教師や生徒が集まります。それだけ文化や風習が異なるので、取り扱う商品も幅広くて」

 

「なるほど」

 

そんな時、購買から1人の女子生徒が出てきた。

青く長い髪を持つ、長身の女子生徒だった。

 

彼女はその手に、弁当と思わしき容器が満載されたビニール袋を提げているのだが、俺はその女子生徒の顔に見覚えがあった。

 

「……え? 辰姉(たつねえ)!?」

 

「んー……?」

 

俺に辰姉と呼ばれた女子生徒は、気が抜けたような声を発しながら、ゆっくりと目線をこちらに向けた。

 

そして……

 

「あー! いちくんだぁ!」

 

……ガバリと抱きしめられる。

 

「貴女は確か新入生の……板垣(いたがき)さんでしたか。織斑くん、お知り合いですか?」

 

「はい」

 

彼女の名は【板垣 辰子(たつこ)】と言い、さっき挙げた親不孝通りに住む一男三女の板垣家の次女だ。

 

あのモモセンパイとタメを張る腕前の持ち主で、普段はその力をセーブしているが、リミッターを外す事により、その力が爆発的に上昇し、素手の一撃で広範囲のアスファルトを陥没させ、蜘蛛の巣状のヒビを入れるほどになる。

 

束姉や山田先生には劣るが、立派な双球の持ち主で、本人が意識していないボディータッチが多く、ボイニストの俺はたびたび勘違いをしそうになる。

 

ちなみに俺より2つ年上。

つまり、モモセンパイの1つ上。

 

「……あれー? けどいちくん、男の子だよねー? どうしてIS学園にいるのー?」

 

「ニュース見てないんですか?」

 

「いちくん忘れたー? ウチ、テレビ無いよー?」

 

「あー、そうだった」

 

そう言えば忘れていた。

彼女たち板垣家は親を早くに亡くし、以降は長女の【板垣 亜巳(あみ)】さんがSMクラブで女王様として働き、収入の一手を担っているため、それほど裕福な家庭とは言えないのだった。

 

だから板垣家には、パソコンはおろかテレビも無い。

 

「実はですね。俺、男ですけど、ISを起動・操縦出来る事が発覚しまして」

 

「へえー?」

 

ぐりんぐりん。

むにゅんむにゅん。

……辰姉の双球、きもちえー。

 

「それでIS学園に入学する事になったんですよ」

 

「なるほどー」

 

「今は事前学習の途中で、休憩をしようとしてます。甘いものが欲しくて」

 

「甘いものー? じゃあ、これあげるー」

 

言われて手渡されたのは、未開封のスイーツ詰め合わせ。

イチゴのショートケーキ2個と、イチゴクリームを織り込んだミルクレープ3個のセットだ。

 

「あとこれもー」

 

「あ、俺が好きなカフェオレ。しかも2本も。ありがとう辰姉」

 

「お礼はー……いちくんのお嫁さんになれる権利でいいよー」

 

「いやいやいや、辰姉と結婚しようと思ったら、亜巳さんと【天使(えんじぇる)】と【竜兵(りゅうへい)】さんを説得しなきゃでしょ? 無理ですって」

 

板垣家は早くに親を亡くしたせいか、残された子供たち……亜巳さんと辰姉、天使と竜兵さんの結束力が非常に強い。

 

つまり、家族愛が強い。

 

そんな家族から辰姉を引っこ抜くなど、天地がひっくり返っても無理だ。

 

「えー? 亜巳(ねえ)たちなら、良いって言ってたよー?」

 

「いやいや、それでも無理ですって。俺、婚約者いますから」

 

俺がそう言うと、辰姉はハグを解除し、むくれた表情になった。

 

「むー」

 

「膨らんでもダメですって」

 

「むー、本気なのにー」

 

「板垣さん」

 

「あー、山田先生ー」

 

「ダメですよ? 婚約者がいる男の人を誘惑しては」

 

「むー! 山田先生もいちくんみたいな事言うんだー! こうなったら……はむっ」

 

「んむ!?」

 

「なあっ!?」

 

次の瞬間、俺の口が温かいモノで塞がれた。

直後、ニュルリとしたナニカが、口の中を蹂躙し始めた。

 

これは……

 

「ん、じゅるる、れる、あむ……」

 

……俺、辰姉にキスされてる?

しかもディープでエグいやつ。

 

「んむ、んむむ。ぷはっ、ちょ、まちぁ、はむ」

 

「じゅぞぞぞ、ちゅぱっ、れろれろ、ちゅっ、じゅるるる」

 

……いかん。

辰姉とのキスが気持ちよすぎて、股間の愚息がエネルギーチャージを開始した。

 

辰姉はそれを知ってか知らずか、俺の両手を取ると、俺の手を自身の双球に這わせる。

 

「ッ!」

 

辰姉の双球、弾力すっげ。

 

「……ちゅぱっ」

 

口内が蹂躙され、5分ほどしてようやく解放された。

 

「っはぁ、はぁ、はぁ! こ、困るって辰姉。言ったでしょ? 俺には婚約者が……」

 

「知ってる。けど私は何も、私を正妻にしろとは言ってない」

 

それまで細めていた目を開き、間延びしてない、シリアスな声色でそう言う辰姉。

 

「私は、側室になりたいって言ってるの」

 

「側室って……」

 

正妻に対する側室とは、(めかけ)や愛人と違い、正妻が認めた第二以降の夫人を指す。

 

妾や愛人は財産を相続できないし、生まれた子も、面倒な手続きをしないと、財産の相続が出来ないが……側室は別。

 

側室は夫の財産相続権を持ち、生まれた子供も普通に子供として扱われるため、なにもしなくても財産の相続が可能である。

 

そんな側室にしてくれ、と辰姉は言っているのだ。

 

……もちろん、現代日本では無理な話だ。

何故なら……

 

「辰姉の気持ちはありがたいけど、やっぱり無理だよ。辰姉を側室にするには、法律が邪魔だ」

 

……そう、現行の日本の法律は、夫婦は一夫一妻が原則。

第二夫人や第三夫人を作る事は出来ないのだ。

 

「それなんだけどねー、私、予感じみたモノがあるんだー」

 

一夫一妻制を盾に、辰姉を説得しようとしたのだが、辰姉は、俺が考えてもいなかった事を口にした。

 

「近い将来、いちくんともう1人の男の子を対象に、一夫多妻制法案が適用される気がするんだー」

 

「俺と四季百秋(ファーストマン)に、一夫多妻制が適用されるって?」

 

辰姉は言う。

貴重な男性IS適合者だからこそ、その血を引く子供を、数多く作る必要が出てくる。

 

そうしたら当然、母体の数は1つじゃ足りない。

 

だから一夫多妻制法案を可決して、可能な限り多くの女性と結婚し、たくさんの子供を作る事が求められるだろう、と。

 

そんな辰姉の言葉を聞き、山田先生がさもありなんと頷く。

 

「確かに、一理ありますね」

 

「ええ?」

 

「優れた遺伝子は、より多く、後世に残していくべきです。それを踏まえた場合、一夫多妻制はとても都合が良いんです。ましてやここはIS学園……世界中から人が集まります。そうなったら日本国内はもちろん、海外の人でさえ、そのチャンスに預かれるようになるので」

 

……そうやって生まれてきた子供を愛せるかどうかは、多分、別問題なんだろうな。

 

そんな事を考えていると、チャイムが鳴った。

 

「ありゃ、もうこんな時間かー。さっさとお弁当食べて、また教室に戻らないと、先生に怒られちゃうよー」

 

辰姉はそう言いながら、俺に投げキッスを寄越し、側室の話、待ってるからねと言い残し、教室棟へと走り去った。

 

「……織斑くんってモテるんですね」

 

走り去る辰姉の背中を見ながら、山田先生がボソッとそう呟く。

 

「昔から、年上の女の人に好かれやすいんですよ。理由は分かりませんけど」

 

「なるほど」

 

「じゃあ戻りましょうか。参考書、あと20ページは読んでおきたいので」

 

「そうですね……あ、お昼からはどうしますか?」

 

「量産機を借りて訓練ですかね。ライフルの命中精度を、もう少し上げたいので」

 

「良いですね。お手伝いしましょう」

 

「よろしくお願いします」

 

そんな話をしながら、俺と山田先生は、整備室棟への道を引き返した。

 

……俺たちの背中を見つめる人物の存在には、全く気付かないまま。

 

 




原作との主な変更点

1.一夏はIS学園入学前から事前学習を受けている
2.一夏が必読の参考書を捨てていない
3.辰子が同級生(ただし年齢は2つ上)
4.一夏と板垣家の関係は良好



続きはまたいずれ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。