IS~Ichika Strange~ あるいはこんな織斑一夏   作:Exnyas

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続きが書けました。

サブヒロイン2がIS学園入りした状態で、かつサブヒロイン3が登場します。
……と言っても描写は少なめですが。


4.授業初日、教室にて

-_- other

 

 

IS学園教室棟、1年1組の教室。

そこで1人の少年が、開いた参考書を前に、苦悶の表情を浮かべていた。

 

「(参ったな……さっぱりわかんねえ)」

 

彼の名は【四季 百秋】と言い、世間では世界初の男性IS適合者として有名になった人物だ。

 

百秋は手元の参考書をピラリと1ページ捲り、書かれている内容に目を走らせ、眉間の皺を深めた。

 

「(オツムの中まではチートにならなかったか)」

 

参考書から顔を上げ、視線だけで教室中をグルリと見渡す。

 

「(一夏が第二男性IS適合者なのは、まあいい。けど、九鬼財閥極東本部宇宙開発部所属って何だ? 原作にそんな組織あったか?)」

 

百秋はいわゆる『転生者』である。

28歳の時、仕事から帰る途中、運転手が居眠り運転をしていたトラックに轢かれた彼は、そのまま死亡した。

 

死後、神殿のような場所で、女神を名乗る超常存在と邂逅し、まだ死ぬべき時ではない時に死なせたと謝罪を受け、お詫びとしていくつかのチート能力を授かり、この世界へとやってきた。

 

この世界が前世で愛読していたライトノベル『IS〈インフィニット・ストラトス〉』の世界だと知った百秋は、いずれ現れるはずの織斑一夏(主人公)を差し置いて、自分が主人公になる事を目論んだのだが、そう上手くは行かなかった。

 

「(原作と言えば、おかしい事だらけだ。まず白騎士事件が起こってないし、篠ノ之家は一家離散していない。モンド・グロッソ2連覇のブリュンヒルデも織斑千冬じゃなくて、俺の姉だとかいう変な女の肩書きだ……それに)」

 

百秋は教室の片隅に座る、2人の女子生徒に目をやった。

 

「(原作開始時点でこのクラスに居るべきはずの……一期ヒロインズの2人がいない。加えてあんな……どう見ても年上の生徒、いたか?)」

 

百秋が見ているのは、身長170cmほどの長身と、青く長い髪を持つ、スタイル抜群の女性──板垣辰子と、そんな女性に絡むようにじゃれつく、同じく身長170cmほどの長身と、黒く長い髪を持つ、青髪の女性に負けず劣らずのスタイルを持つ女性──川神百代の2人だ。

 

百秋は2人の会話に耳を澄ませた。

 

「おい、見たぞ辰子。お前、昨日の昼、一夏と購買で会ってただろ」

 

「会ったよー」

 

「何で私も誘わない?」

 

「だってモモちゃんあの日、午前中の事前座学で疲れ果てて、ご飯食べずに昼過ぎまで寝るから、起こすなって言ってたじゃーん?」

 

「だからと言ってな……!」

 

百秋は2人の会話に衝撃を受けていた。

あの見知らぬ2人が、どうやら一夏と知り合いらしい事実に。

 

「(つうか、一夏はどこだ? アイツ、原作どおりならこの時期、この1年1組で……このクラスで見せ物パンダになってるはずだろ?)」

 

百秋は知る由も無い話だが、実は一夏が在籍するクラスは、入学式の前に一波乱があり、8時間にもおよぶ職員会議の末、1年2組になっているのだ。

 

そして、さっき百秋が『居るはずなのに居ない』と告げた2人……即ち【篠ノ之 箒】と【セシリア・オルコット】もまた、政治的配慮から2組に所属している。

 

「……クソ、ここが川神学園なら、ワッペン叩きつけてやるのに」

 

「ざーんねん、それは出来ないねー」

 

「分かっている」

 

「それに……私たちが真剣(マジ)でぶつかったら、教室(ココ)壊れちゃうし」

 

「分かっている!」

 

川神学園?

ワッペン?

ココを破壊する?

 

何だそれは。

百秋は混乱で頭がどうにかなりそうだった。

 

百秋には分からない。

ここが……この世界が、ISとまじこいのクロスオーバーである事など。

そして百秋はまじこい……正確には『真剣(マジ)で私に恋しなさい!』と言う作品を知らなかった。

 

 

******

 

+_+ 一夏

 

 

「へえ、ミス・オルコットは将来、モンド・グロッソに出るつもりなんだ?」

 

「目指すは射撃部門のヴァルキリー、イギリスの射撃鬼(しゃげきき)と呼ばれる事でしてよ。ミスタ・織斑はどのような将来を?」

 

IS学園1年2組に配属された俺は、クラス内に国家代表候補の生徒が居ると知り、彼女……名を【セシリア・オルコット】に話しかけ、雑談に興じていた。

 

「俺は九鬼財閥極東本部宇宙開発部で、気功術者が使いやすいISを開発したいかな」

 

「気功術……ですの?」

 

「オーラって言えば伝わる? どんなモノにでも宿っている力で、これを自在に扱う武芸者向けのISを作りたいんだ」

 

「まあ! 素敵な夢ですわね」

 

「あと、武芸者としてはヒュームさん……蹴り技の師匠が放つ奥義を、同じ技で真正面から破りたい」

 

「なるほど、日本が世界に誇る9人の武芸者……日本九鬼(きゅうき)が1人【蹴撃鬼(しゅうげきき)】ですものね」

 

日本には鬼と渾名される武芸者が9人いる。

 

それぞれ拳打鬼(けんだき)・蹴撃鬼・剣戟鬼(けんげきき)・射撃鬼・投極鬼(とうきょくき)気功鬼(きこうき)戦術鬼(せんじゅつき)舌戦鬼(ぜっせんき)財力鬼(ざいりょくき)と渾名されるその9人は、その渾名に特化した力を持ち、9人集まれば大国を相手にケンカを売れると称されるほど。

 

と言っても、そのほとんどが知り合いだ。

 

何故なら拳打鬼は束姉の事だし、剣戟鬼は千冬姉の事を指す。

 

他にも気功鬼は川神鉄心さんの事だし、戦術鬼は義母(オフクロ)こと【九鬼(くき) (つぼね)】で、財力鬼は義父(オヤジ)こと【九鬼 (みかど)】だ。

 

そして自身が蹴撃鬼。

……世間は狭い。

 

「そう言えばミスタ・織斑、聞きまして? このクラスに、入学試験で先生を倒した強者がいるそうですわ」

 

「入学試験の先生って、言っちゃ悪いけどピンキリらしいじゃん? 誰を倒せば強者なの?」

 

「織斑先生……はまあ無理だとしても、銃央矛塵(キリング・シールド)こと山田先生を倒せたなら、充分に強者では?」

 

「……なら、俺の事かな」

 

「まあ! ミスタ・織斑、あなたが!?」

 

「オウガで撃ち合いして、弾丸全部撃ちきってから近接格闘に持ち込んで、SE(シールド・エネルギー)30%残しで勝ったよ」

 

「それはそれは……わたくしは開幕から奥の手を使ったものの、奥の手がアサルトライフル2丁で封殺されて、最後はショットガンで追い込まれてから、グレネードランチャーとバズーカでドカンでしたわ」

 

「山田先生、射撃エグいもんな」

 

飛翔する弾薬庫と名高いラファールの実弾兵器を上手く使い、偏差射撃や跳弾まで駆使し、相手を追い詰めてから爆発物でズドンと言うのが、山田先生が多用する戦術なのだが……

 

「そうなんですの。ましてやわたくしは奥の手を封じられた状態。どうしても、相手の武装を見てからの対応になりますわ……」

 

「それは仕方ない。俺も打鉄やラファールに乗ってたら落ちてたって織斑先生に言われたし」

 

「つまり機体性能で勝ったと?」

 

「ああ……学園配備の量産機の中で唯一、オウガだけが近接格闘武装を積んでたからな。殴る・蹴るが出来てなかったら落ちてたよ」

 

「なるほど」

 

そんな話をしていると、幼馴染みの箒がやってきた。

 

箒は束姉の妹で、俺より1つ年下の、束姉似の巨双球美少女だ。

その実り具合は、あの辰姉やモモセンパイにも匹敵する。

 

もちろん、束姉や山田先生よりは、双球は2まわり小さい。

それだけあの2人が規格外だってのはある。

 

束姉(あね)が拳による近接格闘を好み、得意とするのに対し、(いもうと)は剣……日本刀による近接戦闘を好む。

 

趣味は剣道、特技は料理。

好きな食べ物は和菓子全般と抹茶。

 

「盛り上がっているところ、水を差して悪いが、そろそろSHR(ショート・ホームルーム)が始まるぞ」

 

「マジか、サンキュー箒」

 

「昼に購買の栗羊羹を1本奢れよ?」

 

「購買の栗羊羹……練餡堂(ねりあんどう)のやつだな? 分かった」

 

箒は今でこそ口数が多く、表情は豊かだが、小学校の頃は口数は少なく、無愛想だった。

 

当人曰く、当時は実家の道場を継ぎ、剣の道に生きると決め、言葉も表情も、何なら女である事も捨てていたらしい。

 

それを取り戻したのは他でもない、実の姉(たばねえ)だった。

 

料理を教えて欲しいと箒に歩み寄り、懐に入り込む。

そうしたら来る日も来る日も箒を構い倒し、遂には教わった料理を箒に上手い(美味い)と言わせ、箒を笑顔にした。

 

それから俺も千冬姉やダチ連中と一緒になって箒を構い倒し、人付き合いの方法や話術を、それとなく教えてモノにさせ、3年ほどかけて下地を作った。

 

もともと箒には高い対人コミュニケーションスキルがあったようで、最近ではそれが芽吹いて花開き、希望者には他人に剣道の初歩や料理を教えるようにまでなった。

 

これには束姉や俺、一緒になって竹刀を振るった柳韻(りゅういん)さん……束姉や箒のお父さん、一緒に料理をした椿(つばき)さん……束姉や箒のお母さん、ダチ連中もニッコリだ。

 

今度、クマを紹介してやろうかな。

……クマとは誰かって?

ダチの1人で、川神のメシマスターだよ。

 

俺は机の上に参考書を出し、SHRの開始を待った。

すると程なくして教室の前ドアが開き、そこから事前学習でお世話になった、山田先生が入ってきた。

 

「はーい、全員揃ってますねー? 私は山田真耶、今日から1年間、皆さんの副担任兼座学担当教師を務めます。よろしくお願いしますね?」

 

「よろしくお願いします!」

 

山田先生が教壇に立つと、教室中から挨拶が飛ぶ。

山田先生は結構結構と頷いた。

 

「さて、IS学園では入学初日から授業に入るのですが、その前に自己紹介をしましょうか。えー、出席番号順にお願いします。出席番号1番は……」

 

「はい! 出席番号1番【相川(あいかわ) 清香(きよか)】です! 栃木から来ました。趣味はスポーツ、特に球技が好きです。よろしくお願いします!」

 

相川さんの自己紹介に、教室中はもちろん、山田先生も拍手をする。

 

「はい、ありがとうございました。次は出席番号2番……織斑くんお願いします」

 

そうか、俺は2番か。

 

「はい」

 

名前を呼ばれて立ち上がった俺は、教室中から視線が殺到するのを感じた。

やっぱり男性IS適合者は注目の的って事なんだろうな。

 

「織斑一夏です。織姫の織に、斑点の斑で織斑。一つの夏で一夏です。隣の川神市にある川神学園の2年でしたが、緊急で行われた全国一斉IS適性検査で適性が発覚し、IS学園に入学する事となりました。趣味は格闘技と機械いじりと料理……いえ、家事全般。特技は蹴り技各種と、早覚えです。皆さんより1歳年上ですが、気さくに話しかけてくれると嬉しいです」

 

「はい、丁寧な自己紹介ありがとうございました。ちなみに補足しますと織斑くんは、あの九鬼財閥極東本部宇宙開発部所属のテストパイロットで、同時に世界にその名を知られる日本9大武芸者……日本九鬼(きゅうき)の1人で、蹴り技の鬼と呼ばれる【蹴撃鬼】です。皆さん、仲良くしてあげてください」

 

「よろしくお願いします」

 

そう言って頭を下げると、クラス中から盛大な拍手が上がった。

……良かった、どうやら掴みは上々のようだ。

 

などと考えていたら、教室の前ドアが開き、そこから1人の、よく知る女性が、スーツ姿で入ってきた。

 

「なかなか堂に入った自己紹介だったな、織斑」

 

入ってきたのは千冬姉だった。

 

「おはようございます、織斑先生。ありがとうございます」

 

いつもの癖で千冬姉と呼びそうになったのを、ここはIS学園で、義姉は教師であった事を思い出し、言葉を修正する。

 

「諸君、私がこの1年1組の主担任で、実技担当の織斑千冬だ。私の役目は諸君らIS素人を、1年でIS操縦者見習いにする事だ。分からん事は分かるまで教えてやるから、何度でも聞きに来い。早朝でも昼休みでも放課後でも長期休暇中でも構わん。いつでもどこでも聞きに来い。そのための連絡先を、授業が終わったら教えてやる」

 

そんな、実に男らしい織斑先生の言葉に、クラス中から拍手が上がった。

……織斑先生みたいな女の人を『おっぱいがついたイケメン』って言うんだろうな。

 

「……ああ、後で聞かれて騒がれても面倒だから、先に言っておくか。私とそこの織斑は姉弟だ。だが、血は繋がっていない。いわゆる義姉弟というやつだ」

 

「同じ名字だからもしや、とは思いましたが、血は繋がってないんですね」

 

「そのとおりだオルコット。そして織斑が日本九鬼が1人蹴撃鬼であるのと同じく、私も日本九鬼が1人【剣戟鬼】だ。機会があれば披露してやろう」

 

言って織斑先生は、肩掛けで提げている刀袋を撫でた。

 

ちなみに補足しておくと、近代日本においては、ごく一部の限られた武芸者のみ、毎年試験を受けて合格する事と、演舞や極限の自衛以外では使わない事を条件に、真剣や実銃の所持と携行が許されている。

 

毎年の試験は基本的にカウンセリングで、毎年試験官が変わるため、雰囲気だけでは乗り切れないのが面倒だ、とは織斑先生の弁だ。

 

もちろん俺も有資格者だ。

以前、麻生総理とお揃いの意匠の彫刻(エングレーブ)が施された実銃を持っていると言ったが、それもこの許可証あっての話だ。

 

「……よし、チャイムが鳴ったな。それでは授業を開始する」

 

織斑先生がそう告げ、俺たちは授業を受ける姿勢に入ったのだった。

 

 

 

 




原作との主な変更点

1.百代と辰子は同級生
2.百代と辰子は1年1組
3.一夏は1年2組
4.セシリアも1年2組
5.一夏とセシリアの最初の印象は互いに好印象
6.一夏の師匠はヒューム
7.箒も1年2組
8.箒は一夏の幼馴染みだが、年齢は1つ下
9.真耶と千冬は1年2組の担任
10.一夏と千冬は義姉弟
11.千冬は常に日本刀(真剣)を携行している


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