IS~Ichika Strange~ あるいはこんな織斑一夏 作:Exnyas
一時間目を無事に終えた俺は、バッグの中からスタミナゼリーを取り出し、ゴキュゴキュと一息に流し込んでいると、箒がやってきた。
「一夏、それは?」
「……んぐっ。ゼリー型栄養食だ。昨日ちょっと夜更かししてよ。朝ギリギリまで寝てたせいで、朝飯食ってねーんだ」
「朝食を食べていないのか?」
「ああ」
結局、昨晩も朝までヤりまくってたからな。
俺は今朝、愚息が束姉の肉壺に入ったまま、目を覚ましたぜ……遅刻確定15分前にな。
「……察するに、姉さんとのまぐわいだろう?」
「分かるか?」
「逆に分からん方が不思議だ」
箒は俺が束姉と婚約しており、肉体関係にある事を知っている。
知っているどころか、たまにヤりにくる仲でさえある。
「姉さんは性欲が強いからな」
そう言う箒もなかなか強い性欲を持っているのだが、言わぬが華だろうな。
「本人曰く、注入したナノマシンの副作用らしいぜ?」
「ナノマシンの、副作用?」
「ああ」
束姉は生まれながらの超人で、身体能力は人間のそれを凌駕している。
正拳突きで厚さ30cmの鋼板を粉砕し、手刀でビル建設用H字鋼を切り裂き、ラリアットでダンプカーを100m吹き飛ばす。
100mを2秒3で走り、垂直跳びは小学校の校舎を軽々超える。
高層マンションの屋上から飛び降りて、両足で着地できるし、怪我なんかしない。
30mの距離から撃たれた7.62mmライフル射撃を、射撃されてから弾丸を避けたり、同じ距離から撃たれた5.56mmアサルトライフルの射撃が作る弾幕を、手刀で切り払い、被弾ゼロにしたりもできる。
6000mの深海に、裸で連続一週間、飲まず食わず無呼吸で潜っていられる。
もちろんと言うか頭脳は明晰で、10歳でハーバード大学を首席で卒業しているし、その頭脳を活かしてISを作ったのが15歳の頃だ。
そんな束姉が以前抱えていた弱点が、燃費の悪さだった。
それはもう凄まじいまでの食欲で、朝から特盛天丼3杯は当たり前。
昼は重箱6段の弁当を平らげ、夜ともなれば1人で唐揚げを3kgと、しょうが焼きを2kgほど食べてしまうほどに。
それでいて太る事は決してなく、たわわが育つ一方なのは、一部の婦女子にとっては理不尽と言っていいだろう。
そんな中、流石に内臓がヤバいと感じた束姉は、13歳の頃、自分の血液をベースにしたナノマシンの開発に着手した。
狙いは食事効率の改善。
束姉の聡明な頭脳ときわめて器用な手先、自身が手掛けた最先端の研究・開発機材により、目的のナノマシンはアッサリと開発に成功し、束姉はそれを自身に注入した。
結果、毎日毎食の量が劇的に減った。
朝は焼いた食パン2枚にベーコンエッグ(玉子2個)。
昼はコンビニのカップ麺(大盛)とおにぎり。
夜は焼き肉500gとどんぶりご飯。
それでいて身体能力は落ちないという、束姉にとって望ましい状態になったのだが……
「副作用で髪の色が黒からマゼンタになり、性欲が異常なまでに強くなったそうだ」
「……姉さんのあの髪色は、ナノマシンの副作用だったのか!?」
「考えてもみろ。柳韻さんも椿さんも、普通に黒髪だし、お前も黒髪だろ?」
「それは……そうだが」
川神人ならあるいは、だが。
「で、髪はもう開き直る事にしたのだが、性欲の問題はどうしようもなかったらしい」
もともと頭脳は明晰で、自慰についても効果的な方法を知っていた束姉。
毎日毎日効果的で、激しい自慰で性欲を処理して過ごしていたところに、俺が現れた。
俺に一目惚れをした束姉は、当時既に充分すぎる発育していた肉体を武器に、思春期真っ只中だった俺に、自分に対して劣情を抱くように仕向け、程なくして俺を補食した。
束姉の肉体に溺れた俺は、それ以降、束姉のような容姿の女性にしか劣情を抱かなくなった。
「……一夏、それはつまり何か? お前が姉さんに惚れた訳ではなくて、姉さんがお前に惚れたのか?」
「そうだ。惚れられてから食われるまではメチャクチャ早かったけどな」
「……よく織斑先生が許したな」
「束姉曰く、現場に鉢合わせした織斑先生と口論になって、殴り合いのケンカに発展。三日三晩戦い続けて、スタミナ勝ちした束姉が勝者特権を行使したらしいぜ」
そんな話をしていたら、横に織斑先生が立っている事に気付いた。
「懐かしい話をしているな」
「あれ、もう授業ですか?」
「いや、まだだ。安心しろ。あと……7分はある」
俺は机の上に参考書を出す。
「あの時はもう無我夢中だったな。一夏をあの歳で父親にする気か!? 私をこの歳で叔母にする気か!? とな」
「織斑先生たちは当時……?」
「あの頃だから……私と束が22で、大学卒業を控えていたな」
「……一夏は?」
「……11歳だった」
「11!?」
「ああ」
「つまり、織斑先生が22歳の時に、当時11歳の俺に子供が……織斑先生からしたら甥や姪が出来てたかも知れないのか」
「そうだ」
織斑先生曰く、先制の一撃は自分が打った。
木刀を使って、本気で打ち込んだ。
最初の一撃を束姉が甘んじて受けなかったら、束姉や箒の実家──篠ノ之剣術道場は、その一撃で半壊していたらしい。
そこからは殴った斬ったの応酬になり、それを三日三晩続けた末に、スタミナで織斑先生が負け、勝者こそ正義と勝者特権を行使されたのだとか。
「せめて一夏が大学を卒業し、就職して半年経つまでは避妊しろ、と言い含めるのが精々だった」
「……俺、昨日も寝るまで束姉とヤりまくってたけど、避妊とかしてないぜ?」
「一夏、おまっ……!」
俺の言葉に、箒の表情が真っ青になる。
「まあ、心配するな……いや、心配するなというのもおかしな話だが、束は『いっくんとの行為はあくまで、私の性欲発散が目的。子供を作る気はない』と言っていた。事前に用意してあっただろう避妊用ナノマシンを、私が見ている前で自身に注入したんだ」
「避妊用ナノマシン……マジか」
「ああ、マジだ」
なるほど。
だからあれほどヤりまくっても、俺と束姉との間に、子供ができなかった訳か。
「ただ……」
「ただ?」
「その避妊用ナノマシンは、厳密には避妊用ではなくてな」
「え?」
箒が首を傾げていると、織斑先生からISの【
《……聞こえているか?》
俺と箒も慌てて自分の専用機の
《これ、織斑先生の専用機【
《ああ》
瞬刃。
その名のとおり一瞬で相手を切り伏せる刃、というテーマで開発された、第4世代型試作機で、織斑先生の専用機。
大振りのISブレード【
世にも珍しい
《……で、話を続けるが、束が自身に注入した避妊用ナノマシンだが、厳密には、自身の卵巣をISコア製造器官に作り替えるナノマシンでな》
《……は?》
《卵巣を、ISコア製造器官に……!?》
性欲が強くなった事により、他の普通の女の人の数倍のペースで、卵巣が卵子を排出するようになった束姉は、このまま俺と交わり続けていると、そう遠からぬ将来、妊娠してしまう事を危惧した。
そこで考え付いたのが、自身の卵巣が持つ排卵機能を改変し、卵子の代わりにISコアを排出させる事だった。
卵子の代わりに排出されたISコアは、束姉の子宮内で急速に大きくなり、3日ほどかけて一般に流通しているISコアと同じサイズに育ち、束姉の子宮から排出され、普通のISコアとして扱われる。
《つまり束と一夏がヤる事をヤりまくってても子供が出来ないのは、束がナノマシンで自分の卵巣を作り替え、卵子をISコアに作り替えているからであって、そのためのナノマシンを注入したのが、私に勝った直後、と言うのが実態だ》
《マジか……》
《……織斑先生》
《何だ? 篠ノ之》
《つまり、一夏が姉さんで童貞を卒業して以降に流通したISコアは、イコール姉さんの子供、という認識で?》
……箒、お前、なんつー発想だよ。
その着眼点は無かったわ。
見ろよ、織斑先生も呆然としてるじゃねーか。
《なら何だ……? 私の瞬刃が
《……織斑先生?》
《織斑先生!?》
箒の衝撃的な発想に、織斑先生は幽鬼のような表情をして、教室から出ていってしまう。
あと2分もしないうちに、次の授業開始のチャイムが鳴るというのに。
やがてチャイムが鳴って教室に入ってきた山田先生から、織斑先生が体調不良で2時間目を休む事が伝えられた。
******
昼休み。
俺は箒を伴い、購買で箒に栗羊羹を奢り、それから昼食を食うため、食堂に来ていた。
織斑先生はあの後、3時間目にキッチリ復活を遂げて帰ってきた。
聞けば休んでいた2時間目の間に、瞬刃のコア人格と話をして、箒が思い付いた仮説が正しく、これまで双子の兄ないし姉側のコアしか使っていなかった事を知り、今後は弟ないし妹側のコアも使うよう決めたらしい。
「さて、朝飯を抜いた分、しっかり食いたいんだが……箒、オススメはあるか?」
「そうだな……聞き及んでいる限りの一夏の食欲だと、ローストビーフ丼を特盛で頼んだり、フライ定食を大盛で頼んだり……麺類を特盛で頼むのもいいかもしれないな」
ローストビーフ丼、フライ定食、麺類。
幸い、先客がそれぞれ順番に注文したので、その量を見る。
「……大盛と特盛の差は?」
「並盛の2倍が大盛、3倍が特盛だ」
「なるほど」
「私が唐揚げ定食の大盛を注文してやる。参考にしろ」
「助かる」
俺は箒が券売機で唐揚げ定食の食券を買い、それをカウンターで大盛と言って食券を差し出すのを見る。
ほんの数分で出てきたのは、子供の握りこぶしほどの唐揚げが、たっぷり10個盛り付けられた、実にボリューミーな一皿だった。
サウザンアイランドドレッシングがかかった、千切りキャベツのサラダと、汁椀一杯の豚汁、並盛の茶碗ご飯がセットだ。
「箒、それでいくらだ?」
「これで500円だ。サイズ変更は無料なんだ。お残しは厳禁だがな」
「なるほど……なら俺はローストビーフ丼を特盛で行くか」
券売機の列に並び、ローストビーフ丼の食券を買う。
そしてそれをカウンターに出し、特盛で、と告げる。
するとカウンターの
俺は大丈夫ですと答える。
すると3分もしないうちに、どんぶりご飯の上にローストビーフが山と盛られた、視覚的インパクト充分な逸品が出てきた。
俺はそれを受け取り、箒が待つテーブルに向かう。
「一夏、こっちだ」
「おう」
手を振って場所をアピールしていた箒が座っていたのは、U字型のボックス席だった。
7人は座れそうだ。
「じゃあ、食うか」
「ああ」
「「いただきま──」」
テーブルに備え付けの箸を手に、箒と揃っていただきますを言おうとした俺たちだったが、相席しても良いかと聞かれ、問題ないと答えたのだが……
「久しぶりだな、一夏」
「モモセンパイ!? 辰姉も!」
「やほー」
俺たちに相席を申し込んできたのは、モモセンパイと辰姉のコンビだった。
「ヒドイじゃないか一夏。こんなにも熟れた肢体を持つ女が、その体を好きにしていいと毎日誘っているのに、それを無下にしてIS学園に逃げるなんて」
U字型のボックス席に座っていたのが災いし、左隣に箒、右隣にモモセンパイという、逃げられない布陣になってしまう。
ちなみに辰姉はモモセンパイの隣だ。
モモセンパイは右手でフライ定食特盛を食べながら、左手で俺の太ももを擦るが、俺はその左手を払いのける。
「つれないぞ一夏。触られるのがダメなら、触るか?」
「モモセンパイは触られたいなら、トップバストをもう30cm増やしてください」
言って俺はローストビーフ丼を頬張る。
美味い。
「うら若き乙女に、胸囲を30cmも太くしろと言うのか!?」
「……一夏、この人たちは?」
「川神学園時代の先輩と知り合い」
「川神百代だ。よろしく」
「板垣辰子だよー、よろしくねー?」
「篠ノ之箒です。よろしくお願いします」
「まゆっちみたいな態度だな……同じ1年なんだし、気軽に行こう」
「同じ1年?」
俺はモモセンパイの制服を見る。
……確かに、リボンの色が箒と同じだ。
「マジで同学年なのか」
「マジだ」
「ちなみに私もモモちゃんも、川神市からIS学園行きモノレールで通ってるよ」
このまま
「いっくーん!」
いまこの場に居合わせると不味い人物の声が聞こえてきたのだ。
原作との主な変更点
1.千冬と束の年齢(原作の千冬は24歳だが、本作の千冬は28歳の想定。束は千冬と同い年であるため省略。ちなみに大和たちの担任【
2.一夏は箒とも肉体関係を持っている
3.一夏は11歳の頃、束を相手に童貞を
4.本作のISコアは初期ロット(467個)を除き、束が文字どおり産む事で作られる
5.千冬の専用機は暮桜ではない
6.千冬の専用機はISコアを2個搭載している
続きはまたいずれ