IS~Ichika Strange~ あるいはこんな織斑一夏   作:Exnyas

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原作イベントを1つ改変し、前倒ししました。


9.始業前、食堂にて

その後、教室棟外周を3周するジョギングを終えた俺は、トレーニングジムでサンドバッグを30分ほど蹴り、居住区画に戻って風呂場で汗を流し、制服に着替えてから食堂へ向かった。

 

食堂には珍しく我が義姉(あね)こと織斑千冬の、織斑先生の姿があった。

 

俺は食券販売機でサンドイッチセット(山盛)を注文すると、受け取ったサンドイッチセットを手に、織斑先生の向かいに座る。

 

「おはよう千冬ね……おはようございます、織斑先生」

 

「おはよう一夏。まだ千冬姉で構わないぞ。始業のチャイムは鳴ってないからな」

 

「……そうか?」

 

「ああ……で、昨晩はお楽しみだったな?」

 

席に着いた俺に、千冬姉が有名なゲームの迷セリフをアレンジした言葉を投げかける。

 

「……誰から聞いたんだ?」

 

その言葉の意味を知っている俺は、動揺を表情に出さないよう取り繕った。

 

「山田くんからだ」

 

「あー、俺からは口止めはしてなかったな」

 

言って俺はサンドイッチをパクつき、セットで出てきたコーヒーを啜る。

深いコクに確かなキレと強い甘味……ブラックでも飲みやすい、良いブレンドだな。

 

「今朝、更衣室で会うなり、それはそれは嬉しそうに『昨晩、先輩の弟さんにオンナにしてもらいました。意識が飛ぶまで愛してもらえて、今までコンプレックスだった自分の体に、自信が持てるようになりました』だぞ? 思わず目を見開いて我が耳を疑ったし、何なら空いた口が塞がらんかったわ」

 

「何か、ごめん」

 

「山田くんの意識が飛ぶまでヤったそうだが……ちゃんと避妊したんだろうな?」

 

「そこはもう、エロスとサキュバスで」

 

「エロスとサキュバス……ああ、束謹製のナノマシンだな。つまり束も混じってたのか?」

 

「あー……実は箒も一緒だった」

 

「お前という奴は……この巨乳狂い(ボイニスト)め」

 

「返す言葉もない」

 

俺が巨乳狂い(ボイニスト)なのは事実だし。

 

「まあ、下手に性欲を溜めこんで、他の女生徒に手を出される方が問題だ。箒や山田くんで処理が出来るなら、可能な限り処理をしておけ。それと、いざというときは束を頼れ。アイツなら、アイツ単身でお前が気絶するまで搾り取る事が可能だろう。学業に支障をきたさん限り、多少の事には目を瞑るし、学園上層部とは、お前と束を招き入れるための条件として、その辺の話がついている」

 

「学園上層部まで話が上がってるのか。いや、それでもまずは、ありがとう」

 

サンドイッチを食べ終えた俺は、千冬姉に頭を下げる。

 

「……で、その束はどうしたんだ? 朝から外出申請を出していたようだが」

 

「束姉なら九鬼財閥極東本部(おれたちのじっか)だよ。オヤジやオフクロたち、関係者一同に、俺のレポートを提出しに行くついでに、今後必要になるであろう機材や資材を取りに行った」

 

「……なるほど。レポートはともかく、機材と資材は、お前の専用機(アレ)絡みか」

 

「らしいよ」

 

言っている間に、千冬姉も朝食が終わったらしい。

 

「ところで千冬姉、今日の授業の予定は?」

 

「普通に6コマ全て座学……と言いたいが、そろそろIS実技も始めねばならんのでな……4コマ目でISスーツの必要性を教え、午後の2コマでISの起動訓練だ」

 

「ISスーツか」

 

ISスーツはISを効率的に操縦するために使われる専用衣装で、体を動かす時に筋肉から出る電気信号などを増幅し、着用しているISに伝える役割を持つ。

 

ただし、専用衣装とは言うが、必ずしも必要な訳ではない。

 

束姉から聞いた話によると、生地が良いために肌触りが良く、吸湿性と速乾性に優れ、体にフィットするため、下着代わりに制服の下に着込むIS操縦者は多いらしい。

 

まあ、一種のパイロットスーツだ。

 

耐寒耐熱性能はもちろんの事、ある程度の防弾性も備えているため、ピストルは当然として、MP5やUZIなど(サブマシンガン)の射撃では、弾はスーツを貫通せず、スーツ表面で止められる。

 

ただし、被弾時の衝撃までは消せないため、被弾数や被弾距離、被弾部位によっては、内出血や打撲、骨折や内臓損傷も起こりうる。

 

当然、ISスーツとは言っても所詮は布なので、火気と刃物にはめっぽう弱い。

 

また、IS学園ではISスーツは体操服と同じ扱いで、入学時に3着支給される。

4着目以降は、体形の著しい変化で初期支給の3着が着れなくなったり、授業中・訓練中に破損した場合のみ、申請すると支給される。

 

なお制服と同じく、常識的な範囲内であれば、オーダーメイドという形で、ある程度の改造が認められている。

 

なお専用機持ちは、その専用機運用に適した専用ISスーツを持っているのが常識で、もちろん俺も持っている。

 

「午後のIS起動訓練ってのは?」

 

「読んで字の如くだな。打鉄かラファール、オウガのいずれかを選んでもらい、起動して着用し、歩行や滑走などの初歩技能の訓練を行う予定だ。一夏には申し訳ないが、束から正式に発表があるまでは量産機で参加してもらう。もちろん、オルコットにもな」

 

たまには原点に回帰し、量産機でできる事・できない事を把握し、そのデータを専用機にフィードバックするのも重要だ、と千冬姉は語る。

 

「なら俺はオウガ一択だな。あれほどラグが少ない量産機を他に知らない」

 

「武術の街、川神で作られたISだ。お前や私のような川神人にはピッタリだろう」

 

言って千冬姉がコーヒーを啜り、一瞬、眉間に皺を寄せる。

 

「……キレが足りんな。やはりコーヒーはワンサマー・ブレンドに限る」

 

そんな事を言う千冬姉に苦笑する。

 

「部屋にあるだろ?」

 

「あるにはある……が、残りが心許ない。束に連絡を入れて、ワンサマー・ブレンドを持って来させるとしよう。一夏も受け取っておけ」

 

言って千冬姉はコーヒーをグイと飲み干し、カップをトレーに置く。

 

「分かった。ところで千冬姉」

 

「どうした?」

 

「俺が山田先生を倒した時のオウガってどうなってる?」

 

「ああ、あれか。あれなら一夏が施したチューニングをそのままに、入学試験を行ったアリーナ……第4アリーナのISハンガーに置きっぱなしだぞ」

 

「そのオウガさ、午後の授業で使えるようにできない?」

 

「可能だ。手配しておこう……っと、そうだ。言い忘れていた」

 

「何だよ」

 

「その午後のIS起動訓練だがな。隣の1組と合同だ」

 

「げえっ!?」

 

1組と合同授業。

それ即ち、モモセンパイや辰姉と顔を合わせ、一緒に授業を受ける事に他ならない。

 

……だが俺よ、少し考えろ。

隣のクラスと合同と言う事は、ISスーツ姿のモモセンパイや辰姉を見れると言う事。

……モモセンパイは見てくれは良いんだから、目の保養と言う事にしよう。

 

辰姉は真面目だし、優しいし、あのスタイルだから、そもそも問題無い。

……リミッターを外さなければ、だが。

 

「……だが、気功術者が散らばって騒ぎにでもなったら面倒だな……よし。一夏と川神、板垣はセットにして、お前たちを含むチームは私が見てやるとしよう」

 

「そうしてくれ」

 

呻く俺に千冬姉は『トレーを頼んだ』と言って、食堂から立ち去る。

時計を見れば時刻は8時20分を過ぎたところだった。

 

そろそろ職員室では朝礼か。

 

俺は千冬姉から託されたトレーや皿を、自分のトレーや皿に重ねると、それをカウンター横の洗い場に置き、食堂をあとにして、居住区画へと足を向けたのだった。

 

……

 

……

 

……

 

 

教室に入り、挨拶をする。

すると相川さんや四十院(しじゅういん)さん、(かがみ)さんやのほほんさん……もとい、布仏(のほとけ)さんが、雑誌を手に集まってきた。

 

「おはよう織斑くん」

 

「ああ、おはよう」

 

「織斑くんにも聞いてみたら?」

 

「何をだ?」

 

「ISスーツの話よ」

 

「いまクラスで、どのメーカーのスーツがいいか、話題になっているのだ~」

 

言って布仏さんが、四十院さんから受け取った雑誌を、俺に手渡してくる。

 

雑誌の名前は『コスチューム!』で、表題にISスーツ特集とある。

俺は表紙を捲り、ISスーツを着て撮影された女性たちの写真を流し見る。

 

「へえ、学園支給品じゃないISスーツって、こんな感じなんだな」

 

俺はページをパラパラと捲り、掲載されているISスーツの写真を見るのだが、1つ、分かった事がある。

 

IS操縦者には、グラビアアイドルとしての側面もある事。

 

……何で分かったかって?

ISスーツを着て写真に写っているのは、もちろん女性ばかりなのだが、その中に数人、見知った顔があったからだ。

 

一例を挙げるならアメリカのメーカーを担当している女性と、イタリアのメーカーを担当している女性。

 

「織斑くん的には、どこのメーカーのISスーツが好み?」

 

「俺の好み? なら……」

 

俺はパラパラとページを戻し、2ページ目に記載されている日本のメーカー『釈迦堂(しゃかどう)縫製』のISスーツを着た女性の写真を指差す。

 

「これ」

 

「釈迦堂縫製? 渋い趣味だね」

 

「ここのメーカー、ISスーツの見た目は地味だけどさ。着心地と実用性は天下一品なんだ」

 

まあ、それもそうだろう。

釈迦堂縫製は、川神にその名ありと知られた著名な武術家で、川神院元師範代【釈迦堂 刑部(ぎょうぶ)】さんの奥さんが興した工場だ。

 

釈迦堂さんはモモセンパイに川神流の基礎を仕込んだ人で、攻撃力も防御力も素早さもタフネスも、常人を凌駕する気功術者。

 

そんな彼の奥義に、手から自在に動かせるチャクラム状の気功弾を放つ【リング】と言う技があるが、それを何と片手で20発も同時に発射し、その全てをバラバラの軌道で操作し、全弾相手の別々の急所に同時に当てる……その名も【運命の輪(フェイテッド・サークル)】という絶技(ぜつぎ)の使い手の奥さん。

 

そんな奥さんが自社製ISスーツを着て、雑誌に載っている。

 

本人曰く、もう45を過ぎた老婦との事だが、その見た目はどう見ても20代前半で、何なら揚羽義姉(あげはねえ)さんと同世代にしか見えないほど。

美魔女ってやつか。

 

そして、そんな気功術者が手掛けたISスーツは、当然のように気功術適性が高いし、何より夫……釈迦堂さんが現役時代、道着のインナーとして愛用していた実績があるほど、耐久性と柔軟性に富んでいる。

 

昔、釈迦堂さん本人に聞いた事があるが、釈迦堂さん曰く『家内のインナー? あァ、アレがあると無いとじゃ、気の巡りが3割はちげぇ』との事だった。

 

「何で着心地を知ってるの?」

 

「実際に愛用してる人と知り合いだから」

 

「……誰? 有名人?」

 

「まあ有名なんじゃない? そのスーツ着てる人の旦那さん。通称【戦輪(リング)の釈迦堂】ってんだけど」

 

「あー、アタシ知ってる。釈迦堂さんってアレでしょ? 川神市名物『豚丼』の老舗『梅屋(うめや)』の最年長店長で有名な……」

 

「そうそう、その釈迦堂さん」

 

あそこの豚丼、死ぬほど美味いから困るんだよな。

川神学園のメシマスターことクマも認める美味さ。

 

本人曰く、一時期は梅屋の豚丼(+単品とろろ)にハマり過ぎて、賄いを食いたいがために、梅屋でバイトをしていた経験もあったそうだ。

 

そんな釈迦堂さんは梅屋好きが高じ、梅屋1号店に、梅屋史上最年長の店長として就職し、今でもバイト時代に培った腕を下地に、名物店長として働いているそうだ。

IS学園に入る直前に連絡をしてきたクマからの話だが。

 

……川神梅屋1号店の豚丼、食堂でも食えるようにならないだろうか?

 

「みんなはどこのメーカーのISスーツがいいんだ?」

 

「私はハヅキ社製がいいなぁ」

 

言って相川さんが雑誌のページを捲り、ハヅキ社製ISスーツのベーシックモデルを着た女性の写真を指差す。

……際どいな。

もはやビキニタイプの水着だ。

 

「え? ハヅキってデザインだけって感じしない?」

 

「そこがいいんじゃん」

 

「私はミューレイのスムーズモデルかな。性能に惹かれたわ」

 

四十院さんはそう言って、ハヅキ社製ISスーツを着た女性の、2つ隣に写っている女性の写真を指差す。

 

競泳水着に長手袋とオーバーニーソックスを合わせたようなデザイン。

この人の双球、なかなか立派なサイズだな。

 

「あー、ミューレイね。モノはいいけど高いんだよね」

 

「それがネックなのよね」

 

そんな話をしていたら、隣に箒が立っている事に気がついた。

 

「おはよう箒」

 

「ああ、おはよう一夏。何を見ているんだ?」

 

「コスチュームって雑誌の、ISスーツ特集っていう特別号」

 

「なるほど」

 

箒から仄かに湿布の匂いがする。

腰に貼っているのだろう。

済まんな箒、無理をさせた。

 

「篠ノ之さん、おはよう」

 

「おはよう」

 

「篠ノ之さんはどこのメーカーのISスーツが好き?」

 

「私か? 私は……」

 

そんな事を話していると、チャイムが鳴り、真耶……山田先生と千冬姉……織斑先生が教室に入ってきた。

 

「はーい、皆さん揃ってますねー? SHRを始めますよー」

 

「ほら、席に着け。不要物はしまって、参考書を出せ」

 

みんな慌ただしく自分の席に戻り、参考書を机の上に出す。

 

「今日は昼から、1組と合同でIS起動訓練を予定しています」

 

「お前たちが読んでいたISスーツの雑誌だが、それを着る事の意味などを4コマ目で教えるつもりだ」

 

そんなSHRで1日が始まったのだった。

 




原作との主な変更点

1.釈迦堂さんが結婚してる
2.釈迦堂さんの奥さんはすごく強い
3.釈迦堂さんが働いてる(しかも名物店長)
4.ハヅキ社とミューレイ社のISスーツデザインをオリジナルで文章化


相川さんや四十院さん、鏡さんの口調がわからない。

続きはまたいずれ
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