結末の先へ   作:まさぼす

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欠落

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「予定より遅くなってすまない。」

 

「いえ、そんな!こちらこそ、送ってもらってすみません。」

 

「気にするな。キヴォトス(ここ)の夜道は危ないからな。」

 

 

 

 

 

対策委員会(あいつら)を学校へ送り届けた後、ヒフミを車で自宅に送り届けた。

 

 

まだ20時であるとはいえ、夜道は危ない。

トリニティの自治区は他の場所に比べると治安は良好ではあるが、それでも非武装で出歩ける程ではない。

 

油断すれば誘拐事件等の被害に遭う可能性がある。

この自治区に住まう人々は裕福な家庭で育っている者が多いからだ。

 

 

もう自分の生徒ではないにしろ、無責任に帰す訳にもいかない。

 

 

 

 

 

「あの、先生。」

 

「どうした?」

 

「その……まだ、お時間ありますか?」

 

 

 

 

 

ヒフミは少し俯きながら、瞳をこちらに向ける。

 

 

なにか話がしたいように伺える。

思い返してみれば、こいつに会ったのも1年以上前のように思う。

 

積もる話も多少は有るか。

 

 

 

 

 

「……少しなら。」

 

「そ、そうですか…なら、あそこでお茶でもどうですか!」

 

「いいぞ。」

 

 

 

 

 

ありがとうございます、と明るく笑顔を返してくる。

 

こいつのこういった気概には何度も助けられてきた。

どんな窮地に追い込まれても、諦めず突き進み、未来を獲得した。

 

心を虚無に捨てそうになった友人を仄暗い海から救って見せた。

 

 

 

まさに(きぼう)だった。

その小さな背中は、後ろや横に並び立つ人間の心を奮わせていた。

 

 

それだけは覚えている。

事の発端も、事の顛末も、朧気だと言うのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何を頼まれますか?」

 

 

 

 

 

黒い翼を翻し、店員が注文を催促しに来た。

 

 

席に着いたばかりで品揃えもロクに見ていないと言うのに不躾だ。

 

しかし、特に見定めるほど奇抜な品揃えでもなさそうだ。

ヒフミも自宅の付近の店で通い慣れているならすぐ決まるだろう。

 

手早く注文して下がらせるか。

 

 

 

 

 

「む……ホットコーヒーと…そうだな、プリンを貰おう。」

 

「わ、私はミルクティーと…チョコレートケーキを……。」

 

「……かしこまりました。」

 

 

 

 

 

 

 

………………。

 

 

 

 

 

 

 

……店員が下がらない。

 

 

妙に視線を感じる。

 

椅子に腰かけているオレとたいして視線が変わらない小柄な店員。

その女から横顔に穴が空いてしまいそうな程の視線を突きつけられている。

 

 

なんだ、こいつは。

 

 

 

 

 

「あ、あの…先生…き、気付いてませんか……?」

 

「……?」

 

 

 

 

 

ヒフミが人差し指を店員の方へ向ける。

 

指先の向こうには桃色の髪と頭から垂れる黒翼。

俺を凝視しながら顔を赤らめ、しかめ面でこちらを睨み付けている。

 

……微かに、記憶がある。

 

だが、名が思い出せない。

トリニティの生徒であるのは分かるがそれ以外の記憶が曖昧過ぎて記憶と呼べない。

 

仄かに思い出せるのは…こいつが重度の官

「今すごい勘違いをされてる気がするんだけど!!!」

 

 

 

 

 

オレの思考を遮るように、突然品書を振り回しプリプリと怒り出す少女。

 

 

なんだ、まさかこいつ、読心術でも使えるのか。

 

恐ろしい女だ。

人は見掛けに寄らないとは言い得て妙だ。

 

これではさっきの思考も筒抜けか。

 

 

 

 

 

「あはは……コハルちゃん、先生がビックリしてますよ。」

 

「で、でも!誤解はちゃんと解いておかないとだし!」

 

「すまない、なんの事だ。」

 

「と…と、とにかく誤解なんだから!」

 

 

 

 

 

よく分からんヤツだ。

 

だが、とりあえず読心術の使い手では無いことは分かった。

明ら様に当てずっ法だ。

 

それにこの反応を見るに、恐らく経験則からくる反射的な抗議だ。

 

 

つまり、オレの掠れた記憶は……。

 

 

 

 

 

いや、考えないようにしておこう。

間違いなくロクでもない展開になるだろう。

 

 

 

 

 

「…………。」

 

「な、なによ……。」

 

 

 

 

 

少女の瞳を見つめ、記憶を探る。

 

しかし……やはり記憶に当て嵌まる人物が居ない。

何処となく雰囲気はセリカに似てはいるが、ここまで不審な挙動はしない。

 

 

ここは正直に話しておく方が今後の為だろう。

 

 

 

 

 

「すまない、少し事情があって記憶が曖昧になっている。」

 

「……え?」

 

「記憶がって…何、どう言う事!?」

 

 

 

 

 

ヒフミにも…いや、対策委員会(あいつら)にもこの事情は話していない。

 

話したところで困惑させるだけだからだ。

自分はこの世界の先生に上書きされた人間で、一部記憶が曖昧だと言っても、こいつらには何の事やら理解できないだろう。

 

 

"この世界"では初めからオレが先生と言う事になっているからだ。

正しく言えば、辻褄合わせの為にこの世界に刻まれていた前任の情報がオレに置き換えられている。

 

 

つまり、前任に関する記憶がこいつらには全てオレと歩んだ記憶と認識されている。

 

 

 

 

 

「その事情……聴いても良いの?」

 

 

 

 

 

オレの表情を見て只事では無いと悟ったのだろう。

さっきまで気を立てていた少女がしおらしく問いかけてきた。

 

全てを話すつもりはない。

しかし事実とかけ離れた誤魔化しをすると後に辻褄が合わなくなる。

 

 

さて、どう話したものか。

 

 

 

 

 

「っんんん!」

 

 

 

 

 

今度は小太り風の絡繰が現れた。

 

恐らくだが風貌から見るにここの店長と言ったところだろう。

この少女が1つのテーブルに付きっきりになって居るものだから様子を見に来たのだ。

 

そうしたらどうだ、世間話を始めようとしているではないか、と。

 

 

 

 

 

「す、すみません!」

 

「いや大丈夫だよ。問題は無さそうだね。」

 

 

 

絡繰が愛想笑いを浮かべる。

 

 

 

「すまない、話し込んでしまった。」

 

「いいえ、お気になさらず。もう少しでこの子もアガリですから、ご注文されたものを召し上がりながらお待ちになっては如何ですか?」

 

「そ、そうなんですね……じゃぁ、そうさせてもらいます。」

 

 

 

 

 

ヒフミの返事を聞くと、絡繰と少女は少し頭を下げた後、厨房の方へ帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、じゃぁコハルちゃんが来るまでに、私から先生に話しておきたい事を話しますね。」

 

「む、そう……だな。」

 

 

 

 

 

紅茶を一口だけ含んだ後、ヒフミが話し始める。

 

俺の事情に関しては二度手間にならないように後回しにしてくれたのだろう。

相変わらず気の利く女で助かる。

 

 

 

 

 

「単刀直入に言いますと……その、私…教師になろうと思っているんです。」

 

「…教師?」

 

「はい。」

 

 

 

 

 

進路相談か。

オレは仮にも教師で、その点に関して明るいと考えて相談してきたのだろう。

 

 

しかし困った。

 

立場的にも経験的にも前任の記憶を元に教示できるが、今のオレがそれを語っていいのだろうか。

気概や心構えなど、オレが語って良いものなのだろうか。

 

だがここで事情を話し、こいつの思いを見て見ぬふりをしてしまえば、こいつの心意気は失せてしまうかもしれない。

 

 

 

それならここは、前任の記憶からではなく、オレ自身の経験から話そうか。

 

 

 

 

 

 

 

「どうして教師を志す。」

 

「えーと…少し恥ずかしいんですけど……。」

 

 

 

そう言ってオレに視線を向ける。

 

 

 

「先生に、憧れたから……です。」

 

「!」

 

「どんなに厳しい状況でも、絶対に諦めないで真っすぐに歩き続ける。

何かを諦めそうになった人の背中を押して、一緒に歩いていく。」

 

「そんな先生を見て、私もこんな大人の人になりたいって思ったんです。」

 

「先生みたいには、出来ないと思いますけど……。

教師になって、今度は私が誰かを先生みたいに導けたら……って。」

 

 

 

 

 

 

泣きそうだ。

 

 

 

お世辞にも平穏とは言い難いこの世界でこんなにも透き通った意思を持つ者が居るとは。

前任のような人間に大層な人相を想像したようだが、それは最早どうでもいい。

 

オレの記憶にあるヒフミは、引っ込み思案で、中々他人に自分の意思を伝えられない人間と思っていた。

 

それが今、こうやって誰かに自分の意思を教示として伝える事を生き甲斐にしようとしている。

全ての教師と言う生き物が想い焦がれている事が、眼前で起きている。

 

 

 

 

 

「そうか……。」

 

「先生は、どうして教師になろうと思ったんですか?」

 

「オレは……。」

 

 

 

 

 

誰かの先に立ち、先導する者になろうとした理由。

 

 

 

皆に望まれたから、と言えば無責任になるだろう。

明確に、自分がそういった存在になろうと決意した出来事ならあるが、それが教師を志す理由として相応しいかと聞かれれば疑問だ。

 

しかし、通ずるモノもある。

 

 

 

 

 

「自分が思う強い人間になろうとした結果、自然と教師という職を選ぶことになった。」

 

「えっと…先生も、誰かに憧れた……という事でしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まっすぐ、自分の言葉は曲げねェ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そうだな、そうかもしれない。」

 

 

 

 

 

オレもまた背中を追いかけていた。

目を前に向ければ、そこには必ずヤツの背中があった。

 

 

どんな逆境に立たされようが、決して自分の信念を曲げない。

 

 

成し遂げられるまで、どれだけ傷付こうが立ち止まらない。

無我夢中で手を広げ、その手では届きそうにもない者までも救ってしまう。

 

 

 

そんな、英雄と言われるような存在に、オレは憧れた。

 

 

 

 

 

「この先、お前も何処かでその志が霞んでしまうような出来事に出くわすかもしれない。

理想と信念だけでは、どうにもならないと思う事もあるだろう。」

 

「…………。」

 

「それでも、諦めずに立ち上がる覚悟があるか?」

 

「……はい。」

 

 

 

「諦めが悪いことが、私の取柄ですから。」

 

 

 

「……よし。」

 

「ええ!?」

 

 

 

 

 

 

 

ヒフミの頭を撫でる。

 

こいつが、このような志を持って教師を目指すことに感動を超えた何かを感じた。

まるで自分の娘が跡取りを申し出たような感覚だ。

 

自分の背を追っていた者が、肩を並べ、そして追い抜いていく。

 

 

 

これを喜ばずに居られるだろうか。

 

 

 

 

 

「お前なら必ず教師になれるだろう。誰かを導ける先立(せんだち)に。」

 

「そうでしょうか……。」

 

「ああ、必ず。だが、そのためには」

 

 

 

 

 

「こいつへの熱意は常識の範囲で程々にする事だ。」

 

「ああ!ペロロ様!」

 

 

 

 

 

ヒフミの隣の椅子に、客人のように居座る少し大きめのぬいぐるみを手に取る。

 

お、意外と悪くない肌触りだ。

枕や肘置きに良いな。

 

しかし、まぁ……絶妙に気味の悪い顔だ。

夜更けに明かりの無い場で目が合えば身の毛が逆立つ程には。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと目を離したと思ったら!ななな、何イチャイチャしてるのよ!」

 

 

 

 

 

ぬいぐるみをヒフミに返した所で、コハルが仕事を終え戻ってきた。

そしてまた良く分からない癇癪(かんしゃく)を起している。

 

こいつは元からこうなのだろうか。

感情の起伏で疲れそうだな。

 

 

 

 

 

「イチャイチャって……先生と私がですか!?」

 

「他に誰がいるのよ!」

 

 

 

確かに俺たち以外に客はいない。

 

 

 

「勘違いするな。オレはヒフミから進路相談を受けていただけだ。」

 

「ぜったい嘘!エッチなのはダメ!死刑!」

 

「えっち!?」

 

 

 

 

 

ヒフミ、まともに取り合っているとこっちが持たない。

 

 

 

 

 

「落ち着け、とりあえずプリンを食え。」

 

「え?うん、ありがと。」

 

 

 

ペロロが座っていた椅子を引き、コハルを座らせる。

 

 

 

「す、すごい……。」

 

 

 

 

 

よし、上手くいった。

 

この手の癇癪持ちは気が逸れる事を与えれば落ち着くものだ。

普段なら通用しないだろうが、仕事を終え多少なりとも空腹を感じている今なら効き目があると踏んだ。

 

特にその…なんだ、これは直感だがこいつは恐らく頭

「それで、先生の記憶が曖昧な理由って何なのよ。」

 

 

 

 

 

またしても思考を遮る形で話を始めた。

やはり読心術の使い手なのではないだろうか。

 

 

 

 

 

「そうですよ!私も初めて聞きました、そんな話!」

 

「あ、頭ぶつけたとか…?」

 

「それくらいじゃ先生は傷付きませんよ……。」

 

「し、知ってるし!ちょっと冗談いってみただけ!」

 

 

 

 

 

二人の少女がオレの事情を皮切りに話し始める。

やはり女学生とはこう言ったモノなのだろうか、すぐ話が脱線する。

 

いや、別に構わないが……こいつら、時間は大丈夫なのだろうか。

特にコハル。

 

こちらも対策委員会(あいつら)に連絡しておかなければまた厄介事になるな。

 

 

 

 

 

「記憶が朧気な理由…だったか。」

 

 

 

俺が話し出すと、二人は話をやめる。

 

 

 

「事の発端は、オレがアビドス砂漠で遭難した事だ。」

 

「遭難!?」

 

「砂漠で、先生がですか!?」

 

 

 

 

 

驚愕を露にする少女たち。

 

この反応から察するに、二人はオレの能力の一端を知っている。

そして、それを行使した戦闘も。

 

だからこそ、砂で溢れ返る砂漠地帯でそんな状況になり得る訳がないと考えたのだろう。

 

 

 

 

 

「オレの力も有限だ。それに砂があれば万能と言うわけでもない。」

 

「そ、それはそうかもしれないけど……。」

 

「探し物を一人で探しに行ったんだが、道中で難敵に目を付けられて致し方なく戦闘した。」

 

「先生が難敵と言うほどの敵……。」

 

「それがオレの力の源を枯らせた挙句、空腹と脱水で気を失った。」

 

 

 

 

 

事の顛末としては嘘偽りはない。

敵と言っても、キヴォトス外での出来事の事だが。

 

 

 

 

 

「そ、その後は……?」

 

「偶然、その周辺を巡回していたホシノに救われた。」

 

「ホシノさんが……。」

 

「アビドスの生徒会副会長…だっけ?よく見つけられたわね……。」

 

「駅の近くだったからな。」

 

 

 

 

 

コーヒーを一口、含む。

こちらの世界に来て、オレが気に入った物の一つ。

 

茶とは違った苦みが仄かに口に広がり、何事も無かったように喉に消える。

そして香りだけが鼻の奥をくすぐる。

 

ああ、美味い。

 

 

 

 

 

「って、それだけ!?」

 

「大声を出すな。」

 

「うっ……き、記憶が曖昧になったって聞いたから、もっとこう……。

変な組織とかに襲われて、頭の中を…イジられたりしたのかと思ったわよ。」

 

「そんな事になっていればここには居ない。

官能本の読みすぎだ。」

 

「はぁ!??!!!?!?」

 

「あはは……。」

 

 

 

 

 

確かにあそこはかつて怨敵(カイザー)が巣食っていた。

なんでも、かつてのアビドス高校5つ分以上の敷地を軍事基地として占領していたらしい。

 

俺がこちらに来た時には既に何者かに壊滅させられていたが。

 

 

 

 

 

「まぁ……ヒトでは無かったな。

あの周辺には指揮系統に異常をきたした巡回型機械兵が居て、そいつらに消耗させられた。数も数百は居ただろう。」

 

「ひゃっ……!?」

 

「その末に倒れ、脳に異常が発生した……らしいぞ。」

 

「らしいって、そんな他人事みたいに……。」

 

 

 

 

 

オレも医師にそう伝えられたからな。

もっともらしい理由として使わせてもらっている。

 

前任の記憶が掠れて、自己の記憶が濃くなり、性格が変質したなどとは流石に言えない。

 

 

 

 

 

「その点も含めて曖昧になっているからな、どうしても自分の事だと実感が湧かない。」

 

「そ、そうですか……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、じゃぁ…私の事も、忘れちゃったの……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

コハルが瞳を潤ませ、こちらを見つめる。

 

 

 

正直に言ってしまえば、こいつについての記憶は(ほとん)ど無い。

ヒフミが部長を務める部活の一員で、その部員4名のうちの一人である事くらいしか分からない。

 

この様子では前任に相当に懐いていたと伺える。

 

 

……少し心が痛むが、嘘をついても仕方がない。

 

 

 

 

 

「すまない。お前だけではなく、殆どの生徒の事を忘れてしまった。」

 

「……!!」

 

 

 

 

 

こいつの事だけを忘れた訳では無い。

トリニティの生徒も、ミレニアムの生徒も、覚えている人間の方が少ない。

 

 

 

アビドスの事、以外は。

 

 

 

 

 

「そ、そうなのね……。」

 

 

 

 

 

そいうとコハルは俯いてしまった。

 

『なんでヒフミの事は覚えてて私の事は忘れてるのよ!』

と怒声を上げるとばかり思っていたが、本当に傷心したのか続く言葉すら出てこない。

 

それ程、前任は慕われていたのだろう。

 

 

 

 

 

「すまない。謝って気が収まる事でもないとは思うが、謝罪しか俺にはできない。」

 

「……仕方ないわよ。

先生の方が、つらいって、分かるし。何も言わない。」

 

「コハルちゃん……。」

 

 

 

 

 

この少女もまた、強い心を持っている。

 

そう感じた。

他人を責め立てたい気持ちも、悲しさで打ち()しがれてしまいそうになっても。

 

それに耐え、他人に与えない。

相手の気持ちを自分の事のように感受できる優しさがある。

 

 

 

 

 

「その代わり、またプリン奢ってよね。」

 

「ああ……。」

 

 

 

 

 

すこし引き攣った少女の笑顔を見て、断片的に記憶の欠片が見つかった。

 

地下迷宮を非難区域としていた色彩の侵攻(あのとき)だ。

そこでコハルは無限とも思える敵勢力に押し潰されそうになりながらも市民を守っていた。

 

とうに身体的限界に達しているのにも関わらず、それでも立ち上がっていた。

自分の立場が有るからではない。

 

 

そうする事が正義だと、信じていたのだ。

 

 

 

 

 

「もちろんだ。」

 

「約束よ、忘れたら終身刑!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時計は22時を示していたが、それを知ったのは2時間後の0時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









あの場に先生は居なかったのに、何故そんな記憶が蘇ったんですかね。
不思議だなぁ。




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