あれはなに?これはなに?
分からないことがあれば学びに向かう、そんな場所
ここは聖フレイア学園
地球にある学び舎のひとつ、たくさんの生徒さんが通う学校です
それもただの学校ではありません
なんと崩壊からの危機を救う戦乙女の育成も兼ねている育成機関でもあったのです
そのため通っている生徒さんも毎日お勉強に加えて訓練だって頑張っています!
握るのは知識を蓄えるだけのペンだけはありません
力無き人々を守るために、女の子たちは気高い意思を持って武器を握って戦う力を養っているのです
さてはてお勉強のために通う生徒さんがいるのなら、当然ながらそれを教えるための先生だっていますよね
学園の廊下をてくてくと歩いている芽衣ちゃんもそのひとり
過去には同じ学園に通う生徒さんとして、そして崩壊との大戦を終えてからひとりの人間として彼女は先生の道を歩んだのです
とはいえまだまだ新任したばかりのヒヨコさん先生!あらゆることが手探りなのは生徒さんと変わりません
これからたくさんの経験をして立派な先生になるためにも多くの生徒さんを教えて向き合わなきゃいけないのです
授業を終えれば芽衣ちゃんの頭の中では次の授業はどう教えよう?あの生徒さんはどう接したらいいんだろう?
そんな先生らしい考えがぐるぐると回っています
ほんのすこし前までなら崩壊との戦いにお友達との別れや葛藤だってあったのに随分と人のために考えられるようになったもんだと角の生えたかみなり様モードを知っている人であれば驚きは隠せないでしょう
次の授業時間まで時間があります
それまでに準備を整えるために教員用のお部屋の扉を開けると、芽衣ちゃんの来訪に気づいたお部屋の主が待っていましたと言わんばかりに歓迎します
「ハーイ、芽衣。今日も随分とお疲れね?」
それは花も恥じらうような美しさを持ったピンクの妖精さん
少女のように愛らしく、成熟した大人のように美しい
こんな可愛らしい女の子がいるなんてびっくりです。きっとカービィだって見惚れてしまうに違いありません
しかしそんなフレンドリーな妖精さんの挨拶に芽衣ちゃんはちょっぴり呆れ顔
いくら美人さんでもそんな冷たい視線を受けたら風邪を引いてしまいそうです
「……そうね、今ので疲れが増えてしまった気分だわ」
「それはいけないわ、友よ。子供たちは思いの外、大人の不調を見抜いてくる」
「あなたがそうすることならそう言う事なのでしょうけど…いつも通りで構わないって前から言ってるでしょう?」
「ああ…その上で芽衣はこうすることを望まないと?」
「ええ。それとも私はあなたをこう呼ばなきゃいけないのかしら?───侵蝕の律者」
ピンクの妖精さんから麗しい大スタァのような雰囲気を纏わせた女性に
誰もがその美しさに嫉妬する女優から人の心を見抜くような怪しげな女性に
廻るように人の姿が瞬き一つで切り替わるのはあまりに非現実的な光景です
しかし芽衣ちゃんから言われた言葉にピンクの妖精さんの顔は少し悲しげな笑みを浮かべて降参とばかりに手を上げてしまいます
"はいはい……これでいいだろ?芽衣"
「ふふっ……こちらのほうが可愛いわよ、グーイ」
先ほどまでの美しい妖精さんや女の人はいったいどこに?
瞬きをすればそこにいるのはやや濃い目の青色球体の生きものがいます
まんまるな体にまんまるなお目々、大きな口からはにょろ~んと長い舌が飛び出ています
先ほどまでの芽衣ちゃんのこわ~い雰囲気も何処へやら
焼き芋のようにぽかぽかな優し気な笑みを浮かべてグーイと呼ばれた生きものを掴んでむにむにとします
その柔らかさは至福の一言!
ちょっぴりお疲れ気味な芽衣ちゃんも心から癒されてしまいます!
"人間はまだわからないね。人から人に労われるよりもこっちのほうが良いって少なくないし"
「それこそ人に寄るとしか言えないことだからしょうがないわ。カービィちゃんにも負けず劣らずなこの柔らかさ…長所は生かすべきよ」
"飽きないねぇ。ああ、彼女からもこうされてたっけ…"
侵蝕の律者と呼ばれたように、グーイもかつては文明の破壊者のひとりでありました
今はどう見てもピンクの球体であるカービィに似ている生きものそのものですが、似ているのも当然です
文明の崩壊をもたらす崩壊現象がその時々の文明のカウンターのように発生するように、カービィの影響を受けていた崩壊はついに不思議な生きものとして現れるようになったのです
しかしせっかくの律者として誕生したにもかかわらず、よりにもよって食べる、遊ぶ、寝るのが大好きなカービィを元にしているグーイに文明の破壊なんて望んでいません
まんまるな体をころころと転がりながら辿り着いた不思議な空間
それはかつて、崩壊に敗北して滅び去った前文明の記録を残した楽園の名を冠した場所でした
同じように芽衣ちゃんも…崩壊とはなんなのか?
その答えを求めて訪れた事も相まって、かみなり様とまんまる顔の不思議な探索が始まったのです
「エリシアもそうだけどグレーシュにもやたらと可愛がられてたわね。初対面かつあの子の性格を考えると珍しいとは思ったけど」
"カービィが純粋無垢であるように、ぼくも崩壊の意思がほとんどなかったからね"
楽園にあるのはただの情報だけではありません
かつての崩壊と戦っていた「ヒーローになれなかった」十三人の戦士、その人格と記憶がそのまま残されていました
崩壊に敗北してもかつて生きていた意思を残すことを目的にしたお墓でもあったのです
楽園に招かれる来訪者は管理者に認められた者しか入れません
芽衣ちゃんは元々招かれたお客様だったので大丈夫なのですが、グーイは偶然かつ想定外のお客様
本来なら入ることもできないはずなのがそこは侵蝕の権能を持つ律者の一角。なんところころ転がるだけで普通に侵入できちゃったご様子
そうして出会った現文明の崩壊と戦う後継者に力を与えるべく現れた英傑たち
最初は彼らもとってもびっくりしたそうですよ
何せ崩壊の代弁者である律者は前文明でも変わらずに現れたというのに、現文明の律者は人の意思を保ったままなのですからね
その中でもグーイはとっても可愛らしい群青ボールな生きものです
英傑の中にはまだ幼い女の子もいたことも相まって、とても可愛がられてたようです
グーイは産まれたばかりの律者であり、崩壊獣であり、そして赤ちゃんと変わらない存在でした
見るもの全てを次から次へと学んで自らのモノにしていくのがさすがカービィを元にしていると言うべきでしょうか
食べたものをコピー能力として発現できるのを見た時はさすがの芽衣ちゃんもびっくりしたそうです
"芽衣はまだ先生という道に苦戦を感じてるようだね"
「まだ新任したばかりだもの。そう簡単に正しく教えられるなら苦労はしないわ」
最初はころころと転がって何かに笑い、気ままに食べて、お昼寝したい時にお昼寝するようなグーイも楽園の中で学んだ事で急速に自我を獲得しました
火追者が経験した未完の旅路を芽衣ちゃんと一緒に追い続け、英傑と呼ばれた人々の行き着く先を見届けます
人の持つ、当たり前の感情があったのです
崩壊に敗北して涙を流すような悔しさも
それでもと立ち上がろうとする炎のような気高さも
文明が終わりを迎える哀歌の中でも誇らしげに生き抜いて、戦い抜いて、死していく純真な魂を見ました
ぼくも、ああなりたいなぁ
それは憧れという感情でしょうか?
それともキラキラと眩しいものを見て喜ぶ幼子のような感情なのでしょうか?
いずれにせよ、グーイはそうした人の営みに魅せられてしまったようです
「グーイのほうはどうなの?評判を聞く限りだと新任したばかりなのに良い声は聞くけど」
"特に問題はないけど生徒と接する分にはエリシアが圧倒的かなぁ。やっぱり女の子はおんなじ可愛い女の子が良いんだね。芽衣は違うみたいだけど"
「…別に英傑たちの姿で接するなとは言わないわよ。グーイを知る私にはグーイのままでいい。それだけのことよ……きっと、エリシアだって同じことを言うでしょう?」
教師の道を歩んだ芽衣ちゃんのように、グーイもまた崩壊の戦いを終えて自らの道を歩み始めました
元々は崩壊獣。それもカービィを元にしている不思議な生きものであるグーイはそれこそどうとでも生きていけるでしょう
自由に飛んで、気ままにごはんを食べて、好きなようにお昼寝だって許されちゃいます
"人間は面白いね。この短期間で彼女たちは色々な考えや悩みを抱えて、ひたむきに前に歩こうとしている"
「当然よ。だってここは次代の戦乙女を担う子たちが通う学園なんだもの」
人の生き方に魅了されたグーイの選んだ次の道は、次代を担う子供たちの心と精神を見守っていくこと
悩みを聞いてあげてちょっとした苦しみを和らいであげるカウンセラーと呼ばれる先生です
多感な時期でもある女の子にとって大人からすれば何でもない悩みでも子供からすれば大事なことは珍しくありません
子供が辛くて、苦しくて、悲しい時に「たすけて」と言えないことほど悲しいものはないのです
前文明の英傑というとびっきりな教材で人の生き方を学んだグーイにとって、そうした道の原理は最初に影響されたモノにあるのかもしれませんね
エリシアならそうした
それはまるで憧れたヒーロー番組のヒーローを見たように
あるいは働くお父さんお母さんの背中をカッコいいと思ったように
グーイが、そして芽衣ちゃんが経験した楽園での出来事は深く深く心に刻まれています
ピンクの妖精さん
その名のように美しい女の子、その心は産まれたばかりのグーイと同じように純粋
真摯、純粋、ちょっぴりワガママで心のままに行動するのは同じ色をしたカービィのようで何処までも可愛らしい
だからグーイは知ったのです
美しい姿に憧れてしまったことを
カービィの複製に等しい存在が、文明を否定する崩壊獣の身でありながら、綺麗でかわいいものが好きであるという感情を
人間性の花
それこそが前文明と現文明の律者の一番の違いと言えるでしょう
かつての律者であれば崩壊獣と変わらないように機械的に文明を否定する側になってしまいます
しかし現文明の律者は崩壊の意思こそあっても人の意思もまた失わず、だから芽衣ちゃんは正気のままかみなり様でいられるのです
ましてやグーイは崩壊の意思すら宿さなかった奇想天外な律者
人のように憧れを抱き、人のようにそれを受け入れる事はなんの不思議ではありません
前文明の人たちがグーイを崩壊獣と知りながらも受け入れたのも当然です
なぜなら彼らは知っていたのです
人の意思を持った律者が産まれてくることをね
エリシアちゃん
前文明の英傑のひとり、そして芽衣ちゃんが部屋に入って最初に目にしたグーイの姿
その正体は前文明で唯一人類に味方した律者であったのです
人の意思を持たないはずの律者がどうして人の意思を持ち合わせていたのでしょう?
神様の気まぐれ?奇跡の時間?
きっと答えが分からなくても構いません
だってエリシアちゃんはとってもかわいくて、美しくて、人を愛するようになったのですから
前文明が崩壊による敗北が決定的になった時、エリシアちゃんは一つの決断をします
律者としての権能は「人間性」そのもの。だから自分は人ではないけど人のように美しくあり続けられるのだと分かっていました
律者が人のままでいられるように、人間性を次の文明にバトンタッチするように受け渡す
そのために自らの命を世界に還すことをしたのです
必ずしも人間性が人と文明のために戦う律者になるとは限りません
事実として芽衣ちゃんだって何度も雷の律者として暴走をしてしまった過去もあります
人間性を用いて美しい花を咲かせられるかはそれこそ律者自身の問題なのです
「あの…コラリ…知り合いの紹介で来たんですけど…」
ガラリと扉が開くと入ってきたのはお月様のように白い髪の女の子
着ているからお洋服から生徒さんであるのも一目瞭然です
「ハーイ♪悩める女の子のお悩み相談室にいらっしゃーい♪」
「わぁ…ほ、本当にピンクの妖精さんだ…」
「あら~特別きれいで特別かわいいだなんて照れちゃうわ♪ふふっ♪あなたもかわいい女の子だから負けてないわよ♪」
「は、はぁ…それはどうも…?」
先ほどまでのまんまるな生きものは何処へやら
まばたきもすればピンクの女の子になって生徒さんを迎えるグーイに芽衣ちゃんも呆れ半分、微笑ましさも半分です
前文明の記録を残した楽園も英傑たちも今は存在していません
今までの全てを継いでもらい、楽園はお墓として終わらせるべきという英傑たちの決断がありました
グーイの中には薄っすらとかつての英傑たちのデータが保存されています
そこには心や魂と言ったものは存在せず、あくまでその姿を真似られるというだけのものでしかありません
しかし、それでいいのです
芽衣ちゃんとグーイが憧れた英傑たちの姿、生き方、命の足跡
それらは意思と遺志として残り続けて語り継がれていきます
エリシアちゃんは自分たちは死した過去の存在で固執してはいけないと言いますが、彼女たちが歩んだ足跡が今を生きる人たちの答えを探す道しるべになると信じているのです
グーイのお悩み相談が始まると同時に静かに芽衣ちゃんは部屋から退室して次の授業に向かいます
崩壊の戦いが終わった世界は誰もが未来に向かって歩み出しています
過去を見届けて、現在を生きて、自分たちが納得できる答えを探し続ける人生のお手伝いをしたいと思い願いました
前文明の物語は終わったけど、その物語を心に刻まれた芽衣ちゃんはこれからも生き続けていきます
次の物語を描くのは芽衣ちゃん自身の手
そして自分たちよりも下の世代の物語も描いていくために意思を繋ぎ続けていくのです
芽衣ちゃんの先生人生は始まったばかり
前途多難でまだまだ分からないことばかりだけど、思うままの直観に従い生きる道に間違いはないはずです
そうよね?
芽衣ちゃん
ご存じキアナちゃんの大親友で憧れの大先輩!
とっても優しいけど怒ると角を生やしちゃうぐらいこわーいかみなり様になってしまうから怒らせないでね
かつての英雄は教え導く教師の道を歩み出した
今こそ語らねばならないわね…前文明に存在していた十三英傑の逸話を…
グーイ/侵蝕の律者
文明の破壊者である律者…なんだけどカービィに影響を受けて誕生した新種の崩壊獣みたい
崩壊の意思はないし、カービィのように純粋無垢な心は様々なものに影響を受けちゃうそうだ
ながーいベロでなんでも食べちゃうけどまんまるボディはカービィにも劣らない至福の柔らかさ
この名は人を愛し、文明の存続を望んだ『人の律者』からの贈り物
だからあまり侵蝕の律者とは呼ばないでね
エリシアちゃん
前文明に生きた火追いの英傑、とってもかわいらしいピンクの妖精さん
その正体は人間性の権能を持った律者さん
人ではないけど人の意思を持って、人のように振る舞い、人のように美しくあり、最後まで人として生きた女の子
5万年の時を超えて継がれた人間性は、祝福として人の律者の誕生を予期させた
グーイからすれば…お母さんってこと!?
追う火を以て、希望と未来よ 永遠に続け
我らは『火を追う十三英傑』
受け継ぐのは意思と遺志
かつての文明の英雄たちの思いを受け取るために今から始まるは英傑十三番勝負!
今代の律者よ!かみなり様にまんまる顔!生き抜くための力を見せてみろ!
決戦の機は熟した!いざ……やらいでか!!