月のプププランド   作:AmanatuTaruTaru

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ゴハンを 食べればもう おともだちっ


EX:オンパロスのひと時3

 

 

 

 

1000年続く黎明の光が照らされた地、オクヘイマ

それは暗黒の潮によって世界の破滅が進みながらも唯一、人類に安息の地であることを約束する楽園である

世界中に存在したはずの数多の国家は神をも狂気に誘う暗闇に沈んでいき、もはや人の住まう場所は一つしかない

 

数多の国家に住んでいた人種も難民という形にオクヘイマに集うが、それでも1000年の年月は元の故郷を忘れるのに十分すぎる時間だ

かつては何処かの地域の何かの国に属した国民であっても、今ではオクヘイマ産まれのオクヘイマ育ち

数世代もそうなればもはやオクヘイマ人と変わらない意識を生み出す事となるだろう

 

しかしそれはあくまで普通の人間である場合だ

神の系譜たる証の黄金の血を持ち、人類とは隔絶した力を持つ英雄は違う

 

黄金裔のひとり、その少女の名はキャストリス

 

花と蝶の装飾品を身に付けられた藤色の髪は風に揺らされ、儚げな雰囲気を漂わせた彼女も当然ながら、ただの人間ではない

暗潭たる手と呼ばれる「死」すら死せる、安らぎをも与える呪いに等しい神の祝福を受けし者

すでに遠い過去に滅び去った死を崇める都市国家エイジリアでは「督戦の聖女」と崇められている過去を持つ

しかし今ではオクヘイマの納棺師として、墓地を管理する仕事を就いている

 

嫌われているわけではない

彼女もまたオクヘイマの人々と安寧を守護する英雄のひとり

紛争の尖兵から力無き民を救ったのも数知れず

そして1000年を超える時を歩む少女である彼女もまた、それだけの人々を西風に向かうのを見送ってきた

だから多くのオクヘイマ人も分かっている。彼女もまた、大いなる力を宿す事になったひとりの人間である事を

 

それ故に純粋に恐れられている

いくら神殺しを担う英雄の黄金裔と言えども災厄の象徴とも言うべき「タナトス」の力を持つ者は死を信仰しない国からすれば畏怖の対象だからだ

 

だから、キャストリスの周囲には人がいない

本人も進んで一人でいる事を好み、迂闊に他者に触れないように気を使わないためだ

例外があるとすれば同じ黄金裔にして神殺しの同志たち…そして……

 

「おー、いたいた。おーい、キャストリスお姉さーん」

 

"ぽよ!"

 

事情を知っても、顔を合わせれば自ら近づこうとする"天外"からの来訪者だろう

 

「ロザリアさん、リリアさん…カービィさんも。どうかなさいましたか?」

 

「えへっ、列車に置きっぱなしだったのを思い出して取りに行ってたのよ!」

 

「崩れた道をよく見ずに突っ込むバカロザリアには大変だった。ミュリオンちゃんとカービィがいなかったらリリア共々生き埋めになってたよ」

 

オンパロスは暗黒の潮によって滅びかけ、そのために神の火種を集めて世界の再創世を行う

それこそが1000年を超える旅路の目的であり、その果てに予想だにしていない天高くから来訪者が招く事となった

彼らは空を駆ける列車と呼ばれる乗り物で星々を渡り歩き、開拓の道を歩んでいる冒険者の一団

"天外"への研究と空に向かう事が罪深き事とされるオンパロスでは存在そのものが禁忌と言える

 

ロザリアとリリアという双子の姉妹、そしてピンク色の球体をした謎の生きものであるカービィ

彼女らもまた開拓の列車に乗り込んだ一員であり、オンパロスに来訪した火種を追う旅路の協力者でもある

小さい見た目と侮ってはいけないとキャストリスは知っている

どちらもオクヘイマの代表する英雄たちを渡り合える実力を持ち、事実として火種の回収に大いに貢献してくれたオンパロスの恩人と言っても差し支えない人物たちだ

 

しかしながらこの場にはいないもう二人の開拓者を含めてオンパロスに向かうために使った列車は途中で墜落してしまったらしい

現状では帰る手段もないためオンパロスに留まる事しかできないため、オンパロスの現状を知った上で彼らは手助けをしているのだ

 

「はい、これ。キャストリスお姉さんにあげるね」

 

「これは…ぬいぐるみ?」

 

大きな袋を取り出して何も恐れずに手渡しをしようとするロザリアにキャストリスも思わず一歩引いてしまう

妹のリリアが姉のロザリアの後ろ首を引っ張ってやらなければ大惨事になってもおかしくなかっただろう

そうして受け取った大袋を改めて開いてみると多種多様なぬいぐるみが出てくる

ニヒルな顔をした黄色いウサギ、草花のような妖精さん、大地獣に似た四足歩行の首長獣、カービィに似たお餅のような顔をした生きもの

中にはゴミ箱に乗ってバットを振り回すという穹の謎のぬいぐるみまである

オクヘイマのみならず、オンパロス中でも見たことのない見た目からして"天外"産のぬいぐるみであることが察するものがある

 

「なぜ、私にこれを?」

 

「キャストリスお姉さんってぬいぐるみを抱き枕にして寝てるんでしょ?せっかくだから地球のぬいぐるみも存分に可愛がってほしいと思ったの!」

 

「はっ!?えっ!?な、なぜそれを!!??」

 

「アグたんが教えてくれたんだよね。リリアもカービィと一緒に寝る時はカービィを抱き枕にしてるから仲間だね」

 

「アグライア様!?」

 

寝耳に水とはまさにこのこと

自身の秘密を暴露され、その下手人も予想外な名前にキャストリスは一瞬で混乱の極みに達した

 

オクヘイマの指導者にして黄金裔アグライア

火追いの旅に置いてもリーダーとして立ち続けるその姿はキャストリスも尊敬を抱き続ける英雄のひとりだ

そんな彼女の名前を「アグたん」などと呼ぼうとする者はオクヘイマ中を探しても存在しないだろう。同じ黄金裔でも恐れ多くて口にするのも憚れる

 

しかしこの姉妹はそんな通りは知らない

この場にいないヒアンシーという少女は名前に「たん」を付ける呼称を付けるのだが、たまたまその場にいた穹はアグライア本人がいるにも関わらず「アグたんって呼ばないのか?」と言い出した

あの時ほど空気が凍った瞬間も、長い時を生きるキャストリスも中々経験したことがない

 

とはいえ、アグライア本人も別に怒った様子は一切なかった

なんなら若い子に合わせて可愛く呼んでくれるなら構わないあたりに人間性が失いつつあるとはいえ本質的に愉快なお姉さんなのである

 

なので幼い姉妹から「アグたん」と言われても気にしない

なんならそうして呼んだほうが可愛いし、アグライアお姉さんもそっちのほうが良いでしょ?と姉妹も思ってる

カービィと一緒に市街で騒動を起こしがちながらも、アグライアも"天外"から来訪した姉妹の事は個人的に気に入ってた

そのためか、うっかりと同じ黄金裔の可愛らしい面を零してしまうのもご愛敬と言ったところだろう

 

「元々ヴェルトおじさん連れ戻すついでにせっかくだからホムとか宇宙に広めようってブローニャに持たされたのが多いんだよね」

 

"ふわふわ!"

 

「それはそれとして穹お兄さんのぬいぐるみは売れ残りの産物…結局ホタルちゃんとカフカお姉さんしか買わなかった悲しきぬいぐるみ…」

 

渡すものを渡して三人はまるで嵐のように去っていく

ぽつんと残されたのは秘密を知らずに暴露されているを知らされて大量のぬいぐるみを押し付けられた少女がひとり

 

「……どうしましょうか」

 

経緯はどうであれ、少なくとも善意の心があって与えられたぬいぐるみは無下にはできない

寝泊まりをしている住処に向かい、ベッドの上に取り出せば出るわ出るわと大量のぬいぐるみたち

 

実のところ"天外"の生き物がモチーフになっているであろう見たことのないぬいぐるみにキャストリスも心躍るものがある

特に四足歩行の首長獣はオクヘイマではポピュラーな荷物運びの乗り物である大地獣に似ている

かつて勉学にお世話になった眼帯の研究者にして恩師も気に入るだろうか?

 

産まれた時から「死」に愛され、「死」と共に行き、彼女の1000年に及ぶ長い人生は暖かな他者との触れ合いが許されなかった

彼女が人に触れるのはいつだって、死を救いとして懇願する者、死という罰を与えられる者たちである

子供たちがお互いの手を握り合って歌い踊る姿を羨む事は一度や二度ではない

だけど、仕方ないのだ。己の忌まわしき手が触れると人だけではなく、草花ですら枯れて消滅してしまうのだから

 

ぬいぐるみを抱き締めて寝るのもそうした寂しさを埋めるための行いであった

世界が再創世され、普通の人間に生まれ変われるその日まで人と共に歩む事はできない

そうであったのに穹だけは、触れ合っても害する事のない初めての相手だったのだ

 

「……ふふっ」

 

開拓者である穹を模したであろうぬいぐるみ

それを指で突きながらキャストリスは無意識に微笑んでいる

何とも不思議な集団ではあるのだが、その中で穹はキャストリスにとって特別であった

今まで覚えのない胸の高鳴りは生きていて感じた事のない暖かさ、恥ずかしさ、高揚感を与えてくれる

それがどのような名を持つのか、人との触れ合いが許されなかった少女は知らない

しかし知らずとも、少女にとってそれが人にとっての幸せに繋がるものだと薄っすらを感じるものがあった

 

今日はもう遅い

いくらオンパロスを支える天父から黎明の光が常に照らされようともそろそろ眠って明日に備える時間だ

今日はどの子を抱き締めて寝ようか…穹ぬいぐるみは少し気恥ずかしさがあり、可能なら抱き締めてみたいと思ったカービィによく似たぬいぐるみを選んだ

ロザリア曰く、ワドルディと呼ばれる子は彼女の住まう星にはいくらでもいるらしい。このような可愛らしい子が沢山いるとは何とも微笑ましい光景だ。できるなら一度は見てみたいという欲求がある

 

ワドルディぬいぐるみはふわふわで少し強く抱きしめても程よい反発を返してくれる完成度の高さ

ぬいぐるみを自作するキャストリスから見ても"天外"産のぬいぐるみはこれほどのものなのかと違った驚きを与えてくれる

ベッドの横になればうとうとと瞼が重たくなる

今なら安らぎのある眠りも約束されそうだ。そう思いながらも段々とキャストリスは夢の世界に旅立とうとしていた

 

 

 

───夢を…あたたかな夢を見たのです

 

 

 

常にぽかぽか陽気で、何処までも広がる青空のある世界でした

暖かいお布団の中から目覚めてお外に出れば太陽さんとこんにちは

 

少し外を出歩けば小さな生きものたちをすれ違う

こんにちは、おはよう、今日も良い天気だね

そんな他愛もない、それでも日常を感じられる挨拶を交わせる毎日

 

お友達もいっぱいいます

 

大きなペンギンか何かのような大王さま

ピンク色で何でも食べちゃう旅人さん

ずっと仮面を付けているけど実は甘いものが大好きな騎士さん

遠い星からやってきたリボンを付けた小さな妖精さん

絵を描くのが得意でいつもパレットを持ち歩いてる画家さん

 

あきれかえるほどの平和な星だけど、時々困っちゃう事だってあります

 

その日は大王さまがごはんを独り占めしようと極悪非道なことを企ててるなんて!

そんな日にピンクの旅人さんが春風と共にやってきて、大王さまをこらしめた日を忘れる事はないでしょう

 

大きな大きな鳥さんが作物を荒らしているようだ

どうやら先ほどの大王さまのせいで子供の食べ物が無くなっちゃったみたい

誤解も解けたらみんなで美味しくごはんを食べよう

 

みんなで楽しいピクニックに行こう

沢山の食べ物を用意して見晴らしの良いところに行ってみれば…なんと大きな穴に落ちちゃった!

そこは洞窟の大迷宮!お宝もついでに集めてみんなと協力して脱出だ!

 

みんながゆるーく平和を満喫していると何と騎士さんが腑抜けた住民に活を入れるべく逆襲をしたようだ

カッコいい戦艦は凄いけどちょっと迷惑だなぁ

 

ぽかぽかした陽気を照らす太陽さんと真っ暗な夜でも照らすお月さん

そんなふたりが突如として大喧嘩!

願いをかなえる力を持つ大彗星に太陽さんとお月さんの喧嘩を止めるようにお願いだ!

 

平和の影には数多の大冒険がありました

それでも最後にはみんな笑って大円満

今日も夜にはみんな楽しくキャンプファイアーで盛り上がろう

 

夢の中の私の手は誰か不幸にしたりするようなことはありません

小さく暖かな手で、妹の■■■■■の手を握って一緒に歌って踊る一夜を過ごすのだ

 

 

 

それはいつまでもいつまでも続いてほしいと願う優しい夢

それはいつまでもいつまでも願い続けた欲しかった日常

 

いつかは覚める夢

夢は永遠に続かない

そして目覚めればきっと、この暖かな気持ちも忘れてしまうだろう

 

それでも心はきっと覚えてくれるはず

この暖かさが人の感情なのだと。この喜びが心を育ませるのだと

 

 

 

ぬいぐるみを抱き締めながら眠るキャストリス

次に目覚める時はきっと晴れやかな気持ちでいられる

そう感じられる安らぎを感じる寝顔であった

 

 

 

 

 

 

 

 




EpeiKeia216
注釈:無限に関与する生物と触れ合ったためか異常な電子信号を確認。
電気信号は脳内異常映像として反映され、当該対象の睡眠時にオンパロス内で知り得ない情報を夢として獲得、認知する形となる
内容は極めて意味のない日常風景のため、起床時に記憶に残る事は無いと思われる。
しかしNeiKos496を除く対象に天外の情報を匂わせる必要性は薄いため、当該対象の脳内情報の削除を行うものとすrrrrrr

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追記:おっほっほっほっほ
そーんなつまらないことばかりやってるからいつまで経っても事が進まないのサ
夢ほど知的生命体が躍進する力はないぜ?
ボクはおもしろいものが見たいのサ。これを切っ掛けにあの女の子もお怒り黄金マンとマシン頭の想定を崩せたらもっともぉーっとおもしろくなるはずサ!

追記2:これ、私がわざわざやるべきこと?
まぁいいか。とりあえずあの子たちには貸し1にできるからね
壊滅の奴らに目を付けられる前にとっととオサラバするよ。次のいたずらゲーム主催は■■■なんだからね
じゃ、これを見てるあなたとカービィも頑張ってね。バイバイ
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