太陽さんがさんさんと照らしているのどかな一日
今日も今日とてせわしなく動く人、人、人!
街中ではそんないつも通りの日常が流れている中で何やら日の光を遮る大きな影が現れたようで?
人々は空を見上げてみればビックリ仰天!
なんととても高い大きな建物よりも更に巨大な何かが太陽さんを隠しているようです!
それはまんまるな形をしていながらもふんわりとした柏餅を連想しちゃうような不思議な生きものに他なりません
"わにゃ"
超巨大ワドルディ、街中に出現!
大きい!デカい!カワイイ!顔を突っ込みたい!
そんな阿鼻叫喚な声が街中に響き渡って大混乱!
超巨大ワドルディも気にせずに歩きだしますがその巨体の割には街中を傷つけるようなことがありません
建物に触れてもふんわり包んだりつるんと通り過ぎたりする程度です
しかしそんな大混乱を後目に今度は新たな影が街中を包みます
反対側に現れたのはこれまた超巨大なまんまるにこれまた地球なら知らない人もいないピンク色のヒーローです
"ぽよ"
超巨大カービィ、街中に出現!
大きい!デカい!カワイイ!モチモチしたい!
そんな阿鼻叫喚な声が街中に二度も響き渡って大混乱!
なんということでしょう、このままではふたりの超巨大生きものがぶつかりあえば街と人々がどうなるか分かったものではありません
「待ちなさい!これ以上混乱を引き起こす事は許さないよ!」
それを待ったとかけたのは大きな建物の屋上より更に高い、アンテナの上に器用に立つ女の子!
小柄ながらも剣を構えた凛とした顔立ちはまごう事無き美少女剣士!
ふわりと空を飛んで剣を突き立てる先は超巨大ワドルディの頭の真上!
「てやぁぁぁぁ!あぁあぁぁ!?」
しかしそんな剣の鋭い切っ先も超巨大ワドルディに通じません
ふわりとした毛先は優しく剣を包み込んでしまいますし、女の子もそのままふわっふわな毛皮に取り込まれてします
そのまま弾力のある毛皮に綺麗に返されてしまうと今度は超巨大カービィに正面衝突!
しかし超巨大カービィの弾力は女の子をはじき返すこともなく、モチモチぷにぷにの柔らかなカービィのボディに女の子はノックアウト寸前です
「ふわぁ…!こ、こんなのやわらかくて…ふわふわで…ふあああ!!」
ああ!街の危機に現れた女の子は超巨大生きものの前には敗北してしまうのか!
そんなカービィとワドルディに包まれてこの世の幸せを感じながらもハッと目を覚ましたのです
「……ゆめ…?」
ちゅんちゅんちゅん
窓に差し込む優しい光と鳥さんの声
女の子…李素裳ことおすしちゃんはどうやら楽しい夢の世界にいたようですね
「ゆめ…夢かぁ……はぁぁぁぁ………」
暖かなお部屋
暖かなお布団
暖かな抱き枕扱いのワドルディはすやすやとお昼寝中
「なぁに、あんた…いつの間に潜り込んできたのぉ…?そういう子は素姉さんに吸われちゃうよぉ?」
まだまだお寝ぼけ中のおすしちゃん
どうやら最初から抱き枕ではなかったワドルディですがお昼寝中だったおすしちゃんのお布団に潜り込んできたようですね
夢の中で堪能できなかった分のふわふわをワドルディで堪能しているようです
段々と目を覚めてくるとおすしちゃんも今いる場所を思い出してきます
ここはおすしちゃんのお友達が住んでいるお部屋のひとつ。お客様用の寝室です
お鼻からは何処か香ばしい香りが
お耳からはトントントンと何かを切っている優しい音が響くのがわかります
ちょっと起きるのが遅かったかなとおすしちゃんも自己反省しながらお布団とは別の場所ですやすやと寝ていると白いまんまるな生きものを起こします
「アーバオ、ほら起きて。もう朝だよ」
不思議な生きものではありません
地球では特に珍しくはない鶏の一種です
しかしまんまるな見た目と意外な知能の高さからおすしちゃんになぜか同行している謎の鶏、それがアーバオです
鶏なのに朝のコケコッコーと鳴くわけでもなく、まるで人のように目覚めの欠伸をひとつこなせばそのままぱたぱたと飛び上がっておすしちゃんの頭に居座ります
どちらも寝起きの状態なのでちょっぴりふわふわしたお気持ちで寝室を出ると香ばしい香りが強くなります
その香りを辿ってみればリビングには豪勢な朝ごはんが用意されています!
ほっかほかの白米から作られたおにぎり、ちょっとした具材で飲みやすくされたお味噌汁、特に香ばしい香りのベーコンには卵焼きが乗せられています
これだよこれ、と言わんばかりの朝メニューに夢から起き立てのおすしちゃんのお腹もぐーぐー鳴っています。もちろんアーパオもお腹も鳴っています
「おはようスーサナ。泊まらせてもらった上に朝ごはんまで用意させちゃって申し訳ないかも」
「おはようございます!旅路でお疲れの素裳様に手を煩わせるわけにもいきませんから大丈夫ですよ!」
朝から元気いっぱいな家主はスーサナちゃん
天命の戦乙女のひとりでありますがどうやら今日の朝ごはんの彼女の手料理なご様子
スーサナちゃんの周りにはお腹がすいたーと言わんばかりにわにゃわにゃと生きものたちがお腹の音でアピールしているようです
「ちっちゃいのがいる生活も見慣れたもんだね。これが元妖魔だなんて誰が信じるのかな」
妖魔とは何のこと?それは不思議な生きものが元々崩壊獣と呼ばれた怪物だったのが関係しています
おすしちゃんの生まれ故郷は極東のお隣に位置する神州と呼ばれる国なのですが、そこでは崩壊獣は妖魔と呼ばれていたようです
とはいえそういう名称があったのは何百年の昔の話
おすしちゃんはなんと500年前のお人なので妖魔という言葉を知っていたのです!
「はぁー。朝からの味噌汁が身に沁みる…すっかりこっちの食生活にも慣れたなぁ…」
「お味が合ってよかったです。おかわりはどうですか?」
「ん。よろしくね」
500年前から若くして剣士として武者修行の旅を続けていたおすしちゃん
旅の途中で大きな怪我をしてしまい、偶然神州に来ていた当時の天命の前主教オットーに助けられなかったらそのまま命を落としてしまったでしょう
しかしいくら助けられても当時の医療技術では難しく、前文明から残された天命のコールドスリープ装置でとても長い時間を眠っていたようです
天命に命を救われてかつての恩義を報いるためにも一度だけ、例えそれが義侠心に反した行いであってもオットーさんに協力するおすしちゃん
学んだ流派の創設者でもあるフカさんとの激闘!手に汗握る達人同士の戦いは今後千年は語られるほどの応酬であったとおすしちゃんの中では大絶賛です!
さてはて役目を終えてしまえばもはや自由の身ですが困った事もたくさんです
500年の年月は世界丸ごとが異世界のように変わっていても不思議ではありません
文化、食生活、着ているものから日用品の道具まで
全てが全て、未知の世界となってしまったおすしちゃんが孤独に感じてしまうのも無理はないでしょう
「居心地が良すぎる……もういっそスーサナに貰ってしまっても…」
"……"
「あ、ははは。冗談、ジョーダンだって。アーパオもそんな顔しないで…」
もうさァッ 無理だよ 現代の生活知っちゃったらさァッ
おすしちゃんのかつて生きてた時代はざっと今から500年前も昔のこと
そんな昔の頃であれば当然ですが電気も無ければ今は当たり前にある道具だってありません
それこそ井戸のない生活空間であれば川まで水を汲みに行かなければならず、おすしちゃんの幼少期はまさにそんな生活だったのです
しかし今はどうでしょう?
空調の効いたお部屋に蛇口をひねればすぐに飲めるお水だって出てきます
危険のないふわふわなお布団に包まれればどんなに警戒心があってもすやすやと夢の世界に旅立ててしまいますし、お腹がすいたらちょっと近くのコンビニでおにぎりだって買えちゃいます
何よりおすしちゃんが現代で嵌ってしまったもの
それはゲームセンターを代表とする電子娯楽機器でした
ワンプレイだけ…ワンプレイだけ…そう思いながら何枚もの硬貨がゲーム機に呑まれたか…もはや数えられないぐらいです
もしも500年前のおすしちゃんの御師匠様がいたら呆れた溜息と一緒に堕落に呑まれかけてる情けない弟子に強烈な一打を与えるかもしれないですね
とはいえ、それはあくまでおすしちゃんが500年分の文明の進歩に戸惑い、適応しようとしているだけのことです
呑まれないためにも定期的にお友達のスーサナちゃんと連絡を取り合っていますし、こうしてスーサナちゃんのお家にお泊りだってしているのです
決してそろそろ野宿じゃなくて暖かいお布団で寝たいなぁと思っているわけではありません
「今度はどちらに旅立たれるんですか?素裳様のお部屋は空けておきますからお疲れの時はいつでもお帰りになってください!」
「うぅ…!ま、眩しい…眩しいよスーサナ…!ダメになっちゃいそう…!!」
生きものたちが懐いているのもよく分かりますね
善性の塊とも言うべきスーサナちゃんにそろそろ身も心も焼き尽くされてしまいそうなおすしちゃん
長い長い時の流れで偶然にも出会った二人の女の子
産まれた時代も。産まれた場所も。考え方だって違っていても
お互いのことを認め合う関係になれば違ったものなんて些細なこと
一度は孤独に沈んだ女の子も今は美味しいご飯を食べて未来を見据える事ができる
ありふれているけれども、確かな幸せと奇跡がそこにあるのです
おすしちゃん
500年前の神州で生きていた美少女剣士
とある事情でコールドスリープから現代に目覚めた時代を超えたおのぼりさん
未知なる世界と時代に取り残された寂しさを感じながらも優しい人々に支えられて前向きなようだ
スーサナちゃん
ちょっぴり?すっごく?おっちょこちょいでドジな女の子
だけどどんな時でも優しさを失わないつよーい子だ
他者に寄り添える心はおすしちゃんの寂しさを埋めてくれる暖かさ
アーバオ
地球に何処にでもいるまんまるな鶏
どことなく…フカさんに似ているような…?
もちろん食べても美味しい非常食になります
一度は救われ、運良く拾った我がイノチ
己の義侠心に反する行いと知りながらも挑まずにいられない武の頂点
これは恩を返すための行い
これは祖に挑まんとする挑戦
お祖師様、どうかお手合わせねがいます!
あ、あの……1対4は卑怯だと思いますっ!