月のプププランド   作:AmanatuTaruTaru

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ずっと むかしみた、あの ゆめも みるのかもしれない


空のシーリンちゃん

 

 

 

キアナちゃんが神様として暮らしているお月様

今では小さな生きものたちが暮らすあきれるほど平和な星ですが、実はキアナちゃん以外にも在住してる有名人がいます

ふわふわと浮かびながら何をするでもなく一日を過ごしているキアナちゃんにそっくりな女の子

でもキアナちゃんにそっくり…なんてことを言ったらいけません

そんなことを言ってしまえば彼女は目に見えるぐらいに機嫌が悪くなってその日のワドルディたちもわにゃにゃにゃと震えてしまいます

 

空の律者が一日にすることは至って単純です

自由に飛んで、自由に食べて、自由に眠る日々

これだけならキアナちゃんと変わりませんがキアナちゃんと違って宿題なんてありません

おお!何という羨ましい日々でしょう!

今日もキアナちゃんが物理法則のなんたらかんたらで頭を爆発させているというのに空の律者はそんなものには縛られない真なる自由人なのです!

 

とはいえそんな空の律者も自堕落な日々を送ってるわけでもありません

いくらお月様が地球より小さいとはいえども人の尺度で言えば遥かに大きく広大です

冷たい荒野のような光景は昔の話、今のお月様は木々が育んで緑のある生きるのに適した環境なのです

 

しかしそれだけ広ければ広いほど、そこに生きる小さな生きものたち全てがのどかに暮らせるわけではありません

広大な森に迷う生きものもいれば、別の生きものを不本意に怒らせて追われる子だっています

 

「ふん…これを機に不用意に森の番人に近寄るな。次リンゴを当てられて泣かされても知らんぞ」

 

"わにゃ~…"

 

空の律者はそんな生きものたちを眺めては喧嘩に発展しないように抑えていました

空の権能は月の大地全てを見通してワープで移動もできるため、何か問題ごとが起きてもすぐに解決しちゃいます

あまりの解決速度と普段から生きものたちを纏めてる姿からもしかしてキアナちゃんより大王様なんじゃない?と生きものから思われてたりします

しかし空の律者は大王と呼ばれるのは好みません。呼ぶなら女王様と呼んであげましょう

 

「……何か食べるか…」

 

空の律者は人も嫌っていますし、人の作る文明も好みません

しかし生きている以上はお腹は減りますし、気分的にも美味しいものは食べたいと欲求はあります

せめてご飯を作れる生きものが住んでる近くにいればいいのですが、唯一文明的な料理を作れる生きものは人が住んでるところにいるので仕方なく出向く必要があります

自分で料理を作る?女王様はそんな面倒なことはしたくありません。料理とは作るものではなく作らせるものなのです

 

料理が作れる生きものの場所にワープをすれば自然でのどかな場所から一転して機械的なものが動いてる建物に変わります

相変わらず何もかもがせわしない光景に鼻で笑いながら空の律者は食堂へと向かおうとしました

 

「あっ……」

 

「むっ……」

 

人が住んでる建物なのだからばったりと人と出会うこともあります

建物に住んでる人たちはほとんどが大人ばかりですが、空の律者と出会った子は幼い女の子のようでした

耳のようにふわふわとしたクセ毛が愛らしい女の子ですが、空の律者はそんな子を無視してそのまま通り過ぎようとします

話す事も無ければ人と接したくない気持ちが出ているのか女の子も震えています。可哀想に

 

「待って…!私、迷ってて!」

 

「…だからなんだ?私がお前の人生を行く末を提示しろと?それは教師をやってる人類に言え」

 

「い、いや…そういう意味じゃなくて純粋に建物の中に迷ってる意味なんだけど…」

 

人の作る建物は似たような通路と部屋が続くので慣れていないと迷いやすいものです

どうやら女の子も不慣れな建物に迷っているようですが、空間を支配する空の律者に迷うという二文字はありません

しかし空の律者は生きもの相手ならともかく人相手にそんな優しくする心もありません。適当に道を知る人を呼び寄せて後は任そうとします

無造作に空間に手を突っ込んで引き抜くと、丸いピンク玉がきょとんとした顔で出てきます

 

「わぁ…!可愛いピンクちゃん。あなたの使い魔?」

 

「いや……なんでピンク玉が出てくるんだ」

 

"ぽよ?"

 

道を知るはずの人を指定して呼び寄せたはずなのに出てきたのは我らがカービィのようでした

困惑している空の律者ですが三者三葉の可愛らしいお腹の減った音が響きます

おやおや女の子は顔を赤くしてますし、カービィはご飯の時間だ!と口から涎を垂らしているではありませんか

溜息一つに興を削がれてしまったのか、空の律者はくいっと指を曲げると女の子もカービィも身動きが取れずに浮かんだ状態になります

 

「ついてこい」

 

「わっ!わっ!ついてこいって連行されてる…!なにこれ!あなたも魔法少女なの!?」

 

"わぁい!"

 

有無を言わさずに空の律者はずんずんと進んで行くと辿り着いたのは食堂でした

多種多様な食材からこれまた多種多様な料理を作られる場はとっても良い匂いでいっぱいです

建物にいる人はもちろん、神様からカービィまで多くの者がお腹を満たす憩いの場所に再びお腹の鳴るのも無理はないでしょう

 

"あれぇ!女王様、今日も来てくれたんだぁ!"

 

「ああ…いつものを」

 

"あいよー!豚骨ラーメンのチャーシューマシマシねぇ!"

 

そんな食堂でせっせを料理を作り続けるのはなんと不思議な生きものだったのです

煮卵のような色の身体にエプロンとコックの帽子を身に着けた彼は小さな生きものが多い中で人類ぐらいの大きさを持ちます

物を掴むのに適しててなさそうな手をしながら器用にフライパンを握って食材を炒めたり、包丁で捌き続ける姿には熟練の腕前を感じさせるでしょう

 

女の子もメニューを見ればラーメンの他にもハンバーガー、オムライス、カレー、ピザ、たこやき

デザートにはアイスやプリンにジェムリンゴシャーベットまで多種多様です

道に迷っていた女の子もお腹が減っては目の前の美味しいものの誘惑には勝てません。何を注文しようかと迷う女の子に空の律者は断言します

 

「ラーメンだ」

 

「えっ」

 

「ラーメンにしろ。美少女味などとふざけたことを言うなよ。豚骨こそ至高で私が人類で唯一認める文明だ」

 

「私が選ぶ権利は…」

 

「ラーメンだ」「はい…」

 

食事は料理を選ぶのも楽しみの一環だと言うのに有無を言わせずに選択肢のない女の子はラーメンを注文してしまいます!

何という横暴!何という女王様っぷり!空の律者の前には女の子には成す術もありません!

 

一方でカービィは好き勝手に注文しています。何十も重なる大量の料理を作るコックの生きものもさることながら、カービィもこんな量を食べれるのでしょうか?

いえいえそんな心配はご無用、カービィならそれこそ月の食糧全てをぺろりと食べることだってできちゃいます

しかしカービィはそんなことはしません。だってご飯はみんなで食べたほうがもっと美味しいのですから

 

「!美味しい…」

 

ずるずると音を立てながら麺をすすって食べるのがラーメンの醍醐味

濃厚なとんこつスープにもちっとした麺

パンチの効いた味に女の子の舌は空腹と相まって一発ノックアウト寸前です

 

「へぇ…シーリン、いいもん食ってるじゃん?というかラーメン食べるタイプだったんだ」

 

「ブロニー!?いつの間に…」

 

「ついさっき。良い匂いしたから食堂か何かだと思ってたらビンゴ。ついでに迷子のシーリンも見つけてよかったよかった」

 

食べる事に夢中で気づかなかったのでしょう

いつの間にやら女の子…シーリンの後ろにはツインテールに縦ロールという髪型の女の子が立っています

ブロニーと呼ばれる女の子はどうやら迷子のシーリンちゃんを探していたようですが、同時に食堂の匂いにも釣られたようです

どことなくキアナちゃんのお友達であるブローニャちゃんに似ていますがカービィは気づきません。食べることに夢中です

 

「シーリン……そうか。お前はシーリンか」

 

「え?そうだけど…お姉さん私を知ってるの?」

 

「……さぁな」

 

シーリンちゃんよりも早くラーメンを食べ終えた空の律者ですが、女の子の名前を耳に入れた時、ちょっと圧を感じる顔が少しだけ変わったように見えました

それが一瞬であっても和らいだような顔立ちに変化したことは、まだ幼い女の子たちに気づくことはありませんでした

食べたいものは食べ終えて、さっさと人のいる場所から去るためにワープで一瞬で消えてしまいます

 

「消えちゃった…ピンクちゃん置き去りでいいのかな」

 

「んー?というかこの子、噂のカービィって奴じゃない?」

 

「お姉さんの使い魔じゃないんだ…」

 

「まぁいいや。私も何か頼…本当に食堂で変な生き物が働いてる…」

 

"変とは失礼だなぁ!オレはカワサキって立派な名前もあるんだよぉ!"

 

「えっ…ごめん…」

 

シーリンちゃんとブロニーちゃん

実は彼女たちは異なる世界に生きていたいわゆる異世界人とも言うべき女の子です

それも本来であれば人も世界も消え去るはずだった世界の住民でした

 

様々な方法や出会いによって世界を超え、今の世界では協力者という名目で戦乙女として戦っています

可愛い女の子でも異なる世界だって超えられるし、すごく強いのです。見かけによりません

 

「うわ、こんな小さいボール状でよくあんなに食えるな…後でデルタにも月産のハンバーガー送ってやろうかな」

 

"しーりん!ぱふぇ!"

 

「このパフェくれるの?あ、ありがとうピンクちゃん」

 

住む世界も違えば生きていた星も違う

本来であれば出会うこともないはずだった不思議な関係でも、一緒にご飯を食べて美味しいを共有できればお友達の出来上がりです

まさか地球から遠く離れたお月様で不思議な生きものと友達関係になれるとは思っていなかったでしょう

 

空の律者は一度離れた場所を遠くから見つめていました

後に残された者たちが心配だから?いいえ、女王様にそんな気遣いなんてありません

 

その感情が薄れることはありません

空の律者にとってそれは人類を嫌うための強い強い感情でした

 

キアナちゃんと同じ見た目をしていても、その魂はまったくの別人です

聞けば誰もが震えあがり、悲しみに涙を流すであろう理不尽を受け続け、人を信じられなくなるほどの闇を見続けました

その別人の名前はシーリン

今、美味しそうにパフェを食べている女の子と同じ名前であり、この世界で生きていたはずのもう一人のシーリンちゃんだったのです

 

一度は死んで、キアナちゃんの中で生まれ変わりながらも憎くて憎くて溜まらない人類と文明を滅ぼそうとキアナちゃんの身体を乗っ取ってまで暴れたことだったあります

今はそんな気は無くても、この感情と記憶だけは忘れることはできません。してはならないのです

なぜなら文明の破壊者として、空の律者として、シーリンの受けた仕打ちと悲しみこそが自分の産まれた理由なのですから

 

キアナちゃんはシーリンが望んだ愛と希望を持って生きていきます

空の律者はシーリンが望んだ人類への破滅と絶望を持って生きていきます

 

決して交わらず、共に歩むこともないはずの二人で一つの存在

 

そんな空の律者の心を少しだけ前向きにしたのもまた、人の愛なのです

 

母と呼んだあの人はなぜ自分を抱き締めてくれたのだろう?

母と呼ばれたあの人はなぜ自分を娘だと思ってくれたのだろう?

 

最後の戦いでほんの少しだけ起きた奇跡

死んだはずのキアナちゃんの母親は、あなたも愛してると空の律者を抱きしめてくれました

あの瞬間に、空の律者は、シーリンちゃんは確かに救われた気持ちがあったのです

 

異なる世界からのやってきたシーリンちゃんは果たしてどうなるでしょう

住んでいた世界を抜け出し、どうなるかもわからない未来を突き進むことになります

ですが、シーリンちゃんにはお友達がいます

 

ハッキングが得意でゲームばかりしてる子がいます

同じくゲーム好きで引きこもっている子がいます

小さくて可愛い軍師のような子から吸血鬼まで

それぞれがみんな、異なる世界の人たちで奇妙な繋がりがある関係です

そして、今日はもうひとり、遠い星からやってきたわかものとお友達となりました

 

それはかつてのシーリンが望みながらも叶わなかったものでした

だから心配はいらないのです。きっと自分ではない自分はちゃんとした道を歩めるのですから

 

そんな空の律者に大きな大きな翼を持つドラゴンがやってきます

今となってはほとんどの崩壊獣が不思議で小さな生きものになっていながらそのままの見た目を維持しているとても珍しい姿です

 

「ベラ…?」

 

崩壊の女王とかつては呼ばれた時代であれば沢山の家来がいた空の律者ですが、もはや面影含めて残っているのはベナレス一頭だけです

主人の感情を察するように寄り添ってくれる竜に空の律者は安らかな顔を浮かべます

 

「ふふ…大丈夫よ」

 

感傷と呼ぶには過ぎ去った過去でしかなく、羨もうにもこの身も心も人類と文明にも好きになれません

それでも、空の律者には残された者として未来に生きる権利を与えられました

 

好きになれなくても、いつか嫌うことのない日が来るかもしれない

生きものとベナレスと戯れるように、友と呼べる存在が空の律者にもできるかもしれない

 

「今日は一緒に飛ぼう。何もない、縛られることない青空へ」

 

いつの日か、愛を知った空の律者にも愛を伝える日が来るかもしれない

きっとそれは遠くない未来の話で、お月様の空には女王様が飛んでいます

生きものたちはそれを見て、今日ものどかな一日を過ごすのです

 

 

 





コック・カワサキ
不思議な生きものでは珍しく人の道具も扱えるし言葉も喋れる不思議な個体
料理を好んで作り出して今では月の台所事情は彼一人に任されてるスゴイ奴
元が崩壊獣だからキアナちゃんにも空の律者にも逆らえないのでラーメンばかり作らされる
でも秘密にせずにすぐにお喋りするから芽衣ちゃんにバレるみたい

空の律者
キアナちゃんにそっくりな女の子だけど中身は全くの別人でラーメンばかり食べている女王様
不思議な生きものたちには優しいけど人類には優しくない。でも時々優しい
キアナちゃんのお母さんからの抱擁こそが生まれ変わっても残り続けた憎悪を溶かした唯一無二の愛
いまわしい悪夢から抜け出した
いつかの日を夢見て、その時が来たら手をつないで友達に…なっちゃおう!

シーリンちゃん
違う世界では魔法少女として生きていた女の子
今でも魔法の力は健在で、カービィもびっくりするような色々な魔法が使えるぞ!
まだまだ幼いけど一人ではない彼女の未来は、不確定でも決して悪いものにはならないはず
いざという時は助けを呼べばいいのさ、お友達の名を!







オットーに囚われたキアナちゃんがついに暴走を始めてしまった
同じ力を持ってる芽衣ちゃんまで連動するように暴走をして二人の力が融合してしまう
空と雷の力を併せ持ったそれは天雷の律者となり、空間を超えて世界をこわしてしまうぞ
キアナちゃんと芽衣ちゃんにそんなことをさせるな!
今こそ立ち上がれ、巨大ロボ「ゼウス」!
姫子さんと力を合わせて二人を救うんだ、カービィ!
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