ユメニオチル   作:OrengeST

22 / 35
第二十二話:いつかどこかで見た景色

 ――――――――――――――――――――――

 

 生暖かいそよ風が、頬を撫でる。

 

 大きな窓から見える空は、夏晴れで、からりと青く晴れ渡っていた。窓辺の花瓶に飾られた、明るい青色の花弁をした花は、まるで空の青を映したようだった。

 

 視界の端に動くものが目に入った。風に揺れ動く白いカーテンだ。

 カーテンがゆらゆらと風に舞い、ベッドの脚がカーテンと床の隙間から覗いている。

 ベッドも、大きな窓に対抗するように、ひと際大きい。

 

 三宅は辺りを見回して、自分が白い部屋の窓際に佇んでいることに気がついた。

 白を基調とした室内は、まるで病室のようだ。

 どこからか、子供たちがはしゃいでいるような声が聞こえた。

 

 ぼんやりと、三宅は考える。

 

 自分はどうして、ここにいるんだろう。どうやって、ここに来た……。

 

 空中に浮かんだように制御の利かない身体が、徐々に感覚を取り戻していく。だが、意識だけが、霧のように漂うばかりで形を成さない。

 

「また、来たの?」

 

 幼い声に気が付いて、カーテンの向こうを見た。薄く透けたカーテンの向こうに、ベッドから上半身を起こした人影が見えた。

 

「うん。お見舞いに」

 

 人影に向かって答える。自分の口は、勝手に動いた。

 

「だれの?」

「●●●●●●」

 

 三宅は答えた。自分で発した声のはずが、何を言ったのか理解できなかった。

 

「そうなんだ」

 

 声は、こともなげな調子で返ってくる。興味がないのか、機嫌を損ねたのか、その声の様子からは分からない。

 

「ねえ、遊ぼうよ」

 

 ベッドの主は、きっと退屈しているんだ。そう思って、三宅は人影に誘いをかけた。

 

「……今日は、だめ」

 

 寂しそうな声が、ぽつりとつぶやいた。

 残念に思う気持ちで、三宅は押し黙った。せっかく、遊びに来たというのに。

 このまま帰ってしまうのもつまらないと思っていると、声は、調子を明るく変えた。

 

「だから、ここで話をしてよ。なんでもいいから」

「急に言われても……」

「じゃあ、本のお話をして」

「本?」

「うん。とびっきり楽しい本の。ほら、こっちへきて……」

 

 誘われるままに、三宅はカーテンに近づいていく。揺らめくカーテンに手を伸ばした。

 

 その時、強い風が吹いて、三宅の身体は思わず飛ばされそうになった。

 風に押され、部屋の隅まで追いやられてしまう。

 目の前のカーテンも、風を受けて大きく波打っていた。

 

 風を受けて膨らみ、翻ったカーテンの裾はベッドの高さを超える。

 そこに横たわる者の白い肌に浮き上がった鎖骨が、視界に映った。

 

 ――――――――――――――――――――――

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。