【祝・追放100回記念】 自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~竜のぬいぐるみ~   作:高見南純平

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第5話

子分ロバウトたちは一斉にゼマを囲み、太鼓のバチを手に振り回し始めた。彼らはリズムに乗った攻撃で一斉にゼマへ襲いかかる。

 

ドン、ダン、ダンダン!

太鼓の音とバチが空を切る音が混ざり合い、熱気が場を満たす。

 

「おいおい、いきなり手荒いねぇ!」

 

ゼマは軽くステップを踏みながら、迫る攻撃を華麗に避ける。体をひねり、しゃがみ、跳ねる動きはまるで踊っているかのようだった。

 

ロバウトたちが振り下ろしたバチは、ことごとく空振りする。ゼマは軽やかに動きながら笑みを浮かべ、手にしたアイアンロッドをリズムに合わせて振り上げた。

 

「はい~、音にノルよ~」

 

カン!

一振りでバチを持つロバウトの手を叩き、バチを弾き飛ばす。

 

タン!

次の一撃で別個体の膝を軽く打ち、バランスを崩させた。

 

ダン!ダン!

リズムを刻むように連続で攻撃を繰り出し、アイアンロッドが的確にロバウトたちの手や足を叩く。攻撃の一つひとつが無駄なく、相手を戦闘不能にするのではなく、あくまで動きを制限するものだった。

 

「音のある戦いも、悪くないじゃん」

 

ゼマは片手でアイアンロッドを回しながら、余裕の笑みを見せる。

 

子分ロバウトたちはたじろぎながら後退しつつも、まだ戦う気を見せる。その顔はどこか楽しんでいるようで、ゼマの事を認めつつ圧雰囲気があった。

 

子分たちとゼマの叩き合いが続く中、ボスとララクのバトルも再開していた。

 

ボスロバウトは怒りのままに巨体を震わせ、前脚を大きく振り上げると、地面を割らんばかりの力で踏みつけようとしてきた。

 

ドンッ!

その一撃はララクのすぐ隣の地面に深く刻まれ、土埃が舞い上がる。

 

「おっと……。隙が大きすぎるだろ、その攻撃」

 

ララクは軽く後ろに飛び退きながら笑みを浮かべた。そして、次の瞬間にはジンガで体を揺らし、動きにリズムを刻み始める。

 

ボスロバウトがさらに踏み込もうと足を振り上げたその瞬間、ララクは低い体勢を取り、一気に地面に手をつけて足を払いに行く。

 

「【ハステイラ】!」

 

彼の脚が円を描くように回り、ボスロバウトの支えとなっている足を捉えた。

 

ゴシャッ!

巨体がバランスを崩し、重々しく地面に倒れ込む。

 

「よし、うまくできた」

 

ララクは体勢を立て直しながら様子をうかがったが、倒れたボスロバウトは苦しげにしながらもすぐに体を揺らして起き上がった。その目にはまだ闘志が燃え続けている。

 

「まだ踊る気あるのか。タフだな……!」

 

ボスロバウトは胸を張り、体全体を振りながら新しいリズムを刻み始める。地響きのような音とともに、大きな蹄でリズムを取り、さらに激しい戦いを予感させるような気配を漂わせていた。

 

ララクは肩を回しながら一歩前に進むと、挑発するような目でボスロバウトを見据えた。

 

「……(どうするか。ゼマさんのフォローもしたいし)

 ……よっし、もっと大きく踊ることにしよう。

 【ウェポンクリエイト】」

 

ララクは格闘で攻める作戦から、武器によるリーチのある戦いを繰り広げようと考えていた。【ウェポンクリエイト】はあらゆる武器を創る。

今回彼が作ったのは、木製の簡易的な双剣。双剣は持ちやすいように刃が短いことが多いが、今回は通常の片手剣と変わらない長さで創り出した。

 

「【踊刃・飛襲の舞】!!」

 

ララクは【ウェポンクリエイト】で生み出した木製の双剣を構え、軽やかなリズムを刻む足取りで子分ロバウトたちに接近する。そして、リズムが高まると同時にスキルを発動した。

 

彼の体がふわりと宙に舞い、双剣が鋭く弧を描く。空中を旋回しながら、次々と子分ロバウトたちに攻撃を仕掛けていく。

 

シュンッ、シュバンッ!

 

子分たちは蹄を踏み鳴らして必死に応戦しようとするが、ララクの素早い動きに翻弄され、次々と斬撃を受ける。その刃は傷を与えるだけでなく、足を払ったり、相手の武器を破壊したりと、リズムそのものを崩す効果をもたらしていた。

 

「グフィィイイイっ!」

 

子分ロバウトたちは次第に立て直せなくなり、倒れ込むか、リズムを完全に狂わせて戦場から退いていく。

 

「やるぅう」

 

自分の相手を倒されてしまったゼマだったが、不満よりもララクの攻撃に感心する気持ちが強かった。踊りながら戦うをコンセプトにしているだけあり、その剣さばきはショーとして眺められるほどだった。

 

子分たちを蹴散らしながら、ララクは軽く息を整えた。そして、崩れたリズムの中でなおも蹄を踏み鳴らし、威厳を保つボスロバウトを見据える。

 

ララクはボスロバウトの前に立ち、双剣をしっかりと構えた。リズムは最高潮に達し、まるで空気そのものが脈打っているかのようだ。

 

「これで、フィナーレだ」

 

この言い方は、かつての仲間・狐ダンサー カタネハナの真似だ。彼女はもっと、ハイテンションでこのセリフを言って踊りだすが。

 

ボスロバウトは最後の力を振り絞るように巨大な蹄を振り上げ、地面を強く踏みつけて衝撃を走らせた。そのリズムは力強く、威圧的だったが、ララクはその音に合わせるように動きを始めた。

 

ララクは【踊刃・飛襲の舞】を継続して発動し、ボスロバウトに向かって宙を舞う。双剣が風を切り、弧を描きながら鋭い斬撃を放つ。

 

「グフィッ!!」

 

ボスロバウトは蹄を振り回し、必死に応戦するが、ララクの動きはそれをかわし、攻撃を与え続ける。空中でのステップを絡めながら、双剣の一撃一撃が確実にボスの体力を削り取っていった。

 

最後にララクは高く跳び上がり、双剣を逆手に持ち替えた。宙を旋回しながら急降下する勢いで、ボスロバウトの正面に突き刺すように両剣を振り下ろした。

 

ガンッ!!

 

双剣の一撃はリズムに完全に乗り、ボスロバウトの動きを止めた。巨体が一瞬揺らぎ、蹄を踏みつける音が途切れる。

 

ボスロバウトはぐらりと体を揺らし、ついに地面に完全に倒れ込んだ。その巨体が地面を叩きつける音が響き渡り、戦いの場が静寂に包まれる。

 

「ふぅ、ボクの勝ち、かな?」

 

ララクは息を整えながら双剣を消滅させる。

 

ボスロバウトが地面に倒れると、それまで鳴り響いていた楽器のリズムが乱れ始めた。周囲の子分ロバウトたちは焦ったように目を見合わせ、太鼓や打楽器を叩き続けているが、テンポは明らかに遅くなっていた。

 

「あれれ、まだやる気が……?」

 

ララクはロバたちの小さな瞳ををじっと見つめた。ロバウトたちは怯えつつも、楽器を放り出すことなく音を鳴らし続ける。その音には、戦いに参加する覚悟がまだ宿っているようだった。

 

「それじゃあ、最後の仕上げだ」

 

ララクは深く息を吸い込み、体を低く構えた。そして、音楽のリズムを感じながら、地面を軽く踏みリズムを取り始める。

 

それを見たゼマは何かを感じ取り、「っげ」と言ってすぐさま耳を超手でふさいだ。

 

そしてゼマの予想通り、ララクの声が次第に喉から溢れ出し、大きなうねりを帯びた叫びとなる。

 

「【波動スクリーム】――ッ!」

 

叫び声は単なる怒号ではなく、音楽の一部のように流れるメロディックな波動となり、周囲に響き渡った。

 

シュロォォォォン――ッ!

 

波動がリズムに完璧に同期し、楽器の音を飲み込むように広がっていく。その音圧は強烈で、空気そのものが震えるようだった。

 

「フフィーッ!」

「フ…フィ…」

 

ロバウトたちは声を漏らす間もなく、次々と楽器を手放した。太鼓のバチが地面に落ち、音のテンポが完全に止まる。ロバウトたちは耳を塞ぎ、震えながら後ずさりする。

 

やがて、ララクの声がフェードアウトするように静まり返ると、ロバウトたちは完全に戦意を喪失し、動くことすらやめた。

 

「っお、帰っていくじゃん」

 

「どうやら、負けを認めてくれたようです」

 

倒れているボスをロバウトの集団が持ち上げると、そのまま慌ててジャングルの奥へと消えていった。自前の楽器も、いくつか置いていくほど、一瞬で走り去っていった。

 

戦いは完全に幕を閉じ、静まり返ったジャングルに、かすかな風の音だけが残った。

 

「さて、クエスト完了ですね」

 

ゼマは腕を組みながら、ニヤリと笑って答える。

 

「やっぱあんた、色んなことできて凄いね。

 踊りながら戦うのは予想外」

 

「ですかね。でもこれも、今まで仲間に入れてくれた人たちの、おかげです。スキルだけじゃなく、その使い方も、参考にしていますし」

 

彼の力は、100回追放されたことにより解放された。つまりかつての仲間たちは、追い出された苦い経験を思い出す対象でもあるが、力の根源でもある。

 

ララクは関わった全ての人に感謝しながら、今日もまた、誰かの平穏を守った。

 

そしてきっとこれから、平和を求める旅を続けることだろう。

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