【祝・追放100回記念】 自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~竜のぬいぐるみ~   作:高見南純平

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第2話 

 ララクが冒険者パーティー「デスティリバー」を追放になってから、1年近く経っていた。

 

 彼は今も冒険者をやっていた。

 18歳となり、成人となったが、いまだに子供と間違えられる。くりっとした目玉と、サラサラのマッシュルームのような髪は健在。

 残念ながら、身長も伸びることはなかった。

 

 今回彼がやってきたのは、山岳地帯。高低差が激しく、山道からはいつでも下方へ降りることができる。が、その場合は転げ落ちるのが目に見えている。

 

「さてと。そろそろですかね、ターゲットの住処は」

 

 ララクは地図を見ながら、足場の細い山道を歩いていた。ほんの少し足を踏み外しただけで、奈落に落ちてしまうような危険な道だが、彼は足元を見ることはなかった。

 始めてくる場所なので、近くの村で買った地図をくまなく見ている。といっても、そもそも村人もこの辺りはほとんど寄り付かないので、地図の内容はかなり大雑把だった。

 

「私もさ~、色々クエストやってきたけど、今回のはかなり珍妙だね」

 

 今のララクには、1人の仲間がいた。

 彼女の名前は、ゼマ。へそ出しシャツに短ジーパンを基本とする装備で、山を登る格好にしては軽装だし、モンスターと戦うにはあまりに無防備。

 背中には鋼鉄で出来た長棒を携えており、戦士ということはそこで分かる。

 

「ですね。……精霊なんて、めったにお目にかかりませんから」

 

 彼らはこの山岳地帯に住むとある精霊を探しにやって来ていた。

 

 何故ならば、都や村なので住民たちが冒険者たちに依頼するクエストを遂行するために。

 

 

【ぬいぐるみを取り返して】

 娘がいつも一緒に寝ている竜のぬいぐるみがあるんですけど、それがいつの間にかなくなっていたんです。外には持ち出さないし、失くしたとも思えなくて。

 そこで娘に聞いてみたら『竜ちゃんは呪われちゃったんだ! 私みたもん! 何かが入ったところ』と言うもんですから。

 もしかすると、山岳地帯に住む精霊、の仕業じゃないかなって。

 娘はずっと不安で眠れないみたいで、どうか探してきてください。

 依頼主・ハンドロル家

 

 

「精霊。ボクらのように、肉体、文字通り肉の体を持たない生命体です。全て魔力で構成されたボディを持っています。

 中には物に取りつくスピリットがいるらしいんですが、お子さんの証言が正しければ、それの仕業でしょう」

 

「なんで、ぬいぐるみなんかに。ドラゴンのってことは、空でも飛ぶのかねぇ~」

 

 村に訪れたララクとゼマはこのクエストを受理し、こうして山岳地帯にやって来ていたのだ。

 

 地図には「精霊の住処」という分かりやすい目印があった。ぬいぐるみを失くした娘の親がすぐに精霊を連想したのは、昔からそういう噂がここにはあったからだったのだ。

 実際に見た者は数少ないが、この辺りには精霊が漂っていると。

 

「もう少しでつきそうですね」

 

 ララクは方向音痴ではない。どちらかというと、空間把握能力には優れている。今まで様々なパーティーで冒険をしてきたから、鍛えられたのだろう。

 なので、大雑把な地図でもある程度自分がいる場所は分かった。

 

「でもさぁ、子供のぬいぐるみなんて、ここじゃ豆粒ぐらいに見えるんじゃないの? 探すの大変そう」

 

 薄着のゼマは、山岳地帯を一望する。かなり高い位置まで登ってきたので、空が澄み渡り景色は素晴らしい。しかし広大な分、そこから特定の者を見つけるには視界が定まらず、困難だ。

 

「……ですねぇ。住処に、とどまってくれていればいいんですけど……」

 

 ララクはゼマの不安予想に共感する。住処の場所が合っていたとしても、精霊の活動範囲が広いことは、村にまで現れたことで証明されている。

 

「っあ、あの開けた場所分かりますか? 大岩に挟まれている」

 

 ララクは精霊の住処を発見した。今いる山道からかなり下った場所にあるが、ここからよく見える。岩という分かりやすい目印もある。岩のせいか、植物がそこだけあまり育っておらず、山岳地帯にしては足場が確保されたエリアとなっている。

 

「あーあそこ。んー、でもぬりぐるみはないか」

 

「……少しここで観察しますか。見晴らしがいいですし」

 

 ぬいぐるみに憑依した、とされている精霊が戻ってくるのを待つため、狭い山道で待機をしようとした。

 

 その時、ララクとゼマの上空から「バサバサ」という鳥が羽ばたくような音が聞こえる。

 だがすぐに、それは鳥類などではないということがすぐに分かる。

 

 この世界には、翼を持ちながらも鳥ではないモンスターはそこまで珍しくはない。石の魔物ガーゴイル、翼馬ペガサスなど、有名なモンスターもいくつかいる。

 

 その中でもっとも有名で、そして幻の存在として認知されている生物がいる。

 それが、トカゲと蛇を混ぜたような見た目に、翼を有するドラゴンという生き物だ。

 

 その希少性に反して、伝説的な存在だからこそ、創作物や今回のぬいぐるみなどの元となり、目にする機会はよくあることだ。

 

「……あれが、ドラゴンのぬいぐる、み?」

 

「えっと、間違いないですよね。特徴、全部合ってますし」

 

 ララクとゼマは頭を抱えた。竜のぬいぐるみ、ということはすでに知っていた。だからその姿も想像していた。

 彼らの頭上を羽ばたき、住処へと滑空していくそれは、もふもふの生地で出来ていること以外は、ドラゴンと酷似している。

 

 それでも彼らが驚いたのには、シンプルな理由がある。

 

 ぬいぐるみといっても、その用途は様々。

 観賞用、子供が遊ぶ玩具、そして抱き枕のように一緒に寝るよう、など。

 

 子供は大きいものに触れていると寝つきがいい、という独自データをもとに、玩具会社が作り出した添い寝型ドラゴンモデルのぬいぐるみ。

 商品名は「ブルードラ」。

 

 その身長は小柄のララクを軽く凌駕しており、背中から生えた翼を含めれば、全長2メートル近い代物だったのだ。

 

 ちなみにお値段は、そのぬいぐるみと子供を寝かせるベッドを購入できるほど、高価である。

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