【祝・追放100回記念】 自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~竜のぬいぐるみ~   作:高見南純平

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第2話

 ララクが冒険者パーティー・リズダンスを追放されたから、一年以上たった頃。

 

 彼は今なお、冒険者として活動していた。

 

 ララクはジャングルの生い茂る木々の間を、軽い足取りで進んでいた。冒険に適した軽装の布のシャツとズボンは、泥と葉で少し汚れているが、動きやすさを重視したものだ。

 

 周囲を注意しながら進む姿は、慣れた冒険者のそれだ。ジャングルの湿った空気と、鳥や昆虫の鳴き声が聞こえる中で、ララクは時折茂みをかき分けながら前へ進みます。

 

「もうそろそろですかね。モンスターは人里の近くにいるみたいですから」

 

 彼は現在、1人ではなかった。ハンドレッドという冒険者パーティーを自分で作り、そこに1人だけ仲間が加入している。

 

「……よ──し、いっぱい叩くぞ~」

 

 仲間の名は、戦闘医ゼマ・ウィンビー。シャツに短いジーパン、そこに灰色のローブを着込んだ軽装スタイルの冒険者だ。

 ボリュームのある赤いショートヘアーをしており、背中には鋼鉄で出来たアイアンロッドという武器を装備している。

 

「さて、今回の相手は少々、厄介ですよ」

 

 ララクは今回受けた冒険者への依頼・クエストの内容を思い出していた。

 

 基本的にモンスター関連の仕事は、討伐が目的な事が多いのだが、今回の場合はそうとは限らなかった。

 

 

【ロバの騒音問題】

 里を代表して、私が依頼をさせて貰う。

 皆、知っていると思うが、この頃夜になると騒がしい演奏の音が鳴り響き、眠りを妨げられている物が多い。

 偵察の者に調べて貰ったら、なんと人ではなく、ロバのモンスターたちが演奏会を夜な夜な繰り広げていることが分かった。

 数も多く、一筋縄ではいかないかもしれないが、どうか追い払ってくれ

 

                            依頼主・里の長

 

 以上が今回の依頼内容である。

 

 

 これを見た戦闘医ゼマは、今でも疑問だった。

 

「ロバが楽器ね~。世の中、不思議なもんだ」

 

「おそらく、人型のモンスターなのかと。武器を扱うモンスターは、そこまで珍しくありませんから」

 

 ララクは補足した。主に自然界に存在する強力な生物をモンスターと称している。厳密に言うと、人との生物上の違いはそこまでなく、人もモンスターの一種である。

 が、便宜上分けるのが普通だ。

 

 ララクとその仲間、ゼマがジャングルを捜索していると、前方に異質な空気を感じ取った。

 2人とも、警戒度を高める。

 

「あそこが、ロバたちの野営地、といったところでしょうか」

 

 ジャングルには、ビッググローブというひと際巨大な樹木が存在していた。その木の下にて、野宿をしている者たちがいた。

 

 彼らは夜行性で、昼の現在は休息中だった。

 

 大きなグローブの根元、濃い木陰の中で、人型のロバモンスター・ロバウトの集団が休息をとっていた。それぞれのハンモックは、ビッググローブの根や枝にぶら下がり、自然の中に完全に溶け込んでいる即席の寝床となっていた。

 

 ロバウト達は、どれも人型でありながらロバの顔つきを持ち、筋肉質の体に粗末な布を巻きつけている。 大きな口が開き、盛大ないびきを響かせる姿はどこか滑稽だ。いびきは低いものから甲高いものまで様々で、音楽のように不協和音を演奏していた。

 

「ロバウト、ですね。20体,いやそれ以上でしょうか。厄介ですね」

 

「うわ、ほんとだ。楽器あるじゃん」

 

 ゼマは気がついた。その下、床には打楽器を中心とした格好悪い楽器が散乱している。全てが手作りで粗雑だが、どれも頻繁に使われているのか、妙に手入れはされていた。

 

 いくつかのハンモックはゆっくりと揺れており、ロバウト達がときおり寝返りを打つ。

 

 ララクは物陰からその様子を観察しながら、いびきの大合唱につつまれながらも、彼らの油断しきった姿に少し肩の力が下りていた。だが、ララクは今後の行動について、少し悩んでいた。

 

「寝てるってことは、奇襲し放題じゃん」

 

 ゼマは自慢のアイアンロッドを抜き、すぐにでも特攻する気まんまだった。彼女は基本的に、血気盛んなのだ。

 

「待ってください。今回は騒音の解決です。

 できれば、命までは奪いたくありません」

 

 ララクは顔を少ししかめながら、頭の中で作戦を考え込んでいた。依頼者、並びに里の人たちがどう考えているかは分からないが、ロバたちを狩猟することは今回マストではない。

 ララクは出来れば、追い払う、という形で終結したいようだ。

 

「んじゃあ、適度に攻撃しながら威嚇する感じ?」

 

 アイアンロッドをその場で軽く振るうゼマ。彼女は正直、戦えるなら何でもよかった。そもそも鈍器を武器としているので、殺傷するのは剣などに比べれば難しい。撲殺、あるいは頭部や胸を強打してのショック死。などが、ゼマのモンスター退治のやり方だ。

 

「例え、ボクたちの力を示して一時的に排除したとして、そのうち戻ってくるかもしれません。

 なので、縄張りを彼らのルールで奪う必要があります」

 

 ララクたちは旅の途中。里に常駐しているわけではない。そのため、永続的にロバウト達がここに近づかないようにしなければいけない。

 

「なに、戦ったことあるの? あいつらと」

 

 まるでロバウト達のルールを知っているかようなララクの口ぶりに、ゼマは引っかかった。

 

「いえ、似たように楽器を奏でるモンスターを見たことがあって。

 彼らには、ダンスバトルで勝つのが、平和的かつ効率的です」

 

「だ、ダンスバトル??」

 

 真面目な顔をしてそういったララクが、少しゼマにはおかしかった。あまり冗談を言うタイプではないことは知っているので、嘘だとは思っていない。

 

「ええ。そのためには、まず起こしましょう。ロバウトたちを。

 ゼマさん、少し離れてほしいのと、耳を塞いでおいてもらっていいですか?」

 

「ダンスするために、わざわざ起こすってか。

 はぁ、まあ従うよ。あんたがリーダーだからね」

 

 ゼマは乾いた笑みをこぼしながら、ララクと距離を離す。

 

 ララクはビッググローブの根元を見据え、深呼吸を一つ。次の瞬間、彼は力強く声を張り上げた。

 

「【狂騒スクリーム】!」

 

 その声はまるで雷のようにジャングルに響き渡り、途端にロバウトたちは目を覚ました。

 

「フフィ~!!」

 

 叩き起こされたロバたちの鳴き声が混じり、周囲の静寂を破って木々に反響する。

 

 ロバウトたちは一斉に目を見開き、慌ててハンモックから転げ落ちたり、根元の蔓にしがみついたりする。その表情は完全に驚きと混乱に包まれ、耳をぴくぴくと動かしながら声を上げた。

 

「フフィー! ギィーギィー!」

 

 地面に散らばった太鼓や笛がガタガタと音を立て、さらに状況を混乱させる。その動きの中で、ロバウトたちはまるで連鎖反応のように次々と落ち着きを失い、無駄に叫びながら暴れ回る。

 

 ララクは満足そうにその光景を見ながら、肩をすくめた。

 

 彼が使用したスキルは、【狂騒スクリーム】。音波を増強させて叫ぶことで、広範囲に威嚇、または聴覚へのダメージを与える事ができる。

 

 このスキルは彼のかつての仲間、叫び猫のゼントツがよく使用していたスキルだ。

 

 ララクはあれから、数多くのパーティーを追放された。

 

 そしてその回数が、100回を記録した時、彼の中に眠っていた特別な力が解放された。

 

 

【追放エナジー】

 獲得条件……パーティー契約を100回解除される。故意に自分から解除された場合はノーカウント(通算100回)。

 

 効果……パーティー契約を解除してきた相手、並びにそのパーティーメンバーのスキルを獲得できる。

 同じスキルがある場合、その数だけ効果が上昇する。

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