あれがダンジョンを過度に破壊したら出て来るのかぁ。
真勇の蹄跡。オラリオへ向かう1本の長い長い道のことを歌い手のウィーシェはそう呼んだ。
一面の花畑の奥にある抉れた峡谷はパルゥムにとって伝説の存在であるフィアナ騎士団2代目騎士団長である『フィン』と呼ばれる人物が同胞の遺志と共に単眼の王を貫いたとされ、かつてフィアナが率いていたとされるかの騎士団が居たとされる証拠の一部となっていた。
しかし、それは神が地上に降臨する前の話。時代が流れて行く内にどう間違ったのかフィアナ騎士団の初代団長であるフィアナが神格化されてしまい、今では『パルゥムが生み出したでっち上げた伝説』となっていたりする。
そんなプチ観光名所を遠目で視認できるほどの距離にある平原。馬で駆けても問題ない程に雄大な大地の感触に興奮するユーノを抑えつつ、アクスは少し遠い場所でこちらを見ているフィンに視線を向けた。
戦う以上は戦力分析は必要不可欠だ。自身の得手を相手に押し付け、相手の不利に付け込むように考えを巡らせるのが戦力分析の要ともいえる──と以前にフィンが言っていた。今回はその教えをありがたく使わせてもらう。
こちらの強みは騎馬であること。突撃が上手く決まればいかに上級冒険者であっても無事では済まない程の破壊力を有している。
しかし、それはもちろんフィンも分かっているだろう。
***
「距離は問題にならないということだ」
「あぁ、第1級冒険者がその程度で後れを取らん」
フィンとアクスの相対を少し離れたオラリオの市壁の上から観察していたリヴェリアとオッタルが同時に所感を言う。その周囲には椅子に座りながらオペラグラスを装備したフレイヤや、双眼鏡を手に持ったロキとヘファイストスが彼らの声に耳を傾けており、戦いに関することは門外漢な女神たちはどういうことかと口を挟むと代わりに椿が口を開いた。
「手前は騎馬を相手にした経験はないが、いかにあのユニコーンが早く動こうともそれを見切れぬとは思えんな」
「でも、あの機動力は脅威よ? 苦戦はしないだろうけど、戦いにくいことには変わりないはずよ」
ヘファイストスの言うとおり、機動力やそれに付随した突撃と攪乱が騎馬の怖い所である。しかし、逆に『お作法』さえしっかりしていれば、騎馬はまったく怖くないのだ。
例えば機動力を削ぐ方法。例を言えば馬が乗り越えられないように格子状に組まれた馬防柵や、先端を鋭くとがらせた木の枝や葉を外側に向けて立て並べた逆茂木が挙げられる。これらによって騎士を馬から振り落とし、地面に落ちたところを袋叩きにするのが一般的な馬に乗った兵士の倒し方である。
ただ、ここは平原で近くにそういった設備に使えそう材料がない。ならばどうするか──『槍』を使うのだ。
ヒューマンなどと比べて耐久が劣るパルゥムの持つ槍は基本的に軽く、長い。それを利用して
問題はそれをするにはかなりの勇気が必要なのだが、【勇者】と呼ばれる彼が出来ないはずはない。
他にも盛大にパカラっている騎馬の潰し方など頭を使えばいくらでも沸いて出てくる。ようするにフィンの前ではアクスが馬に乗ってようが無かろうが、大した問題にならないのである。
「まぁ、そこらへんもアクスは当然考えとるわな。なにせ、いろんなところからみっちり教えを叩き込まれとるやろうし」
「あの…… うちは…… 健全な…… 医療系ファミリア…… なのですがっ!」
「あ、アミッドたん。か、可愛い顔が台無しやでぇ!」
ロキが失言してしまったことに気付くがもう遅い。【ディアンケヒト・ファミリア】は間違っても探索系ファミリアではないのに、なぜ戦闘のイロハのようなことを教え込んでいるのだろうか。
おそらく、ロキたちは【ディアンケヒト・ファミリア】を探索系ファミリアと勘違いしている可能性が高いだろう。ならば即座に訂正しなければならない。そう判断したアミッドは、かなりの圧を込めながら
その鬼のような形相にロキが顔面蒼白になりながら怒りを抑え込もうとする傍ら、『ヘイズは医療関係を教え込んでいるだろうし、うちはノーカンよね』と自分自身の判断で無罪だと決め込むことで我関せずを貫き通していたフレイヤが小さく『始まったわ』と告げる。
その声に全員が平原の方を見ると、今まさにアクスが突撃を始めようとしているところだった。
「神々よ! ご照覧あれ!」
どこの入れ知恵だろうか。かつての『道化』や『勇者』のようによく通る声で
しかし、対するフィンはどこか退屈そうに地に足を固め、槍を水平に突き出した。こうなってしまえば後はその突撃力が仇となり、勝負はすぐに終わってしまう。
ラキア王国が攻めてきた時に戦ったあれはただのビギナーズラックだったとやや悲嘆に暮れるフィンであったが、唐突に親指が小さく疼いた。
「っ!」
反射的に突き出していた槍を横へ振るった瞬間、硬質な音と共に細長い何かが明後日の方向へと飛んでいく。その正体が何かと考える暇もなく、フィンの顔面に向かってさらに細長い何か──矢が飛来する。
咄嗟に
「速い!」
「やあぁ!」
目を離したのは、刹那という短すぎる時間。しかし、スキルによって速度を増したアクスたちがフィンを射程にとらえるには十分すぎた。
既に弓から持ち替えたアクスが手にした槍を振う。横なぎに繰り出された槍は決してフィンがとらえきれない速度ではないものの、先ほど矢を掴んだことで
ゆえにフィンは回避を選ぶ。仰け反ったと同時に穂先が彼の鼻先を掠め、馬上に居るアクスと目が合った。
──ざまぁみろ。
そう言いたげな笑みを浮かべていたように思えるが、残念ながら一瞬のことで確認することは叶わない。
突撃することで相手の行動を誘導させ、弓という小手先を使うことで相手の呼吸を乱した上で攻撃を叩き込む。今まで教えたことを総動員させた正真正銘のアクスが考えた駆け引きに、今までどこか冷ややかだったフィンの身体に熱が帯び出す。
「ははっ、まいったな。油断してたってわけか」
フィンの頭には先ほどまでの悲嘆はすっかり消え失せていた。ガレスのいう『熱き戦い』というには相手のレベルが足りないが、すっかりアクスを
***
「すごい……」
アクスの突撃を見たアミッドの感想はその一言のみだった。
周囲では『渡した弓をさっそく使ったか』や『狙いが正確過ぎる』や『踏み込みが足りん』と第1級冒険者たちが教育者目線でアクスの動きを精査しているものの、彼女から言わせてもらえばその動きは一介の
突撃に効果が無いことが分かった途端、フィンの周辺を高速で旋回しながら矢を射掛けるアクスに彼女は1つの疑問を持った。
「アクスは冒険者になりたいのでしょうか」
「なにを……。いや、言ってみろ」
ポツリと呟いたアミッドの言葉の意図を図りかねたものの、彼女が理由なく訳も分からないことを言うはずないとリヴェリアは続きを促す。
アミッドが語った懸念。それは『アクスは自らを押し殺して
「アミッドたん、それ本気なん?」
「はい。あそこまで真剣に戦うアクスは初めて見たもので……」
全員から『今まで何を見てきたんだ』という視線がアミッドに突き刺さるが、彼女は未だ19歳。その心配はごくごく自然なことだった。
『製造者責任』と言ってきた
加えて子供の夢というものは昨日まで戦隊もののヒーローになることを夢見ていたはずが、次の日にはチーズ蒸しパンになりたいと宣うようにコロコロと変わる。
そのため、アミッドがあまり見たことがない死に物狂いで戦うアクスの表情に、『もしかして、ダンジョンに潜る冒険者になりたいのではないか』といった考えが浮かんでしまうのは仕方のないことであった。
「アクスが冒険者になりたいというのであれば……。私は……。私は……」
「
「あぁん? 何うちら差し置いとんねん、色ボケがぁ!」
「とりあえずアミッド、落ち着け」
仮にアクスが冒険者になりたいというのであれば、断腸の思い──それこそ血涙を流す勢いで【ロキ・ファミリア】に後を託そうと下を向いて葛藤していたアミッドにリヴェリアはアクスとフィンの方向を指差し、絶賛戦闘中の現場を見させる。
流鏑馬の要領で次々と矢を放っては悉くを避けられるか手で止められるが、時たまアクスが後ろを気にする光景がアミッドたちの目に映る。すると、同時にフィンも矢を避けながらその辺の石ころを拾い、アクスが見ていた方向目掛けて投げつけた。
しかし、その投石目掛けてアクスが居かけた矢が当たったことで物理的に消失。再び流鏑馬が始まった。
「あー、なるほどなぁ。うちは分かったで」
「私もよ」
「手前もだ、愛されておるなぁ」
「……意味が分からないのですが」
ヒートアップする女性陣の中で1人だけ取り残されたアミッド。正直、『なぜそこで愛!?』と叫びたかったのをぐっと抑えていると、横からオッタルがまるで『まだ分からないのか?』と言いたげな表情を送っていることに気付いた。
まさかオラリオ屈指の脳筋であらせられるオッタルよりも察する能力が欠如しているとは思わなかったアミッドが若干ショックを受けていると、彼は先ほどフィンが投石した方向──アクスが最初に待機していた場所を指差す。
「
「謎かけでしょうか? 平原しか……」
「あぁ、平原だ。あのフィンが、なぜ意味もなくそちらに投石した?」
「?」
「あれは石を投げたわけではない。"攻撃"だ」
「……っ!」
ここでアミッドはようやく『アクスの後ろに居る存在を守っている想定』で戦っていることに気付く。第1級冒険者の投石なぞ当たれば、命自体が消し飛びかねない。それをアクスが戦闘の合間にひたすら防ぎ、後ろの存在に被害が出ないようにしている。
「これで分かったか、アミッドたん。いやー、愛されてんなぁ~」
「あの、なんで愛なのですか? 後ろに居るであろう患者たちを守ってる想定……ですよね?」
「は?」
「あ、もしかして一般の方々もでしょうか? そうですよね、避難してくる可能性もありますものね」
それはひょっとしてギャグで言っているのだろうか。全くもって理解していないアミッドにフレイヤでさえも無表情になる一方、アクスの持っていた矢が尽きつつあった。
「アクス、そんな攻撃では日が暮れてしまうよ!」
「分かってま……すっ!」
五月雨に打って来る矢を掴んで止め、笑顔でそれをアクスたちの方へ
しかし、大量にあったはずの矢の感触が矢筒から無くなっていることに彼は唇を噛み締める。
「もう矢も尽きているだろう。次はどんな手で来るんだい?」
雪合戦ならぬ
勝ちも負けも関係なく、ただ純粋に今の自分がどこまで
「また足を掬われては立つ瀬がないからね。今度は慎重に見極めさせてもらうよ」
同じ手は食わない。そんな思いと共にフィンはあえて足に余力を残した体勢で槍を構える。
こうすることでいかなる攻撃であろうと対応することが出来、そこから反撃に繋げられるからだ。
そんな万全ともいえる備えに再び近づいて来るアクスたち。先ほどまで走り回っていたせいか、ユーノの速度がかなり落ちている。この分だと馬上からの槍を余裕を持って避けた後、柄でアクスを叩き落してしまえばそれだけで決着がついてしまう。
LV.2にしては頑張った所だと同族贔屓したいところだが、あっけない幕引きにもうちょっと頑張ってほしかったという思いもある。
ただ、そんな皮算用をしていたからか……。フィンは親指の信号を見落としていた。
その証拠に──。
アクスがおもむろに馬上に立ち上がる。《スリィー》
「は?」
屈んで力を貯める。《ツゥー》
「え? え?」
最後の力を振り絞ったユーノが急制動を掛けると共にアクスが飛翔。《ワァン》
「はあぁぁ!?」
「だひゃひゃひゃ! さすがのフィンもあれは予想できんかったか! おもろいやっちゃなぁ、アクスは」
「だが、意表を突くだけでは
そう言いながら平原から目を背けようとしないオッタル。その視線の先にはすっかり平静を取り戻したフィンとアクスの攻防が繰り広げられている。
【ディアンケヒト・ファミリア】のエンブレムが模られた大きな旗が翻り、それを支える柄がフィンの顔を打ち払わんと鞭のようにしなる。しかし彼の持った槍の穂先が素早く持ち上げられ、その1撃は簡単に受け流されてしまう。
「旗は風の影響が大きく出る。動きを読まれないように最小限に振るんだ!」
余裕綽々と言った具合に放ったフィンの助言にアクスは言葉通り、最小限の動きでフィン目掛けて旗を横に振るう。
布が空気をはらみ、フィンの視界を奪うように広がる。視界を奪われてはどうにもできないと、彼は片目を細めながら半歩だけ後ろに退いて少しでも視界を広げようとしながらも、長年の経験を信じて槍を突き出す。精霊の護符を幾重にも織った旗は勇鉄の刃先と一瞬だけ拮抗するものの、すぐさま乾いた破裂音を奏でながら引き裂かれてその奥に居るアクスの肩口に刃先が突き刺さった。
「ぐっ……!
本来ならば肩という重要な部分に槍と突きこまれれば、それだけで戦闘不能である。ただ、
突き、払う。言葉にすればたったそれだけの動作でも、打ち据える角度や速度が全く異なる演舞が繰り広げられる。
しかし、穂先が旗を掠めるごとに布片が舞い、旗が見るも無残に割けていく。その光景に椿が『
そんな攻防の最中、フィンはあることに気付いた。
「この戦い方は……」
単純に振り回すのではなく、突き主体の攻撃に切り替わる。距離も着かず離れずといった一定の距離感保つ歩法に、フィンは同じファミリアに所属しているクルスの面影を感じ取った。
いきなり戦いのリズムを変えたことでフィンの頬に穂先が掠ったものの、すぐさま彼は手首だけでアクスの持っているブリューナクの柄を器用に巻き込むと、そのままアクスの手からブリューナクを弾き飛ばした。
本来であればこの瞬間、戦うための武器が喪失したということでフィンの勝利となる──が、
「なっ!」
そのため、フィンの対応が少々遅れる。元々超接近戦には不得手な槍に加えて予期はしていたものの可能性が低いと考えていたためか、武器を手放すという引き算の決断が遅れてしまった彼の懐に潜り込んだアクスは片足を思いっきり大地に振り下ろす。
──アクス君、拳は腕の力だけじゃ駄目なの。足をこうやって思いっきり踏みしめて、その力と一緒に打ち込む感じ。こういう風……にぃっ!
──ちょっ、待て! ガン見してたのは謝るけど、これ見よがしに揺らす奴が1番悪ぎゃあぁ!
揺れる胸をガン見してしまうという悲しい男の性を真正直に告白した1人の
拳が突き刺さった瞬間にボキリという軽い音と共にフィンの身体が軽く浮くだけ。何のダメージも得られないどころか逆にアクスの手の骨が折れてしまった。
しかし、彼の攻撃は終わらない。
──アクス、勝負が拳1発で決まるとは思わないことだよ。そうなったら私もあの兄弟に……、ごめん忘れて。つまり、1撃の後のもう1撃は必ずやること。どんなに辛くても、それだけで勝率はぐんと上がるんだから。
「
脚は腕の何倍もの力があると、どこかで聞いたことがある。それゆえの『かかと落とし』。
その目論見は正解でフィンの頚椎にアクスのかかとがぶち当たるものの──全てにおいてLV.6は規格外だった。
「やっぱり、自己回復が出来る
そう言ってフィンは何気なく立ち上がると共に
一瞬で距離を縮めたフィンの拳が風を裂き、アクスの頬をかすめる。負けじとアクスは身体を回転させ、肘打ちで対抗するものの、フィンの手によって簡単に受け流された。
「楽しい。実に楽しいよ、アクス」
心底楽し気にするフィンに対し、アクスは何も言わない。否、お喋りするほどの余裕が無いのだ。
手刀。肘で打ち下ろし。蹴り。どれをとっても1発でアクスを昏倒させるのに十分な威力を誇っている。
それらの攻撃に対して回避か受け流しを行い、そこから反撃に転ずるにはかなりの集中力を擁するためにアクスは必死の形相でフィンの手元に意識を集中させる。
「手元ばかり見てて良いのかい?」
フィンがそういった直後。アクスは足首に鋭い衝撃を覚え、身体が浮く感覚が走った。
反射的に片手を地につくが、行き着く暇もない攻防によってアクスはそのまま地面へと転がされてしまう。こうなってしまえば後はフィンが拳や槍をアクスに突き付ければ勝負は決まる。
ただ、そこに今まで伏せていた
「ユニコーンか。良い連携だ」
後ろに飛ぶことでユーノの突進を避けたフィン。その隙に
(これが充足感って奴なのかな)
そんな中、フィンはすっかり満ち足りた気分となっていた。
冒険者というものは【フレイヤ・ファミリア】並ではなくとも、多かれ少なかれ我が強い。そのため、『師弟』といった関係は同じファミリアであっても出来辛い土壌となっている。
それに加えてフィンやアクスの種族であるパルゥムは『弱い・狡賢い・性根が悪い』と言われており、パルゥム蔑視の世論も手伝ってかLV.2より上はかなり少ない。
そんなパルゥムの中に突如として現れた突然変異がアクスである。先にもフィンの助言を聞いた通り、基本的に素直な彼は人の言う事を聞いては即座に修正するという素直さと器用さを兼ね備えた『パルゥムらしくないパルゥム』だ。
言い方は悪いがそんな彼を、稽古をし、他の種族からも一目置かれる存在へ昇華させる。これが滾らずにいられるものか。
(2軍も力を付けてきているみたいだね。アクスの動きを見て居れば分かる)
それに先ほどからの動き。ほとんどは【ロキ・ファミリア】の2軍から学び取ったのだろうと当たりを付けていた。
過言かもしれないが、2軍の力とアクス本人の力。その両方の力を確認することが出来たフィンは大いに満足する。
(欲しいな……。切実に)
だからだろうか。何度もディアンケヒトに断られ、アミッドに極寒の視線を浴びせかけられても尚衰えない欲望が再び湧き上がってきた。
さらに彼はつい先日、10代半ばの女性に振られたばかり。そんな傷心の身に充足感がスゥーっと効き……効き……。
(そうだ、養子縁組ってのも良いかもしれない)
どうやら効き過ぎてしまったようだ。とんでもないことを妄想し出したフィンであったが、唐突に市壁の上から殺気染みた気配。それとダイダロス通りの方向から圧力にも似た気配を感じたことで正気に戻る。
***
「ちょおっ! アミッドたん、顔恐いで!」
「すみません、フィン様から邪な空気を感じたので。しかし、どうしてアクスはあぁまでして戦おうとしているのでしょうか」
アクスは
アミッドも
すると、そんな彼女の疑問に意外過ぎる存在が答えを出してくる。
「
『えっ?』
この場に居るオッタル以外の声がハモる。
口下手。脳筋。融通の利かない。困ったら力押し。エトセトラ、エトセトラ。そんな力極振りな武人からの意外過ぎる言葉に全員がオッタルの方を見ると、彼は敬愛する主神にまで同じ反応をされるとは思わなかったのか『如何しましたか?』とかなり不安そうな表情を浮かべていた。
「ごめんなさい、オッタル。あなたがそんな風に人の気持ちを知っていそうなことを言うとは思わなかったの。あと、出来ればもう少し具体的に話してもらえるかしら」
相手の意図を汲むなどの団長としてのスキルの一切をフレイヤは諦めていたが、まさか相手の気持ちを推察する能力を開花するとは思っても見なかった。『これもアクスの影響かしら』と彼女が心の中で謎の感激を覚える一方、別に木の股から生まれたわけでもない本人はやや不満そうな表情をしながらもアクスがあそこまで力を求める理由について考察を述べ出した。
「
「はい、我々も現場に居ましたから」
「"あの形"がアクスの考える理想形だ」
『あの形』と呼ばれてもどの形なのか。相変わらず言葉が足りないオッタルに辟易しながらも、あの時のアクスの動きについてアミッドは思い出す。
あの時はたしか、アミッドたちが中衛──それも【ロキ・ファミリア】や他の冒険者が護衛に就いた鉄壁の布陣を敷いた上でアクスを前線に送り込み、回復を行っては自力で中衛に下がらせて本格的な治療を行っていたはず。要するに、アクスが前線にて応急処置をしていた形となる。
そこから導き出されるアクスの考え。それは──。
「後方に私たちを置いて、自分が前線に出て最低限の治療をしようと?」
「そのために治療技術の他に自衛が出来る力を欲した……という訳か?」
「それもある……が、少しでも長く敵を引き付けるような戦い方をしているのは俺でも分かる。敵を打ち倒すのみの俺よりも難しい、"人を生かすため"の戦いをあいつはしている」
アミッドの回答やリヴェリアの補足にオッタルは首を縦に振りながら所感を言う。
全ては後方の──死の1歩前でも救えるアミッドに後を託せるようにするため。そのためにアクスはここまでの力を培ってきたのだとようやく理解した彼女の顔が真っ赤に染まる。
「愛やなぁ」
「愛ね」
「愛……ね」
「好かれておるな」
「愛のなせる業か」
女性陣から再び『愛』の嵐。ただ、アクスがスキルを発現させてまでアミッドの背中についていこうとしているのは紛れもない事実のためにアミッドはこっ恥ずかしい口撃を耐えるしかなかった。
しかし、そんな四面楚歌な流れで再びオッタルが口を開く。
「愛というよりは絆だろう。あいつは俺と似ている」
オッタルの口からまさかの『絆』。そしてよりにもよって脳味噌が筋肉で出来ている力の求道者にしてゴリマッチョなオッタルがアクスと似ているというトンチキな発言かましてくる。
流石のフレイヤも『あぁ、やっぱりオッタルはオッタルね』と呆れ顔をするものの、口下手が標準装備な眷属のために助け舟を出すと彼は滔々と語りだした。
彼の生い立ちは省略しよう。捨て子で名前もなく、路地裏で死にそうになっていた所に通りがかったフレイヤに見つけてもらったことで、彼は彼女の剣と盾になることを決意する。そのために武を磨き、格上に挑み、何度の敗走を経ても食らいつき……大抗争にて
それでも満足せずにフレイヤのためにオッタルは高みへ登り続けている。そんな彼とアクスは奉ずる者が異なるだけでその本質は同じだと言いたいらしい。
「
「今日は随分お喋りね、オッタル」
「俺はフレイヤ様のように魂の色は見えませんが、アクスが着実に俺たちの方に向かっているのは分かるつもりです。ならば、
「ふふっ。あなたが男を語るなんて、今日は本当にお喋りさんね」
いつもの寡黙な様子がどこへやら。すっかり近所のおじさん──というか、後方腕組理解者となったオッタルにフレイヤが笑っていると、どうやらアクスは健闘空しく敗北したようだ。
むしろフィン相手にここまで戦えたのだからLV.2としては破格の実力となるが、2人が戦ったことで生じた
「椿、言いたいことは分かるけど今は抑えて……ね?」
「あぁ、分かっている。あやつめ、主神様や手前が作った最高傑作を……。いくらふんだくってやろうか」
旗はボロボロ。柄も折れかけ。傍目から見て作り直した方が早そうなブリューナクを前に怒り狂う椿を前にリヴェリアと戻ってきたフィンは、平謝りをすることから始めた。
悲報:5年間使ってたスマホの基盤がイカれてご臨終 + ここ数週間土曜日出勤のため、ストックが減り続ける一方なのでどこかで1週間お休みいただくことが確定しました。
その時になったら小説情報でお知らせとして発信させていただきます。
アクス
どんなに頑張ってもレベルが上の奴に勝てるわけねェだろ!(どこかの白兎は除く)
ただ、後ろに居る人のために出来得ることは何でもする不屈のパルゥム。
すべては1人の聖女のために。
アミッド
天然なのか、無自覚なのか。オッタルの武人翻訳によってなんとかアクスの思惑が伝わった聖女。
愛じゃよ…。
フィン
我が世の春が来た状態。格闘戦は当初はいれていなかったが、全ては某忍びアニメの動画が悪いねん。
神々
『神々よ、ご照覧あれ』で初めからテンションマックス。その後の攻防にハラハラし、アクスロケットで笑い、その後の格闘戦でウキウキするという良い空気を吸っている方々。
オッタル
最新刊で化け物染みてたからね、たまには格好いいことさせてあげないと。
心なしかうずうずしていたが、流石に駄目だとフレイヤに止められた。
また、某忍びアニメを見ていてアクスの覚える最後の魔法の使い方に使えそうな展開。シーンとしては派閥大戦のヘイズ戦です。
クソダサくて長い技名はないです。目標は1人飛雷神回し。
詠唱が終わると同時にアクスの周囲を8人の人影が取り囲む。全身余さず黒ずくめのまさしく影のような出で立ちの8人の背格好はちぐはぐだが、共通して1本の槍を携えていた。
そんな8人とアクスは言葉もなく一斉にヘイズへ向かって突進する。その速度はLV.4であるヘイズが余裕を持って捌ける遅さだが、ガリバー兄弟のように無限とも思える連携攻撃に防戦一方となっていた。
(幻影魔法ではなく"意思"と"実体"があるのが厄介……。でも、あの子なら……!)
ヘイズの脳裏に浮かんだ反撃の糸口。まさに今、それが実現しようとしていた。
影の合間からアクスが強く拳を握りながらヘイズへと走っていく。ただ、いかに不意打ちであろうともLV.3がそう簡単にLV.4を圧倒出来るはずもなく、彼の接近に気付いたヘイズがカウンター気味に杖で迎撃しようとし──。
「
トリガーとなる言葉にヘイズがはっとしたのも束の間。真正面から突っ込んできたアクスが8人居た影の内の1人へと
その光景を神の鏡から見物していたフィンは後方支援者面をしていたが、次の瞬間に『イイッ↑タイ↓テガァァァ↑』といった具合の絶叫を聞いて『学習しないなぁ』といったコメントを漏らしたとか。