ストックががが。
すっかり静けさを取り戻した市壁の上。そこでは中年のパルゥムが正座をしながらハーフドワーフに向かって背中を丸めていた。
「ほ、本当に済まなかったよ」
「あ”ぁっ!?」
「大変、申し訳ありませんでした」
例えるならば、天界時代に浮気したとある美の神がヘファイストスに詰められている時のような……。そんなドスの効いた声色で怒りをあらわにした椿に、フィンはさらに背中を丸めながら謝罪の言葉を言い直す。仮にもオラリオを代表するファミリアの長がやってはいけない行動なのだが、既にここにはロキたちとヘファイストスたちとアミッドたちといった3派閥しかいない──というのも、アクスが帰ってきたと同時にオッタルが先ほどまでの訳知り理解者面はどこへやら……といった具合に『じゃあ、戦ろうか』と準備し出したのだ。これには流石のフレイヤも『イヤイヤ待て待て待ちなさい! 実戦じゃないのよ!?』と彼を止め、そのままどこかへ行ってしまう。
なお、今回に至ってはフィンが全面的に悪いためにリヴェリアは静観を決め込んでいた。
それでも、眷属第1号かつフィンのファン第1号でもあるロキだけは彼の味方なのか、ヘファイストスに文句を言っている。
「ちょいちょいちょい、確かにフィンがアクスの武器をボロボロにしたんは謝るけどな。そんなのちょちょって修理して──」
「ロキ、椿は一旦おいておくとして、私は修理費の心配をしているの。なんならロキが修理費用を支払ってくれても良いのよ? 旗も柄もボロボロだから交換しなきゃいけないし、せっかくだから旗に鋼線でも編み込もうと思ってるんだけど……」
「フィンが全面的に悪いわ」
THE・手の平返し。一流の殺し屋でも見逃しそうな変わり身の早さにフィンの顔は絶望に染まる。それでも冒険者らしく足掻こうと、今度はアミッドの腕の中にすっぽり収まっていたアクスとアミッドの方を見やる──が。
「アミッド、今回の件のことなんだけど」
「あ、すみません。今、アクスに食べさせるご褒美ご飯のことを考えていました。後でじっくりお話を聞かせていただきますので、コルブランド様とのご用件を先に済ませてください」
どうやらこの地獄はまだ始まったばかりらしい。分かっていたことだが、全てにおいて自分が悪い。そう思ったフィンはただただ頭を下げるしかなかった。
すると、今度は今まで黙っていたリヴェリアが重い口を開く。
「……で、弁償はどうする? うちの金庫から出すのか?」
「そんなことはしないよ、僕が全面的に負担する。一応だけど蓄えはあるからね」
「はぁ……。少しは頼れ、私も出してやる」
こうしてひっじょーになんやかんやと話し込むことになったが、ブリューナクの修理費用をフィンとリヴェリアが折半。修理工数の削減のために予備のフォルテイアスピアを椿に渡すことで話がついた。
その後、やたらと張り切った椿の一刀によってユーノの角が綺麗に切り取られ、その処遇についてはアクスに一任されるたものの、ユーノが『ベル・クラネルにも半分で良いから渡して欲しい』と伝えてくる。
たしかにベルたちと
「じゃあ、お姉ちゃん。包丁屋さんのところに行ってくる」
「気を付けてね。【ヘスティア・ファミリア】は今、かなり危ない立場だから」
世間の情報に疎い【ディアンケヒト・ファミリア】でも、先だっての騒動の原因や【リトル・ルーキー】の仕出かしたことは臨時治療院に来る患者たち経由でアミッドも知っている。情勢的にも
それでもかなりの不安があるのだろう。何度も気を付けるように言うが、姉の心弟知らず……。ユーノの背中でだらけた状態で街中へと消えてしまった。
胸中には未だオッタルに言われたアクスの原動力について消化できない思いが燻っている。今後、一体どういった感情でアクスに接したら良いのか密かに悩むアミッドの横をフィンたちが満足げに通り過ぎようとしていた。
「いやー、えーもん見せてもらったわー。さー、帰って色々せなあかんなぁー」
「本当に満足したよ。1週間は寝ないで済むんじゃないかな」
「まったく……、しかしアクスも中々強くなったな」
「それはそれは……、良かったですね」
もはや話は終わった雰囲気を意図的に出して煙に巻こうとしたフィンたちではあったが、そうは問屋が卸さない。彼らの前を
「こちらも言いたいことが1つ……2つ……3つ……色々ありまして」
「際限が無くなっていないか!?」
「いえいえ、
いつもの鉄面皮からすっかり般若へと変貌したアミッドから立ち上る怒気にリヴェリアが狼狽えながら何とか宥めようとするが、残念ながら効果はない。そこに今度は
「あ、アミッド。僕たちはこの後、かなり忙しいから……後にして欲しいなって」
「そ、そうや。ファイたんところからも怒られたばかりやからな。アミッドたんの怒りはよーく分かったから……な?」
美しい銀の長髪が重力に反抗して逆立っているかのような圧にとうとうロキは泣き出しながら懇願するが、当然ながらアミッドには効かない。
この後、ラウルやアキと約束していた報告会に盛大に遅刻し、憔悴しきったそれぞれから『アミッドヤバい』という謎めいたセリフが出てくるのだが、それはまた別のお話。
***
ロキたちがアミッドの剣幕に震えるのと同時期。アクスは【ヘスティア・ファミリア】の
そろそろ昼に差し掛かるというのに、どの部屋にも厚手のカーテンが降りていて中の様子が1mmたりとも分からない。
(当たり前か)
おそらくリリルカあたりが団員たちにがなり立てながら対策したのだろう。ただ、その判断は非常に正しい。
この騒動をより大きくしたのは、何を隠そうベルだ。加えて彼は【ヘスティア・ファミリア】の団長であるため、彼の徒党も監視対象となるのは必然ともいえる。言い方を変えれば『危険人物』の動向を探るため、関連もへったくれもないファミリアの冒険者たちがそれぞれ
そんな『悪の巣窟』とまではいかないが、周りから監視されるほどヤバいことをやらかしたファミリアの
『後で報告する』と去り際にフェルズに言われたが、既に1日過ぎている。もしかすると【ヘスティア・ファミリア】に伝えただけで
そんな諸々のことをひっくるめてここに向かったわけであるが、明らかに監視の目が多すぎることにアクスは辟易としていた。
ここに無策で突っ込むとなると、【ディアンケヒト・ファミリア】の名声も落ちることは必定だ。
しかし、心配はいらない。ヴェルフへ鍛冶の依頼をしに行く以外にも【ヘスティア・ファミリア】はアクスにかなりの『借り』がある。その借りの徴収と説明すれば『時期を考えろ』ぐらいは言われるだろうが、穏便には済むはずだ。
多少の金銭かドロップアイテムの引き渡しということで渋い顔をされそうだが、リリルカには涙を呑んでもらうしかないと考えながらアクスが外門をくぐると──。
「は、離してください! ベル・クラネルゥー! 卑怯者ォ! 説明をしなさぁい!」
「レフィーヤ、落ち着け! マジでなにがあったんだよ!」
「私も分からないって言ってるじゃないですかぁ!」
邸宅の方から、数人がかりでレフィーヤを羽交い絞めにしながらクルスたち【ロキ・ファミリア】2軍の面々が歩いて来る状況に出くわした。明らかに厄介事の類だが、『挨拶は常連作りの基本』というディアンケヒトの教えに従ったアクスは『お疲れ様でーす』と言いながら彼らの横を通り過ぎていく。
「あぁ、おつか……れ!?」
いきなり声を掛けられたことで惰性でクルスは挨拶を返すものの、少ししてから『アクスじゃねぇか!』といった具合に振り向いた。
しかし、既に彼は本館前に移動しており、自身もレフィーヤというダンジョンのモンスターよりも気性が荒い存在をなんとか連れ出している最中ということでひとまずエルフィたちと共にレフィーヤを現在の拠点に連行することに決めた。
一方でアクスはというと、フィンとの戦いを経てボロボロになった服は仕方ないにしてもユーノをそのまま邸宅内に入れるのは迷惑だと思ったのか、水筒の水で布を濡らしてからユーノの身体や足回りを拭ってからドアノッカーを叩く。
「は、はーい」
「春姫様! また
なにやら扉の向こうでレフィーヤに対する誹謗中傷が聞こえたが、あの様子だとそう思われても仕方ないだろうとアクスは黙って扉が開くのを待つ。
すると、やや控えめ気味に扉が開いたかと思えばヘスティアと春姫が顔を覗かせてきた。
「あぁ、神父君かい。サポーター君、今度は正真正銘の小型犬だから大丈夫だぜ!」
「神父様でしたか。たしかに小型犬ですね」
「小型犬というか、小犬というか……」
散々な言われようである。
もしかすると喧嘩を売っているのかもしれないとアクスは両手を高く上げながら『ガオー』と吠えると、それを見た春姫がほっこりしたような笑みを浮かべながら『食べられてしまいますわ~』と言いながらアクスをヒョイッと持ち上げ、そのまま中へ連れ去ってしまう。ユーノも大人しく邸宅の中に入ったところで再び扉が閉じ、周囲の冒険者が『
***
「大変、申し訳ありませんでした」
「なんでしょう。開口1番で謝られると、どう対処したらいいのか分からなくなりますね」
春姫に談話室まで連行されたアクスは、初手謝罪を敢行する。こうなってしまえば、後に残るのは許すか許さないかの究極の2択を強いる必殺技だ。
しかも相手は子供。とてつもなくやり辛そうな表情をリリルカは浮かべていたが、アクスもアクスで別に茶化して謝罪したわけではない。
彼からしてみれば初めこそ
まさに手の平が削岩機になったと思われてもおかしくない返しぶりである。
巷ではそんな人間をどういうか──そう、『蝙蝠』だ。そう誹られてもおかしくない程のことを【ヘスティア・ファミリア】にしてしまったのだから、アクスの行動は極々当たり前と言える。
しかし、それはアクスのみの話。
「それよりも良いのか? 外の奴らを見ただろ。そっちのファミリアに迷惑が掛かるんじゃないのか?」
「あ、それは問題ないです。一応、依頼とお仕事って名目を作りますから」
そう言ってアクスは【ディアンケヒト・ファミリア】のエンブレムが端に描かれている紙に色々書き出した。目立つところに書かれた請求書という文字を始め、細かな字や数字をツラツラと書いていく彼にヘスティアは『相変わらず抜け目ないねぇ』と感心した口調で見守っている。
これならば仮に冒険者たちに詰め寄られても『営業をしていた』と逃げることが出来る。グランド・デイや【アポロン・ファミリア】との
ちょうど良い機会だとヘスティアはリリルカに頼んで証文の用意をしてもらっていると、先にアクスの請求書が完成した。
「では、こちらを」
「あぁ、18階層のだね。もちろん払……う……よ?」
いち、じゅう、ひゃく……締めて20万ヴァリス。思った以上の金額にコミカルな漫画のごとく目を前方に射出したヘスティアは、愛想笑いを浮かべながらアクスに問いかけた。
「神父君? ちょ、ちょっと間違っちゃったのかなー? アハハ……まじ?」
「はい、それで合ってます」
そんな馬鹿な話があるか。たしかに魔法を使った治療や高価な薬品の類を用いて治療されたことはベルを通じてヘスティアも把握しているし、食料に関しては彼女自身もご馳走になった身だ。
しかし、流石にこの額は横暴。思わずそう叫ぶと、アクスは少し考え込んだ後に『あー、そんなことありましたね』と再び請求書を書き出した。
「あ、これが修正した物です。ご確認ください」
「上がってるぅ! 何で20万なんて暴利な数字が出て来るんだい!」
まるで忘れていたような反応をした後に改めて差し出してきた
「あっ!」
「あれって確か使わなかったような……。ヘスティア様、まさか……」
「う、うん。後で返却しようと思ってたけど、アポロンとのあれこれですっかり忘れてた」
そう言って私室に戻ったヘスティアがしばらくしてから高価そうな木箱を手に戻って来た。その中には黒いゴライアスとの戦いで売った
「神父君……、この状態で返品は?」
「致しかねます。本来の
当然のごとく返品不可。今のファミリア的には払えない額ではないが、それでも余裕で払える金額ではない。まるでハンマーに殴られかのごとくヘスティアは項垂れるが、払わなければならないという事実から逃れることが出来ずにいた。
すると、今度はその値段についてあの時近くで聞いていた命が挙手をしながらアクスに尋ねてくる。
「ところであの時は50万というお話でしたが?」
「あれは適正価格です。先ほどの理由から20万でしたが、あの時は無理矢理ベル様を戦わせようとしていたので覚悟を問うための方便です」
「ヘスティア様、嘘を見抜けないとか……本当に神様なんですか?」
「サポーターくぅん!? 確かにちょっと嘘をついている気配はあったけど、あの時はベル君が危なかったから仕方なかったんだよぉ!」
嘘発見器の役割すらもまともに出来ない主神にリリルカが冷たい目線を贈り、それをヘスティアは『仕方なかった』の一点張りで反論する。
しかし、アクスにとっては至極どうでも良い。なんなら『支払うなら早く支払って欲しい』と思っている節まである。
「とりあえず僕が言えることはツケは払わないといけないってことだけですよ」
「あー、すまん。ベルが大金を前に失神した。出来ればそれは後日にして欲しい」
20万ヴァリスは間違いなく大金である。少し前まで冒険者でなかったベルには聊か刺激が強い額だったのだろう。ソファでぐったりする彼を見かねてヴェルフが支払いを後日に回して欲しいというので、元々アリバイ作りのためにこれを作っていたアクスは二つ返事で許可した。
「では次の要件を」
「おいおい、まだあるのかよ」
一難去ってまた一難とはこのことだろうか。新たな厄介事の気配にげんなりするヴェルフだが、アクスにとってはこちらが本命である。バックパックから先ほど切り出されたユーノの角を取り出してそれを渡すと、彼は『ユニコーンの角じゃねぇか!』とせっかくの素材を突き返そうとするが、それをアクスは固辞する。
その後、ユーノの翻訳込みで角の下半分は『ベルに対するお礼』。上半分は『アクスに対するお礼』と決定する。そうなるとアクスの取り分がやや少ないのだが、それは【ディアンケヒト・ファミリア】の過酷な労働に対しての無言の抗議とユーノ本人が言ったためにアクスはそれ以上ごねるのは辞めた。ディアンケヒトへの好感度が少し下がったのは言うまでもない。
「包丁屋さん、これで包丁とか作れます?」
「今、お前に渡す魔剣のついでになんか作ってやるから。とりあえず包丁は置いとけ……な?」
「切った食材が浄化しそうですね」
もはや神聖すぎて使えないレベルの包丁を作らせようとするアクスはともかく、以前のクロッゾとラキア関係で魔剣を打つことを約束している。それも合わせて後に受け取りに来て欲しいと伝えたヴェルフは、ベルを再起動させてからユニコーンの角を持って行く。
あとに残されたヘスティアたちだが、特段アクスに対して聞くこともないためにこのままお開きにしようと提案したが──。
「ウィーネはあの後……どうなりましたか?」
「うん、ウィーネは──」
「ベル君、ストップだ」
まるでウィーネの身を案じているように問いかけるアクスにベルはついつい答えそうになるが、それをヘスティアは止める。彼は未だどこのファミリアと繋がっていて、誰に情報を共有しているのか分からない身。仮に『ウィーネがまだ生きている』という情報を【ロキ・ファミリア】辺りに漏らされれば、一気に形勢が悪くなるのはいうまでもない。
「……申し訳ないけど、君にその情報を渡すわけにはいかない」
神格者であるヘスティアとしては珍しく、はっきりと拒絶の言葉を言い放つ。しかし、彼女の言わんとしていることは至極当たり前のことなので、アクスは『分かりました』と言って立ち去ろうとする。
しかし、そこで談話室の暖炉から
「神ヘスティア、その必要はない。アクス・フローレンスの人柄と実績から信頼は出来ないが、信用するに値する人物なのは間違いないという認識を私は持っている。ここは私に任せてもらおう」
唐突に聞こえてきたフェルズの声。
完全に蘇生されたウィーネは記憶も何も失うことはなかった──というのも、彼女は
強化種。『血濡れのトロール』が有名なその個体の正体は、同胞であるモンスターの魔石を喰らって能力や知恵が特別に強化した存在である。
つまるところ、短い期間ではあるが魔石を大量に摂取したウィーネはヴィーヴルから
しかし、今は強化種の時にあった大きな力は一切観測されていない。そこから導き出される仮説は──。
「蘇生の代価……ですか?」
「あぁ、君も覚えがあるのだろう? 正直に言うと、安心した節もあるんだ。あのような蘇生魔法がノーリスクで打てたら、本当に私の立つ瀬がない」
自虐気に話すフェルズ。どうやらあの時、後ろにアクスが控えているからという理由で少しばかり気弱になっていたらしい。魔法の出力が気持ち1つで変わることがあり得るのかは魔法についてあまり知らないアクスが聞いてもちんぷんかんぷんだったが、なにはともあれウィーネが多少の代償を払って無事に蘇生できたのは喜ばしいことである。
「
「あぁ、ダンジョンに撤退しようかと考えている」
やはり、そういう結果になったらしい。残念だが、未だ地上は彼らを受け入れる土壌がないことが分かっただけでも御の字だろう。
「どうやって帰るのですか? "あそこは"利用できませんよね?」
「あぁ、"以前"とは違う」
具体的な名前を伏せた【ガネーシャ・ファミリア】は、今回の事態においてオラリオ側だ。以前にシャクティが言っていた『群れとはそういうもの』という言葉通り、オラリオの治安を守る組織として
そうなると残されるのは現在進行形でオラリオの嫌われ者となっている【ヘスティア・ファミリア】しか居ないが、この場で結論を急がせるほどフェルズは人でなしではない。
アクスが居る手前、『断言はできない』と濁されたが、少なくとも数日以内に行動に移すとフェルズは宣言する。
「おいおい、良いのかい? 神父君も居るんだぜ?」
「既に【ロキ・ファミリア】が動き出している。そうなると、どう足掻いても数日で見つかるだろうさ」
【ロキ・ファミリア】の捜査能力を舐めてはいけないことは今回で痛いほど思い知っている。そのためフェルズは
これで仮に情報を流されても『それは何時、どこのこと』が分からなければ、捜査上においては単なる雑音となってしまう。
そんな小細工を弄してもあの
「あ、フェルズさん。ユーノが【ディアンケヒト・ファミリア】の仕事に嫌気が差して、そちらに帰りたいと言っているのですが……」
何と言う事でしょう。あれほど地上で風を受けながら目いっぱい走ってみたいという憧憬を胸に、度重なるグロスたちとの話し合いや説得に力を入れていたユーノがたった1日で心変わりしてしまったではないか。
いったい、【ディアンケヒト・ファミリア】で何があったのか。命の危機からの判断なのか。そもそも冒険者たちが見張っている中でどのように合流し、どのように逃げようか。
フェルズの頭の中ではそんな疑問や懸念がぐるぐると渦を巻いていた。
そして、少々長めの長考の末にフェルズがとある決断を下す。
「……保留で」
──そういうことになった。
***
ようやく話し合いが終わったアクスは周囲の視線に当てられながらも竈火の館を後にする。
そんな時、ふいに後ろから猫撫で声が聞こえてきた。
「ねぇ、僕? ちょっとお姉さんとお話しよっか」
「ぼ、冒険者なんですけど! で、【ディアンケヒト・ファミリア】に入ってるんですけど!」
余談だが、このオラリオにはどこかのパルゥム仮面。またの名をフィン・ディムナ(とアクス)のせいで小さい男の子に欲情するお姉様方や諸々が比較的多い。そのためにアミッドは不審者対策として、『【ディアンケヒト・ファミリア】に喧嘩得るのか? あぁん?』といったニュアンスが伝わる魔法の言葉をアクスに教え込んでいた。
この魔法の言葉によって幾人もの不審者もとい冒険者を諦めさせてきたが、今回は勝手が違った。
「あ、うん。知ってるよ?」
「不審者扱い……。ぶふぅっ!」
「クルスさんが行けって言ったんじゃないですかー! もーっ!」
先ほどの猫撫で声では気付かなかったが、途端に聞き馴染みのある声にアクスが後ろを振り返る。そこには【ロキ・ファミリア】の魔導士であるエルフィが、同じファミリアのクルスの腹を怒りながら殴りつけている姿が目に映った。
「すみません、変な声だったので別人かと」
「ぶふっ! っ! ……っ!」
「あー、完全に笑うなんて酷い! こうなったらバベル上層のレストランで奢ってください!」
「ちょっ! それ高い奴だろ! 絶対高い奴だろ!」
もしかしなくても高い奴である。入るだけでもン十万が飛んでいく修羅の場に連れて行こうとするエルフィを宥めつつ、クルスはアクスについて来るように言ってくる。別のファミリアということで断っても良かったが、天下の【ロキ・ファミリア】ににらまれると後が怖い……というか、先ほどそのトップとバチバチにやり合ったばかり。
そのことについて彼にも思うところがあるのか、素直についていくことにした。
え、アクスの後ろで戦争帰りの男が斧振りかぶってる? あんた、疲れてるのよ。
アクス
今回、適当に過ごしただけの子供。なお、明日の朝ご飯は大好物であるアミッドの作ったパンケーキに決まってご機嫌。
椿
理不尽な武器破損にバチギレ。その怒りようは主神の怒り具合に似ていたとか何とか。
フレイヤ
たやフ(ただの優しいフレイヤ)さん。そりゃ、(へとへとのお子ちゃまをさらなる地獄に叩き落すのは)いかんでしょ。
オッタル
後方理解者面は時間制限付きだったらしい。すっかり『力を示せ』BOTとなったお方。
フィン
オラリオを代表するファミリアの頭領の姿か…これが…。
正直、フィン下げに片足突っ込んでないか心配なので、しばらくは恰好良いフィン書きたいなー…。書けると良いなぁ。まぁ、ちと覚悟はしておけ。
アミッド
心の整理にまだまだ時間がかかるけど、それはそれとしてアクスニウム(新物質)補給と明日のご褒美ご飯選定に余念がない人。
ウィーネ
代償として強化種をはく奪。対価が低いと思われるが、まぁそこはフレーバーで楽しんでもろて
かなり昔の伏線回収。
ディアンケヒト・ファミリアは慈善団体やないねんで…。
余談
催促でもお願いでもないのですが、コメントがあれば喜びます。最近、メンタルやられてるのか他人が面白いのかが判断がつかなくなってきまして。
個人的には面白いと思っていますがね。