いつもとアミッドの区長や反応は違いますので、『こんなの究極で完璧なアミッド様じゃないやい(ディアンケヒト・ファミリア団員感)』な人はブラウザバックをお願いします。
神の眷属。
そういった背景から彼/彼女らは病気などに無縁と思われがちだが、それは半分正解で半分間違いだ。
たしかに常人よりも強いために怪我や毒といった異常系に強いのは正しい。それでも、日頃の体調管理やその日のコンディションで免疫が極端に下がることもあれば、そこに病原菌がやってくることでコロッと病気になったり、最悪の場合で死ぬことも容易にあり得る。
つまるところ、
***
「医者の不養生とはこのことですね」
賭け布団から頭を半分ほど出したアミッドは、己の自己管理能力の低さにほぞを噛む。
いつもであれば業務を開始している頃合い。部屋の外からも団員たちの声が時たま聞こえるため、居ても経っても居られなくなった彼女がベッドから這い出ようとはするが、中々思うように身体が動かせない。
いったい、どうしてこうなってしまったのか。熱で思うように思考できない頭でアミッドは理由について自問自答するが、熱で思考回路すらバグったのか『働きすぎ』という定型句しか返って来ない。
思えば1週間ぐらい前から、彼女の身体に体調不良の兆候はあった。
咳き込む頻度が増えてきたため、患者と真正面から向き合う診察から1人でもできる調合やマジックアイテム作成へとシフトを代わってもらった。
そして、ここ最近の熱帯夜で睡眠不足やそれに付随して食欲不振が続いている。
極めつけは、そんなボロボロの状態にもかかわらずに『来るべき大口取引』に備えて数徹ほど嗜んだ。
その結果が
もはや『不摂生』というラインはとっくに超え、『
そんな『自分のことになるとまるで駄目になる聖女』が緩慢な動きでもがいていると、ノックの音と共にマルタが入ってきた。
「アミッド様、お加減は如何ですか?」
「本調子ではありませんが、机で出来る業務は出来ます。申し訳ありませんが、書類を──」
「駄目です」
ピシャリと言い放つマルタ。
それもそうだろう。今のアミッドはどこからどう見ても本調子や不調といった類では片づけられない状態にあるため、仕事などもってのほかである。
それに
いかに団長とはいっても、アミッドはまだ19歳の小娘。ぐうの音も出ない説経には成す術もなかった。
「すみません」
「そこは"ありがとう"と言って欲しいものですが……。ひとまず、ディアンケヒト様が御作りになった薬と差し入れがありますので、どうぞ」
若干呆れの色を出しつつ、マルタは扉の外から粉薬の入った薬包紙をいくつかと色々入っているらしい大きなリュック。それと
「あの……」
「薬です」
「アクスですよね?」
「お薬です」
有無を言わさない剣幕にアミッドは『あ、はい』としか言えなかった。その返事に納得したのか、マルタは『では』 と部屋を出る。
「あの、アクス。今日の業務は……」
「今日はお姉ちゃんの看病が仕事だよ」
ふんすと胸を張るアクス。その献身と可愛らしさにキュンときたものの、治療院はただでさえ人手不足なので手伝いに行くよう説得する。
「私がいない穴を埋めてください」
「それを言ったらマルタお姉ちゃんに連れてこられたもん」
どうやら既に対策された後のようだ。やはり思考が似ているアクスやその考えを予見した団員たちの対応にちょつとだけおかしくなったアミッドは、少し微笑みながらアクスをベッドに招く。
せっかく持って来てくれたのだから、使わなければ治るものも治らない。そう思ってふかふかのマットレスをぽんぽんと叩くが、小生意気なことに『薬』が拒否してきた。
「伝染るから駄目じゃないの?」
「その時は私が看病します。それに、お薬には拒否権はありません。患者権限です、一緒に寝なさい」
お姉ちゃん権限の次は患者権限と来たものだ。
しかし、有無を言わせない雰囲気のアミッドの様子に彼は少しばかり躊躇したものの、最終的にはゆっくりと彼女のベッドに入っていく。既に布団の中はかなり熱かったが、我慢できない程ではない。そのまま睡眠欲に支配されそうだったが、アミッドがアクスをぎゅっと抱きしめてきた。
「お姉ちゃん、温かい」
「熱があるから」
アクスを抱きしめた状態のアミッドは、まどろみながらも数日前を振り返る。
思えば最近、忙しさや熱帯夜。他には『今日はお兄ちゃんと寝る』とちょっと精神的にマズい団員の下へ行ったりといった理由でアクスとまともに関わっていない。
そこに久方ぶりのアクスである。モチモチな手触りと体温が心地よく、気付けばアミッドの瞼はものの数秒で落ちてしまった。
そうして、部屋の中は静寂に包まれる。おそらく団員たちが見たら絵心を爆発させていたかもしれないが、今はバリバリ業務時間。きっかり1時間後には
「よく……寝た気が。いえ、本当によく寝ましたね」
アミッドの意識が徐々に覚醒していく。なにやら幸せな夢を見ていた気がするが、思い出そうとしても思い出せない。そんなモヤモヤした気分と久方ぶりの長時間睡眠でスッキリした気分の狭間で揺れ動いていると、ふと傍に居たはずのアクスが居ないことに気付く。
「アクス?」
幾分か体調は良くなった気がするものの、未だ本調子ではないために彼女は周囲を見渡す。狭い個室なので隠れるところなど無いのだが、部屋の隅っこや机付近と視線を彷徨わせた末に彼が居ないことを察したアミッドは少しばかり心細くなった。
19歳が何を言っているのかとナァーザ辺りに爆笑されそうだが、いくつになっても病気の時は不安になるもの。扉の外から聞こえてくる喧騒によって『世界から隔離された気分』にはならないものの、それでも寂しいのは変わりない。
すると、そんな時だった。
「あ、起きてた」
「アクス、どこに行ってたの?」
「ご飯。作って来た」
無邪気に答えたアクスは盆に乗ったスープを掲げる。そのまま彼は部屋の中へ入って来ると、一旦机に盆を置いてから椅子をアミッドが寝ているベッドの傍に移し、再び盆を回収して椅子に座る。
一見すると謎の行動に見える。しかし、1人の乙女である彼女はアクスの行った一連の動きに
「アクス」
「ん?」
「1人で食べられますよ?」
気恥ずかしさが勝ったのか、アミッドは盆に置かれた木匙を取る。しかしながら、疲れが溜まりに溜まっていた身体は数時間程度の睡眠では十分回復しきっておらず、木匙は小刻みに震えるばかりであった。
それを見かねたのがアクス。『零すから』とグゥの音も出ない正論を振りかざすと、アミッドから木匙を奪い取った彼はそのまま匙でスープを掬って己の口元に近づける。
「フゥー、フゥー」
「あの、そこまでしなくてもいいのよ?」
「口内の火傷もバカにならないって言ってたの、お姉ちゃんだよ」
またもや正論。昔の自分に聖女パンチを喰らわせたい衝動にかられながらも、アミッドはアクスの『あーん』という言葉に大人しく口を開けた。
しばらく待つと口内に1匙分のスープが流し込まれる。ほんのりとした野菜の甘みと肉から溶け出した旨味が混ざった優しい味に緊張していたアミッドの身体が解れていく。柔らかく煮込まれた人参は舌で押すだけで崩れてしまうほど柔らかく、淡い甘さに彼女の胃が歓喜の声を上げている。
「フゥー、フゥー。……まだ熱いかな」
「大丈夫そうだけど」
「だめ。もう一回」
心配性のように必死な様子で何度も息を吹きかけるアクス。その姿にいつもと逆だとアミッドはついつい笑いが零れてしまった。
『笑わないでよ』とブー垂れながらも彼は真剣な面持ちで何度か息を吹きかけ、ようやくスープをアミッドに差し出す。
息を吹きかけ過ぎてやや温くなったスープを噛み締めれば、細かく刻まれた根菜のほっこりした食感が彼女に満足感を与え、さらに次の1匙を受け入れれば煮込んだ後に丁寧に刻まれた肉のどっしりな旨味がスープにちょうど良く混ざり合っていく。
「美味しい?」
「美味しい。……昔を思い出す味」
何度も食べ進めていく内に、アミッドの脳裏にはかなり前──暗黒期の中にあった僅かな癒しの光景が広がっていく。
それは、とある店の場景だった。
冒険者や一般人。性別も種族も年齢もバラバラの店内で、ひたすらうるさかったのは覚えている。そんな喧騒の中、3人のパルゥムの姿だけはまだ幼かったアミッドの記憶の中にしっかりと残っていた。
『食いたい奴には食わせてやる。腹が一杯になったら、金と心の荷物を置いてきな』と言いながら忙しなく料理を作る小さいながらも精悍な顔つきのパルゥムの姿。
『金は後で良いから、今は何かを腹に詰め込みな』と優し気に料理を配膳する清楚な雰囲気を漂わせるパルゥムの姿。
そして、『正義の剣と翼を背負った派閥』や『群衆の主が主神の派閥』の女性冒険者にあやされ、時にはおちょくられてギャン泣きするパルゥムの幼児。
懐かしく──もう2度と手に入れることは叶わない記憶。それでも、
「本当に懐かしい……。あなたのお父様とお母様のレシピでも見つけたの?」
「ううん。なんとなくやったら出来た」
「なんとなくって……」
相変わらず、世の料理が壊滅的な者が聞いたら暗殺されそうな。その料理で泣く相方が聞いたら涙を流すような言葉に、アミッドは再び昔の記憶を掘り返す。
***
調剤のセンスはイマイチなアクスだが、先のとおり料理や菓子に対するセンスは抜群であった。ただ、それが判明したのは奇しくもアクスが引き取られてからである。
彼が初めて行った──とうか、自発的に行った作業が『料理』である。当時はイヴィルスの襲撃も多く、同時に多くの人々が怪我を追っていた時代だ。
そうなると純粋に
アミッド含めた治療院の人間も例外なくそれに当てはまり、気付けば1食……2食……時には何も食べないままでオラリオを駆けずり回ることも少なくなかった。
そこで登場したのがアクスだ。
誰がどのようなことを言っていたのか。そこからアクスがどう思ったのか。それらについては未だに彼は黙秘を貫いているが、『働かなきゃ』という明確な意思を持って調理場の前へ立ち、鍋やフライパンを振るう。
そうして出来上がった久方ぶりの温かくておいしい食事。それを食べた全員が、ようやく『自分たちの居場所』を再確認することが出来た。
世の人々を癒す責務を持つ【ディアンケヒト・ファミリア】の団員たちだが、彼/彼女たちは同じ人間である。すなわち、アクスはそんな者たちの疲労を『食事』という手段で
その後もアクスは【ディアンケヒト・ファミリア】の団員たちに食事を作り続けた。
例え間に合わなかったことで罵声を浴びせられ、心身ともに弱り切っていた時も。
例え団員が亡くなったことで空気が重苦しくなった時も。
彼はひたすら料理を──自分の役目を正確に理解した上で黙々と打ち込んでいった。
そうして暗黒期も鳴りを潜め、
その理由は言わずもがな、
その後は長すぎる下積み時代を経て、ランクアップ。その際に発展アビリティとして【神秘】も発展アビリティの候補に入っていたのだが、アクス本人がダンジョン内への往診を強く希望したことで治癒魔法の利便性を高める【魔導】を選択。『夢のダブル
***
「ごちそうさまでした。良かったわね、沢山あーんできて」
「違うもん」
「本当に?」
「……ちょっとだけ、嬉しかった」
そっぽを向くアクスにアミッドはほほ笑む。先ほどまで気怠かった身体もかなりマシになり、意識も明瞭になっている。それを伝えると彼が満足そうに目を細めるが、すぐさまスープが入っていた椀の隣に置かれていた水の入ったコップと薬包紙を片手で指差した。
「でも、まだ安静にしないと駄目だよ」
「はい」
「薬も飲んで」
「はーい」
「ちゃんと水も飲んで」
「はいはい」
「……返事が適当」
「ふふ、誰かさんの真似」
アミッドはコロコロと笑いつつ、薬を服用する。いつも彼女が顔に貼り付けている鉄面皮をすっかり取り去られており、そこに居るのは年相応の1人の少女だった。
すっかり自然体の彼女は残りの水を飲み込むと、再びベッドへ身体を戻す。すかさずアクスがその肩まで布団を掛け直すと、そのままアミッドの髪に触れた。
「なに?」
「寝てる時に巻き込んじゃうといけないから」
「なら、そう言いなさい。女性の髪はみだりに触るものじゃないのよ?」
「いい?」
「優しくね」
どうやら
指の間をさらさらと滑っていく髪だが、長時間寝ていたことで毛先の所が少しばかり絡まっている。それを目ざとく見つけた彼は、ゆっくりと指で整えていく。
「痛くない?」
「うん」
「よかった、痛かったら言ってね」
そう伝えてから改めて全体の毛を整える。首筋にまとわりついていた髪を肩の後ろへ流し、寝転がった時に巻き込まれないようそのまま左右へと分けていく。
いつもは自分でやっていたことだが、人にやってもらうことのなんと心地良いことか。アクスの指がアミッドの髪をゆっくりと漉き入れる度、彼女は満足げな息を吐いていた。
やがてアクスの手がアミッドの背中に添えられ、そのままゆっくりと彼女は横たわる。その力強さにちょっとだけドキリとしたものの、『あ、そういえばこの子って冒険者だった』と当たり前のことを思い出していると、彼の笑顔が瞳に飛び込んできた。
「これでいい?」
「ありがとう。それで、"お薬さん"。もう1つお願いがあるの」
そう言ってアミッドは布団を持ち上げる。その意図を察したアクスは椅子から立ち上がり、自身についたほこりを取り除いてから躊躇なく彼女の布団へと入っていった。
ポカポカの体温に香ばしい肉球や草原を思わせる清涼な雰囲気が入り混じった香り。そして、スープによって人心地ついたお腹という三重の至福により、神々の言うところの『即墜ち』レベルで彼女は夢の世界へと旅立ってしまった。
これは余談だが、アクスの匂いには中毒性とか病みつきになるとか人造人間とかそういったことは断じてない! 俗に言う子供特有の良い香りなだけである!
***
そして次の日。アミッドの体調はすっかり良くなる。これで団長がいないことでほんの僅かにズレた歯車が回りだした……となっていれば、大団円だったが。
「私が看病する!」
「いや、俺だ!」
「私よ! せっかく、お母さんって呼ばれるチャンスなんだから!」
「お前、他のパルゥムの奴にも言ってないだろうな!?」
「何言ってるの? 年齢見て言ってるに決まってるじゃない。つまり、アクスだけよ!」
治療院の奥がかなり騒がしい。それもそのはず。今度はアクスが風邪にかかったのだ。
部屋の前では何人もの団員たちが詰めかけており、それぞれが主張を言い合っている。
傍目から計算するに、善意100%で看病したい者が5割。これを機にギュッとしたいのが3割。
ひとまず、後者2割における今後の編成は後で考えることにしたマルタたちは、こぞって『薬が到着するから仕事しろ』と全員を追い返す。そうして静かになったところで、準備が出来たらしい『薬』をアクスの部屋へと飛び込ませた。
「お姉ちゃん、お仕事は?」
「ディアンケヒト様には許可は取ってます。元々3日ほど予定を開けていただいていたみたいだから、誤差よ」
どうやら先ほどの騒動であまり深く眠れていなかったらしい。目を開けながらぼうっとしていたアクスの瞳に薬──アミッド・テアサナーレの姿が映り、彼女が欠いた状態を危惧する。
しかし、それは既に報連相を済ませているようだ。昨日、マルタが行ったようにヒョイヒョイと果物や飲み物が入った瓶。そして薬の入った薬包紙といった看病グッズを取り出したアミッドは、少しばかり周囲を気にするような仕草を取る。
「それに……」
「それに?」
何事かと小首をかしげたアクスが理由を問うものの、彼女はその問いに答えることなく十分に周囲を警戒し──。
「わ、私がお、お薬で……す」
顔を真っ赤にするアミッド。結局、彼女の献身的な介助が薬になったのか。それは治療院に居る者たちにしか分からなかった。
残り湯で天然温泉張りの効能が出て、血で解呪薬作れるんだから実質間違ってないと思うの。
アクス
アミッドに対する特効薬。抱きしめるとぬくぬくでふわふわモチモチだぞ。
なお、アクスが添い寝する機会が圧倒的に多いのはアミッドだが、精神的に限界近い団員を感覚的に感じ取って寝たりしている。理由は分からないが、『あ、危ない』と感じるらしい。
運が良いと、寝ぼけて二の腕を踏み踏みしてくれるぞ。
アミッド
無理が祟って病気のなった聖女。これもディアンケヒトってやつのせいなんだ。
2人きりなのか、それとも病気でちょっぴり寂しかったのか。ちょっと年相応のお姉ちゃんになっている。
萌え所だ! 刺さったかぁ!
あーんして、髪を整えてあげて
姉弟の触れ合いだから! 健全だから!
ただ、アクスは『もっとお姉ちゃんに相応しい人が居る』と思っている。
ちょっと、文字数少なくない?
本当はここから2日目に突入して、ヘッドスパやらマッサージやらで超絶回復させる描写はあったけど、ふと『病み上がりにそれやって大丈夫?』と疑問になって断念したから。
メンゴ★
後書きの後書き(135:セットアップのアンケートを見た結果)
そんなに…ヘイ×アクが…見たいのか。や、やってやる…。やられる…前に!
R-18の画像生成できるサービス探さないとなぁと思いつつ、起承転結の起と結の部分は作成完了。官能小説書くの初めてだから、上手く書けてるかマジ緊張する。
まぁ、気長に待って。ほんと気長に。