ただ、アクスを消滅させましょうと某大冒険の編集者のような事を言った御友人は絶許。ちょっと書きたい。
【ヘスティア・ファミリア】との密談の後、アクスは竃の館を出る。無事な姿に『無事だったか』と胸を撫でおろす冒険者たちの生暖かい視線を感じながらも彼はそのまま治療院へと帰っていく。
フェルズの口ぶりから常に移動して追撃を避けていることが伺えるため、初動の速さを含めて逃げおおせる可能性は五分五分といえるだろう。後は【ヘスティア・ファミリア】の合流により、どれほどの時間フィンたちを攪乱できるのか。
出来るならば全員無事に帰って欲しいが、おそらくは数匹は犠牲になるだろうと薄ら寂しい気持ちがアクスの胸中に冷たい風を吹きつけていた。
「ただいまー」
「お帰りなさい、もう少し早く帰ってきなさい」
昼頃から【ヘスティア・ファミリア】に行ったにしては遅い時間。店仕舞いを済ませていたアミッドが小言を言いながらアクスに駆け寄ってくる。そのまま頭を両手でわしゃわしゃと撫でられ、その感覚に彼がくすぐったそうにしていたのだが──。
「ところで、どこかで私の悪口を言ってなかった?」
やたら確信めいた疑問をアミッドは投げかける。仮に悪口を言っていたのなら、彼女の両手はアクスを愛でることから制裁を与えることへと役目を変わることだろう。
しかし、悪口と言われて少しだけ考えたアクスは、やがて首を横に振った。
「言ってないよ? お姉ちゃんの残り湯と血を包丁屋さんに売って、その流れでお姉ちゃんがマーメイドの子供じゃないかって言っただけだよ?」
「ふふっ、そんなわけないじゃない。そう、私の勘違いだったみたい……今、なんて?」
マーメイドの話だろうか。本当のことだったらどうしようと続けて言うが、どうやらそっちではなくヴェルフにアミッドの残り湯や血を渡したことが彼女の逆鱗に触れたらしい。
なぜ渡したのか。なぜ売ったのか。息をつく暇もない程に問い正され、すっかり怯えてしまったアクスの口からユニコーンの角を用いた武器を作る過程で親和性を高める素材としてや一応他者の血ということで1万とお高めの値段設定にしたことが語られるものの、そんな状況説明で彼女の怒りが収まるわけがなかった。
それもそうだろう。自身の入った風呂の残り湯という老廃物が溜まった液体に髪の毛や血を身元ははっきりしているとはいえ他人に──しかも、そこから他者へ渡る武器の材料として使われるなど恥ずかし過ぎて死ぬレベルの恥辱である。
それもこれもアクスにそれらを渡す案を押し通した団員たちが半分ぐらい悪い。ただ、それを素材として見せ……。あまつさえ売るとはどういう神経をしているのだろうか。
ただ、アクスもアクスで『良い武器で冒険者1人の命が救えれば良い』とよく考えた末に判断した結果である。そのため、その判断や考えが間違っていた絶望や『アミッドに怒られる』という彼の中で1、2を争う嫌なことが起こってしまったことから彼の目尻は涙腺崩壊間近といったところ。
それでも唇を噛み締めることで耐えたアクスは、ポツリと自分の考えを伝えた。
「だって、秘薬の材料だったし……」
違う、そうじゃない。
まさか、以前団員たちが言っていた『アミッド = 素材理論』をすっかり信じているとは思わなかったアミッドは絶句する。先ほどからのやり取りから団員たちも集まってきており、アクスの発言に『え、マジで信じたの?』や『アクス君、すぐ信じるの止めな』と言ってはいるものの、『元凶たちが言うな』といったアミッドの視線に全員揃って口を噤んだ。
「前から思っていましたが、アクスは少々短慮が過ぎます! 今後は現場の指揮を任せることもあるかもしれないのだから、ちゃんとよく考えて……」
「よく……よく考え"だも"ん。必要って言われたから……」
何とか分かってもらおうと言葉を尽くすが、どうやらその前にアクスの限界が来たようだ。ギャン泣き──とはいかずとも不貞腐れるように泣き出す彼にアミッドも困ってしまう。
どうにかしてアミッドの気持ちや羞恥心を分かってもらおうと考えるが、アミッドにとって『アクスが泣いている姿を見る』のはやや苦手である。
考えが纏められずに困っていると、横で倒錯的な妄想に浸っていた変態。もとい、女性団員が流石に真面目に諭した方が良いと思ったのか、アクスと目線を合わせながら問いかけた。
「じゃあ、アクス君は自分の一部が武器とかの材料になっても良いの?」
「それで人が助かるなら良いもん。沢山人が助かるなら、お姉ちゃんみたいに薬の材料にしても良いもん」
「アクス、こいつが言いたいのはそう言う事じゃないんだが? それとその話は止めてくれ、俺に効く」
違う、そうじゃないパート2。よくよく考えればアミッドの思想や願望を色濃く受け継いでいるため、人が助かる方向性の説得はあまりにも無意味だった。
『人の一部を薬にする』という話になにやら苦虫を噛み潰したような男性団員がやんわり話を終わらせてほしそうな雰囲気を醸し出すが、そこにやや倒錯的な趣味をした団員たちが口を挟んできた。
「アクス君の一部……。髪の毛でカツラとか?」
「髪の毛入りのぬいぐるみとか、良いですよね」
「止めろっつったよなぁ!?」
「えぇ……」
どこからどう聞いても呪物の類にしか聞こえない。それを嬉々として作ろうと提案する団員たちに男性団員がキレ、アミッドも流石にドン引きする。
ただ、これ以上話を大きくするわけにはいかないことは本能的に分かったようで、『この話は止めましょう』と中断させ──られなかった。
こんな面白、もとい愉快。……興味深い展開を団員たちが見逃すわけがない。アミッドの制止の声を聞こえない振りをして乗り切った団員たちが次々と己の『癖』を解放していく。
「たしかアクス君の使ってる毛布ありましたよね。それを人形に仕立てれば、アクス君の匂い付きの物が!」
「天才!」
「あの~」
「アミッド様の出汁って疲労回復効果ありましたよね。"ケヒトの湯の成分入り"って触れ込みで入浴剤として売れるのでは? どうです、ディアンケヒト様」
「薬剤は難しいが、入浴液なら可能じゃろうな。よし、取り掛かるか」
「あっ! のっ!」
いつの間にか主神までも話に入っている状況にアミッドの方をチラリと見た男性団員は『俺、知ーらね』と早々にその場を離れ、そこから少しした後に彼女の堪忍袋がプッツリと切れた。
いくら治療院からあまり出ない
すると、ようやく泣き止んだアクスの耳にも件の創造計画が聞こえていたのか、そのことについて文句を言い出した。
「そうだよ。お姉ちゃんには良い人が居るはずなんだから、僕がお姉ちゃんの相手なんて失礼だよ!」
『は?』
あくまでも家族としても憧れとしても大好きだが、それ以上は自分以上の適任者がいるというスタンスのアクスに全員の声が重なる。団員たちがすっかり『無』の表情でアクスのことを見つめる光景がややホラー染みていたものの、彼も決して怯まずにしっかりと自分の意見を言い放った。
「何驚いてるの? 僕なんかがお姉ちゃんに釣り合うわけないじゃない」
「カフゥッ!」
あんまりにもあんまりな言い方に、肺の空気をすべて出し切ったかのような叫びと共にその場で倒れるアミッド。その切れ味の鋭い返しに最初こそ対応できなかった団員たちだが、倒れたアミッドが僅かに痙攣していることから慌てて彼女の周りに集まった。
「こンの……朴念仁!」
「人の心が分からないの?」
「頭タケミカヅチ様がぁ!」
「ミアハから禄でもないことを吹き込まれおって!」
出るわ出るわ。団員たちどころかディアンケヒトからも罵詈雑言の瀑布がアクスに襲い掛かる。
なぜミアハの名前が出てきたのかアクスは見当もつかなかったが、あれだけボロカスに言われたら反論の1つもしたくなる──ということで彼は自身の考えを説明した。
……倒れたアミッドが側に居るにも関わらず。
「僕とお姉ちゃんは7歳差だよ? その差を考えると、もっと良い人が居ると思うんだけど」
「うっ……」
「歳の差は……、そうなんだけどね」
正に正論。正論過ぎて反論の余地もなかったが、ビクンと大きく痙攣するアミッドを見た団員たちは非常に可哀想な存在を見るような目をしながら『歳の差なんて愛の力で何とでもなるし、自分たちも祝福する』と発言。
もはやアミッドの恋心を赤裸々に語っているようなものなので、両手で顔を覆いながら『止めて……、止めてください』というアミッドの言葉を団員たちは無視する。こうでもしないと朴念仁なアクスに伝わらないためだ。
しかし、そんな彼らの行動に対してアクスはムッとした表情で怒りだす。
「お姉ちゃんの気持ちを無視するのは良くないよ。お姉ちゃんは今まで僕を弟として可愛がってくれてたんだから、いきなり異性って言っても驚いちゃうでしょ」
「ゴフゥッ」
「もう止めて! 団長のライフは0よ!」
何から何まで分かっていないアクス。もはや打つ手なしと判断した団員たちは、『アクスの言う事は尤もだ』と表面的に謝罪すると彼は『お腹空いてないから寝る』と私室へ引っ込んでしまった。
あとに残された団員たちとディアンケヒトとアミッド。特にアミッドは未だ精神的ダメージを引き摺っているのか、起き上がるのも一苦労といった具合にヨロヨロと立ち上がる。
すると、その痛ましい姿に団員たちが口々に話し出した。
「ちょっと今からあいつ調教しに行くか」
「止めときなさい、暴力は最終手段。ディアンケヒト様、以前お話していた
「儂だけでは無理じゃな。せめて祈祷で封印できるウラノス辺りと魅了で操るためにフレイヤあたりを連れて来んと」
「他の神を巻き込むなバカ野郎!」
直接的な暴力以上の悍ましい計画を発動しようとしている団員と主神を拳で黙らせつつ、結局のところはアミッドが何とかしなければどうしようもないと比較的マトモな団員が説く。アクスだって人の子なので、彼女が好意を持って接していると分かればそう遠くない日にコロッと心変わりするに決まっている。
ただ──。
「え? 膝に乗せて、一緒に寝て、愚痴を吐きながらお酒飲むって言う弱さの姿見せて、たまにアクス君を抱きしめてうたた寝してるのに、それ以上どんな好意の示し方があるの?」
「むしろ、どうやったらあの子が団長を好きな異性として見てくれるの?」
「……すまん、無理だ」
距離感がバグり散らかしているアクスとアミッドをこれ以上進展させるやり方について全員頭を悩ませる。喧々諤々と話し合った結果として浮かんだ手段というものが、昨日【ロキ・ファミリア】所属の
そんなことをしていると、目下オラリオで悪逆を尽くしている
「アミッド様! では、私と!」
「じゃあ、アクス君はもらっていくわね!」
「アミッドは俺の嫁! そしてアクスは俺の息子!」
【ディアンケヒト・ファミリア】には少数派だが、アミッドやアクスにガチ恋している者が居る。
アミッドは俺の嫁派、アクスは私の婿派、アクスは俺の息子派、その両方。エトセトラーーエトセトラ。各派閥は1人、もしくは2人だが集まれば全体の1割ぐらいだろうか。
ただ、彼/彼女たちのスローガンは『あくまで紳士/淑女的に』である。ゆえに実力行使に出たりといったことは一切しない。精々なところ、振り向いてもらえるように医術や治癒魔法や製薬技術を高め、時折自分をアピールするだけの無害な存在である。その技術の高さは古参のマルタたちと同等ぐらいで、『この調子でがんばってください』とアミッドに微笑まれて喜んでいる後ろで『この熱意を別の女性に向けれない?』と苦言を呈したのも1度や2度どころではない。
なまじ自ら研鑽して使える人材へと
「空気読めよ」
「そんなだからそんななのよ!」
「畜生! 良いじゃねぇか、夢見させてくれよ!」
「アクスきゅんのあったかモチモチ湯たんぽに夢見ても良いじゃない!」
振りかぶられた大剣。魔法名が告げられる前の杖。もはや切れたナイフどころの話ではない多数派により、少数派は瞬く間に鎮圧される。
そんな社会の縮図のような光景を前に、ようやく精神が安定してきたアミッドにディアンケヒトが声をかけた。
「のぅ、アミッド」
「はい」
「儂もそろそろ孫の顔が見たいのじゃが……」
「ディアンケヒト様、話を聞いておられました?」
「何を言うか、この中で可能性が高いのはお前じゃろう! ちまちましておったらどこぞの黄金にでも掻っ攫われるぞ! お前もアクスもどこぞの馬の骨に引っかかる前にーーぶへぇあ!」
時代が時代なら何らかのハラスメントに抵触しそうな言葉をぶっ込んでくる主神に、今度こそ彼女は必殺の聖女パンチを叩き込むのであった。
***
かくして、
何をかくそう、18階層の一件からダイダロス通りの臨時治療院。そして、【ロキ・ファミリア】や【ヘスティア・ファミリア】とのあれこれを行っていたため、往診を求めるラブコールが少々溜まっていたのだ。
「あ”あぁ~、子供特有の温かお手々と凄腕按摩のコンボがヤバ過ぎる~」
「ネルティ! アイドル(仮)がしちゃいけない顔してるわよ!」
御年100歳を超えるオラリオの生き字引──もとい、アイドルを自称するダークエルフがとても人様の前ではお見せ出来ない顔でだらけている。
ただ、それは仕方のないことと言えるだろう。
子供特有の温かい手の平に加え、わざわざ極東出身の神の講習を受けたことで学んだ高級按摩店のようなマッサージ技術。さらに彼女は数日前からぎっくり腰が再発して動けない状態にあったため、その心地良さは天に昇るほどであった。
そのままついでとばかりに腕や足と揉んでいき、すっかり口元から涎が垂らしていたネルナッティにハトホルが『アイドル(仮)じゃなくてアイドル(笑)になってるよー』と言うが、そのまま一昔前の垂れたパンダのようにリラックスしていた彼女はちょっとだけ不満そうにアクスにテイムしたユニコーン──ユーノについて尋ねてくる。
「結構楽しみにしてたんだけど、ユニコーンどうしたの?」
「脱走しました」
そう。あの馬畜生もとい、ユーノは脱走した──というより、昨日のド深夜にフェルズが回収しに来た。
どうやら【ロキ・ファミリア】の捜索の手が思いのほか早かったらしい。このまま行けば早々にフェルズも外を出歩けなくなるため、身動きが完全に取れなくなる前に単身で動いたようだ。
とりあえず、ファミリアを抜けるということなのでフェルズが『一身上の都合により辞めさせていただきます』と辞表を持って来たが、流石に達筆過ぎるのでアクスの部屋の机に仕舞いっぱなしになっている。
そのため、あくまでも『脱走扱い』。現に今もアクスとユニコーンがセットという情報は特に統制もされていないため、すっかり周知の事実となっている。そこからユニコーンの所在について往診先でちょくちょく聞かれるが、その度に訳を話しては『見かけたら連れて来る』と有難迷惑なことを言われているわけで……。内心、辟易していたのは内緒だ。
「【ガネーシャ・ファミリア】には言った? ちゃんと申請出さないと罰則食らうわよ?」
「はーい」
既にウラノス経由でユーノについては【ガネーシャ・ファミリア】のシャクティとガネーシャには話が通っていることはフェルズから聞いている。今更ハトホルに言われても遅いのだが、ここで話を大きくして【ガネーシャ・ファミリア】に通報されるのは避けたい。
なので、必殺の『分かっているのかいないのか判断に困る返事』で難を逃れたアクスは何度も何度もユーノについて聞かれながらも【モージ・ファミリア】やギルド、バベルの治療施設や夫婦喧嘩真っ最中の八百屋と様々な場所に訪れては相変わらず癒しを振りまいていった。
やがて、アミッドとディアンケヒトが決めた往診ルートを終えたアクスはダイダロス通りへと足を進める。滅多な理由なく入ることはしないようきつく言われている場所だが、ゼノスとの戦闘からそれほど時間は経っていない。患者を治療するだけして経過を見ずに放置など【ディアンケヒト・ファミリア】ではあり得ない対応のため、そこら辺を危惧したアクスは、後のことは未来の自分に任せるという相変わらずのクソガキ理論でズンズンと通りを歩いては治療を施していく。
「あぁ、そっちの通りに行くなよ。少し前から怪しい奴らが屯して、昨日に様子を見に行ったやつがかえってこねぇ」
「
流石に連日わざわざ治療しに来るパルゥムの子供に警戒するのもバカらしくなったのか、治療の片手間で次々と情報提供してくれる住民たち。彼らの言う不審者が
再び戦場になる予感をヒシヒシと感じていたアクスだが、残念なことにオラリオは広いようで狭い。ダイダロス通りの一角ならまだしも全体に住む住民を一気に避難させる余力はどの区画にもない。さらにはその避難に乗じて
そんな風に柄にもなく大局的に物事を考えてしまったのは、おそらく目の前で小さな木箱に座って項垂れているパルゥムのせいだろう。眩しそうに目を細めながら前を見て──項垂れて──滅多に出さないであろう感情を滲ませたため息をつく。まるで、神々で言うところの『リストラされたが、家族に言い辛くて公園で黄昏る元サラリーマン』のような疲れ具合だ。
上級冒険者の上澄みであるフィンの知覚範囲に入っているにも拘らずアクスの接近に気付かない様子から見るに、相当参っているのだろう。数日前まではアクスをバチボコにして土下座までしていたパルゥムがそこまで変わるとは思っても見なかったアクスだが、とりあえず『弱ってるっぽいから治療しなきゃ』という
「お隣、失礼します」
「ん? あぁ、アクスか。すまないね、ちょっと気が抜けていた」
「いえ、いくら上級冒険者でも人間です。時には気を休める必要があるかと」
業務的な慰めにフィンは『相変わらずだね』と笑うと、それ以降何も話さなくなる。ただ、これは以前のレフィーヤや1番酷かったヘグニと同じで自分の中でどう説明しようか迷っている時だろうとアクスは何も言わずに空を眺めた。
すると、数分も置かずにフィンは『僕は奸雄なんだ』と独白し出す。どうやら皆が認める
「カン・ユー? 誰ですか、それ」
「……悪知恵が働く大人って意味さ」
流石に12歳には難し過ぎたと反省したフィンは、次々と
誰かに聞いて欲しかったわけではない。ただ、ベルの
ここでアクスが素直に『そうですか』と立ち去ってくれれば、後はすっかり元通りになったフィンが仮設テントに戻るだけで済む話──なのだが。
「フィン様、これより荒療治を行います。他のファミリアの団長に失礼な態度を取ることをお許しください」
「? 別に良いけど」
この場にはティオネや他の団員たちは居ない。それにアクスには色々世話になっているため、逆らう必要もないと許可を出すや否や──頬に痛みが走る。前を向けばアクスが立っており、位置や体勢的に座っている自分の頬を叩いたのだとフィンが実感する。
『なぜ』や『どうして』と疑問が湧いて出て来るが、その前にアクスはフィンの目を覗き込んだ。
「自分の価値すら分からないボンクラですか、あなたは」
「随分、酷い言い草だね」
「正直な感想です。それに、その言葉はあなたの背中を見て死んでいった【ロキ・ファミリア】の皆さんを侮辱しています。あなたの背中に希望を見出したからこそ、ダインさんも、ノアールさんも、バーラさんもあなたに後を託したんじゃないんですか」
「っ!」
大勢の
だが、それを
「それに、あなたが居なければ僕もきっとオラリオに住んでいる1人のパルゥムになっていました」
「え?」
あり得ない。アクスはともかくとして、彼の両親もアクスに負けないお人好しだったはずだ。
金のない冒険者からは『出世払い』と無料で飯を食べさせ、ランクアップした冒険者や商談に成功した商人には採算度外視で高い酒や大盛りの料理を振る舞い、時には
そんな両親の元で幼少期を過ごしたのならば
何でも両親はフィンのファンだったらしい。パルゥムという劣等種族でありながらも『勇気』を示し続けるその姿を見たアクスの両親は、『そんな人物に恥じないように』と暗黒期の真っただ中に居ながらも何かやれることを探した結果があの料理屋と言うことだった。
「それは……、光栄なことだね」
「僕も同じです。何度も冒険しては絶対に帰って来る姿に僕も勇気づけられた。いえ、
真っすぐな瞳で紡がれる真っすぐな言葉。一点の曇りもない言葉の数々に、フィンは目頭がとてつもなく熱くなっていると自覚する。
ボロが出ないよう口元をキュッと結んでいると、今度は座っているフィンの肩に手を置いて言葉を続けた。
「答えてください、フィン様。【ロキ・ファミリア】は、あなたの下に集った人たちは人工の英雄の価値を見誤った愚か者の集まりですか?」
「それはっ!」
「改めてお尋ねします。フィン・ディムナが団長を務める【ロキ・ファミリア】の皆は、人工の英雄に縋る実力を持たない人たちの集まりですか?」
「違う! 絶対に違う!」
リヴェリア。ガレス。アイズ。ティオネ。ティオナ。ベート。レフィーヤ。ラウル。アナキティ。ラウル。アリシア。他にも多々居るが、【ロキ・ファミリア】全員の顔が一気にフィンの脳裏を駆け巡る。
彼らは決して実力が乏しい者たちではない。むしろその逆で、フィンの指示を的確にこなすプロフェッショナル達である。
彼らが居てこそフィンは【ロキ・ファミリア】──オラリオ最大派閥の一角であるファミリアを纏める
「違うというなら見せてください。悪者……
そう言い残してアクスは去ろうとする。それを見送りながら、フィンは自身の身体が作り変えられていく感覚を覚えていた。
権謀術数で構成された
冒険者以前にフィンも1人の人間だ。応援されれば奮い立つし、それが目を掛けていた者からの極上ともいえる声援であれば高ぶるに決まっている。
もはや
「雨……か」
アクスの姿が完全に消えた途端、曇っていた空から雨粒が降ってくる。火照った肌に雨が降れ、その冷たさと心地良さにフィンが目を閉じると共に目尻から
色んな意味で他者の心をかき乱していく悪いパルゥムがオラリオに居るらしいわよ、奥さん。
アクス
今回はギャン泣きではなくボロボロ泣く。大人に全否定気味に怒られると怖いからね。
とある男性団員
とある英雄の名前と同じ名前のLV2で、
ディアンケヒト・ファミリアの
その
次話で具体的に語られる。
アミッド
我慢できなくなったら聖女パンチで実力行使に出るお方。なお、対象によって威力は某トラ●ピオのクソ雑魚パンチ並からLV.2の本気並とブレブレ。
センシティブなことをしないと出られない部屋
ウラノスで部屋一帯を封印して、そこにフレイヤの魅了で操ったアクスを連れて行く。ね、簡単でしょ?
その間のダンジョン? オッタル立たせていれば良いじゃろ。
お前がパパになるんだよ
かつて、某騎士団の団長がとあるアマゾネスにヤられ。失礼、求婚された際に繰り出された技。
なお、その時どこかの騎士は騎士団長の馬と鮭を食いながら談笑していた模様。
『おじさん、なんやかんやあってフィンが逃げ出すに鮭1匹』
『たわけ、賭けが成立せんではないか』
カン・ユー
坊主の説教は死んでから聞かせてもらおう。
フィン
ファンからの声援にこたえる勇者の鏡。
スーパーウルトラΩアルティメットフィンは誤植ネタ。
なお、『LV14』になってた模様。お前が黒龍倒しに行けよ。
Xで#スーパーウルトラΩアルティメットフィンで調べれば出るはず