正月あたりにキアンの足跡書きたかったけど、四方山話1話でお茶を濁そう。そうしよう。
治療院にてアミッドをクノッソスに行かせないよう古参たちが必死に説得していたのと同じ頃。アクスはダイダロス通りを歩きながら辻ヒール行為に従事していた。
道行く冒険者や市民に怪我の有無や怪我人の位置を問い、時には治癒魔法を掛けてから相手が治療費として財布を取り出す前に忽然と姿を消し、またある時はすれ違った瞬間に
そんなアクスであったが、ふと空を見上げてからおもむろに壁に手をかけて上り始めて行く。相も変わらず奇行をしているように見えるものの、彼の視線は物資を雨露から守る大きな布の上に止まった
「お邪魔します」
「ア……。ドウも」
「ウゥ……」
布を捲って中に入ると、そこにはハーピィのフィアとトロールのトロルが身を寄せ合って隠れている。おそらくはトロールの大きな図体は序盤では目立ちすぎるため、戦況が落ち着き出した頃合いで動くのだろう。アミッドやディアンケヒト。そして安定の
「コれは?」
「こちらが傷を癒す
「いエ、そウではナく……」
なぜ助けるのかと。既に
すると、アクスは彼女の言葉の意図を掴めないのか首を傾げる。
「誰かが困っていたら助けるのは当たり前では?」
「あなタはっ……、マだ私たチを人ダと?」
未だ
その後、やや涙声になりながらもお礼を言うフィアや小さな唸り声を出すトロルと別れたアクスは続けて負傷者の治療に努めようとそこかしこから聞こえて来るベルやモンスターを探したり、見失ったという怒号を耳にしながら右へ左へと路地を曲がっていると──
「あ、アクス」
「お久しぶりです」
【ロキ・ファミリア】とは幾度となく会ったが、何かしらの密命を帯びていたのかアイズには久しく会っていなかった。
彼女はレフィーヤやアリシアのような心当たりが多すぎる人々とは違い、今までアクスに暴力的なものを振るっていない実績がある。そのため特に警戒することなくポメポメと寄っていくと、人に慣れた小動物のような動きが気に入ったのかおもむろにアクスを持ち上げた後に『怪我人がいるから』と元来た道を歩いていく。
「ほら、あの人」
「……なんでこの人が?」
「分からない。腕試しがしたいって。最近は全然無かったんだけど、多分強くなりたいんだと思う」
アイズが訳知り顔で言うが、おそらく見当違いだろう。
それもそのはず。地面に倒れているのが口元を覆ってはいるものの、
何がどうしてこうなったのか分からなくなったアクスだが、状況から見てアイズとリューが戦ったのだろうと分かる──が、どうにも解せなかった。
リュー・リオン。【疾風】と呼ばれる冒険者だが、彼女が一時期ギルドのブラックリストに入った原因は
そこはギルドのお知らせなどで知っていたので別段驚くことはないのだが、そんな彼女が【ロキ・ファミリア】の幹部であるアイズに攻撃を仕掛けるのはどう考えてもおかしいのだ。
そんなことを考えていると、いつものように脳内のフィンやディアンケヒトが『裏まで読むのが肝要だよ(じゃ)』と囁いてくる。
裏ということはアイズが
「とりあえず、分かりました」
「うん、お願い」
言うが早いか、そのまま屋根伝いに走っていくアイズ。そんな彼女を見送りつつ、アクスは眼の前で倒れているリューをどうしようかと悩みだした。
変に揺り動かすと自動防衛本能のごとき反撃が来るのは18階層で理解しているし、かと言って無言で
それならばどうするかーー決まっている。アクスは地面に落ちている木の枝を拾うと、彼女の身体を軽く突っつきだした。
これならば手痛い反撃は来ないし、症状が軽ければ起こすことが出来る。やはり、思慮深い(と思っていないのが派閥全体の総意な)パルゥムはやることが違う。
そんなクソガキ特有のふわっふわな自画自賛しつつ、『もしもーし』とリューの声を多少高くしたような声真似で呼びかけながら突き続けると、彼女が訝しげな視線を向けてきた。
「あの、あまり似てない物真似は止めて欲しいのですが」
「……おやおや、可憐(笑)な妖精様がこのような雨の中、水遊びでございますかぁ? やはり、潔癖で高潔なエルフ様は変わっておりますなぁ」
「自信のある物真似にして変えて欲しいんじゃなぁい! 今すぐっ! 即刻っ! 輝夜のマネは止めなさい!」
あー言えばこう言う。まったく、困った患者である。ちなみに、もちろんだがアクスの行いは
仕方ないだろう。彼は未だお子ちゃま。
そのため、未だ故人云々と明らかにそれが理由ではないことについて怒っているリューをおざなりに宥めながら、薬か治癒魔法かの2択を問いかけた。
「どちらも同じでは?」
「今日は往診ではないので、
「治癒魔法の方でお願いします。ですが、それならばなぜ薬を?」
明らかに治癒魔法の方が需要があるだろうに、わざわざ大きなバックパックを背負って来る必要性が感じない。
ただ、薬というのはアクスが居なくても使用できるし、各ファミリアがそれぞれ確保している仮拠点に置き薬として設置すれば非常時に役立つ。
【ディアンケヒト・ファミリア】側からしても『どこどこのファミリアに何個売った』と纏めて精算が可能なため、双方にとってウィン・ウィンな知恵なのだ。
まぁ、そんなファミリアの知恵はこの際置いておき、アクスは治癒魔法をかけ終わるとリューとアイズが戦っていた理由を尋ねる。
「ところで、アイズ様と戦ったようですが……彼女は
「いえ? 彼女は
質問に質問を返される。なので、一旦質問を噛み砕いて戦った理由について問うと、彼女は『とある
守秘義務はどうしたと言いたいが、『ギルドを通していない口約束ですし、依頼人は言いません』とさらりと言ってのけるリュー。『これが暗黒期、潔癖すぎたエルフの姿か』などとは思ってはいけない。彼女も少しずつ成長しているのだ。
話は戻るが、やはり慌てて事実確認をしなくて良かったとアクスは安堵する。あのままアイズや彼女の上役であるフィンに伝えれば間違いなく【ロキ・ファミリア】からの心象は悪くなるし、今後にも多大な影響が出る。
内心、ドヤ顔になりながらもアクスはリューの回復を済ませると黒いミノタウロスの件で使用した
たしかにあの中で役職についているのはアクスが知っている中ではアスフィのみ。ゆえに
ただ、今はそんなことを気にしている場合ではない。アスフィに会ったらそこら辺も話そうと引き続いて怪我人の捜索のため、ダイダロス通りの東へと向かう。
「【ディアンケヒト・ファミリア】です。回復はご入用でしょうか」
「おぉ、
予想はしていたが、LV.1やLV.2の怪我人が多い。それらを全て癒すのは流石のアクスでも無理なため、移動できるほどまで回復させてから近場に設置されているであろう回復所の方向に向かうよう冒険者に伝えてから移動を再開する。
そんな具合に移動、治癒魔法、さらに移動と続けていくと、横の路地からアキが飛び出してきた。
「あら、アクス君。治療は構わないけど、1人は危ないわよ?」
「【ロキ・ファミリア】が居るから大丈夫って判断しました。必要な物はありませんか?」
アキの問いかけにアクスはくるりと後ろを振り返ってバックパックを見せる。その子供っぽい仕草に小さく笑った彼女はバックパックから覗く
クノッソスの扉で
特にガレスの班は地下と地上を行ったり来たりしなければならないため、スタミナ的にもそろそろ
「アクス君、ちょっと尋問に付き合ってくれる?」
「はい?」
謎の問いかけに思わず返事をしてしまったアクス。そんな彼に獣人たちが群がると、アクスが降ろしたバックパックの中身を確認する。中から出て来るのは大量の
「ありがとう。じゃあ、次の質問ね? アクスくんが好きな人は?」
「アミッドお姉ちゃ……団長とファミリアの皆。あとは【ロキ・ファミリア】の皆とか、ヘイズ師匠とか。皆大好きです」
アキの質問に、子供特有の『知り合った人みんな好き』を発動。アキ含めた周囲の冒険者たちの心に特大の矢がぶっ刺さった。
「ねぇ、この子連れ帰っても良いかな。保護しなきゃ」
「アキさん落ち着いて! 目的忘れてます!」
なにやらアキが錯乱するが、団員たちの『目的』という言葉にスイッチが切り替わったかのように雰囲気を変える。
その切り替わりようにただ事ではないと感じたアクスがなにかあったのか問うと、どうやら
「そういうわけだから、情報を渡す前に軽く事情聴取させてもらったんだけど……」
「言いたいことは分かります。僕のことを知ってれば分かることですから」
「私としてはその回答だけで本物認定したいんだけどね。でも、これといって確信が持てる証拠がないのよね」
アキとしては目の前の人物は本物のアクス・フローレンスだと断定したいが、既に2軍は1度失敗してこのような事態となっている。次に同じような失敗をしないよう、アキは自身の心に蓋をしながら目の前の子供がアクス・フローレンスと断定できる質問内容を探すものの、先ほどの言動やバックパックの中身。それになにより服や身体に染みついた薬草や薬の匂いが邪魔をする。
すると、疑われている本人が手を上げ、質問内容を提案してきた。
「あ、1つだけあります」
「なに?」
『疑われている本人が提案するのは違うだろう』と言いたかったが、正直時間が無ければアクスの力も借りたい場面──ということでアキがアクスに続きを促す。
すると、アクスはなにやら周囲を気にしだした。そんなに聞かれてマズいことかと問うと、どうやらアキに関係することらしい。
「皆、一応耳塞いで。絶対聞こえないように」
「分かりました」
仮にアクスの振りをしていたとしても、こんな集団の中で凶行に及ぶことはしたいだろうと全員に聞こえないよう徹底したアキは一応獲物の長剣を片手に屈んだ。
「小さく話してね」
「はい。"
アクスの口から放たれたスキル名に、アキはすかさず『あ、本物だ』と呟く。
彼の言うとおり、アナキティには
暴力的な手段は取りたくないし、彼は巻き込まれた側なので一切悪くない。かと言って広められるのも嫌。かくなる上はリヴェリアあたりに『記憶を消滅させる魔法』を強請るしかないと別の意味で覚悟を決めた彼女だったが、『素敵なスキル』と目をキラキラさせながら純度100%の誉め言葉を言われてしまえば流石のアキもすっかり毒気を抜かれてしまった。
結局、『誰にも言わないこと』と軽い口約束をして今までその約束が守られてきたわけだが、ひょんなことからこうして身元確認の手段となり得たことに彼女は『何が役に立つか分からないわね』と塞翁が馬な状態を噛み締めていた。
ともあれ、目の前のパルゥムが正真正銘のアクスであることが把握できたのは僥倖である。アキはすかさず印を書いた地図を彼に渡し、さっさとどこかへ行ってしまう。
あの様子ではリリルカが逃げおおせる確率は若干低いだろうが、一応忠告したのでそのあたりは自己責任と割り切ったアクスはアキから渡された地図を片手に治療しながら歩いていく。
「アナキティ様から補給品持っていくように言われましたー」
「あぁ、ちょうど良かった。もうバテてたんだ」
アキが選定したのはいずれも【ロキ・ファミリア】がそれぞれの荷物を置くために確保していた簡易的な休憩所で、出入りしていた団員に理由を話すと彼らは快く片隅を貸してくれた。
そこにバックパックから取り出した
「あじゅじゅしたー」
他にも回らないといけない場所もあるため、かなり舌っ足らず挨拶をしながらアクスは次の目的地へ向かう。
またまた移動し、納品し、移動すると繰り返していると重かったバックパックがかなり軽くなってきた。
そろそろ治療院に戻って補給しなければならないとダイダロス通りを抜ける道順で歩き出すが、その足はすぐに止まる。
「えぇい! どいつもこいつも、少しは老人を労わらんかぁ!」
『するかぁ!』
場所はダイダロス通りの中間地点付近。氷結音やら金属音やら怒号やらとなにやら大騒ぎな様子にアクスが路地からこっそり覗き見ると、ガレスを相手に【ヘスティア・ファミリア】や
まさに大乱闘──否、全員狙いはガレスなので『苛め』と言った方が正しいだろうか。それでも並み居る冒険者や
ただ、それでも多勢に無勢。
「ガレス様、ガレス様」
「ぬぉっ、アクス!? 危ないぞ、下がっとれ」
「待ってください、回復します」
突然足元から聞こえてきた声にガレスは驚くが、氷の砲撃を盾で受け止める。耳をつんざくほどの氷結音が場を支配する最中、いかにしてアクスを脱出させようか考えるガレスの背中にアクスは手を触れた。
──
「
現在、絶賛大乱闘スマッシュファミリアーズの真っ最中。ここで治癒魔法を使えば
別の方向から『ならもっと打っても構わんな』とマスタースミスのやる気に満ちた声が聞こえるが、まぁそれは置いておこう。
すると、すっかり傷が癒えたガレスが反対側の通りを指差しながら小声でアクスに話しかけてきた。
「ほれ、余所に行っておれ。……儂らはここに居る
「ありがとうございます」
「約束じゃからな。じゃが、儂からの温情はこの1度のみということは忘れるでないぞ。ほれ、分かったら早く向こうへ行け」
ここでアクスとユーノが撒いた種が芽吹く。ガレスの言葉に魔剣の攻撃の合間を縫いながら向かいの路地に飛び込んだアクスは、懐に仕舞っていたオクルスを通じてフェルズに進軍を指示する。
『分かった、君の言うとおりにしよう』
どうせこのままではじり貧になるのが分かっていたのだろう。オクルスの向こうでフェルズが前進を指示し、しばらくしてから『抜けられた』という報告が入ってきた。
フェルズが言うには基本的に1本道である地下通路を辿ればクノッソスの入り口にたどり着くらしい。この地下通路は【ロキ・ファミリア】には発見されておらず、ようするにこれでフェルズの近くに居る
「他に地上に残っている方は居ますか?」
『居るが、君はこれ以上我々と関わらない方が良い……と言っても君は聞かないな。あえて言い直そう、助けは不要だ』
あえてフェルズはアクスを突き放す。そうすることで彼は傷付くかもしれないが、これ以上は本当に取り返しがつかなくなる。それこそベルと同等──否、現オラリオにおいてトップの地位に君臨する医療系ファミリアである【ディアンケヒト・ファミリア】に所属している分、バレた際の反動が大きい。
それにレットたちが襲われていたことを始め、既にフェルズを含めた
「分かりました。お元気で」
『あぁ、本当にありがとう』
受け取ったものに反して少なすぎる感謝の言葉。しかし、アクスは特に不満なく通信を切ると、一息つく。
これで良い。少々被害は出たが、アクスたち【ディアンケヒト・ファミリア】にとってもフィンたち【ロキ・ファミリア】にとっても
本命であるクノッソスに向け、後は粛々と準備を行った後に作戦を決行。オラリオの病巣を排除するのがアクスやアミッドの掲げるお題目である。
しかしながら、フェルズの言い分ではまだ他に地上に残っている
ヴォオ゙ォォ!
どうやら当たって欲しくない予想が当たったようだ。
ただ、先ほどフェルズと地下へ潜ったはずの
空を飛んでいることからおそらく既に【ロキ・ファミリア】が高所などを陣取っているだろうが、この場で1番必要なのはモンスターを打ち倒す冒険者ではなく人々を癒す
いざという時に団員たちを招集できるようバックパックの底には信号弾を放てる短銃が眠っているものの、この状況下でそれを使うべきか否をアクスは迷っていた。
そんな時、アクスの目の前に小柄のヒューマンを中心とした
「あれ、ロナ様」
エインヘリヤルを癒し、身の回りの世話をするのが主任務である
そのため、【フレイヤ・ファミリア】での
「この子、警戒心無さすぎでは?」
「そこら辺の犬猫でももうちょっと警戒するわよ」
神々が目撃すれば『ドードー並』と評するぐらいの無警戒さ。その天然物級の警戒心の無さに周囲に居た
アクスをヒョイと抱き上げたロナも特に弄することなく主目標を成し遂げたことに少々戸惑ったものの、『まぁ、アクス君だし』と目の前で何が何やら分からずに周囲をきょろきょろしているパルゥムに目をやった。
「あの、一般人の人が襲われそうなので用件を言ってくれませんか」
「ちょっと待ってね、もうそろそろ……。あ、ヘイズ様こっちです」
「ロナ、ご苦労様です」
いつまでもじっとしていられないとモゾモゾ動き出すアクスに宥めつつ、ロナは近くの路地から姿を現したヘイズに声をかける。その声にヘイズは主目標が達成したことをねぎらうが、『ご苦労様も何もこの子、自分から来ちゃったんですけど』と経緯を話すと『えぇ……』とヘイズはまるで信じられないものを見るかのような声を出す。
「バカ弟子、知らない人にホイホイついて行っちゃ駄目でしょ」
「? ロナさんだから、知ってるもん」
たしかにそうなのだが……。言いたいことが全く伝わっていない様子にヘイズは頭を悩ませるのも束の間、
「アクス、今だけ私の指揮下に入りなさい」
とんでもないことを言い出した。
アキ
ラウルが騙されてゲキおこ。この後は原作通りリリルカが掴まり、無理矢理協力させられて鍵を奪取。
もう付き合っちゃえよ!!!(ジョッキドンッ
とある一幕
「神父様ぁ! なんであんな怖い目に合うって教えてくれなかったんですかぁ!」
「言ったよぉ! 勝手にやったんでしょぉ!」
なお、●●●年前
「なんで兵糧が無くなってるんですかぁ!」
「お前が出した進軍予定表がガバってたんだろうがぁ! お前の馬基準で考えるんじゃねぇっていつも言ってるだろうがクソ聖女ぉ! ヘルガァ、こいつ貢ぎ物にして近くの領主から食料貰ってこい!」
だめだこいつら、全く成長していない
アクスの捕獲の仕方
・アミッドやヘイズ、フィンといった仲の良い人版
手招きしたら来てくれます。
ですが、困っている人が居る状態で手を絶対に離さないでください。たまに手を繋いでいても瞬時に困っている人の下に駆け付ける妖怪です。
・患者さんが顔見知り
ちょっと時間がかかりますが、来てくれます。
ただし、来てもおやつやお小遣いを与えすぎないでください。
・見るからに怪しそうな愚連隊
逃げます。それはもう逃げます。
後、騒動を聞きつけた猛者、黄金、4兄弟、黒拳、黒猫、ディアンケヒト・ファミリアの皆々様などなどが来る可能性大です。