矛盾もあるでしょうが、お祭りネタなんで…許して
──市民がモンスターに踏みつぶされる
──オラリオを守る冒険者が切り殺される
──神々が送還された証の
「酷い有り様だ」
「ねー、まさか呆気なく死んじゃうとは思わなかったなー」
バベルの最上階。フレイヤがいつも居座っている豪華絢爛な部屋には胡散臭い旅人風の優男と襟付きの白いブラウスに細いネクタイを合わせた美女が居り、大きな窓ガラスを通して下の惨状を眺めていた。
「なぁ、リディス」
「なんだい、ヘルメス兄さん」
懐かしいやり取り。
今の状況から察するにこれは夢なのだろう。当時──アスフィに団長を任せたヘルメスは様々な情報収集を行っていたはずである。その証拠に記憶を遡って導き出した場所を遠眼鏡で見れば、目深に外套を被りながら路地を疾走する自分自身の姿が見えた。
『撒くのに苦労したなぁ……』や『そっちは待ち伏せが……言わんこっちゃない』と当時のことを思い出しながら別のところに目を向けると、今ではすっかり団長らしくなったアスフィが狼狽えながらファルガーに食って掛かっている姿が見える。
「あの子には悪いことをしちゃった」
「そうだね」
「あっ、自分は関係ないって思ってるんじゃない? 数割は兄さんのせいなんだからね? 残りは私だけど」
「ハッハッハ、悪いと思ってるさ。思っているだけだけどね! ……駄目だな、このやり取りをすると泣けてくる」
ファミリアを興した時から幾度となく味わってきた眷属との別れ。当に涙は枯れ果て、苦しみとの付き合いも心得ていたつもりだったが、どうやらそうはいかないらしい。
目頭を押さえながらその身を震わすヘルメスに、リディス──【ヘルメス・ファミリア】前団長であるリディス・カヴェルナはふぅと一息つきながら真っ赤な絨毯の上に座り込んだ。
「そんな感傷的でボロボロな兄さんを可愛い妹が魔法で笑わせてしんぜよう」
「魔法?」
はたして何が始まるのか。珍しく困惑するヘルメスにリディスは昔のように無邪気さと色香をごちゃまぜにしたような笑みを彼に向けた。
「本当は私も、もっとアスフィに色々やってあげてから代わってあげたかったんだけどね。まぁ、夢の中ぐらい楽させてあげたいっていうお姉ちゃん心ってやつ?」
そう言ってリディスは詠唱を開始する。長い長い詠唱と同時に凄まじい魔力が彼女の周囲に渦を巻いていく。
しかし、長い──長すぎる。一般的な魔法は連結詠唱であっても1分はかからないが、リディスの魔法は30分は経っても未だ謳い上げている。
これまた一般的だが、詠唱が長くなるごとに魔法の規模も威力も上がる。このように長ったらしい詠唱の果てに何が始まるのかとヘルメスは不謹慎ながら胸を躍らせていた。
やがて、全ての詠唱が終わったのだろう。『
「見て、蹂躙が始まるよ」
リディスが指差した先。オラリオの外から何かが凄まじい勢いでオラリオ目掛けて突っ込んでくる。
ヘルメスが遠眼鏡で戦闘の一団を見ると、そこには──。
アクスの集団が向かって来ていた。
***
オラリオの外を包囲する邪心の信奉者たちをなぎ倒しながらオラリオ内部へとなだれ込んできたかなりの数のアクスたちは、勢いのまま
「な、なんだこいつぎゃああ!」
叫ぶ男の胸部を手の平で強く押すことで吹き飛ばす者。
「こいつら、同じ顔がぁ!」
抵抗しようと武器を構えようとした獣人の頭部に向かって棒を振り回す者。
「パルゥムの癖になめんじゃねぇっ! どこにk尻がぁぁぁ!」
振り下ろされた武器を最小の動きで回避。後ろに回り込みながら両手の人差し指を伸ばした状態で手を組み、エルフの尻に突き立てる者。
本当に様々な手法でもってアクスたちは
「んー、超ざっくり言えば
「あの巨漢とハイエルフは?」
「知らなーい。多分、どこかの歴史……兄さんが前に言ってた"へーこーせかい"から渡ってきたんじゃないの? それより見てよ、すっごい勢いで
『ざまーみろ』と笑うリディス。その視線の先には先ほどまでの地獄が
「ひぃぃっ、なんだよあいつら!」
「一旦逃げるぞ、この路地へ……」
劣勢に怯えたヒューマンが路地へ飛び込むと、そこにはアクスたちが隊伍を組んでいた。その手にはクロスボウが握られており、中央に居たアクスの合図で次々とボルトがヒューマンたちに襲い掛かる。狙いは全て手や足といった命に別状がない部分に限定されるが、それでも『命に別状はない』だけで戦闘できる状態ではなくなった
「畜生、こっちは駄目だ! あっちに逃げ……」
言い終わる前に至近距離で怒った爆発でドワーフの身体が宙を舞う。
言い終わる前に至近距離で起こった爆発でドワーフの身体が宙を舞う。
目を丸くした
たった2人のパルゥムだが、今までの惨状から決して油断はできない。そう思った彼らは相手の出方を慎重に見定めようとするが、そんな悠長に事を構える余裕はなかった。
「なっ、あいつ自爆装置を!」
「打ち出しやがったぁ!?」
一方のアクスが
一体どこで手に入れたのか──と叫ぶ暇もなく、
そんな光景を見せられたら、もう進路を変更するしかなくなる。
『これ以上トンチキな奴らに関わり合いたくない』と口々に言う仲間たちの声を背後に聞きながら、獣人が曲がり角を曲がると、件のパルゥムが1人居るだけだった。
「よし、1人だけだ」
「見た感じ、通れそうだ。ここから抜けるぞ」
こちらを気にした様子もなく、園芸用のスコップで何やらせっせと作業をしているパルゥム。危険性はなさそうだと判断し、一歩踏み出した獣人だが──。
カチリ。
足に伝わるわずかな感触と単音に『ん?』と疑問の声を上げたのも束の間、彼を中心に小規模な爆発が起こった。
再びの爆発に今度こそ恐慌状態になる
「この野郎! バカにしやがって!」
集団ということで、いくつかの埋まった自爆装置──地雷が作動して何人かが吹き飛ぶが、数の暴力は恐ろしいもの。そのまま蹂躙されるかと思いきや、いきなり彼らの前に何かがボトボトと落ちてくる。
何かと思えば、すっかり見慣れた
地雷と連鎖爆発を起こし、路地一帯が吹き飛んだ。
余談だが、事前に避難勧告はしていたために
ここには、死の1歩手前でも回復できる聖女や、3歩手前なら回復できる黄金の幼体が居るのだから、死ななければ安いものなのだ。
***
「自由過ぎないかい!?」
「兄さんにそう言われるなんて、あの子たちが可哀想だよ?」
自身の夢だとしてもフリーダム過ぎるパルゥムたちにヘルメスが声を上げる。
「なんだ、幻影が……」
「自爆装置つけてるぞ! 離れろー!」
「丸太ぁ!?」
「“俺の詩を聞け?” なに言って──ほぎゃああ!」
他のアクスが呼び出した馬の幻影に自爆装置を取り付け、それを直進させてから
どこからともなく取り出した丸太で突撃しては敵をなぎ倒すクラッシャー。
背中に担いだ弦楽器をかき鳴らしながら、道行く
遠くの鐘楼からひたすら弓による超長距離狙撃をするスナイパーは良いとして、剣の距離でも近接装備に持ち替えず、ひたすら弓で戦う変態も居る。
そんなトンチキの博覧会を見せられては、流石のヘルメスも笑うしかなかった。
……なかったのだが、とある一団の姿に目が据わる。
「なぁ、リディス。あのアクス君たちは?」
「あぁ、多分だけど“輪郭がはっきりしている”。数あるアクス君の中で、そうなってた可能性が高い子たちだよ」
【大和竜胆】の着ていた和服を羽織ったアクスと、燕尾服を着たアクスと、義手を付けた黒衣のアクスが一足飛びに
手に持った刀と肉弾戦のみで、
三者三様の戦い方は、どれも長年の研鑽で培ったものだと分かるような淀みのなさであった。
中衛では、他のアクスよりも身長が小さいアクスが【ディアンケヒト・ファミリア】の制服を着たアクスから旗を受け取り、詠唱した後に自爆しようと起爆準備に入った
旗の穂先が突き刺さったと同時に、透明なドーム状の障壁が彼らを包み込み、必死の形相で叩き割ろうとする
後衛では、自身のファミリアであるような感覚を覚える眼鏡をかけたアクスが、手に持った本に何かを書き込むと同時に数多の騎馬兵の幻影を召喚。
八方向から来た集団に体当たりをさせる。
吹き飛ぶ
「うおぉぉ! まさか俺に隠された力が!」
「あー、多分時間だねー。じゃーね、兄さん。英雄に惚れるのは良いけど、操ろうとすると痛い目見るよー」
ヘルメスのボケに対しておざなりに返したリディスは小さく手を振ると、そこで彼の意識は覚醒する。
目覚めるとそこには懐かしの団長が馬乗りになっている──わけでもなく、ため息をつきながら少し前にヘスティアに蹴られた顔に手を添え、窓から見える青い空を見上げた。
「手遅れだよ、リディス」
今日もオラリオは快晴である。
昨日、コメントで100話と知って慌てて書きました。申し訳ない。
そして、安定の夢落ちで申し訳ない。だけど、某ゲームのイベント見て書きたくなったんだもの。
リディス
ヘルメス・ファミリア前団長。死因は定かではないが、大抗争で命を落とす。
今回はヘルメスの夢ということで登場。彼を兄呼びなのは、ファミリアクロニクルを読もう!
彼女が生きててヘルメス・ファミリアにアクスが行ったら? 『アスフィお姉ちゃーん、リディスお姉ちゃんが虐めるー』だったはず。
元ネタは3000より先の分身を数えるのを止め、2000体の分身に戦闘訓練を積ませた仙人風のヒューマノイド。ちなみに担当声優はリヴェリアの中の人である。
効果は並行世界の存在を連れてくるもの。ぶっちゃけダンまちではそんなこと出来ないし、出来たとしてもリヴェリアやヘディンでも精神力が足りないと思う。
え、ごわすとハイエルフが来てる? お祭りだから(震え声
今回の被害担当。それ相応の悪事を働いたからね、シカタナイネ。
何度も言うが、命に別状はない。誓って殺しはやっていません。
命に別状はない
ここ最近で流行っている言葉。
ただ、命に別状がないだけ。開腹骨折であろうとも、複雑骨折や重度の火傷であろうとも、死んでいないのであればアミッドたちが蘇らせる。
すなわち、命に別状はないのだ。
アクス
イーブイどころじゃない進化先があるポメラニアン。
・豊穣の女主人でひたすら拳を磨いたアクス
・ガネーシャ・ファミリアでひたすら不審者を取り押さえる棒術を磨いたアクス
・タケミカヅチ・ファミリアのくのいちと共に忍者の道を究めようとしたアクス(千●殺し
・そこら辺のファミリアでサポーターをしていたアクス
・ゴブニュやヘファイストスのところで色々作ったおかげで手先が器用になったアクス
・正義のファミリア所属のパルゥムのおかげですっかりトラップにのめり込んだアクス
その他諸々でお送りしています。